ナタリー PowerPush - 郷ひろみ×ヒャダイン

「99(ナインティナイン)は終わらない」発売記念インタビュー 99枚目で交差した2つの才能

郷ひろみの記念すべき通算99枚目のシングルは、ヒャダインこと前山田健一とのタッグによる「99(ナインティナイン)は終わらない」。2人のポップな感性が爆発した、ひたすら楽しいアッパーチューンが誕生した。

ナタリーではシングル発売を前に、世代を超えたコラボレーションで好相性を見せた2人の顔合わせが実現。楽曲制作の裏側を探るとともに、長年にわたり活躍を続けるエンターテイナー郷ひろみの魅力とその秘密に迫った。

取材・文 / 臼杵成晃 撮影 / 笹森健一

「変わらないね」は錯覚

──今回は99枚目のシングルということで……シングルだけ数えても99作品というのは改めてものすごい数字ですよね。

郷ひろみ ずっと勘定してきたわけではないので、今回が99枚目だと聞いて初めて「ああ、もうそんなに出したのか」という感覚ですね、僕の中では。このあと当然、100枚目、101枚目とリリースすると思いますし、次の誕生日(10月18日)には僕60歳ですから。ビッグイベントが重なって、そして続いていくわけですよ。

──いろんな方に言われているとは思いますが、もうすぐ60歳にはとてもじゃないけど見えないです。

ヒャダイン そうなんですよ。もう超人じゃないですか(笑)。

──もちろんいろんな努力を重ねられた結果だとは思うのですが、60歳までその体と心を維持できているバイタリティの源はどこにあるのでしょうか。

左から郷ひろみ、ヒャダイン。

 正直、外面に対するこだわりはないんです。メッキがはがれるのが一番怖いから。若さってのは気持ちだから内面なんですよ。“若作り”は外面にとらわれたものだと思うので、ファッションやメイクに気を使うよりも、大切なことは気持ちの上での若さを持つことだと思うんです。そうすればおのずと外面にも出てきますよね。極端な話だけど、20代なのにえらく老けてる人もいるでしょ? 逆に80歳だけどすごくやる気があって充実した生き方をしている人は、決して老けて見えない。

ヒャダイン うんうん。

 よく僕のことを「変わらないね」って言う人がいるけど、僕が誰よりも一番変わってきたと思うんですよ。たぶん変わったように見える人こそ実は錯覚で、本当は何も変わってない。時代がアナログからデジタルに変わって、コンピュータもPCと呼ばれるものにまで進化したけど、昔はそんなもの想像もしてなかった。時代の変化に合わせて僕自身も変わってきたから、変わってないように見えるんじゃないかなって。

ヒャダイン 時代と並走できているかどうかですよね。なるほどなるほど。

 僕は変化の先にしか進化は訪れないと思っているので、自分が変わることに対する恐れはないんです。変化すると必ず波風が立ちますし、不安もあるんですよ。まあでも引っ越したり職場が変わったりするのと一緒でね、環境が変わったり、荷物を片付けたり、友達や上司が変わったりするのは大変じゃないですか。でも、大変なことをしていかなければたぶん新しいことには出会えないから。

ヒャダイン カッコいいっ……!

──それは郷さんのアーカイブを振り返れば一聴瞭然で、郷さんの楽曲は時代の変化に対応しつつ、その時代の中でも針の振り切れたものを常に残してきているんですよ。その感覚があるからこそ、今回のヒャダインさんとのタッグにつながったんだと思うし。

ヒャダイン いや、ありがたいことですね。本当に。

郷ひろみの終わりと原武裕美の終わりは別もの

──僕が子供の頃、純粋に“スター郷ひろみ”の作品として聴いていた楽曲に今改めて触れると、当時は普通にお茶の間感覚で楽しんでいたヒット曲も、すごくエッジーなんですよ。この時代にこんなことをやってたのか!という驚きと発見が多くて。1980年代に活動を休止して単身渡米したのも、あの絶頂期にかなり思い切った行為ですよね。

 僕は安住することが好きじゃないから。僕がアメリカに行き始めたときは、周りはやっぱりうるさかったんですよ。「なんでアメリカ?」「そんなことするよりも」みたいな。でも純粋に自分が興味を持って選んだ道で。

ヒャダイン すごいんですもん、その前に行こうとするモチベーションが。

郷ひろみ

 もともと僕は歌が歌えていない、踊れていない、しゃべれていない、動けていないというところからスタートしているから、「なんだこの歌?」「なんだこの動き?」って自分で思うところを直していかない限りは、何年か先の自分は存在しないと思ったんです。まだまだ完成はしないけど、不完全なものをできるだけ完全に近付けたいという気持ちがモチベーションになっているんだと思います。

──ここまで変化し続けてきた「郷ひろみ」の完成形って、どんな姿なんでしょうね。

 僕がどこで幕を下ろすか……きっと郷ひろみの終わるときと、本名の原武裕美の終わりは別ものだと思うんですよ。郷ひろみがいつ幕を下ろすかはわからないけど、それまではノンストップなんでしょうね。

ヒャダイン ……ちょっと名言の連発でメモりきれないです(笑)。

99thシングル「99は終わらない」 / 2014年5月21日発売 / ソニーミュージックエンタテインメント
初回限定盤 [CD+DVD+ブックレット] 1650円 / SRCL-8537~8
通常盤 [CD] 1340円 / SRCL-8539
CD収録曲
  1. 99は終わらない
  2. 愛しい他人~パリの散歩道~ 2014ver.
  3. 99は終わらない ~Instrumental~
  4. 愛しい他人~パリの散歩道~ 2014ver. ~Instrumental~
初回限定盤DVD収録内容
  • 99は終わらない Music Video
  • 99は終わらない Making
郷ひろみ(ゴウヒロミ)

郷ひろみ

1955年10月18日生まれ、福岡県出身の歌手。1971年にジャニーズ事務所に所属し、フォーリーブスの弟分として注目を集める。1972年1月にはNHK大河ドラマ「新・平家物語」で俳優としてデビューし、同年8月にはシングル「男の子女の子」で歌手デビュー。西城秀樹、野口五郎とともに“新御三家”として人気を博した。その後も「よろしく哀愁」「林檎殺人事件」「How many いい顔」「お嫁サンバ」「2億4千万の瞳」などバラエティに富んだ楽曲でヒットを記録。1990年代には「僕がどんなに君を好きか、君は知らない」「言えないよ」「逢いたくてしかたない」とアダルトなバラードを3作連続でリリースし、ボーカリストとして新たな魅力を発揮した。1997年9月には東京・日本武道館にてデビュー25周年公演を実施。1999年9月発売の「GOLDFINGER '99」は郷のキャラクターと独創的な振り付けが話題を呼び大ヒットした。2002年1月には芸能活動を休止し、レッスンのため2005年までアメリカ・ニューヨークに拠点を置く。55歳の誕生日を迎えた2010年10月には2度目の日本武道館公演「55!伝説」を開催。2013年大晦日には「NHK紅白歌合戦」に通算26回目の出場を果たした。2014年5月には通算99枚目となるニューシングル「99(ナインティナイン)は終わらない」をリリース。

ヒャダイン / 前山田健一
(ヒャダイン / マエヤマダケンイチ)

ヒャダイン / 前山田健一

1980年7月4日生まれの音楽クリエイター。3歳でピアノを始め、作詞・作曲・編曲を独学で身につける。京都大学を卒業後、2007年に本格的な音楽活動を開始。前山田健一として、倖田來未×misono「It's all Love!」、東方神起「Share The World」などのヒット曲を手がける一方、ニコニコ動画などの動画投稿サイトに匿名の「ヒャダイン」名義で作品を発表し大きな話題を集めた。2010年5月には自身のブログにてヒャダイン=前山田健一であることを告白。その後もヒット曲を量産し、2011年4月にシングル「ヒャダインのカカカタ☆カタオモイ-C」でヒャダインとしてメジャーデビューを果たした。2012年11月には初のソロアルバム「20112012」を、2013年1月には6枚目となるソロシングル「23時40分 feat. Base Ball Bear」を発表。2014年2月にテレビアニメ「ガンダムビルドファイターズ」のエンディングテーマ「半パン魂」をシングルとしてリリースした。同年5月発売の郷ひろみの99thシングル「99(ナインティナイン)は終わらない」では作詞・作曲およびサウンドプロデュースを担当。