電波少女|ハシシが語る、電波少女的ラブソング

電波少女から3カ月連続配信リリースの第1弾「ME」が届けられた。これまで恋愛ソングでは失恋ソング以外を書いていなかったハシシが「別れたあとではなくて、付き合っていた頃のことを初めて曲にしてみようと思った」というこの曲は、切ない雰囲気のピアノの旋律と「また自傷行為じみた君との夜を 繰り返しては未だに」「俺は俺を愛してやまないんだ」といった痛切な歌詞が印象的なナンバー。メロディアスなフロウ、ポップなサウンドメイクを含め、メジャーデビューを目前に控えたこのタイミングにふさわしい楽曲に仕上がっている。

今回音楽ナタリーではハシシに単独インタビューを実施。「ME」の制作プロセス、8月から9月にかけて行われるショートムービー上映会を兼ねたライブハウスツアーについて聞いた。

取材・文 / 森朋之 撮影 / 上山陽介

新しい曲で勝負したい

──まずは5月8日にリリース予定だった「Re:カールマイヤー」の配信が中止になったことについて聞かせてください。(参照:電波少女、5月発売のデジタルシングル「Re:カールマイヤー」が配信中止に)オフィシャルサイトには「一番はやっぱり俺が先行シングルとしてこの曲を出したくなかった」と書かれていましたね。

はい。「Re:カールマイヤー」は過去曲の中で一番人気がある曲なんですよ。メジャー目前というタイミングで、そういう曲に頼りたくないなと思ってしまって。「Re:カールマイヤー」をリメイクして出せば、ある程度の反応が返ってくることは間違いなんだけど、それも面白くないなと。ファンからはいろんなリアクションがありましたけどね。「何言ってんだ、メンヘラが」っていうのもあったし(笑)、「好き勝手にやってるんだな」というパンク的な捉え方をしてくれてる人もいて。新しい曲を聴きたいと思っていた人は喜んでくれてますね。俺自身も「新しい曲で勝負したい」という気持ちもあったので。

──「Re:カールマイヤー」のリリースを中止にしたことで、新曲「ME」に対する期待もさらに高まっていると思います。この曲はラブソングと捉えていいんでしょうか?

ハシシ

そうですね。もともとラブソングには抵抗があるというか、これまであんまり作ってこんかったんです。「ヒップホップとか言ってるくせに、ナヨナヨしやがって」って思われるのも嫌だし。でも「ME」は自信がある曲なので、ぜひこのタイミングで出したいなと。実は楽曲の大枠はヒッチハイク(メジャーデビューをかけて行われた「電波少女的ヒッチハイクの旅」)に行く前にできてたんですよ。「ME」というタイトルの曲を作りたいと思って。

──タイトルを先に決めていた?

はい。2ndアルバム(「WHO」)に「MO feat. NIHA-C」という曲が入っていて、次のCD(「パラノイア」)には「MO」の続編の「RY feat. Jinmenusagi」という曲を収録していて。時系列的に「MO」の前に来る曲が欲しいなと思って作ったのが「ME」なんです。3つ合わせると“メモリー(Memory)”になるんですけど、全部同じ女の子について歌ってるんですよね。「MO」「RY」は別れたあとのことを歌ってるので、付き合っていた頃のことも曲にしたいなと。そういうシチュエーションの曲を作ったのは初めてなんです。「好きだよ」みたいな曲なんて気持ち悪いと思ってたんだけど、自分の中でそれが1周して、「自分なりに恋の歌を書いてみたらどうなんだろう?」と興味が出てきて。まあ結果的にはヒドイ曲になりましたけど(笑)。

──ヒドイ曲って(笑)。確かに「好きだよ」みたいな甘いラブソングとはまったく違いますよね。

「俺は俺を愛してやまないんだ」って歌ってますからね。実際、その子と付き合ってるときは自分のことしか考えてなかったと思うんです。何かするときも常に見返りを求めていたし。わりと亭主関白な性格なんですよ、俺。内弁慶というか、家の中では強いっていう(笑)。でも「実はそういう人って多いのかも」と思ったし、こういうトピックの歌ってあんまりないじゃないですか。サウンドやメロディはキャッチーで聴きやすいけど、リリックをしっかり読んでもらえれば「こいつ、何を言ってんだ?」って思ってもらえるんじゃないかなと(笑)。

好きっていう感情よりも、嫉妬とか妬みのほうが多い

──「ME」は電波少女らしいラブソングですよね。幅広いリスナーが共感できるテーマだし、このタイミングにもふさわしいと思います。

ハシシ

そうなんですよね。自分の人生を振り返ってみるとわりと恋愛もしてきてるし、ラブソングをもっと増やしていいのかなという気持ちもあって。ただ、やっぱり幸せな歌は作れないですけどね。電波少女のキャラやイメージもあるし、「俺がそんな歌を歌っても、面白くないだろうな」って。あと、恋愛の楽しい思い出がないんですよ。インドアだし、あまり外でデートなんかもしないし……。

──彼女とフェスに行ったりはしなかった?

フェス自体に行ったことがないです(笑)。それに付き合ってるときって、好きっていう感情よりも、嫉妬とか妬みのほうが多いんですよ。そういうトピックの曲のほうが歌いやすいし、しっくり来るんですよね。

電波少女「ME」
2017年6月12日発売 / アリオラジャパン
電波少女「ME」
収録曲
  1. ME
電波少女ワンマンライブ「EST.」
  • 2017年6月18日(日)東京都 WWW X
電波少女 ショートムービー上映&全国ライブツアー「デリヘル」
  • 2017年8月5日(土)北海道 Spiritual Lounge
  • 2017年8月6日(日)宮城県 SENDAI BIRDLAND
  • 2017年8月11日(祝・金)大阪府 北堀江club vijon
  • 2017年8月12日(土)広島県 HIROSHIMA BACK BEAT
  • 2017年8月13日(日)愛知県 CLUB 3Star IMAIKE
  • 2017年8月20日(日)東京都 KOENJI HIGH(入れ替え制の2回公演)
  • 2017年9月1日(金)香川県 sound space RIZIN'
  • 2017年9月2日(土)福岡県 graf
  • 2017年9月3日(日)宮崎県 floor R
電波少女(デンパガール)
電波少女
2009年に複数のMCおよびトラックメーカーで結成されたユニット。幾度かのメンバーチェンジを経て、現在はラップ担当のハシシとDJ&パフォーマンス担当のnicecreamという2人で活動している。2013年7月に1stアルバム「BIOS」を、2015年7月に全曲フィーチャリングゲストを迎えた2ndアルバム「WHO」を発表した。12月にリリースしたiTunes Store限定シングル「COMPLEX REMIX feat. Jinmenusagi, NIHA-C」がiTunes Storeのヒップホップ / ラップのシングルチャートで1位を獲得する。2016年5月に7曲入りCD「パラノイア」をリリースし、11月よりヒッチハイク企画「“電波少女的ヒッチハイクの旅”47都道府県ストリートライブTOUR」を実施。2017年1月にヒッチハイクの旅を完遂し、夏にメジャーデビューを果たすことが決定した。メジャーデビューに先駆け6月より3カ月連続で配信シングルをリリースする。