音楽ナタリー PowerPush - グッドモーニングアメリカ

フロントマンとしての挑戦、覚悟

バンドの今後にとって重要な存在になるであろう「攻めの傑作」。グッドモーニングアメリカの2ndフルアルバム「inトーキョーシティ」はそんな作品だ。歌には金廣真悟(Vo, G)の個がより際立ち、サウンド面では果敢にさまざまな挑戦をしている。全曲のソングライティングを担うフロントマンの金廣に「バンドと個」にフォーカスした話を語ってもらった。

取材・文 / 三宅正一(ONBU) 撮影 / 佐藤類

2カ月経っても聴けちゃう

金廣真悟

──とてもいいアルバムができましたね。

おっ、ありがとうございます。

──正直、シングル曲よりアルバム曲のほうが何倍、何十倍もいいなと思って。

あははははは(笑)。なるほど。

──金廣くんのソングライターとしての核が剥き出しになっていると思うし、サウンド面ではバンドのパブリックイメージができあがりつつある中で、そのさらに先を聴かせるという意志をいたるところに感じさせる。攻めの2ndアルバムだと思います。

確かに攻めてますよね。自分でもすごくいいアルバムができたと思います。ほかのインタビューでもよく言ってるんですけど、レコーディングが終わって2カ月経ったのに今でも聴けちゃうんですよね。今までだったらだいたい1週間、2週間しか集中して聴かないんですけど。自分が好きな曲だけ聴いたりライブ練習のために聴いたりするくらいで。だから、いい作品ができたんだなって実感してますね。

──自分でもずっと聴ける要因はどこにあると思いますか?

1つは歌だと思います。歌がうまくなったと思うんですよね。だから危なげなく聴けるというか。

──それはボイトレの成果とかではなく?

違いますね。ボイトレにはなかなか行けなくて。ライブで鍛えられたと思うんですよね。

──歌という意味では、僕はこのアルバムでやっとしっかり金廣くんの本音を聴けたような気がしていて。今までは多くのリスナーに届けるために、長いこと日の目を見なかったバンドを輝かせるために歌を書いてたような印象があったんですよね。

ああ、なるほど。

──自分の個を差し置いても器用にいい曲を書けるソングライターだから、そのプライドもあると思うし。

そうか。でも、僕自身は歌に関してはそこまで変わった気はしていなくて。

金廣真悟

──そうなんだ。1曲目のアルバムタイトル曲「inトーキョーシティ」からそう感じたけど。

いろんなバランスを考えながら1曲1曲できていったんですけど……「inトーキョーシティ」は推し曲になることが決まる前はけっこう難解なことをやったりしてたんですね。

──それはサウンド面で?

サウンド面で。でも、推し曲にすることが決まって、ハンドクラップを入れたりリズムを変えたり。

──シェイクリズムですよね。「イチ、ニッ、サンでジャンプ」から地続きにある。

そう。ちょっとわかりやすくしようと思って。そのほうが歌も強くなると思ったし。

「自分の立ち位置ってなんだろう?」

──この曲は鍵盤をはじめいろんな音がうしろで鳴ってますよね。

そう、相当いろんな音が入ってますね。そういう意味ではすごく遊んでるんですよね。「これをやったら面白いんじゃないか?」という発想に基づいていろいろ挑戦してる。もうちょっとデジタルな感じにしてもよかったかなとも思うんですけど、今はこれくらいのバランスがいいかなって。歌に関してはどうなんだろうな……あ、歌詞の書き方は(寺岡)呼人さんと出会ってから変化がありましたね。まず日常にある小さなテーマを見つけて、僕個人の視点を出発点に最終的には絶対的な真理を歌っていくっていう。そのギャップの幅は以前に比べると大きくなりましたね。そういう面で自分というものがより濃く出てるのかもしれない。

──なるほど。

こういう書き方のほうが面白いなと思って。今まではある程度バーッと書いて、そこから歌が成立するように削ぎ落したり言葉を入れ替えたりする作業をしてたんです。でも、このアルバムからまずテーマがあって、そこからどんどん肉付けしていく――要するに足し算の作業をしていった。それがすごく楽しくて。今までは「ああ、歌詞書かなきゃ……」ってちょっと憂鬱な感じもあったんですけど、今は「よっしゃ、歌詞書くぞ!」って気持ちになってるので。

──大きな変化じゃないですか。

うん、そこはすごく大きな変化ですね。あと、僕のエゴという意味では1つ思うことがあって。前身バンドの時代も含めた長い歴史の中で、僕のエゴばっかりな時期があったんですよ。それがグッドモーニングアメリカになってからちょっと変わったんですけど。それまではホントに「俺が絶対」という感じだったので。

金廣真悟

──ソングライティングに対する自信をすごく持ってるしね。

ありますね。自分が書く曲に対する自信はあるのにバンドの状況はなかなか好転しなくて、その時期が長かったので。どうしようかって考えたときにライブでたなしん(B, Cho)をフィーチャーするようにして、自分をちょっと抑えるようになっていったんですね。それでうまく回ってきたんで。でも、最近になって「自分の立ち位置ってなんだろう? ただのボーカリストなのか? フロントマンなのか? バンドそのものを体現すべきなのか?」っていろいろ考えるようになったんですよ。バンドにはいろんなタイプのボーカリストがいると思うんですけど、僕が曲を書いてるわけだから僕がバンドの主体であることは間違いないじゃないですか。でも、たなしんみたいにしゃべりはうまくないし、華もそんなにないので。

──そんなことないと思う。だから、僕はライブでも金廣くんがもっと前に出るべきだと思ってますけどね。

今は自分の立ち位置についてすごく考えてます。変わらなきゃと思っている最中だし。個人というものをもうちょっと出していこうかなって。

──それはいつ頃から考えてることなんですか?

今年の頭くらいですね。

──もちろん、バンドがここまで来るまでに、たなしんのインパクトの大きいキャラクター性は重要な要素だったと思うんだけど、それ以上に曲がバンドの中心になるべきだと思うんですよね。そう考えると、金廣くんの個がもっと前に出るべきだなって。

うん、そういう考え方も今はすごく理解できるから。僕は音楽をやってるときが一番楽しいから、自然体でいるのが一番だとは思うんですよね。でも、それだけで戦っていくのは難しいから、たなしんに前に出てもらってるんですけど……。今、こうやっていろいろ考えている時期を経て、最終的には必ずポジティブな選択をすると思うし、自分だけで決めることでもないと思うから。だから、これからどういうふうにでもなれるなとも思ってるんですよね。ただ、曲自体はそういうことを考えながら作ったわけではなくて。潜在的な意識が働いてる部分もあるかもしれないけど。

ニューアルバム「inトーキョーシティ」2014年10月22日発売 / 日本コロムビア
初回限定盤 [CD+DVD] 3292円 / COZP-972~3
通常盤 [CD] 2880円 / COCP-38777
CD収録曲
  1. inトーキョーシティ
  2. アブラカタブラ
  3. 何とかなるでしょう
  4. STOP THE TIME
  5. 拝啓、ツラツストラ
  6. コールアップ
  7. 夕暮れ
  8. ワンダーフルワールド
  9. 2014年6月25日我思ふ
  10. STAY WITH ME
  11. イチ、ニッ、サンでジャンプ
  12. スクランブル交差点
初回限定盤DVD収録内容

「7つの秘法を探す冒険2014」ワンマンツアー@大阪・なんばHatch

  1. イチ、ニッ、サンでジャンプ
  2. アブラカタブラ
  3. キャッチアンドリリース
  4. その手伸ばして
  5. 未来へのスパイラル
  6. 拝啓、ツラツストラ
inトーキョーシティツアー 2014-2015
  • 2014年12月8日(月)千葉県 千葉LOOK
  • 2014年12月10日(水)茨城県 mito LIGHT HOUSE
  • 2014年12月11日(木)栃木県 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
  • 2014年12月13日(土)長野県 LIVE HOUSE J
  • 2014年12月14日(日)石川県 vanvan V4
  • 2014年12月16日(火)兵庫県 神戸VARIT.
  • 2014年12月17日(水)京都府 KYOTO MUSE
  • 2014年12月19日(金)静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠
  • 2015年1月9日(金)福島県 郡山HIP SHOT JAPAN
  • 2015年1月11日(日)秋田県 Club SWINDLE
  • 2015年1月12日(月・祝)岩手県 Club Change WAVE
  • 2015年1月16日(金)鹿児島県 SR HALL
  • 2015年1月17日(土)熊本県 熊本B.9
  • 2015年1月18日(日)長崎県 DRUM Be-7
  • 2015年1月20日(火)山口県 LIVE rise SHUNAN
  • 2015年1月22日(木)岡山県 IMAGE
  • 2015年1月24日(土)愛媛県 松山SALONKITTY
  • 2015年1月25日(日)高知県 X-pt.
  • 2015年1月27日(火)鳥取県 米子 AZTiC laughs
<ワンマン>
  • 2015年2月1日(日)北海道 札幌PENNY LANE24
  • 2015年2月7日(土)宮城県 Rensa
  • 2015年2月14日(土)新潟県 新潟LOTS
  • 2015年2月21日(土)香川県 高松MONSTER
  • 2015年2月28日(土)福岡県 DRUM LOGOS
  • 2015年3月1日(日)広島県 広島CLUB QUATTRO
  • 2015年3月7日(土)大阪府 なんばHatch
  • 2015年3月8日(日)大阪府 なんばHatch
  • 2015年3月15日(日)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2015年3月21日(土・祝)東京都 Zepp Tokyo
  • 2015年3月22日(日)東京都 Zepp Tokyo
グッドモーニングアメリカ
グッドモーニングアメリカ

金廣真悟(Vo, G)、渡邊幸一(G, Cho)、たなしん(B, Cho)、ペギ(Dr, Cho)からなる4人組バンド。2001年に前身バンドfor better, for worseを結成し、2007年より現在のバンド名に変更。for better, for worse時代は英語詞だったが、バンド名変更を機に日本語詞へと切り替え、サウンドもよりポップさを増す方向へ転換した。2008年より現在の編成で活動を開始し、自主企画の開催やリリースを積極的に行う。2012年冬には初のワンマンツアーを成功に収め、2013年5月に1stフルアルバム「未来へのスパイラル」で日本コロムビアよりメジャーデビュー。2014年5月にはテレビアニメ「ドラゴンボール改」のエンディングテーマに採用された「拝啓、ツラツストラ」をシングルとしてリリースした。同年10月に2ndフルアルバム「inトーキョーシティ」を発表し、12月から翌年3月にかけてレコ発ツアーを実施する。