音楽ナタリー Power Push - デーモン閣下

熱狂的“信者”を迎えて放つ5年ぶりのソロ作

「今だから歌えることはないかな」という意識が頭の隅にあった

──歌詞の中にも、現代社会を反映した内容が見受けられます。「Post Truth -青空が殺気立つ- 」では「客観的な事実や真実が重視されない状況」を意味する、イギリスの政治を表した言葉「Post-truth」がタイトルに使われていて、まさに今のトピックですよね。

まあ、その言葉は強引にねじ込んだんだけどな(笑)。すべての曲がそうである必要はないが、アルバムの中に1曲か2曲は、その時期でないと作れないものを入れたくて。それは今回に限らずいつも考えていることだ。魔暦14年(2012年)年発表の「MYTHOLOGY」というアルバムはちょうど東日本大震災が起こった頃に制作していたから、歌詞の世界もかなりそちらに引っ張られていて。魔暦4年(2002年)のアルバム「SYMPHONIA」には「Viva America」という曲が入っているのだが、それは明らかにアメリカでの同時多発テロとその後の世界情勢を鑑みての作品作りであったな。

──「Post-truth」も去年を象徴するワードですからね。

デーモン閣下

「今だからこそ歌えることはないかな」という意識が頭の隅にあったんだろうな。しかも「Post-truth」は今後もしばらく世界的な規模で影響を与える現象だから。

──確かに。そう言えば閣下はコンサートのMCも時事ネタが多いですよね。

うむ(笑)。コンサートはその場限りのものだし、そのときじゃないとやれないことをやろうと思っているので。歌詞のことで言えば今回は新しい作り方も試しているんだ。曲を聴いていると映像が観える、ドラマが感じられるような歌詞を書いてみようと思って。

──それは何か理由があったんですか?

吾輩はもともとテーマや「こういう歌詞を書いてほしい」という縛りがないと、なかなか歌詞が完成しない作詞家なのだ。なんでもいいから好きなように書こうとすると、1曲に対していろいろな方向性の叩き台ができてしまって「どれでも成立するんだが、さてどうしよう?」と試行錯誤してしまうことが多くて。アニメや映画のテーマソングのように「このストーリーに沿って歌詞を作ってください」と言われたらスラスラ書けるので、だったら今回は事前に物語を考えてみようと。「ゴールはみえた」「Shibuya Scrambled Crossing」はまさにそういう方法で書いた歌詞だな。

──閣下ご自身のエピソードではなく、架空のストーリーなんですね。

もちろん。「Shibuya Scrambled Crossing」は「田舎から出て来た青年が東京のデカさを知る」という物語だが、吾輩にはそんな経験はないし(笑)。そのような書き方はあまりやったことがなかったから、吾輩にとっても新鮮だったな。長い年月の間にいろいろな曲を書いてきたが、特に聖飢魔IIにおいては、社会性の強い歌詞、世の中を風刺するような歌詞、本当に起こった出来事を違った視点から切るような歌詞が多くて。もちろんそれが得意だからやっていたわけだが、おしなべていうとエッセイ的な歌詞だったと言える。今回はエッセイではなく、小説を書くようなアプローチだったということだな。

「そうきたか!」という驚きがあった

──今回のアルバムには芥川賞作家の羽田圭介さん、コラムニストのブルボン小林さん、「テラフォーマーズ」の原作者・貴家悠さんが歌詞を提供しています。すごいラインナップですよね。

デーモン閣下

そうだね。非常に面白かったよ(笑)。こちらからは何も言わず好きなように歌詞を書いてもらったんだが、まさに三者三様。それぞれアプローチが違っていて。

──中でも、もっともインパクトを感じたのは貴家さんが手がけた「地球へ道づれ!」の「人が生まれてきたのは単にセックスの結果であって、親に感謝する必要はない。ここは地獄だ。生きる意味など求めるな」という歌詞なんですが、すごいですね、これ。

すごいよね(笑)。これが送られてきたときは「本当に歌詞を書くのは初めてなの?」と思ったくらいだから。これにどういう曲を付けたらいいか?というのはかなり考えたけどね。メロディに起承転結を付けて、この歌詞が一番伝わるようにしたかったから。

──そしてブルボン小林さんが歌詞を書いた「方舟の名はNoir」は、閣下が曲を作り歌うことを“ノアの箱舟”にリンクさせた内容ですね。

これも「そうきたか!」という驚きがあったな。これまで吾輩がやってきたことを外から客観的に見ているような内容だから、自分ではなかなか書けない歌詞だなと。しかも、ちゃんと吾輩が歌わないと成立しない曲になっているのも素晴らしい。「10万年生きてきて」という歌詞に該当するミュージシャンはほかにいないから(笑)。聖飢魔IIの元構成員以外では。

ニューアルバム「EXISTENCE」魔暦19年(2017年)3月15日リリース / アリオラジャパン
初回限定盤 [CD+DVD] 4104円 / BVCL-785~6
通常盤 [CD] 3240円 / BVCL-787
CD収録曲
  1. 深山幻想記 序曲
  2. ゴールはみえた
  3. Forest Of Rocks
  4. Just Being -ここにいる そこにいる-
  5. Shibuya Scrambled Crossing
  6. 地球へ道づれ!
  7. てふのやうにまひ
  8. 方舟の名はNoir
  9. 深山幻想記 -能Rock-
  10. Post Truth -青空が殺気立つ-
  11. Stolen Face
  12. Heavy Metal Strikes Back -血まみれの救世主(メサイア)たち-
初回限定盤DVD収録内容
  • 「ゴールはみえた」Music Video
  • H.E. Demon Kakka's Commentary
デーモン閣下「DEMON'S ROCK "EXISTENCE" TOUR, DC19」
  • 魔暦19年(2017年)4月21日(金)
    大阪府 Zepp Osaka Bayside
  • 魔暦19年(2017年)4月30日(日)
    東京都 チームスマイル・豊洲PIT
  • 魔暦19年(2017年)5月6日(土)
    福岡県 電気ビルみらいホール
  • 魔暦19年(2017年)5月7日(日)
    広島県 広島市南区民文化センター
  • 魔暦19年(2017年)5月19日(金)
    宮城県 チームスマイル・仙台PIT
  • 魔暦19年(2017年)5月25日(木)
    北海道 Zepp Sapporo
  • 魔暦19年(2017年)6月1日(木)
    東京都 Zepp Tokyo
  • 魔暦19年(2017年)6月8日(木)
    愛知県 Zepp Nagoya
デーモン閣下「デーモン閣下ソロアルバム『EXISTENCE』発表記念スペシャルトークイヴェント」

魔暦19年(2017年)4月15日(土)東京都内

<出演者>
デーモン閣下 / 司会:ブルボン小林

第1部
OPEN 11:30 / START 12:00
ゲスト:貴家悠
第2部
OPEN 14:30 / START 15:00
ゲスト:羽田圭介
デーモン閣下(デーモンカッカ )
デーモン閣下

魔暦前14年(1985年)にロックバンドの姿を借りた“悪魔集団”聖飢魔IIの歌唱・説法方として地球デビューした“悪魔”。魔暦前10年(1989年)に発布した大教典(アルバム)「WORST」でハードロック / ヘヴィメタル界では初となるオリコンアルバムチャート1位を記録し、「NHK紅白歌合戦」に出場した。魔暦前9年(1990年)に初のソロアルバム「好色萬聲男」をリリースし、魔暦7年(2005年)にはデビュー20周年を記念したベストアルバム「LE MONDE DE DEMON」を発表。魔暦9年(2007年)年からは女性アーティストの名曲を歌った異色のソロアルバム「GIRLS' ROCK」シリーズ4作で話題を集めた。和の伝統芸能との共作活動は30年間展開中。純邦楽器と朗読劇の新機軸追求シリーズ「デーモン閣下の邦楽維新Collaboration」は18年目で公演数74回に至り、上海万博では文化交流大使を執務した。広島県がん検診啓発特使や早稲田大学相撲部特別参与などさまざまな分野でも活躍、魔暦19年(2017年)3月に約5年ぶりのソロアルバム「EXISTENCE」をリリースする。