ナタリー PowerPush - burn WORLD DJ CONTEST 2014
☆Taku×小室哲哉、初対談で語る日本と海外
今の世界と日本の差はスピード感
☆Taku 海外で体感した面白いものを日本に紹介して、チャレンジしながら戦ってきている小室さんだからこそお聞きしたいんですけど、今の世界と日本を比較することはあります?
小室 ☆Takuはどう思う?
☆Taku 僕は、日本は出遅れちゃった感が否めないと思うんです。ヨーロッパやアメリカはもちろんのこと、アジア諸国で行われている世界的なミュージックフェスティバルとかを見ていると、日本は「やっと今年ULTRA(MUSIC FESTIVAL)きましたか!」という状態で。(参照:「ULTRA JAPAN」2014年開催決定、年末にプレパーティ)
小室 本当その通りで。事故があって終わっちゃったけど、ドイツのラブパレードって20年以上前からあったと思うんだよね。あと僕がイギリスにいた頃、クラブが終わったあと明け方からのアフターアワーズにも軽く5000人とか1万人が集まっていたので。倉庫が並んでるところに、ジャンルごとにブースが分かれてて、リストバンドをして自分の好きなところに行けるっていう。
☆Taku 今のフェスの原型に近いですよね。
小室 ヨーロッパがすごいっていうのをいち早く察知したのが、アメリカのヒップホップのプロデューサーたちだと思う。ベイビーフェイスをはじめ、ロドニー・ジャーキンスだったりティンバランドだったり、The Neptunesだったり。彼らは高速ヒップホップみたいな曲を作り出したり、フェスのようなものが必要だなって感じ始めたらさっさと始めちゃったよね。まさに“さっさと”っていうのが一番いい言葉だと思うけど、いつの間にかやっていて。で、ここ2~3年で「ULTRAだったらマイアミ」みたいなイメージを定着させちゃって。アメリカってあんな大国なのにすごいよね。
☆Taku それで言えばアジアで“さっさと”始めたのが韓国。実際マーケットが大きくなりましたよね。
小室 うんうん。
☆Taku 今、「世界と日本の違いって何?」って聞かれたら“スピード感”だと思うんです。向こうのスピード感ってむちゃくちゃ速いって思う。
小室 それは思う。向こうのDJと1日いると疲れるもん。「今これにハマってる」「えっ、もうそっち?」って。
☆Taku ははは(笑)。でも今年ULTRAが開催されるのはすごくグッドニュースだし、おそらくこれをきっかけに、ライブパフォーマンスっていうよりDJベースなフェスっていうのは増えてくるんじゃないかなって思うんですよね。
小室 急がないとTommorowlandが“Todayland”になっちゃうかも(笑)。
☆Taku もっと言うと“Yesterdayland”になっちゃったら恐ろしいですよね(笑)。
小室さんはいろいろな面でパイオニア
☆Taku 今回のコンテストが行われるのには、そんな大規模なフェスで活躍できるDJを育てていこうという意味もあるんです。ご説明すると「burn WORLD DJ CONTEST」というのは、まず日本で1人代表者が選ばれます。そのあとイビサで各国のDJとブートキャンプをやりながら1人が勝ち残るんですけど、「優勝おめでとう! テクニックうまいね!」だけじゃなくて、決まったあと向こうのエージェントがつくんです。
小室 エージェントがつくっていうのはいいねえ。
☆Taku 毎年コンテストをやってハイ終わり、じゃなくて、次世代のスターDJを生むきっかけを作ろうよっていうのが大会の主旨です。日本からイビサに行ったときに、自己主張が強かったり技術のある人たちがいっぱいいる中で勝ち残れるオッズを少しでも高めたいと思って、小室さんをお呼びしました。
小室 ありがとうございます。場違いかなあと思いつつも……。
☆Taku いえいえ。小室さんをメンターに選ばせてもらったのは、パイオニアだからです、いろいろな面で。日本での成功だけじゃなくて、海外で何もないところから戦っていくこと、最近でもEDMを題材にしたアルバム(「TETSUYA KOMURO EDM TOKYO」)を出したり、経験豊富でいて常にチャレンジャーでいること。それを参加者にシェアすれば彼らにとってすごく財産になるし、僕も話を聞きたいし(笑)。向こうに行くとほとんどがヨーロッパの人たちで、やっぱり心細くなると思うんですよね。そういった中で彼らに勇気になる経験を与えてもらえたらなって思ってお呼びしたんです。
自分のアイデンティティを持ちつつ世界へ
小室 m-floや☆Takuは今後どういう方向性でいくの?
☆Taku 最近アジアの国に行くことがよくあるんですけど、向こうでも小室さんたちが築き上げたポップスっていうのはすごく認知度があるんですね。逆に最近のJ-POPはほとんど浸透してないんですよ。それでも、国産でいいものっていっぱい出てると思うんですね。そういうものを日本だけで終わらないでアジア全体でみんなでシェアできる環境を目指してがんばっていきたいなって思ってますね。
小室 どうしてアジアなの?
☆Taku ヨーロッパの一部の人たちは、今週末はイギリス、来週末はスペインって、近い国を気軽に回ってるじゃないですか。よく見てみるとアジアでもそういうことが始まっていて、日本はその中に……。
小室 含まれてない。なるほどね。その中でアンバサダー的な役割は無論重要だよね。
☆Taku 小室さんはいかがですか?
小室 僕はヨーロッパのDJと直接のネットワークがあるし、行くのもアリだけどこっちに来てもらってコミュニケーション取っていこうかな。このコンテストに出るような若い人たちはもちろん行くべきだと思うけど、僕が20代でロンドンに行ったみたいに。僕の世代だと、来てもらってゆっくりとおいしい日本料理とか食べてもらって、イベントに呼び合う約束をするのもいいかな。
☆Taku 小室さんも日本をベースにしつつ、日本以外も見られているんですね。
小室 そうだね。7:3くらいで日本は3だと思う。だんだん小さいマーケットになってきちゃったよね。
☆Taku 好きなことをやるにはやっぱり外に向けていかなくちゃならない。ただし、10:0で日本を無視するんじゃなくて。ベースとなる国でしっかりできてないとうまくいかないですからね。
小室 そうだね。自分のアイデンティティは持ってなくちゃいけないと思う。
コンテスト概要 burn WORLD DJ CONTEST 2014 supported by block.fm
エナジードリンク「burn」の主催によりスペイン・イビサ島で開催されるDJの世界大会「burn RESIDENCY」の日本代表を決めるコンテスト。DJミックスに対する一般投票、東京・club asiaでのセミファイナルを経て、現在ファイナリスト5組が選出されている。
2013年はYAMATOが国内選考で優勝。世界大会では勝ち残れなかったものの、世界的DJであるAviciiに共演相手として指名され、国内外のビッグフェスティバルへ出演するなど、DJとして活躍の場を広げている。
イベント情報 burn WORLD DJ CONTEST 2014 JAPAN FINAL
2014年5月4日(日)東京都 渋谷WOMB
START 16:00~
<出演者>
ファイナリスト:BABY-T / DJ QWERTY / JapaRoLL / Kazuma Takahashi / Norihito Ogawa
ゲスト:Shinichi Osawa / ☆Taku Takahashi(m-flo、block.fm) / Tomo Hirata(EDMF) / kz(livetune) / Takeru John Otoguro & WILDPARTY Special B2B Set / CARDZ MC
JAPAN FINAL審査員:Tomoyuki Tanaka(FPM) / ☆Taku Takahashi(m-flo、block.fm) / MITOMI TOKOTO / Kosuke Takada(ageHa Producer) / YAMATO(2013 JAPAN WINNER)
入場無料(未成年含む)・完全招待制
インビテーションを限定配布中
☆Taku Takahashi(タクタカハシ)
DJ、プロデューサー。1998年にVERBALとm-floを結成。ソロとしても国内外アーティストのプロデュースやリミックス制作を行う。「Incoming... TAKU Remix」でbeatportの音楽賞「beatport MUSIC AWARDS 2011 TOP TRACKS」を日本人として初めて獲得し、その実力を証明。2010年にはアニメ「Panty&Stocking with Garterbelt」のサウンドトラックも監修する。国内外のDJが最先端の音と情報を発信するインターネットラジオ「block.fm」を2011年に設立。2014年3月にはm-floとしてBIGBANGのSOL、浜崎あゆみなどをフィーチャーしたニューアルバム「FUTURE IS WOW」とミックスCD「EDM-FLO」を同時リリースした。
小室哲哉(コムロテツヤ)
1958年11月27日東京都生まれ。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家、編曲家、キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、ミキシングエンジニア、DJ。1983年、宇都宮隆、木根尚登とTM NETWORKを結成し、翌年「金曜日のライオン」でデビュー。同ユニットのリーダーとして、早くからその音楽的才能を開花させた。1993年にtrfを手がけたことがきっかけで、一気にプロデューサーとしてブレイク。以後、篠原涼子、安室奈美恵、華原朋美、H Jungle With t、globeなど、自身が手がけたアーティストが次々にミリオンヒットを記録した。2010年に作曲家としての活動を再開し、AAA、森進一、北乃きい、超新星、SMAP、浜崎あゆみなど幅広いアーティストに楽曲を提供する。2014年4月にはソロ新作「TETSUYA KOMURO EDM TOKYO」をリリースした。