音楽ナタリー Power Push - アニメ「コメット・ルシファー」菊地康仁監督×大橋彩香対談
物語とともに成長するヒロインと音楽
10月からTOKYO MXなどでオンエアされるテレビアニメ「コメット・ルシファー」。青く輝く鉱石・ギフトジウムに覆われた惑星ギフトに暮らす少年ソウゴ・アマギとその仲間たちと、不思議な少女フェリアとの出会いと、その出会いによって彼らが繰り出すこととなった冒険を描くオリジナルアニメ作品だ。
このアニメの監督は「マクロスF」などで知られる菊地康仁。今作「コメット・ルシファー」ではその「マクロスF」がそうであったように、ヒロイン・フェリアの歌う数々のエンディングテーマ、劇中歌が物語の重要なキーとなるという。そこで音楽ナタリーではアニメ第2話アフレコ直後の菊地とフェリア役の声優・大橋彩香の元を訪れ、「コメット・ルシファー」の見どころとともに、アニメと音楽の関係について聞いた。
取材・文 / 西原史顕 撮影 / 佐藤類
テーマはヒロイン・フェリアの成長
──いよいよテレビアニメ「コメット・ルシファー」の放送が近付いてきました(取材はアニメ放映前)。まずは監督に、この作品のテーマをお伺いしたいと思います。
菊地康仁 ヒロインであるフェリアの「成長」ですね。今日、まさしく大橋さんには生まれたてのフェリアの芝居をしていただいたわけですけども、ここから彼女がどんどん変わっていくさまを見せようというのが本作です。
──そのフェリア役に大橋さんを起用した理由とは?
菊地 これは期待でもあるのですが、僕ら制作陣のそうした意図、「ヒロインの成長」というテーマを汲み取って、フェリアの芝居をどんどん作っていってくれると予感をさせてくれたのが大橋さんだったんです。
──対する大橋さんのフェリアの印象はいかがでしたか?
大橋彩香 最初にキャラクターの設定をいただいたときには「謎の少女」という印象が強かったんですけど、アフレコが始まると、非常に元気でワタワタ動きまわるタイプの女の子だとわかって。まだ生まれたばかりで目の前のことに興味津々で仕方がないという感じで、すごく活発ですよね。
──フェリアが石の中から生まれてくるところから、物語が始まるんですよね?
大橋 そうなんですよ、パーンって出てきて(笑)。2話ではまだ小さい女の子のような存在で、しゃべり方も幼いんです。なので、アフレコの前に実際の赤ちゃんとか幼稚園に入る前くらいの子がどんなふうにしゃべるのか、おうちで映像とか観て研究しました。
菊地 確かに今日のアフレコではかなり役を作ってきてくれていましたよね。
大橋 ホントですか? ありがとうございます!
菊地 2話では脚本も画も……だいたい2~3歳児くらいかな? それくらいのイメージでフェリアを描いているんですよ。だから大橋さんの芝居はピッタリだったなって。
私、アニメの話を聞かないほうがいいですか?
──劇中、フェリアはどのように成長を遂げていくのでしょうか?
菊地 人との関わり合いの中で成長していく感じですね。フェリアを発見した主人公のソウゴ(・アマギ)たちメインキャラクターと関わっていくことで、何を感じて、どうやって人間としての感情を獲得していくか。最初は単語しか知らなかった女の子が、だんだん自分の感情を言葉にするようになってきて、もしかすると恋愛感情を育むまでになるかもしれない。そんなところが物語のポイントになるかと。
大橋 しかもフェリアは飲み込みが早いので、第2話の段階でもぐんぐん成長しているから、これからどんな女の子に育っていくのか楽しみですね。エレベーターに乗ってるんじゃないかってくらい、どんどんステップアップしているので。
菊地 そんな感じですよね。
──今「どんな女の子に育っていくのか楽しみです」とおっしゃってましたけど、フェリアの今後について大橋さんはどの程度知らされているんですか?
大橋 まったく!(笑) 監督からは「フェリアと一緒に成長していってください」と言われていて。アフレコの現場でも何も教えてくれないんです。第1話のときはそもそもセリフがなかったので「今日はフェリアのお芝居について指示がなくても当たり前だよな」と思ってたんですけど、初めてセリフを言うことになる第2話を録った今日のアフレコの前にも指示なしで。「はい、Aパート始めてー」といきなり録音が始まっちゃってました(笑)。
菊地 フェリアの人物像に関してはあえて説明しておりません(笑)。さっきお話した通り、フェリアの成長の過程は、ほかのキャラクターとの関係性の中で描かれていくことなので。フェリアとほかのキャラクターとの関係が希薄な今の段階では、演じる大橋さんにも無垢な状態でいてほしいんです。
──なるほど。となると、大橋さんの前では作品の内容について突っ込んだ質問をしないほうがよかったりします?
大橋 (おそるおそる)私、聞かないほうがいいですか?
菊地 そうしていただけると(笑)。ごめんなさいね。そういう作品なんです。
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- テレビアニメ「コメット・ルシファー」 / 10月より放送開始
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青く輝く鉱石ギフトジウムに覆われた惑星ギフトと、そのギフトジウムの採掘で栄える街ガーデン・インディゴを舞台に繰り広げられる少年少女の冒険譚。ガーデン・インディゴの少年ソウゴ・アマギやその仲間たちと、鉱石の中から現れた謎の少女フェリアとの出会いと、それがもたらす若者たちの成長と絆を描く。
メガホンを取るのは菊地康仁。「マクロスF」など、本格的なメカバトルと音楽を効果的に使った演出で知られる監督作とあり、巨大ロボット・ガーディアンらを巡る戦闘シーンと、ストーリーの進行にあわせてフェリア役の声優・大橋彩香が歌うエンディングテーマが変化する点も注目ポイントとなっている。
- 大橋彩香 ニューシングル「おしえてブルースカイ」 / 2015年11月11日発売 / Lantis
- 「おしえてブルースカイ」
- 彩香盤 [CD+DVD] 2160円 / LACM-14417
- コメット・ルシファー盤 [CD] 1296円 / LACM-14418
- 大橋彩香 ニューシングル「ヒトツニナリタイ」 / 2015年12月9日発売 / Lantis
- 「おしえてブルースカイ」
- 彩香盤 [CD+DVD] 2160円 / LACM-14428
- コメット・ルシファー盤 [CD] 1296円 / LACM-14429
大橋彩香(オオハシアヤカ)
1994年東京都出身の声優、ボーカリスト。2011年開催の「ホリプロタレントスカウトキャラバン次世代声優アーティストオーディション」でファイナリストに残ったことをきっかけに声優デビューを果たし、「アイカツ!」シリーズ、「エウレカセブンAO」、「ドキドキ!プリキュア」、「ファンタジスタドール」、「アイドルマスター シンデレラガールズ」シリーズなど人気作・話題作でメインキャストを多く務める。また2014年8月には自身がメインヒロイン・園川モモカ役を担当するアニメ「さばげぶっ!」のオープニングテーマ「YES!!」でアーティストデビュー。2015年2月には2ndシングル「ENERGY☆SMILE」を発表し、また同年11月にはヒロイン・フェリア役として出演するアニメ「コメット・ルシファー」のエンディングテーマ「おしえてブルースカイ」を、翌12月には同アニメのイメージソング「ヒトツニナリタイ」を連続リリースする。
菊地康仁(キクチヤスヒト)
1964年青森県出身のアニメーション監督、演出家。1990年代後半の監督デビュー以来、「異次元の世界エルハザード」、「マクロスF」、「IS 〈インフィニット・ストラトス〉」シリーズなどでメガホンを取る。2015年10月から監督を務めるオリジナルアニメーション「コメット・ルシファー」がオンエアされる。
2015年10月16日更新