音楽ナタリー PowerPush - ヒャダイン(前山田健一)×末光篤

2人のポップ職人が教える「繰繰れ!コックリさん」の彩り方

現在放送中のテレビアニメ「繰繰れ!コックリさん」に末光篤が参加。このアニメのエンディングテーマにウェルメイドでジェントルなピアノポップ「This Merry-Go Round Song」を提供している。そしてこのたび、その楽曲が収録された末光の新作「TVアニメーション『繰繰れ!コックリさん』エンディングテーマ e.p.」がリリースされた。

今回ナタリーではこれを記念して、小野大輔、櫻井孝宏、中田譲治という3人の声優が「コックリさん」での担当キャラクター名義で歌うオープニングテーマ「Welcome!! DISCO けもけもけ」のプロデューサーであるヒャダインと、末光の対談を企画。現在引く手あまたの名うてクリエーター2人はいかにして「コックリさん」ソングを作り上げたのか。話を聞いた。

取材・文 / 成松哲 撮影 / 小坂茂雄

 
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倖田來未×misonoの衝撃

──お2人って面識は……。

ヒャダイン 今日が初対面ですね。

左からヒャダイン、末光篤。

末光篤 ただもちろん作品は存じ上げてるし、特に僕、前山田さんが書いて倖田來未さんとmisonoさんの姉妹が歌っていた……。

ヒャダイン 「It's all Love!」。

末光 あの曲を聴いたとき、ビックリしたんですよ。「これどうやって作ったんだろう?」って。だから今日、あの曲の作り方を聞きたかったんです。あれ、すごく大変じゃなかったですか?

ヒャダイン いや、僕、あれが通常運転なんですよ(笑)。「倖田さんとmisonoさんのデュエット曲を」っていうお話をいただいて、じゃあ2人に何をさせたいか?って考えたとき、矢継ぎ早にお互いが言葉を繰り出す姉妹ゲンカっていうアイデアが思い浮かんだんです。「あんたなんかブスよ!」「あんたのほうがブスよ!」って(笑)。

末光 まさにそういう曲ですよね(笑)。

ヒャダイン その後、倖田さんたちと細かくキャッチボールを繰り返したから、リリースされているあの形になるまでにはけっこうかかったんですけど、その第1稿自体は、お話をいただいて1日くらいで作ってました。

末光 すごい……。

ヒャダイン いやいやいや。「すごい」と思っているのは、僕も同じですから。末光さんの曲って展開が多いじゃないですか。例えば今回の「This Merry-Go Round Song」ならテレビバージョンの89秒のうちだけでも5回くらい曲が展開してますよね。

末光 そうですね。ゆったりした曲なのでたるまないように。パッパッと場面を変えていこうと思ってはいました。

前山田健一、末光篤のパクリに失敗する

ヒャダイン あと末光さんは転調も特徴的で。僕も書く曲は展開が多いし、よく転調させてもいるんですけど、けっこう意識的なんですね。「はい! ここで転調させます」という感じ。曲をドラマチックにするために、あえて転調させている面があるんです。でも末光さんの転調にはすごく必然性があって。末光さんの曲って普通に聴いているとスムーズにメロディが流れていくんです。「そりゃ、こういうメロディラインなら、次はこうくるでしょ」って感じですごく気持ちがいい。でも改めて細かく聴き直してみると「あれっ、ここ転調してた!」って気付かされて。「たぶんこれ、スコアに起こすとスゲー難解な展開になるよな」「途中から五線譜にスゲー♭が増えるはずだよな」って。

末光 確かに。考えて考えて転調させているわけじゃなくて、ピアノを弾きながらメロディとコード進行を考えてたら、結果的に転調していたって感じですね。

ヒャダイン

ヒャダイン そのスムーズで美しいんだけど、実は難解でテクニカルな感じがすごく素敵だから「どうにかパクれなかいかな」ってがんばった時期があって。

末光 ははははは(笑)。ありがとうございます。

──首尾はいかがでした?(笑)

ヒャダイン パクれませんでした……。やっぱり付け焼き刃ではうまくいくわけないなって気付かされたんですけど、だからこそ憧れるんですよ。「This Merry-Go Round Song」もエンディングテーマとしてすごく素敵だと思いますし。

──「エンディングテーマとして素敵」?

ヒャダイン 僕の書いたオープニング曲はワチャワチャしてるし、「繰繰れ!コックリさん」自体もワチャワチャしたギャグアニメですよね。この上エンディングまでワチャワチャしてたらきっとしんどかったはずなんですよ。

末光 だと思います(笑)。

ヒャダイン だからワチャワチャ楽しいアニメの終わりに優しいピアノバラード、しかも上質で高度な曲があることってすごくいいことだと思うんです。アニメのエンディングテーマを評する言葉に「浄化エンディング」なんてフレーズがありますけど、本当に浄化されますから。ネット局の中でも一番早くアニメを流すテレビ東京の放送時間は日曜日の深夜なので、このアニメを観終えて布団に入る人、つまり週末最後に聴く曲がこの曲になる人も多いと思うんです。そういう人ってきっとこの曲を聴いたあと「アニメ楽しかったな」ってすやすや眠って、爽快な朝を迎えられる。気持ちを新たに1週間を始められる気がするんですよ。そういう温かさのある曲だと思ってます。

末光篤(スエミツアツシ)

末光篤

1971年広島県生まれ。名古屋音楽大学卒業後となる2004年、ディズニー関連楽曲のカバー盤「Mosh Pit on Disney」に参加したことが話題となり、翌年、Rhythm REPUBLICレーベルより1stアルバム「Man Here Plays Mean Piano」をリリースする。2006年にはシングル「Sherbet Snow and the Airplane」でメジャーデビュー。2007年にはアニメ「のだめカンタービレ」のオープニングテーマ「Allegro Cantabile Cantabile」と同エンディングテーマ「Sagittarius」をシングルリリースし、またメジャー1stアルバム「The Piano It's Me」も発表する。以降、自身の楽曲をリリースする傍ら、木村カエラ「Butterfly」や、野宮真貴「私の知らない私」、坂本真綾「eternal return」など、数多くのアーティストへの楽曲提供も積極的に行っている。そして2014年11月にはテレビアニメ「繰繰れ!コックリさん」のエンディングテーマ「This Merry-Go Round Song」を含む新作「TVアニメーション『繰繰れ!コックリさん』エンディングテーマ e.p.」をリリースした。

ヒャダイン

ヒャダイン

本名、前山田健一。1980年生まれの音楽クリエイター。3歳でピアノを始め、作詞・作曲・編曲を独学で身につける。京都大学卒業後、2007年に本格的な音楽活動を開始。前山田健一として倖田來未×misono「It's all Love!」、東方神起「Share The World」などのヒット曲を手がける一方、ニコニコ動画などの動画投稿サイトに匿名の「ヒャダイン」名義で作品を発表し大きな話題を集めた。2010年5月には自身のブログにてヒャダイン=前山田健一であることを告白。その後もヒット曲を量産し、2011年4月にシングル「ヒャダインのカカカタ☆カタオモイ-C」でヒャダインとしてメジャーデビューを果たし、2012年11月には初のソロアルバム「20112012」をリリース。2014年は郷ひろみの99thシングル「99(ナインティナイン)は終わらない」での作詞・作曲およびサウンドプロデュースや、椎名林檎のセルフカバーアルバム「逆輸入 ~港湾局~」にて「プライベイト」のアレンジを担当をするなど、幅広いアーティストからの支持を獲得する。秋には小野大輔、櫻井孝宏、中田譲治が歌うアニメ「繰繰れ!コックリさん」のオープニングテーマ「Welcome!! DISCO けもけもけ」をプロデュースし、そのシングルが11月にリリースされる。