音楽ナタリー PowerPush - 花澤香菜

軽やかに進む挑戦の日々

花澤香菜の2015年第1弾シングル「君がいなくちゃだめなんだ」は、自身が主演を務める実写映画の主題歌として制作された。同タイトルの映画で花澤が演じるのは、幼い頃に父と生き別れた絵本作家。映画の世界観をもとに作り上げられたバラードが、物語をドラマチックに盛り上げる。

春には3rdアルバム「Blue Avenue」のリリース、そして初の東京・日本武道館公演を含む過去最大規模の全国ツアーを控える彼女。ナタリー5回目の登場となる今回のインタビューでは、映画の制作にまつわる裏話とレコーディング時のエピソード、そして武道館ライブへの心構えを聞いた。

取材・文 / 臼杵成晃 インタビュー撮影 / 尾形正茂

自分の殻を破くために

──STUDIO APARTMENTによるハウスチューン「ほほ笑みモード」(参照:花澤香菜「ほほ笑みモード」インタビュー)、やくしまるえつこさんとタッグを組んだ「こきゅうとす」(参照:花澤香菜「こきゅうとす」インタビュー)と振れ幅の大きなシングルが続いて、次はどんなアクションが……と思ったらまさかの実写映画の主演と。

うふふふ(笑)。びっくりしますよねえ。

──「次は映画かあ。……映画!?」みたいな。最近は「スッキリ!!」への出演も話題になりましたけど(参照:花澤香菜、やくしまる楽曲歌うライブ開催&明日「スッキリ!!」生出演)、活動の幅が大きく広がっていますよね。

そうですね。映画の撮影で5日間、濃い時間を過ごして「終わったー」と思った直後に「スッキリ!!」で(笑)。すごかったんです12月。とにかく。映画を撮るって聞いたとき、最初は「何を言ってるんだろう」と思ったんですけど、そのときにはすでに台本が用意されていたんです。「これをやります」って台本をドン!と渡されて。

──花澤さんは声優としてさまざまな役を演じているし、実写映画の出演経験もありますけど、主演としてじっくり演技をするのは初めてですよね。シングルと連動した内容とはいえ、簡単にはOKできないですよね?

台本書く前にまずは相談してよ!って(笑)。でもこんなこと、やりたくてもなかなかできることではないし、映画も出させていただいてはいましたけど、ホントちょこちょこっとだけだったので。新しいことに挑戦すれば自分の殻も破れるし、何かいい変化があるんじゃないかなと思って前向きにやらせていただきます!とお返事しました。

──「自分の殻を破くために」と思いっきり踏み込んでいく勇気って、数年の音楽活動で得たところがやはり大きいのかなと思うのですが。

それはあると思います。声優の活動だけしていていきなりこれだったら絶対にいじいじしてたと思うんですけど、音楽の活動を通じて「いろいろやってみよう、チャレンジしてみよう」という気持ちが強くなっているので。

花澤香菜主演映画「君がいなくちゃだめなんだ」のワンシーン。 (c)君がいなくちゃだめなんだプロジェクト

スタッフ 映画の撮影にはビデオクリップの撮影スタッフも多く関わっているんです。これまでの作品の制作過程で「ストーリーのあるフィルムを作りたい」という思いが少しずつ膨らんでいて、ここでようやく実現したというか。倉田(健次)さんがいいシナリオを上げてくれたので、その世界観をもとに岩里(祐穂)さんと北川(勝利 / ROUND TABLE)さんに曲を作っていただいて。北川さんには映画の劇伴もお願いしました。

監督とカメラマンさんがいつもご一緒している方だという安心感はありましたね。でもプロの俳優さんや映画のスタッフの中に入っていくだけでも結構なプレッシャーでした。とはいえ撮影に入ってしまえばもうあとには引けないので、普段使わないエネルギーをいっぱい使いました(笑)。

夢見ちゃってます

──「君がいなくちゃだめなんだ」は、花澤さんの音楽プロジェクトを立ち上げから支えている北川さんと、近作で多くの歌詞を手がける岩里さんによる楽曲ですが、これまでになくスケールの大きなバラードになりましたね。

シングルでバラードを歌うのは初めてだし、演技を終えた上でレコーディングに挑んだので、いろんな感情をどう表現すべきなのか悩みながらのレコーディングでした。

──すごく感情を揺さぶるバラードですし、タイトルも非常に強いフレーズで。

でもこのタイトルが映画にぴったりで。「君」はどの登場人物にも当てはまるので、いろんな視点で受け止めることができるんです。だからきっと、映画とは離れたところでも、それぞれの「君」を思い浮かべながら聴いてもらえるんじゃないかなって。もっと悲しく歌おうと思えば歌える曲だと思うんですけど、最後にはちゃんと希望が見えるような歌にしたかったので、レコーディングではそこを意識して歌いました。今回は北川さんから「ここをこうしよう」ってアドバイスをもらうんじゃなく、「とりあえずやってみよっか」という感じで私に任せてくれたので、1回歌ってみたあとで少しずつ気になったところを変えながら、最終的に「これだ!」というところで終わることができました。

花澤香菜

──歌と言葉による描写をドラマチックに増幅させる、ストリングスのアレンジも印象的でした。

実は今回、ストリングスのレコーディングに立ち会うことができたんです。歌録りが終わったあと、北川さんにレコーディングがあると教えてもらって、行ってきたんですよ。……素晴らしかったです! これをライブで歌ったらめちゃめちゃアガるだろうなあって。

──すでにステージで歌う自分を想像していると。

そうですね。夢見ちゃってます(笑)。

ニューシングル「君がいなくちゃだめなんだ」 / 2015年2月25日発売 / アニプレックス
初回限定盤 [CD+DVD] / 1728円 / SVWC-70053
通常盤 [CD] / 1296円 / SVWC-70055
CD収録曲
  1. 君がいなくちゃだめなんだ
  2. Blessing Bell
  3. 運命の女神
  4. 君がいなくちゃだめなんだ(Instrumental)
初回限定盤DVD収録内容
  • 君がいなくちゃだめなんだ (Music clip)
ライブ情報
かなまつり
2015年3月1日(日)東京都 JZ Brat Sound of Tokyo
[昼の部] OPEN 15:30 / START 16:00(予定)
[夜の部] OPEN 18:30 / START 19:00(予定)
花澤香菜(ハナザワカナ)

花澤香菜

1989年2月25日生まれ、東京都出身の声優。2006年放送の「ゼーガペイン」で初のヒロインとなるカミナギ・リョーコ役を演じ、2007年には「月面兎兵器ミーナ」「スケッチブック ~full color's~」「ぽてまよ」といった作品で次々と主要キャラクター役に抜擢された。その後も「こばと。」「化物語」「海月姫」などの人気アニメでヒロインを演じるかたわら、多数の作品でキャラクターソングを歌い、2011年放送の「ロウきゅーぶ!」では声優ユニット「RO-KYU-BU!」のメンバーとしても活躍。2012年4月にはシングル「星空☆ディスティネーション」でソロデビューを果たした。2013年2月には1stフルアルバム「claire」を発表し、同年3月には大阪・NHK大阪ホール、東京・渋谷公会堂にて初のワンマンライブを行い、いずれも大成功に収めた。同年12月に発売された5thシングル「恋する惑星」に続き、2014年2月には25曲入りの2枚組アルバム「25」を発表。4月からは4都市を回る初の全国ツアー「花澤香菜 live 2014 "25"」を行った。同年10月にはSTUDIO APARTMENTをサウンドプロデューサーに迎えた「ほほ笑みモード」、12月にはやくしまるえつことタッグを組んだトータルプロデュースの「こきゅうとす」と立て続けにシングルを発表し、2015年2月には通算8枚目のシングル「君がいなくちゃだめなんだ」をリリース。同曲は花澤自身が主演を務める実写映画「君がいなくちゃだめなんだ」の主題歌で、映画は3月下旬28日から東京・テアトル新宿にて先行上映が始まり、全国仙台、名古屋、大阪、博多でも順次公開される。