ナタリー PowerPush - burn WORLD DJ CONTEST 2014

☆Taku×小室哲哉、初対談で語る日本と海外

「もう1回Boney M.みたいなものをやってみたいんだけどどう思う?」

左から☆Taku Takahashi、小室哲哉。

☆Taku 小室さんがイギリスから日本に戻ってきたとき、国内の音楽は全然違うベクトルに向かっていたんじゃないですか?

小室 かもしれない。ちょうどカラオケがはやり出していた頃だったから。

☆Taku その中で、海外のクラブで体験したことを日本のポップシーンに持ってくるのってけっこう冒険だと思うんですよね。

小室 冒険だったと思う。でも全部を捨ててでもやってみたいくらい、あまりにも衝撃的だった。まずは柔軟な考えを持っている人、10人弱に相談したかな。ジョルジオ・モロダーの仕事やミュンヘンサウンドとかも好きだったから、「もう1回Boney M.みたいなものをやってみたいんだけどどう思う?」ってダイレクトに聞いてみて。そしたら「今までやってきたこと全部失うかもしれないけど、小室くんがやりたいんならいいんじゃないの?」って。まあ当たり前の答えだけど。

☆Taku それが1991、2年?

小室 そうだね。trfを作ろうかなっていう段階。どういうメンバーを集めたら一般的な人たちの耳に届くかなって構想を練り出した頃だった。

☆Taku その頃僕は……高校生でしたね。

m-floの空気感が“MADE IN JAPAN”には聞こえなかった

小室 m-floは、僕にはすごくインパクトがあったな。

☆Taku ありがとうございます。

小室 あの空気感が、全然“MADE IN JAPAN”には聞こえなかった。とうとう僕、潮時かなって思った。あのときは本当に心からそう思った。(宇多田)ヒカルちゃんが出てきたのもそのくらいだよね。1998年頃は、僕はソフトランディングしていかなきゃいけないなって思った時期だった。

☆Taku Takahashi

☆Taku 僕は「日本を変えていきたいな」ってずっと思い続けているんです。それは日本がダメというわけじゃなくて、世界で面白いことがいっぱい起こってるんだから、それを日本でももっとシェアできたらいいのにっていう気持ちが強くて。それで実際にm-floでもそういうことをやったり、インターネットラジオ(block.fm)を立ち上げたりしてるんですけど。

小室 いろんなことやってるよね。

☆Taku 日本ってなかなか海外の情報が伝わらない、発表されないと思うんですよ。で、僕も学生の頃からユーロビートとハウスとニュージャックスウィングがすごく好きで、ビルボードのヒットチャートにダンスミュージックが入ってきたように、日本でもダンスフレーバーのものが出てこないかなって思っていたとき、trfがヒットしたんです。それで四つ打ちをカラオケで歌うっていう新しい現象が起こりましたよね。

小室 そうだね。trfの曲は現場を重視して作ってたんだけど、あの頃のクラブ……クラブっていうよりディスコだけど、あそこには四つ打ちのキックをしっかり出せるサウンドシステムがなくて。ドンと腹にくるような構造ではなかった。だからまずハコから変えなきゃっていう意識があったんだよね。

☆Taku そういったものがない環境の中で作らなきゃならない。例えるなら、日本料理屋の厨房でフランス料理を作るっていう。

小室 そういうのに近いのかもしれない。2、3年は試行錯誤の状態が続いたと思います。「クラブミックス」の意味を説明させてもらえる機会もなかったし、DJがそれを使って流すなんていうわけもなく。邦楽NGに近いようなクラブもあったりして。そういうのもなかなか大変でしたよね。

☆Taku m-floも、ポップスのシーンでは新しいが故に「まだわかんない」って言われつつ、アンダーグラウンドのシーンの人たちからは「これ邦楽だしね」って両方から言われてました。

予定調和なものを壊していくのはチャレンジ

小室哲哉

小室 m-floに感じた新しさをもう少し言うと……最初のコンセプトと、そのディレクションかな。アルバム1枚を通してグルーヴが一貫しているっていうのはすごく感じた。この曲はこう、この曲はこうって感じじゃなくて、メガミックスみたいにスーッと聴けた。コンピュータと生楽器をうまく使いつつ、したいことが壊れずにドロップできるっていうのはすごいと思う。

☆Taku うれしいですね。

小室 それから、外国の人たちとコミュニケーションができるっていうのもm-floの強みのひとつだよね。VERBALが異業種の人たちとコミュニケーションを取って、新しいこと、過激なことをアグレッシブにやっているのもm-floにとって大事なことだし、いいことだと思う。「じゃあこれをプロバイド(供給)するからその代わりに音作って」っていう物々交換的なこととか、何かとのコンビネーションでいろいろなカルチャーが生まれていくっていうのも、すごくやれてると思うので。そういうことをやっていく人がいないとなかなか広がっていかないよね。

☆Taku 日本は、アメリカとかに比べると新しいものが受け入れられやすいって環境ではないように感じるんですよね。だから誰かが予定調和なものを壊していくのはチャレンジだと思うんです。さっき小室さんが言ったように、これまでのキャリアがムダになっちゃうかもしれないけどやっていくっていう。そしてこれは積み重ねが大事で、次は新しい世代の人たちがもっともっと過激なことをやっていってほしいし、何か新しいものを入れたいという人たちの力でどんどんシーンは変わっていくんじゃないかなって思います。

コンテスト概要 burn WORLD DJ CONTEST 2014 supported by block.fm

エナジードリンク「burn」の主催によりスペイン・イビサ島で開催されるDJの世界大会「burn RESIDENCY」の日本代表を決めるコンテスト。DJミックスに対する一般投票、東京・club asiaでのセミファイナルを経て、現在ファイナリスト5組が選出されている。

2013年はYAMATOが国内選考で優勝。世界大会では勝ち残れなかったものの、世界的DJであるAviciiに共演相手として指名され、国内外のビッグフェスティバルへ出演するなど、DJとして活躍の場を広げている。

イベント情報 burn WORLD DJ CONTEST 2014 JAPAN FINAL

2014年5月4日(日)東京都 渋谷WOMB
START 16:00~

<出演者>

ファイナリスト:BABY-T / DJ QWERTY / JapaRoLL / Kazuma Takahashi / Norihito Ogawa

ゲスト:Shinichi Osawa / ☆Taku Takahashi(m-flo、block.fm) / Tomo Hirata(EDMF) / kz(livetune) / Takeru John Otoguro & WILDPARTY Special B2B Set / CARDZ MC

JAPAN FINAL審査員:Tomoyuki Tanaka(FPM) / ☆Taku Takahashi(m-flo、block.fm) / MITOMI TOKOTO / Kosuke Takada(ageHa Producer) / YAMATO(2013 JAPAN WINNER)

入場無料(未成年含む)・完全招待制
インビテーションを限定配布中

☆Taku Takahashi(タクタカハシ)

DJ、プロデューサー。1998年にVERBALとm-floを結成。ソロとしても国内外アーティストのプロデュースやリミックス制作を行う。「Incoming... TAKU Remix」でbeatportの音楽賞「beatport MUSIC AWARDS 2011 TOP TRACKS」を日本人として初めて獲得し、その実力を証明。2010年にはアニメ「Panty&Stocking with Garterbelt」のサウンドトラックも監修する。国内外のDJが最先端の音と情報を発信するインターネットラジオ「block.fm」を2011年に設立。2014年3月にはm-floとしてBIGBANGのSOL、浜崎あゆみなどをフィーチャーしたニューアルバム「FUTURE IS WOW」とミックスCD「EDM-FLO」を同時リリースした。

小室哲哉(コムロテツヤ)

1958年11月27日東京都生まれ。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家、編曲家、キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、ミキシングエンジニア、DJ。1983年、宇都宮隆、木根尚登とTM NETWORKを結成し、翌年「金曜日のライオン」でデビュー。同ユニットのリーダーとして、早くからその音楽的才能を開花させた。1993年にtrfを手がけたことがきっかけで、一気にプロデューサーとしてブレイク。以後、篠原涼子、安室奈美恵、華原朋美、H Jungle With t、globeなど、自身が手がけたアーティストが次々にミリオンヒットを記録した。2010年に作曲家としての活動を再開し、AAA、森進一、北乃きい、超新星、SMAP、浜崎あゆみなど幅広いアーティストに楽曲を提供する。2014年4月にはソロ新作「TETSUYA KOMURO EDM TOKYO」をリリースした。