音楽ナタリー PowerPush - 花澤香菜
初体験クラブサウンドで3rdシーズンの幕開け
初のアルバム「claire」でめくるめくポップな世界観を提示した1stシーズン、全25曲の書き下ろしナンバーを収めた2枚組アルバム「25」で新たな可能性を探った2ndシーズンを経て、花澤香菜音楽プロジェクトの3rdシーズンが幕を開けた。通算6枚目のシングルとなる新作「ほほ笑みモード」は全曲STUDIO APARTMENTとのタッグで制作され、花澤は本格的なクラブ系ハウスミュージックに初挑戦している。
ナタリーの過去2回のインタビューでは、楽曲制作からライブステージまで彼女をサポートする北川勝利(ROUND TABLE)に同席してもらったが、今回は花澤1人に楽曲制作の裏側や現在の心境などをじっくりと語ってもらった。
取材・文 / 臼杵成晃
クラブ未経験者が歌うクラブミュージック
──2ndアルバム「25」のリリースと4都市ツアーを経ての“3rdシーズン”の第一歩ということで、新しいチャレンジが見られるのかなという期待はあったのですが……全編クラブミュージック、ハウスミュージックになるというのは予想外でした。花澤さんはおそらくこれまでクラブミュージックとは無縁でしたよね。
はい。私、クラブにも行ったことないし……。でも最近クラブDJの方が「恋愛サーキュレーション」(アニメ「化物語」で花澤が声を務める千石撫子のキャラクターソング)をかけてくださっているという話も聞いていて、私が想像していたよりもいろんなジャンルの音楽がかかってるんだなあって。
──クラブに対して漠然としたイメージしかなかった。
そうなんですよ。だからクラブミュージックと言われても具体的に想像できなくて。クラブと言ってイメージするのは……なんとなくアゲアゲな……。
──きっと「アゲアゲ」という単語とは縁遠い人生を送ってきましたよね。
そうですね(笑)。「25」でご一緒した岩里祐穂さんと「次のシングルでも新しい挑戦ができたらね」ってお話して、できたらまた自分でも歌詞を書いてみようと思ってたんですけど、最初にカップリングの「MOMENT」のデモを渡されて「とりあえず歌詞を書いてみな」って言われて、あまりにも耳なじみのないこの音楽にどういう言葉を乗せたらいいのか、本当にわからなくなっちゃって。結局作詞は全部岩里さんにお任せしました。
──サウンドから感じたものをまずイメージしてみる、という作業だったんですね。そうすると、これまでのようなカラフルな色彩の楽曲に比べると、今作のようなサウンドだとおのずとイメージは抽象的になるかもしれない。
岩里さんが書いてくださった歌詞は、抽象的な言葉の羅列の中にすごくいろんな意味が込められていながら、サウンドにもぴったり合っていて、これはまだとても私には書けないと思いました(笑)。「MOMENT」は私が歌詞を書こうとしていた段階で、先にテーマだけ決めていたんです。「終わらせたくない瞬間」がキーワードになっていて……例えばお仕事で充実した時間を過ごしているときに、ふと「あー、この時間がいつまでも続けばいいのに」って感じる瞬間が訪れるんですね。そのお話とキーワードを岩里さんに伝えて歌詞にしてもらいました。
──表題曲の「ほほ笑みモード」はサウンドはクールだし“孤独な夜”を歌っているけど、歌詞の全体像はどこか温かみがありますよね。
岩里さんと「ほほ笑みと言えば?」「笑いってなんだろう?」というお話をしたら、こんな優しい歌詞を作ってくださいました。この曲が一番前向きで明るい気持ちになれる曲になりましたね。
「花澤香菜」のイメージ
──ビジュアルのイメージも、これまでとは大きく変わりましたよね。森で暮らしていた子が急に都会に出てきたようなインパクトで。
ちょっとはじけちゃいましたね。うふふふふ(笑)。今までよりちょっと大人な、スタイリッシュなイメージで。「25」では等身大の自分を出しましたけど、今回は同じ等身大でも「こういう一面も持ってるかもね」みたいな。カラコンとかしちゃいましたし(笑)。
──これまでと違う表情を作るのってどんな気持ちでした?
楽しかったですよ。やっぱり女の子には変身願望がありますから。
──なるほど。変身するキャラクターの設定はあったんですか?
具体的には決めてないですけど……あくまで自分ですね。自分の中に隠れていた部分を引き出すみたいな。1人でやるのはなかなか勇気がいるけど、メイクさんやスタイリストさんと一緒に「今までと違う感じも楽しいね」って話しながら、みんなで楽しくやってました。
──今作のサウンドやビジュアルに「意外だな」と感じたということは、「意外じゃない花澤香菜」ってどういうイメージなんだろうと思ったんですよ。声優としての声の印象や、これまでの音楽作品のビジュアルから「花澤香菜=大人しく可憐で清楚」というイメージが強いと思うんですけど、本人としては違う?
全然違いますねー。大人しいと言われるのは、いろいろ発言はしたいけど「今じゃないかな」とか「これを言うとこの人はこう思ってしまうかも」とか考えすぎちゃって発言できないだけなんです。ここぞというときにしゃべれたらいいかなって。
──ラジオでは好きなものに対してものすごく高まってハイテンションでお話されてますけど、あの姿が自分の素に近い?
……そうですね(笑)。
──ちなみに花澤さんは自分のイメージというものを、自分自身でどうとらえていますか? 今現在の花澤香菜を自己分析すると。
あー、どうなんでしょう。この前、RO-KYU-BU!のメンバーみんなで集まってRO-KYU-BU!のライブBlu-rayを観る会というのを開いたんですけど、客観的に自分を見て「あーなんかヘンな奴だな」って思ったんですよ(笑)。
──え、どんなふうにヘンだと思ったんですか?
こんなにモタモタしゃべってんだーとか、小倉唯ちゃんとしゃべってるときのちょっとニヤニヤした感じとか……ふとした瞬間に映しちゃいけない顔をしてる(笑)。
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- ニューアルバム「ほほ笑みモード」 / 2014年10月1日発売 / アニプレックス
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 1728円 / SVWC-70021~2
- 通常盤 [CD] / 1296円 / SVWC-70023
CD収録曲
- ほほ笑みモード
- Timeless
- MOMENT
- ほほ笑みモード(instrumental)
初回限定盤DVD収録内容
- ほほ笑みモード(Music clip)
- ライブBlu-ray「CHALEUR -Film Documentaire de “25”-」 / 2014年8月27日発売 / アニプレックス / [Blu-ray Disc+フォトブック] 7560円 / ANSX-10002
- ライブBlu-ray「CHALEUR -Film Documentaire de “25”-」
収録内容
- バースデイ
- 25 Hours a Day
- 恋する惑星
- Brand New Days
- マラソン
- YESTERDAY BOYFRIEND
- Summer Sunset
- 片思いが世界を救う
- 無邪気なキミと真夏のメロディ
- パパ、アイ・ラブ・ユー!!
- pot-pourri(flattery?~Waltz for Praha~ダエンケイ~真夜中の秘密会議~同心円上のディスタンス~Merry Go Round)
- Young Oh! Oh!
- Make a Difference
- Eeny, meeny, miny, moe
- Spanish Apartment
- Last Contrast
- Good Conversation
- EN1. 星空☆ディスティネーション
- EN2. Saterday Night Musical♪
- EN3. あるいていこう
[大阪公演アンコール](特典映像)
- 星空☆ディスティネーション
- CALL ME EVERYDAY
花澤香菜(ハナザワカナ)
1989年2月25日生まれ、東京都出身の声優。2006年放送の「ゼーガペイン」で初のヒロインとなるカミナギ・リョーコ役を演じ、2007年には「月面兎兵器ミーナ」「スケッチブック ~full color's~」「ぽてまよ」といった作品で次々と主要キャラクター役に抜擢された。その後も「こばと。」「化物語」「海月姫」などの人気アニメでヒロインを演じるかたわら、多数の作品でキャラクターソングを歌い、2011年放送の「ロウきゅーぶ!」では声優ユニット「RO-KYU-BU!」のメンバーとしても活躍。2012年4月にはシングル「星空☆ディスティネーション」でソロデビューを果たした。2013年2月20日には1stフルアルバム「claire」を発表し、同年3月には大阪・NHK大阪ホール、東京・渋谷公会堂にて初のワンマンライブを行い、いずれも大成功に収めた。同年12月に発売された5thシングル「恋する惑星」に続き、2014年2月には25曲入りの2枚組アルバム「25」を発表。4月からは4都市を回る初の全国ツアー「花澤香菜 live 2014 "25"」を行い成功に収めた。10月にはSTUDIO APARTMENTをサウンドプロデューサーに迎えた通算6枚目のシングル「ほほ笑みモード」をリリース。