音楽ナタリー Power Push - BUMP OF CHICKEN

結成20周年を飾る新作と20年の礎たるルーツミュージック

BUMP OF CHICKENが2月10日に8作目となるオリジナルアルバム「Butterflies」をリリースする。約2年ぶりという、バンドにとっては比較的短いインターバルで発表されるこの新作は、「Hello,world!」や「コロニー」など既発曲が5曲、「Butterfly」など書き下ろしの新曲が6曲という構成だ。

彼らはバンドの結成20周年記念日となる2月11日に、千葉・幕張メッセにて「BUMP OF CHICKEN結成20周年記念Special Live『20』」も行う。今回音楽ナタリーではメンバー4人への取材を実施。アルバム制作の裏側に加え、結成時から今に至るバンドの音楽的なルーツについても、20周年という節目を機会に語ってもらった。

取材・文 / 柴那典

完成して、ハニワのような空っぽの人間になった

──アルバム、非常に素晴らしかったです。

全員 ありがとうございます。

──この新作は、完成図を最初にイメージして作っていったんでしょうか? それとも、できあがったらこういう形になったという作品なんでしょうか。

藤原基央(Vo, G)

藤原基央(Vo, G) 完全に後者ですね。2015年の最初のほうは「コロニー」と「Hello,world!」をレコーディングしてまして。それがリリースされた4月くらいから曲作りを始めて、7月中旬くらいには僕が1人でデモ段階の曲を5曲書いたんです。そのあと夏の単独ライブと夏フェスが終わって間もなくして、もう1曲書けまして。その時点で既発曲と合わせて11曲になったから、これでアルバムということでいいんじゃないかとスタッフに言われて、そのときに初めて「あ、アルバムか」って気持ちになったと思います。

──アルバムの全体像をイメージするより、1曲1曲をまずは作っていったという?

藤原 そうですね。まず、僕だけの弾き語りのデモテープを6曲分作って、そのあと僕とプロデューサーだけである程度のアレンジをして。それから4人とプロデューサーで改めてアレンジをするという、その流れを1曲ずつやっていきました。

──では、アルバムが完成した実感、手応えはどんな感じでしたか?

藤原 えーと……これがまた、その6曲の作業がすべて終わったのが去年の12月に入ってからの話で。いろいろあって、マスタリングした音源を受け取ったのが12月28日だったんです。だけど、そのときは僕ら、紅白(「第66回NHK紅白歌合戦」)と「COUNTDOWN JAPAN」に向けての準備でてんてこ舞いだったもので、まともにそれを聴けない状態のまま年が明けて。年が明けてからは、これは僕個人の話ですけど、何かもう……ハニワのような空っぽの人間になった感じで(笑)。

升秀夫(Dr) だから、今の時点ではまだ実感はそんなにないんです(取材は1月上旬に実施)。

増川弘明(G) 発売したCDを手に取ってくれる人がいたときとか、ライブで初めてその曲を演奏したときとか、そういうところでアルバムが完成した実感が湧いてくるんじゃないかと思ってます。

今までのアルバムで一番「バンドサウンド」になった

──聴かせていただいた印象としては、オープンで、風通しがよくて、しかもBUMP OF CHICKENらしさもある1枚という感じがしたんですけれども。皆さんは今の時点で、アルバム全体の感触はどうですか? どんな作品ができあがったと感じますか。

直井由文(B) 本当に簡単な感想なんですけど、今までの僕らのアルバムの中で一番、「バンドサウンドだな」と思いました。4人のバンドのサウンドになったな、と思ってます。

──というのは、どういうところで感じられたんですか?

直井 藤原くんが作った6曲のデモを僕らが聴いたのは10月くらいだったんですよ。まず「GO」から聴いて、それをどう料理しようかっていうことで、次の日には3人でスタジオに集まって。で、藤原くんはその間に次の曲のアレンジを始めてるんですね。

藤原 違うスタジオでね。プロデューサーとアレンジをして、できた順にメンバーのところに届けていたんです。

直井 深夜3時くらいに僕らのほうの作業が終わったら、「そっちはどうなの? 今何してんの?」みたいな感じで、LINEでやりとりして。で、こっちのスタジオで僕らが作ったアイデアを聴いてもらって「ここはもっとこうしたほうがいいんじゃないか」とか、そういう話をして。そのときに藤原くんがアレンジしていた別の曲を聴かせてもらったり、という。

──4人で話しながら作っていったんですね。

直井 いつもは1人ひとりで考える時間が長いんですけど、その時間が少なかったんです。だから、これまでよりもお互いのパートに踏み込んで意見を出し合った。今までで一番4人が言葉でコミュニケーションをとって作ったアルバムなのかなと思います。

藤原 ライブのリハと並行してアレンジ作業を進めていたのもデカかったんじゃないかな。「RAY」のときは、曲を作ったらアコースティックギターの弾き語りの段階でメンバーに渡して、1人ひとりがそれにアレンジを付けてきて、それぞれのよいところを合わせていく作業をしていたんです。でも今回は3人ないし4人が一緒にいることが多かったから、みんなでどうしようかと考えながらできた。もちろん「RAY」のときに、1人ひとり作業をがんばってやってみた経験もすごく大きく機能したんじゃないかなって思います。

直井 今回は集中して思いっきり走ることができた感じですね。レコーディングしてるときは友達にも会わなかったし、好きな映画も観に行かなかったし、マンガも読まない、ゲームもしない、みたいな感じ(笑)。いるのは家とジムとスタジオで、考えるのは曲のことだけ。会う相手はメンバーだけ、という。

──とても濃密だった。

直井 そうですね。で、そのことで何よりも一番シャープになったのが、バンドのグルーヴなんじゃないかなと思います。

ニューアルバム「Butterflies」/ 2016年2月10日発売 / TOY'S FACTORY
初回限定盤
初回限定盤A [CD+DVD] / 4860円 / TFCC-86550
初回限定盤B [CD+Blu-ray] / 5940円 / TFCC-86551
通常盤
通常盤 [CD] / 3240円 / TFCC-86552
CD収録曲
  1. GO
  2. Hello,world!
  3. Butterfly
  4. 流星群
  5. 宝石になった日
  6. コロニー
  7. パレード
  8. 大我慢大会
  9. 孤独の合唱
  10. You were here
  11. ファイター
初回限定盤A付属DVD・初回限定盤B付属Blu-ray
-Music Video-
  1. You were here
  2. ファイター
  3. パレード
  4. Hello,world!
  5. コロニー
-Special Live 2015 at Yokohama Arena-
  1. パレード
  2. Hello,world!
  3. ハンマーソングと痛みの塔
  4. 才悩人応援歌
  5. morning glow
  6. ファイター
  7. 太陽
  8. ギルド
  9. ハルジオン
  10. embrace
  11. 虹を待つ人
  12. 乗車権
  13. supernova
  14. ガラスのブルース
  15. ray
  1. EN1. コロニー
  2. EN2. メーデー
BUMP OF CHICKEN(バンプオブチキン)

藤原基央(Vo, G)、増川弘明(G)、直井由文(B)、升秀夫(Dr)の幼なじみ4人によって結成。地元・千葉や下北沢を中心に精力的なライブ活動を展開し、1999年に1stアルバム「FLAME VEIN」、2000年に2ndアルバム「THE LIVING DEAD」をリリースする。これが大きな話題を呼び、同年9月にシングル「ダイヤモンド」でメジャーデビュー。2001年にはシングル「天体観測」が大ヒットを記録し、ロックファンを中心に熱狂的な支持を集めた。その後順調にキャリアを重ねていき、2014年には7枚目のオリジナルアルバム「RAY」の発表をはじめ、初音ミクとのコラボレーション、初の東京ドーム公演などでも話題を集める。2014年12月に全国ツアー「WILLPOLIS 2014」を追ったドキュメンタリーとオープニングムービーで構成された映画「BUMP OF CHICKEN "WILLPOLIS 2014" 劇場版」が全国の劇場で公開され、2015年2月にはDVD / Blu-ray化された。同年4月にはテレビアニメ「血界戦線」の主題歌「Hello,world!」と映画「寄生獣 完結編」の主題歌「コロニー」を収録した両A面シングルをリリース。結成20周年となる2016年2月、約2年ぶりのフルアルバム「Butterflies」を発表し、地元・千葉県の幕張メッセにて「BUMP OF CHICKEN結成20周年記念Special Live『20』」を開催。4月からは「BUMP OF CHICKEN STADIUM TOUR 2016 "BFLY"」を行う。