ナタリー PowerPush - GRAPEVINE

自然なダイナミズムが生んだディープなロックアルバム

昔を思い返すことがだんだん増えてるような気がする

──「真昼の子供たち」における、「少年時代の視点で現在の自分を見る」という歌詞も印象的でした。これはどんなテーマで書いたんですか?

田中 まず、すごく構成がシンプルなんですよね。Aメロがあって、あとはサビ、間奏、サビっていう。Aメロは1回だけしか出てこないから、その作りは利用したいと思って。だから、Aメロが「少年時代」あるいは「若い頃」なんですよね。で、サビは現在の感じというか。なんて言うか、昔を思い返すことがだんだん増えてるような気がするんですよ。自分に子供ができたっていうのも関係してるかもしれないですけど、少年時代に対峙させられることも結構あって。

──若い頃に思い描いていた自分になれてるか、とか?

田中 うん、そういうのもありますね。

西川 基本、なってないと思いますけどね(笑)。若い頃って、変に理想が高いから。まあこうやって音楽を続けてるっていうことでは、10代の頃と変わらないというか、非常に恵まれてると思いますけどね。

──年々キャリアも積み重なっていくわけだし。

西川 そうですね。考えてみると、もう人生の半分以上、ずっとギターを弾いてることになるので。

──そろそろ「GRAPEVINEが人生の半分以上」ということになりますね。

田中 あ、ホンマですねえ。

西川 初めて田中くんと会ったとき、まだ10代でしたから。

田中 20歳になってなかったんですよね。

西川 家族より長い時間、いっしょにいるっていう。

亀井 バンドをやってる若い人に「高校のときにGRAPEVINEを聴いてました」と言われることも増えてるし。

田中 そうやな。高校のときに聴いてた人たちが、普通にデビューしてますからね。そういうときは「結構長いことやってるんやな」って。全然関係ないですけど、最近ようやく、高校野球やってる人たちを見ても「大人っぽい」って感じなくなって。

西川亀井 ハハハハハ!(笑)

田中 プロ野球の選手はいまだに「大人」って感じですけどね。たぶん、ほとんどの選手が年下なんでしょうけど。

明確なビジョンを持ってないのもいいのかな

──結成から17年以上経っても、こんなにみずみずしく音楽をやれてるバンドも稀ですよね。しかも、音楽の幅は今も広がり続けてるし。

西川 それは僕らだけの力ではないですけどね。プロデューサーやったり、サポートのミュージシャンやったり、いろんな人たちからアイデアをもらってるので。チームでやってる感じですよね、言ってみれば。いろんなことを教えてもらっていく中で、幅も広がってきたというか。逆にこっちから「こういうことをやってみたい」って言ったときも、それをちゃんと具現化してくれるし。みんながそれぞれ「次はどうするか?」って考えてるんですよね。

田中 より柔軟になってきてると思うし、おかげさまで飽きずにやれてます。なんかね、「もともと何も持ってなかったんじゃないか」って思うこともあるんですよ(笑)。あとは、明確なビジョンを持ってないのもいいのかな、と。今回のアルバムもそうですけど、「こういうものを作りたい」っていうのがぜんぜんなくて。だから、わりと自由にできてるのかもしれないですね。

亀井 もし同じようなことをやったとしても、解釈とか表現の方法が少しずつ変わっていくので、以前とは違う感覚でやれるんです。そういう意味では、これからも広がっていくんだろうなって思いますけどね。

ある時期からさらに楽しくなってきた

──「おそれ」という曲に「何もかもがふと わからなくなっても」っていうフレーズがありますが、バンドをやっていて「わからなくなる」瞬間ってありますか?

田中 ありますよ、それは。まあ1日寝かせたら解決したりするんだけど(笑)。

西川 演奏してるときも「何をやってんだろう?」ってわからなくなることもあるし。

亀井 うん、それはしょっちゅうある(笑)。

──そこから新しいものが生まれることも?

西川 両方ですよね。「なんだこれは!?」っていい方向に思うこともあるし、そうじゃないこともあるし(笑)。

田中 アレンジの作業をやっていて、判断基準を失うことがあるんですよね。どこで良し悪しを決めればいいかわからないっていう。特にプリプロをやってるときって、本当にいろんなことを試すんですよ。そのテイクを全部録っていって、最終的には「これだけ残して、あとは全部消そう」ってことになったり。面白いんですけどね、それも。

──GRAPEVINEはそうやって続いていくんでしょうね、きっと。今回のアルバムからも「先に続いていく」という手触りがすごく感じられるし。

田中 うん、そういうイメージは確かにありました。何かきっかけがあったわけじゃないんですけど、ここ数年、そういう感じが続いてるというか。

──バンドに対する確信が強まった?

田中 それもあるでしょうし、なんて言うか、ある時期からさらに楽しくなってきたんですよね。その前が楽しくなかったってことじゃないんですけど、今思うと変化があったのかもしれないですね。

──なるほど。もう次の展開も考えてたりしますか?

田中 いや、全然(笑)。また早めにプリプロをやりたいなとは思ってますけど、まずはツアーですよね。

亀井 うん。

田中 ライブでこのアルバムの解釈を深めていかなくちゃいけないので。それによって、次のことも自然と見えてくると思いますね。

コメントカード企画「真昼の特選街」

ニューアルバム「真昼のストレンジランド」の発売を記念して、コメントカード企画「真昼の特選街」がスタート。アルバム購入者からコメントカードの募集を実施している。

コメントカードは下記の専用応募フォームほか、郵送、Twitterなどさまざまな方法で募集中。応募コメントはGRAPEVINEのメンバーが直々にすべてチェックし、メンバーお気に入りのコメントカードを作ってくれた人にはメンバーから感謝のお返しがあるとのこと。

ニューアルバム「真昼のストレンジランド」 / 2011年1月19日発売 / 3150円(税込) / PONY CANYON / PCCA-03330

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CD収録曲
  1. Silverado
  2. This town
  3. ミランダ(Miranda warning)
  4. Neo Burlesque
  5. おそれ
  6. Sanctuary
  7. Dry November
  8. 真昼の子供たち
  9. 411
  10. 夏の逆襲(morning light)
  11. ピカロ
  12. 風の歌
DVD収録内容
  • 真昼のストレンジランド (ドキュメント)
GRAPEVINE(ぐれいぷばいん)

田中和将(Vo, G)、西川弘剛(G)、亀井亨(Dr)の3人からなるロックバンド。1993年に元メンバーの西原誠(B)らを含めた4人で結成された。1997年にミニアルバム「覚醒」でデビューし、1999年リリースの3rdシングル「スロウ」がスマッシュヒットを記録。骨太なロックサウンドと文学的な歌詞で、多くのファンを獲得している。2002年に腱鞘炎のために西原が脱退。以降は3人にサポートメンバーを加えた編成で活動を続けている。また、2010年にはギタリスト/プロデューサーの長田進と「長田進 with GRAPEVINE」名義でアルバム「MALPASO」を発表し、話題を集めた。