ナタリー PowerPush - burn WORLD DJ CONTEST 2014

☆Taku×小室哲哉、初対談で語る日本と海外

DJコンテスト「burn WORLD DJ CONTEST」が今年も開催されている。これはスペイン・イビサ島で実施される世界大会「burn RESIDENCY」の日本代表を決めるというもの。現在決勝を前に代表候補は5組まで絞られており、4月中旬には彼らを対象とした1泊2日のブートキャンプ(合宿)が行われた。

この特集では、block.fmの主宰者である☆Taku Takahashiと、ブートキャンプのメンター(指導者)を務めた小室哲哉の対談を掲載。クラブシーンとJ-POPをつないだ立役者と言える2人だが、対談が企画されるのは意外にもこれが初めて。これまで聞きたかったこと、日本と海外の差、このコンテストの意義など、グローバルな意見の交換は尽きることがなかった。

取材・文 / 鳴田麻未 対談撮影 / 佐藤類

☆Taku Takahashi×小室哲哉 対談

TM NETWORKはバンド? ユニット?

☆Taku Takahashi 小室さん、今日はありがとうございます。こういうふうにお話するのは初めてなので、もう少し軽いトークからのほうがいいのかなとは思いつつ、いきなり聞きたかったことを聞いてもいいですか?

小室哲哉 ええ、全然いいですよ。

☆Taku TM NETWORKの初めにさかのぼるんですけど、当時は“バンド”といえば歪んだギターでロックバンドらしい形式のものがメインストリームな中、TMはキーボードがすごく前に出ていたり、海外のダンスミュージックのテイストが入っていたりして、特異な存在という感じがしたんです。ほかのバンドから「違う」みたいな見られ方をすることってあったんでしょうか。

左から☆Taku Takahashi、小室哲哉。

小室 うん。基本的にあんまりバンドとは思ってもらえなかった(笑)。「ユニット」っていう言葉すらまだあまり使われてなかったし。

☆Taku そうですね、当時なかった。

小室 ただ普通に「3人組です」って呼ばれてたかな。

☆Taku (笑)。

小室 バンドっていうカテゴリには入れてもらえなかったけど、ギターの音が大きかったりする4人組のバンドに対して僕がヒエラルキーの差を感じていたわけでは決してなくて。20代前半の頃から、宇都宮(隆)くんのボーカルの音域っていうのがギターと似てたのね。せっかく詞を歌ってメロディも動いているのに、ギターでパワーコードとかカッティングの音を鳴らすと、ちょうどなじんでしまって。

☆Taku お互いを殺し合う可能性があると。

小室 そう。彼の声を生かすためにはギターが前に出ないほうがいいなっていう結論に達したんだよね。

☆Taku じゃあひとつの方法論としてあの形になったんですね。

小室 それから僕の中では、競争率の激しいギタリストの渦に入るのが怖くて入らなかったというのもあるかも(笑)。

☆Taku なるほど(笑)。

小室 今はソフトシンセでギターそっくりな音も出せるようになったけど、それまではやっぱり「うらやましいな」ってギタリストに対して憧れはあって。だからショルダーキーボードを持ってみたり、ギタリスト気分になってはいたけどね。

☆Taku ははは(笑)、そうですね。

小室 要は、TM NETWORKはボーカリストの歌を生かすことありきの編成。だから「バンド」とも言われなかったね。

日本ではフェーダー1個上げることすらできなかった

☆Taku Takahashi

☆Taku ちょっとヒストリー的になっちゃうんですけど……小室さんはその後、TRF(デビュー当時はtrf)やH Jungle with tで、レイブカルチャーやジャングル、ドラムンベースなどのジャンルをどんどん日本のポップスシーンに提案していったじゃないですか。そういうダンスカルチャーをどこで体験して、自分の国で出していこうとしたんですか?

小室 1987年から1年半イギリスに住んでいて、そこでStock Aitken WatermanとかPWL Recordsとかの洗礼を受けて。

☆Taku ええ、ハイエナジーですね。

小室 で、90年代にはアメリカに4年住んでいたので、そこでヒップホップとか打ち込みのプロデューサーワークの洗礼を受けて……っていう2つが大きくて。もう毎週末いろんなクラブに遊びに行ってたかな。

☆Taku 例えばイギリスに住んでいたときのライフスタイルって、週末はクラブへ遊びに行って、平日は何されていたんですか?

小室 平日はレコーディング。日本の仕事を僕とイギリス人だけでやって、向こうのやり方を覚えるっていう。まあ音楽留学をさせてもらってた感じですね。映画音楽のアルバム2枚とTMのアルバム1、2枚をロンドンのスタジオで作りました。

☆Taku 仕事をしながら自分も技術を習得していったんですね。

小室 そう、そこでエンジニアリングも教えてもらった。ミックスなんてそれまでとても自分が手を付けちゃいけない領域だったけど、「自分でやってもいいんだ」と思えた。90年代からは自分でミックスまでするのが当たり前になって。

☆Taku 「当たり前になって」と言いますけど、パソコンで誰でもミックスができるようになった今と比べて、当時は敷居が高かったと思うんですよ。

小室 うん。なかなかVU(メーター)の振りをLとRで同じようにできなくて、最初は。

☆Taku はい、ありますよね。

小室 最後にコンプかけたら(全体の音量が)めちゃくちゃ小さくなったりとか、そういう失敗をたくさん重ねながらね。

☆Taku なるほど。

小室哲哉

小室 ロンドンからオックスフォードまで2時間くらいかけて、SSL(Solid State Logic)の工場に見学に行ったこともある。コンプのマスターのところだけ売ってもらえないかって聞いてみたりとかして。ダメだったけど(笑)。

☆Taku 日本で活動しているのに勉強がてら海外に移ったのは、クリエイターのやり方や考え方が根本的に違うと思ったからですか?

小室 そうだね。日本だと、エンジニア、ミキサー、マニピュレーター、ミュージシャンってすべて分担されていて「その線から出ちゃダメよ」っていう暗黙の決まりがあって、飛び越せなかったんですよ。僕は、一生アーティストでいるというか、表に出る人間はほかの部分に触っちゃいけないっていうのが嫌だったので海外に行ったんです。向こうでは自分がミュージシャンじゃなくて普通の音楽好きになれたから。

☆Taku うんうん。

小室 日本ではフェーダー1個ちょっと上げようかなっていうことすらできなかったんです。

☆Taku もう手をパチーンと叩かれそうな雰囲気?(笑)

小室 「もうバランス取ったんだから!」って(笑)。

☆Taku 「触るな—!」みたいな。

小室 でも向こうは「あー上げる?」ぐらいな感じだったんだよね。

コンテスト概要 burn WORLD DJ CONTEST 2014 supported by block.fm

エナジードリンク「burn」の主催によりスペイン・イビサ島で開催されるDJの世界大会「burn RESIDENCY」の日本代表を決めるコンテスト。DJミックスに対する一般投票、東京・club asiaでのセミファイナルを経て、現在ファイナリスト5組が選出されている。

2013年はYAMATOが国内選考で優勝。世界大会では勝ち残れなかったものの、世界的DJであるAviciiに共演相手として指名され、国内外のビッグフェスティバルへ出演するなど、DJとして活躍の場を広げている。

イベント情報 burn WORLD DJ CONTEST 2014 JAPAN FINAL

2014年5月4日(日)東京都 渋谷WOMB
START 16:00~

<出演者>

ファイナリスト:BABY-T / DJ QWERTY / JapaRoLL / Kazuma Takahashi / Norihito Ogawa

ゲスト:Shinichi Osawa / ☆Taku Takahashi(m-flo、block.fm) / Tomo Hirata(EDMF) / kz(livetune) / Takeru John Otoguro & WILDPARTY Special B2B Set / CARDZ MC

JAPAN FINAL審査員:Tomoyuki Tanaka(FPM) / ☆Taku Takahashi(m-flo、block.fm) / MITOMI TOKOTO / Kosuke Takada(ageHa Producer) / YAMATO(2013 JAPAN WINNER)

入場無料(未成年含む)・完全招待制
インビテーションを限定配布中

☆Taku Takahashi(タクタカハシ)

DJ、プロデューサー。1998年にVERBALとm-floを結成。ソロとしても国内外アーティストのプロデュースやリミックス制作を行う。「Incoming... TAKU Remix」でbeatportの音楽賞「beatport MUSIC AWARDS 2011 TOP TRACKS」を日本人として初めて獲得し、その実力を証明。2010年にはアニメ「Panty&Stocking with Garterbelt」のサウンドトラックも監修する。国内外のDJが最先端の音と情報を発信するインターネットラジオ「block.fm」を2011年に設立。2014年3月にはm-floとしてBIGBANGのSOL、浜崎あゆみなどをフィーチャーしたニューアルバム「FUTURE IS WOW」とミックスCD「EDM-FLO」を同時リリースした。

小室哲哉(コムロテツヤ)

1958年11月27日東京都生まれ。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家、編曲家、キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、ミキシングエンジニア、DJ。1983年、宇都宮隆、木根尚登とTM NETWORKを結成し、翌年「金曜日のライオン」でデビュー。同ユニットのリーダーとして、早くからその音楽的才能を開花させた。1993年にtrfを手がけたことがきっかけで、一気にプロデューサーとしてブレイク。以後、篠原涼子、安室奈美恵、華原朋美、H Jungle With t、globeなど、自身が手がけたアーティストが次々にミリオンヒットを記録した。2010年に作曲家としての活動を再開し、AAA、森進一、北乃きい、超新星、SMAP、浜崎あゆみなど幅広いアーティストに楽曲を提供する。2014年4月にはソロ新作「TETSUYA KOMURO EDM TOKYO」をリリースした。