ナタリー PowerPush - 私立恵比寿中学

鈴木さんはまだまだ成長中

独特の存在感で着々と人気を拡大している私立恵比寿中学が、初のオリジナルフルアルバム「中人(ちゅうにん)」を完成させた。一切の気負いを感じさせない脱力したタイトルとは裏腹な、こだわり抜かれたサウンドプロダクション。インタールードを挟みながらバリエーションに富んだエビ中ワールドが展開する、盛りだくさんの1枚に仕上がった。

今回の特集では、個性あふれるエビ中メンバーの中でもひときわ異彩を放つ、出席番号8番・鈴木裕乃に注目。映画主演も決定するなど個人でも注目を集める彼女の単独インタビューを行い、その魅力の一端に迫った。また後半には、主にエビ中の音楽面を担当するスターダスト音楽出版の「かりそめ先生」こと石崎裕士に、エビ中の現状やアルバム「中人」制作秘話などを聞いたインタビューも掲載している。

取材・文 / 臼杵成晃 撮影 / 笹森健一

エビ中で一番普通の人間?

鈴木裕乃

──今回はアルバム「中人」の発売を記念した特集なのですが、あえて鈴木さん1人にお話を聞きましょうということになりまして(笑)。

あはは(笑)。はい。

──エビ中は非常に個性の強い9人の集合体ですけど、中でも鈴木さんが一番、底が見えない人だなと思っていて。最近はMCや学芸会(ライブ)のストーリーテリングで重要な役どころを担うことが多くなりましたよね。こんなにつかみどころのない人が、その役割を担っているというところに、今のエビ中独自の個性があるのではないかと。ご自身でもグループ内での役割が変わってきたなと思いますか?

役割? 自分では、私はエビ中で一番普通の人間だと思うんですよ。

──確かに、エビ中にはもっと飛び道具的に普通じゃない人がたくさんいるので、比較で鈴木さんを「普通の人」と見る人は多いと思うんですけど、わかりにくいだけで実は一番普通じゃない気がするんです(笑)。

うーん(笑)。

──スタッフもそれを感じて、演出する上での役割を変えてきたのかなと。最近はライブのMCでひとしきり盛り上がったあとに「はい、じゃあ次行きましょう」みたいな、非常にざっくりした進行をしますよね(笑)。なんというか、高田純次的な……。

すごい例えですね(笑)。テキトーってことですか?

──一口にテキトーとも言い切れない、独特のグルーヴがあるんですよ(笑)。「鈴木裕乃」で検索すると第1候補に「鈴木裕乃 やる気」が出てくるというのもよく言われることだと思うんですけど、やる気がないわけじゃないんだろうなというのは伝わりますし、その雰囲気が個性の一端になってると思うんです。本人はこのあたりどう考えているのかなって。

いや、ホントに何も考えず、ありのままの自分でいるつもりなんですけどねー。

あまりにも大人が声をかけてくるから

──「私立恵比寿中学の鈴木裕乃」になるまでのルーツを少しお聞きしたいんですけど、もともと芸能界に入ることは鈴木さん自身の希望だったんですか?

鈴木裕乃

いえ。私は小学校4年生の冬に事務所(スターダストプロモーション)に入ったんですけど、その前にもいろんな事務所からスカウトされてたんですよ。その頃は人前に出るなんて恥ずかしいって思っていたので、スカウトされても全然やる気なんてなかったんです。でも、たくさんスカウトされるうちに「やれるんじゃないか」って思い始めて(笑)。そんなときにちょうど声をかけてくださったのが、スターダストという大御所だったので。

──大御所(笑)。まさに今おっしゃったとおり、本来人前に出るのに興味がなさそうな、ガツガツした感じが皆無だから、いったいなぜそんな鈴木さんが芸能界のお仕事を始めたのかと疑問だったんですよ。その答えが「あまりにも大人が声をかけてくるから」(笑)。

はい。あははは(笑)。

──そのエピソードだけでも鈴木さんの根幹がだいぶ見えてきた気がします。それで、もともとは歌手やアイドルではなく、女優としてのレッスンを受けてたんですよね。

そうです。なりゆきに任せているうちに、なんやかやあって今の状態に至るみたいな。

──エビ中の活動も、そもそもはレッスンの一環としてということだったんですよね。ただ「アイドル」という立場上、歌やダンスが活動のメインになっていくわけで。歌を歌いたい、歌手になりたいという願望も、やはりなかった?

鈴木裕乃

まったくないです。しかも私、音痴で知られてたので(笑)。学校でも音痴、家族の中でも音痴で。「おい音痴ー、やめろよー」って。いじめられてたわけじゃないですよ(笑)。ふざけた感じで音痴って。ホント音痴なんでねー。

──でもそこで「私は音痴なんでいいです」って断らなかったわけですよね? イヤだったらエビ中への参加を断る選択肢もあったと思うんですけど、そうしなかったのはなぜ?

ほかのみんなが入ったから。んふふ(笑)。いやホントそうなんですよ。最初にいた“みにちあベアーズ”(スターダスト所属の小学生を中心としたジュニアアイドルチアグループ)を卒業するとき、一緒にいたりな(松野莉奈)、りお(小池梨緒。2011年6月に“転校”)がエビ中に入ることになったから、じゃあ私もって。

1st full Album「中人」/ 2013年7月24日発売 / DefSTAR Records
初回生産限定エー盤 [CD+DVD] / 3500円 / DFCL-2023~4
初回生産限定ビー盤 [CD2枚組] / 3500円 / DFCL-2025~6
サブカル盤(通常盤) [CD] / 3000円 / DFCL-2027
CD収録曲(全仕様共通)
  1. Chuning!!(Interlude)
  2. 仮契約のシンデレラ(long ver.)
  3. あたしきっと無限ルーパー
  4. R-O-B-O-C-K
  5. 高校廃止法案(Interlude)
  6. 放課後ゲタ箱ロッケンロールMX
  7. 大人はわかってくれない
  8. 体操
  9. 禁断のカルマ
  10. 誘惑したいや
  11. チューニング真っ最中(Interlude)
  12. いい湯かな?
  13. 手をつなごう
  14. 中人DANCE MUSIC
  15. 頑張ってる途中
  16. あるあるフラダンス
初回生産限定エー盤 DVD「居残りダンス練習V~振りカラ映像~」収録内容
  • 瑞季「パクチー」
  • 真山りか「揚げろ!エビフライ」
  • 杏野なつ「どしゃぶりリグレット」
  • 安本彩花「フレ!フレ!サイリウム」
  • 廣田あいか「歌え!踊れ!エビーダダ!」
  • 星名美怜「ほぼブラジル」
  • 鈴木裕乃「結果オーライ」
  • 松野莉奈「新・青春そのもの」
  • 柏木ひなた「エビ中一週間」
初回生産限定ビー盤 特典CD収録内容
  • 「恵比寿組曲」(再構築 by Fragment)
ライブDVD / Blu-ray「狂い咲きエビィーロード ~終わりなき進級~」 / 2013年7月24日発売 / DefSTAR Records
[DVD2枚組] / 5500円 / DFBL-7170~1
[Blu-ray Disc] / 6500円 / DFXL-28
私立恵比寿中学(しりつえびすちゅうがく)

私立恵比寿中学

スターダストプロモーション芸能3部に所属するアイドルグループ。2009年8月4日の結成以降、数人の転校(脱退)と転入(加入)を繰り返し、現在は瑞季、真山りか、杏野なつ、安本彩花、廣田あいか、星名美怜、鈴木裕乃、松野莉奈、柏木ひなたの9名が所属している。2010年2月14日に初のシングル「朝のチャイムがなりました!」を発表。2011年4月には事務所の先輩であるももいろクローバー(現・ももいろクローバーZ)の中野サンプラザ公演にゲスト出演し、前山田健一プロデュース曲「チャイム!」「ザ・ティッシュ~とまらない青春~」を披露した。2011年10月5日には6枚目のシングル「もっと走れっ!!」をリリース。同月8日には東京・Shibuya O-EASTにて初のワンマンライブを行い、大成功に収めた。「king of 学芸会」の異名を持つ個性あふれるパフォーマンスで人気を集め、2012年5月5日にはDefSTAR Recordsよりシングル「仮契約のシンデレラ」でメジャーデビューを果たした。11月21日にはインディーズ時代の楽曲をまとめたアルバム「エビ中の絶盤ベスト~おわらない青春~」と、ライブDVD / Blu-ray「私立恵比寿中学 ファーストコンサート『じゃあ・ベストテン』」を同時リリース。2013年7月には初のオリジナルフルアルバム「中人(ちゅうにん)」を発表した。