Czecho No Republic × SKY-HIのコライトシングル「タイムトラベリング」が9月27日にリリースされた。
表題曲は、チェコのポップなバンドサウンドにSKY-HIのスキルフルなラップが刺激的に交わり、ポジティブさに満ちた1曲に結実した。このニューシングルの完成を記念して、音楽ナタリーではチェコの武井優心(Vo, B)とSKY-HIが“タイムトラベリング”をテーマに語り合う対談を企画。また、撮影の際に武井が涙したという、今回のコラボの魅力を凝縮した映像に仕上がったミュージックビデオについても話を聞いた。さらにこのシングルの収録曲を掘り下げるべく、カップリング曲「For You(Acoustic Arrangement)」のアレンジを担当した八木類(G, Syn, Cho)に同曲についてコメントをもらったほか、武井には3曲目「MUSIC(チェコと12人の仲間たち)」に参加したアーティストたちへコメントを送ってもらった。
取材・文 / 三宅正一(ONBU) 撮影 / 上山陽介
“アク”が出てないことが功を奏した
──「タイムトラベリング」は双方にとってかなり意義深いシングルになったのではないでしょうか?
武井優心(Czecho No Republic / Vo, B) 曲が完成してもずっと客観的に聴けなかったんですけど、昨日ひさしぶりに聴いてみたら……すごくよかった。
──あえて聴かないようにしていたんですか?
武井 そう、聴かないようにしていて。と言うのは、楽曲を短期間で凝縮して制作したからか、ランナーズハイみたいな感覚があって。それで冷静には聴けないと思っていたんです。でも、時間を置いて聴いたらすごくよかった。面白い瞬間がいっぱい散りばめられてる曲だと思うんですよ。日高くんのラップから始まるAメロも象徴的なメロディだと思うし、サビがすげえキャッチーだなと思いましたね。
──これだけオープンでキャッチーなメロディを作れたのはSKY-HIとのコライトだったからと言えますか?
武井 どこかでそういう意識はあったかもしれないですね。実はキャッチーな曲になるのを狙い過ぎないようにしていたんですけど、結果的にそうなりました。たぶん俺がちょっと大人になったんだと思います。俺の中にある“アク”が出てないことが功を奏したと言うか。「俺は好きなんだけど、みんなわかってくれる?」と言うより、「これ本当にすごくおいしいので食べてください」みたいな。この曲を聴いて、わかりにくい、覚えにくいメロディだと感じる人はいないと思うんですよね。
SKY-HI 確かに。
武井 だから好きか嫌いか判断しやすい。それで嫌いならしょうがない、そう言い切れるほどぼやけていない曲ができてよかったです。
──SKY-HIはどうですか?
SKY-HI 曲を作っているときは脊髄反射的に歌詞を書いていて。チェコから来たサウンドに対して寝かす期間がゼロみたいな。武井くんの話に乗っかるなら、メロディのキャッチーさはあらかじめ担保されていたから。最初にラップを書いたのは間奏をずっと三連符のラップでいくところだったんですけど、曲がキャッチーだからそういう攻め方がすぐに思い浮かんだんですよね。とは言え、イントロでいきなり俺のラップが入ってきて、チェコの新曲だと思って再生ボタン押した人が「違うじゃん」って一時停止しないように、いかにスムーズにラップを入れるかとか、そういうことも脊髄反射的に考えていたと思います。そういう作り方だったので、録り終わったあとに「大丈夫かな?」とも思ったんですけど、冷静に聴いてもこれがベストアプローチだったと感じます。最後のサビの絡み方もこれ以上のものはないと思えたし。それがすごくよかったです。
王道なのに、既視感を覚えない
──今日は「タイムトラベリング」のMVについてのエピソードもいろいろ聞かせてもらいたいんですが、まず須永秀明監督にオファーした理由は?
武井 タカハシ(マイ / Cho, Syn, Percussion)が「スピード感のある映像にしたい」と言っていて。それで、スタッフから「須永さんがいいんじゃないか?」という提案があったんです。実際シーンがバンバン切り替わるし、ドンピシャな内容に仕上げていただきました。
SKY-HI 須永さんはこういう王道感のある映像を、既視感を覚えさせずに仕上げるのがすごくうまいですよね。三浦大知くんの「(RE)PLAY」とかもそうだけど、人がダンスするMVってもう出尽くしているはずなのに、その2周目を見せてくれるなって。「タイムトラベリング」の撮影場所も暗めの倉庫っぽい場所で、王道と言えば王道だと思うんですよ。
武井 うん。俺も最初に現場に行ったときにめっちゃ王道だなと思った。
SKY-HI なんだけど、あんまり既視感がないんだよね。
──その秘訣はなんなんですかね?
SKY-HI たぶん小さな工夫の積み重ねだと思うんですけど。あと、チェコがこういうシチュエーションにいることにも意外性が出てると思う。
──SKY-HIは監督とコミュニケーションを取ったことがあるんですか?
SKY-HI あります。須永監督と言えば、KICK THE CAN CREWやKREVAのMVを撮ってる監督というイメージが強くて、「いつか俺の作品でもお願いします」なんて言ったこともあって。でも、“KREVAの監督”というイメージもあるし、俺もクレさんと距離が近いこともあって、なかなかタイミングがなかったんです。だから、今回一緒に仕事ができてうれしかったです。
──武井くんはMVの内容に関して監督に細かくリクエストを投げたりしたんですか?
武井 いや、今回はあえて意見を出さないようにしたんです。今までのMVはけっこう細かく意見を出してきたんですけど、それで監督とぶつかることもあって。曲のリズムと場面転換がズレてたりすると許せないんですよね。
──でも、それは真っ当な意見だと思います。
武井 海外のMVって音と映像のリンクが完璧なものが多いから「日本のMVはなんでそういう遊びができないんだろう?」って常々思ってたんですよ。それで意見してきていたんですけど、今回はMVに関しても自分のアクを捨てようと思って。結果的に「タイムトラベリング」のMVはすんなり観ることができるし、やっぱり俺が関与し過ぎないほうがいいのかなと思いました(笑)。撮影も本当に楽しかったです。日高くんがとにかくカッコよくて。
泣かれたのは初めてです(笑)
──初回盤に付いてくるドキュメンタリー映像を観ましたけど、武井くんはSKY-HIのソロ撮影を見届けて泣いてましたよね。
武井 でも、あれはみんなに勘違いされるんですよ。日高くんがカッコよくて泣いたわけじゃなくて。いや、もちろんカッコいいのもあるんだけど……。
SKY-HI 「カッコよくて泣いたわけじゃない」ってそこだけ文字にすると微妙だよね(笑)。
武井 いや、カッコよくてうっとりして泣いちゃったって思われがちなんだけど、あれは今回のコライトにあたって日高くんと過ごした日々を思い出していたんです。その時間が、最後までキラキラしていたんですよね。それは俺からしたら夢のような時間で。一緒にいるとちょっと照れるし、もっと話したかったって思ったりもして。今回の現場はすごくドリーミーだったなと思いながら、このソロカットで日高くんとはひとまずお別れかと思ったら泣いちゃった、みたいな(笑)。
──武井くんって人前で泣いたりするんだなと思いましたね。
武井 そう、俺も自分で人の子だったんだなという気付きがありました。って言うか、俺をなんだと思ってるんですか(笑)。でも、まあ、普段は人前で泣かないですよ。
──酒の席で武井くんがSKY-HIに絡んで始まったコミュニケーションから、こういう意義深いコライトに着地したんですよね? そういうこともあって、余計に感慨深かったんでしょうね。
武井 やっぱりマイナススタートのほうが得るものが大きいですね(笑)。
SKY-HI いや、別にマイナススタートではないよ。むしろプラススタートです。あのとき武井くんが「ロックシーンに殴り込みをかけに来たSKY-HIくんじゃないですかあ」って言ってきてくれたのは俺にとってうれしい出来事だったので(笑)。
武井 メンバーには怒られましたけどね。「酒癖を直したほうがいいよ」って(笑)。
SKY-HI でも、泣かれるのはなかなかないですよ。俺は今の日本の音楽シーンでフィーチャリングやコライトの数が相当多い人だと思うんですけど、泣かれたのは初めてです(笑)。
武井 恥ずかしいな(笑)。
──それくらい武井くんにとってこのコライトは大きなトピックだった。
武井 はい。恥ずかしながら。
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砂川さんのジャンプ、すげえ低いですよね
- Czecho No Republic × SKY-HI
「タイムトラベリング」 - 2017年9月27日発売 / 日本コロムビア
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初回限定盤 [CD+DVD]
1800円 / COZA-1377~8 -
通常盤 [CD]
1000円 / COZA-17371
- CD収録曲
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- タイムトラベリング
- For You(Acoustic Arrangement)
- MUSIC(チェコと12人の仲間たち)
- 初回限定盤DVD収録内容
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- タイムトラベリング MUSIC VIDEO
- Czecho No Republic × SKY-HI密着ドキュメンタリー
- 「タイムトラベリング」【ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017】
- Czecho No Republic(チェコノーリパブリック)
- 武井優心(Vo, B)と山崎正太郎(Dr, Cho)を中心に2010年3月に結成。現在は武井、山崎、八木類(G, Syn, Cho)、タカハシマイ(Cho, Syn)、砂川一黄(G)の5人で活動している。2010年11月に初のCD作品「erectionary」をタワーレコード限定でリリース。同作が高い評価を受ける中、2011年10月に初のフルアルバム「Maminka」を発表した。2013年10月に2ndフルアルバム「NEVERLAND」で日本コロムビアよりメジャーデビューし、2014年10~12月にはフジテレビ系アニメ「ドラゴンボール改」のエンディングテーマとして「Oh Yeah!!!!!!!」が全国でオンエアされた。2015年9月に3rdアルバム「Santa Fe を、2016年7月には4thアルバム「DREAMS」を発売。2017年9月に、SKY-HIとのコライトシングル「タイムトラベリング」をリリースした。
- Czecho No Republic「リリースツアーじゃないツアー」
- 2017年9月30日(土)北海道 札幌KRAPS HALL
- 2017年10月14日(土)宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
- 2017年10月22日(日)福岡県 BEAT STATION
- 2017年11月25日(土)愛知県 THE BOTTOM LINE
- 2017年12月14日(木)大阪府 BIGCAT
- 2017年12月22日(金)東京都 EX THEATER ROPPONGI
- SKY-HI(スカイハイ)
- ラッパー、ソングライター、歌手など幅広く活動を行うアーティスト。2005年にAAAのメンバーとしてデビューし、同時期からSKY-HIとして都内クラブで活動をスタートさせる。さまざまなラッパーとのコラボレーション企画「FLOATIN' LAB」を2011年に始動し、翌2012年に同企画のコンピレーションアルバム「SKY-HI presents FLOATIN' LAB」を発売。2014年3月には1stアルバム「TRICKSTER」をリリースした。2016年に初のホールツアー「SKY-HI HALL TOUR 2016 ~Ms. Libertyを探せ~」を行い成功に収める。2017年1月に3rdアルバム「OLIVE」をリリースし、5月には東京・日本武道館で単独公演を開催した。9月27日には初の映像作品「SKY-HI Tour 2017 Final "WELIVE" in BUDOKAN」をリリースした。
- SKY-HI
- SKY-HI(AAA日高光啓)(@SkyHidaka) | Twitter
- SKY-HI(日高光啓)オフィシャルブログ「SKY'sTHE LIMIT」Powered by Ameba
- SKY-HIの記事まとめ
- SKY-HI「SKY-HI Tour 2017 Final "WELIVE" in BUDOKAN」
- 2017年9月27日発売 / avex trax
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初回限定盤 [2DVD+2CD]
10800円 / AVB1-92580~1/B~C -
初回限定盤 [Blu-ray+2CD]
10800円 / AVX1-92584/B~C -
通常盤 [2DVD]
5832円 / AVBD-92582~3 -
通常盤 [Blu-ray]
5832円 / AVXD-92585