ナタリー PowerPush - 甲本ヒロト(ザ・クロマニヨンズ)×ROY(THE BAWDIES)

ロックンロール対談

「電撃バップ」じゃなきゃダメなんだ

──パンクが出てきた頃、ヒロトさんはいくつくらいだったんですか?

ヒロト 僕はね、14歳くらいだったかな。中学2年とか。だからお小遣いが足りないんですよ、とにかく。それまでも足りなかったけど、特にパンクが出てからは新譜が欲しくて欲しくて。

甲本ヒロト

──じゃあこのレコードは大人になってから買い直したものですか?

ヒロト いくつもあるよ、買い直したもの。当時帯がビリビリになってたりとか、友達に貸したまんまなくなっちゃったもの、それからお小遣いが足りなくて友達から借りたものなんかもあったから。シングルもいっぱいあるけどもう紹介しきれないな。

──シングルは邦題がついてるものが多いですね。

ヒロト そう、例えばTOM ROBINSON BANDの「Up Against the Wall」は「凶暴のロンドン・タウン」ってタイトルだし、EATERの「Lock It Up」は「パンクでぶっ飛ばせ」になってる。RAMONESはもちろん「電撃バップ」。僕はこの「電撃バップ」っていうタイトルも含めて名盤だと思う。「Blitzkrieg Bop」じゃダメなんだ。

ROY うんうん。

ヒロト これは悪ふざけでもなんでもなく、熱がほとばしった状態なんですよ。妄想と勘違いでロックンロールは転がり続けてるんだから、これを解放しないことには何も始まらない。ROYくんだってさ、サム・クックやエタ・ジェイムズに影響されて、本人すらそんなことやってねえよっていう爆裂を自分がステージでしようと試みるわけでしょ。それでいいと思うんだよ。

「ザ・ドリフターズみたいになりたい」

──ROYさんはこのヒロトさんのレコードを見てどうですか?

ROY いや、こういう日本盤の帯って今まで僕ちゃんと見たことなかったんで、驚きましたね。でも音楽を愛してる人が書くとこうなるんだなって。面白いですね。

左からROY、甲本ヒロト。

ヒロト なんか最近いろんなことが理屈っぽくなってるじゃない。でも人をふさぎ込ませるものなんてそんなになくていいんだよ。悲しいことは世の中にいっぱいあるんだから。

ROY 考えるんじゃなくて感じることを優先させるほうが気持ちいいんじゃないのって。そういう感覚がロックンロールなんですよね。

ヒロト だからそれこそ当時の大人たちはね、「パンクロックなんていうのは一過性のものであって半年もすれば流行は収まるだろう。だからこんなものに君たちのお小遣いを使うのは無駄だ」って。そういうふうな論調だったの。実際当時のロック雑誌の評論でTHE JAMのアルバムについて「こんなものを聴くくらいだったら工事現場の音を40分聴いてたほうがマシだ」って書いてあるんだよ。

ROY あははは(笑)。

ヒロト でも僕はなけなしのお小遣いでそれを買いに行くんだよ。大人が見たらバカみたいって思うだろうし、そのギャップは当然だと思う。でもだからこそ、お願いだから、ロックンロールを届けるプロモーターの人たちは、中学生だけをターゲットにしてほしい。大人にバカにされてもいいから。

ROY そうですね。

左から甲本ヒロト、ROY。

ヒロト 僕が自分で20年以上前に言ってた発言で、今でもそうだなって思う原点みたいなものがあるんだけど。僕がTHE BLUE HEARTSっていうバンドを始めて、最初の頃のインタビューで、デビューしたてのバンドだからさ、「どんなバンドになりたい?」ってよく訊かれるんだよ。そのときに「ザ・ドリフターズみたいになりたい」って言ってた。どういうことかっていうと「コミックバンドになりたい」って言ったわけじゃないんだ。ドリフターズのお客さんを見てごらん? 大人がいないだろう? 小学生くらいの子供たちでいっつも会場は満員なの。で、大人になったらその子たちは卒業していなくなる。でも次の子たちが入学してまたドリフターズを観に来るの。で、僕は中学生でロックにしびれたから、多分その頃の僕は中学生くらいの人たちをイメージしてしゃべっていたんだけど、そういう中学生とか高校生。そいつらがいつも僕らのライブの会場にいてほしい。大人は聴かなくていい。客と一緒に歳取るつもりはねえよ。大人のロックなんてクソ食らえだって。

──確かにザ・クロマニヨンズのライブには若いお客さんが多いですよね。

ヒロト 僕もほっときゃ歳も取るからさ、今と昔をそのまま比べることはできないけど、基本的にやっぱ何も考えてなくて、たいして成長も進歩もしてないからおんなじようなものがいつもステージに乗っかってるんだと思うんだ。

ロックンロールは進化しなくてもいい

ROY それで言うと、僕らが特に若い人に感じてもらいたいのは、振り切れたカッコよさなんですよね。自分たちもそうだったんですけど、やっぱこう何事も受身なんです。「なんかいいことないかな」っていう姿勢でいる。それはその子たちが悪いんじゃなくて、やっぱ振り切れたカッコよさを知らないだけだと思うんです。僕らはロックンロールに出会ってそれを感じたし、それによっていろんな道が開けるっていうのを知ったんですよ。

ヒロト リミッターが外れるんだよね。

ROY そうですね。僕らはそこにすごい光を感じたから、だとしたらそれを伝えるべきだなと思っていて。ステージの上で自分たちが120%楽しむ姿をまず見せる。そのことによって「こんなに思いっきり楽しんでいいんだな」「自分もやってみよう」って思ってもらえる気がするんですよね。だからお客さんに言われて一番うれしいのは「ロックンロール聴くようになってから毎日めちゃめちゃ楽しいです」って。そういうことなんです。

──どんなきっかけであれ、THE BAWDIESを聴いた若いリスナーが「こういうロックンロールをもっと聴きたい」「自分もやりたい」って思ってくれたらいいですよね。

ヒロト そう。僕も最初レコード屋で聴いてびっくりしたんだよ。

ROY ありがとうございます。

ヒロト 恥ずかしいんだよ、レコード屋さんで「これ誰?」って訊くの。でもあのときは「今かかってるの誰ですか?」って訊いたもん。

ROY うれしいです(笑)。

ROY

ヒロト だから今日も何も言うことはないです。もうROYくんに任せた。

ROY いやいやいや(笑)。でもこないだ70歳近いTHE SONICSに出会って思ったのは、何も変わってなかったってことなんですね。ロックンロールは進化しなくてもいい。変わる必要がないものだってわかった。

ヒロト そうだよ。だって最初から振り切れてるんだもん。

ROY そうなんですよね。時代が違えば音は変わってくるけど、根っこは変わらない。何歳になろうが初期衝動を持ってやってるから。やっぱりそれが一番カッコいいと思うんですよね。だから僕らも何歳になっても続けたいと思うし。

ヒロト だからそういう意味では僕はロックンローラーのピークはどこにあるかっていうと、ロックンロールと出会った瞬間だと思う。12歳とか14歳の頃に出会ったなら、その瞬間がロックンローラーとしてのピークだと思う。あとは落ちるかそのまんまか。冷めていくか、狂乱のまま時間が過ぎていくか、それだけのことなんだ。それ以上はないよ。だって最初に爆発してるんだもん。

THE BAWDIES ニューアルバム「1-2-3」 / 2013年1月16日発売 ビクターエンタテインメント
「1-2-3」初回限定盤
「1-2-3」初回限定盤[CD+DVD] 3500円 / VIZL-516
「1-2-3」通常盤[CD] 2800円 / VICL-63991
アナログ盤[CD] 2800円 / SEEZ RECORDS / SEZ-3025
CD収録曲
  1. DANCE THE NIGHT AWAY
  2. LONELY MAN
  3. ROCK ME BABY
  4. I WANT YOUR LOVE AGAIN
  5. LEMONADE
  6. LISTEN
  7. TAKE A CHANCE
  8. RED ROCKET SHIP
  9. SHA LA LA
  10. CAN'T STOP GROOVIN'
  11. SING YOUR SONG
  12. 1-2-3(初回盤限定ボーナストラック)
初回限定盤 特典
  • ボーナストラック「1-2-3」収録
  • 限定DVD「Recording movie : a Day in 1-2-3」(45分収録)付属
  • 全国ツアー第2弾発表公演のチケット先行抽選予約シリアルナンバー封入
  • 特色エンボスのスペシャルパッケージ仕様
ザ・クロマニヨンズ ニューアルバム「YETI vs CROMAGNON」 / 2013年2月6日発売 アリオラジャパン
「YETI vs CROMAGNON」初回限定盤
「YETI vs CROMAGNON」初回限定盤[CD+DVD] 3675円 / BVCL-30008~9
「YETI vs CROMAGNON」通常盤[CD+DVD] 3059円 / BVCL-489
「YETI vs CROMAGNON」アナログ盤 3059円 / BVJL-6
CD収録曲
  1. 突撃ロック
  2. 黄金時代
  3. 人間マッハ
  4. 涙の俺1号
  5. チェリーとラバーソール
  6. 団地の子供
  7. ホッテンダー
  8. 日本の夏ロックンロール
  9. ヘッドバンガー
  10. 南から来たジョニー
  11. 燃えあがる情熱
初回限定盤DVD収録内容
  • 燃えあがる情熱(スタジオライブ)
  • 南から来たジョニー(スタジオライブ)
  • 炎(スタジオライブ)
THE BAWDIES(ぼうでぃーず)

THE BAWDIES

ROY(Vo, B)、TAXMAN(G, Vo)、JIM(G)、MARCY(Dr)によって2004年1月1日に結成。リズム&ブルースやロックンロールをルーツにした楽曲や熱いライブパフォーマンスが各地で噂を呼ぶ。2009年4月に発表したメジャー1stアルバム「THIS IS MY STORY」は第2回CDショップ大賞を受賞。2011年11月には初の日本武道館公演を成功に収めた。2013年1月に4thアルバム「1-2-3」をリリースし、同年2月より横浜アリーナ、大阪城ホール公演を含む59公演の全都道府県ツアーを開催。

ザ・クロマニヨンズ

ザ・クロマニヨンズ

1980年代からTHE BLUE HEARTSとTHE HIGH-LOWSで活動をともにしてきた甲本ヒロト(Vo)と真島昌利(G)を中心に、2006年夏より始動。甲本と真島に小林勝(B)と桐田勝治(Dr)を加えた4人組で、2006年9月にデビューシングル「タリホー」を発表する。その後もリリースを重ねながら年間を通してコンスタントにツアーを敢行。数々の夏フェスにも出演し、ロックファンを熱狂させ続けている。通算7枚目となるアルバム「YETI vs CROMAGNON」を2013年2月6日にリリースし、2月20日からは「ザ・クロマニヨンズ ツアー 2013 イエティ 対 クロマニヨン」をスタートさせる。