音楽ナタリー PowerPush - BUMP OF CHICKEN

アニメ「血界戦線」主題歌に投影した自らの感情

今作で行われた“リベンジ”

──「Hello,world!」ができたのはいつ頃でしたか?

直井 去年の年末頃ですね。主題歌の話をいただいて、藤原くんと理恵監督が会って、そこからすぐでした。

藤原 時間は全然なかったですね。お会いして数日のうちにできた感じでした。

直井 藤原くんのギターが2本と歌が入ってるデモを聴いたら、それがめちゃくちゃカッコよくて。でも、その時点でカレンダー見たら「あれ? 3日後にプリプロって書いてある......」(笑)。次の日、僕の家に藤原くん以外の3人で集まって、升くんが打ち込んだドラムを流しながら、増川くんのギターと僕のベースをあれこれ考えて。その翌日は4人で集まってスタジオで音を合わせて、さらにその次の日にはプリプロをして、細かいキメの位置とかいろんなことを決めていったんです。

──今回は曲作りもアレンジも、すごくテンポよく作業が進んでいったんですね。

藤原 はい。時間がかかるときは本当にかかるんですが、ここ数年は曲を書こうと思ったらわりと高い確率で時間をかけずに書き上げることができていて。

直井 そのおかげでテンポよく進んだんですけれど、ただ「テンポよくできた! イエイ!」で終わる感じではなくて。というのも「ファイター」「パレード」は、完璧だと思って仕上げたんですけど、作り終えてから「もっとこんなふうにできたんじゃないか」って思ったんです。もちろん、後悔があって嫌いな曲ということじゃないし、その時点ではベストなアレンジができたと思っているんですけれど、今回の「Hello,world!」 「コロニー」ではそれにリベンジするっていう気持ちが強かったですね。

みんな同じものが見えていた

──増川さんはデモを聴いてどういう印象を持ちましたか?

増川弘明(G) 「Hello,world!」のデモはギター2本と歌だけでリズムも入ってない状態だったんですけれど、最初から楽曲のノリやムードにつながるような高揚感や疾走感があったんです。で、今回はスピード感が大事だったので、キメとかもスタジオのその場で合わせて修正を入れながら作っていくような手法でした。スピード感とテンションの高さをずっとキープしていくみたいな。

──藤原さんは「Hello,world!」の仕上がりについてどう感じましたか?

藤原 最初に思い描いていたものとできあがったものに、あまり差はなかったと思います。

──「Hello,world!」のデモと最終形はそれぞれ同じ方向を向いていたということですよね。どうやって制作を進めていったんでしょうか。

藤原 細かく言語化できないんですけど、大ざっぱながらみんな同じものが見えていて。でも、それを大ざっぱなまま作ってみたら最初は全然できなくて、っていう感じだったよね?

直井 そうだね。

藤原 それから4人でどんどん正しいイメージを探って、一番正解に近い形にしていったっていう感じですね。

──「Hello,world!」はプレイヤーとしての見せ場もたくさんあるアレンジだと感じました。

直井 レコーディングをしながら「ここを何小節伸ばそう」とか「ここはカットしよう」と言って録音し直したり、1拍や半拍の単位でキメをちょっとずつずらしたり。数学的な作業でしたね。

増川 こういう手法もできるようになったのかなという感じがしました。楽しかったですね。

升秀夫(Dr) アニメ主題歌となるワンコーラス分だけのバージョンを先に作るというやり方が、僕らにとってはすごく特殊で面白かったです。ワンコーラスを完成させて、それから曲をどう展開するのかというところでもすごく試行錯誤しました。正解に辿り着くまでは時間がかかりましたけど、段階的に曲を理解していく感覚もあって、面白い作業だったと思います。

最適なテンポとドライブ感を生んだ理由

──曲のテンポはかなり速いですよね。

藤原 僕が歌いながら曲を作ってたんですけど、歌が気持ちよく歌えて、言葉がちゃんと過不足なく機能するテンポっていうのが曲に一番ふさわしいものなんですね。歌いながら作ってると、そこに速すぎるとか遅すぎるとか、そういう無理もないんです。でも秀ちゃんが叩いたドラムを聴いて、「こんな大変そうにして……本当にごめんね」とは思った(笑)。

 でもこの曲をパッと聴いただけだと「速いな」って感じないと思うんですよ、ドライブ感や疾走感があることとテンポはあまり関係ないから。藤原くんが言う「歌ってて気持ちいいテンポ」っていうのは曲そのものが持ってるドライブ感につながるものだと思うし、そこは涼しい顔してるふうでやりたいなと(笑)。

藤原 じゃあ、まずは表情から練習してね(笑)。

 顔からね(笑)。曲の持ってる本質的なスピード感を表現できるビートが出せればいいので、それはしっかりちゃんといい感じになってるんじゃないかなと思ってます。

──ベースラインも曲が持ってるドライブ感や疾走感に大きく寄与していると思うんですが、直井さんはどういう気持ちで演奏を?

直井 自分がアニメソングを好きだった熱い気持ちと、藤原くんの作った曲に抱く熱い気持ちがぶつかりあって抑えることができず、こうなってしまいました(笑)。

──なるほど。

直井 僕は子供の頃、アニソンが本当に好きで。メンバーともよくテレビにかじりついてアニソンの話をしたし、そもそも僕が音楽を好きになったきっかけでもあるし。そこから中学に入ってバンドやるようになり、藤原くんの作ってくる曲から今まで味わったことのないぐらいすごいドキドキを感じて。で、そこからバンドを続けてきて、今回初めて連続テレビアニメシリーズの主題歌をやらせてもらうようになった。

──初めてなんですね。

直井 映画では「ONE PIECE」の曲(「ONE PIECE THE MOVIE デッドエンドの冒険」の主題歌「sailing day」)や「ドラえもん」(「映画ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 ~はばたけ 天使たち~」の主題歌「友達の唄」)を担当したこともありましたけど。

藤原 「カルマ」(「テイルズ オブ ジ アビス」主題歌)もあったね。

直井 「カルマ」はもともとゲームの主題歌として作って、それがアニメ化されたときに、アニメでも使用していただいたんです。だから、そこもちょっと違うもので。だから今回すごくうれしくて。

──直井さんがいろんなアニソンから感じてきたグッとくるポイントを、この曲で自ら表現できたんですね。

直井 はい。僕はベーシストとして、ベースのうねり出す位置とかキメの部分にアニソンならではのポイントがあると感じていて。もちろん4人ともミュージシャンなので、同じように各人が本能的に感じ取って共有しているものなんですけれど。僕の場合はアニソンが好きな気持ちがこじれて爆発しちゃった(笑)。

BUMP OF CHICKEN ニューシングル / 2015年4月22日発売 / TOY'S FACTORY /「コロニー / Hello,world!」
期間限定盤 [CD+DVD] / 1500円 / TFCC-89539
通常盤 [CD] / 1080円 / TFCC-89540
「Hello,world! / コロニー」
初回限定盤 [CD+DVD] / 1500円 / TFCC-89538
期間限定盤、通常盤CD収録曲
  1. Hello,world!
  2. コロニー
期間限定盤DVD収録内容
  • 「Hello,world!」スタジオライブ映像
初回限定盤CD収録曲
  1. コロニー
  2. Hello,world!
初回限定盤DVD収録内容
  • 「コロニー」スタジオライブ映像
BUMP OF CHICKEN「Hello,world! / コロニー」CD購入者限定リリース記念スペシャルライブ
2015年7月30日(木)大阪府 インテックス大阪
2015年8月4日(火)神奈川県 横浜アリーナ
BUMP OF CHICKEN(バンプオブチキン)

藤原基央(Vo, G)、増川弘明(G)、直井由文(B)、升秀夫(Dr)の幼なじみ4人によって1994年に結成。地元・千葉や下北沢を中心に精力的なライブ活動を展開し、1999年に1stアルバム「FLAME VEIN」、2000年に2ndアルバム「THE LIVING DEAD」をリリースする。これが大きな話題を呼び、同年9月にシングル「ダイヤモンド」でメジャーデビュー。2001年にはシングル「天体観測」が大ヒットを記録し、ロックファンを中心に熱狂的な支持を集めた。その後順調にキャリアを重ねていき、2014年には7枚目のオリジナルアルバム「RAY」の発表をはじめ、初音ミクとのコラボレーション、地上波音楽番組への生出演、初の東京ドーム公演などでも話題を集める。同年11月、羽海野チカ作のマンガ「3月のライオン」のテーマソングとして書き下ろした「ファイター」、映画「寄生獣」の主題歌「パレード」をそれぞれ配信リリース。12月にツアー「WILLPOLIS」を追ったドキュメンタリーとオープニングムービーで構成された映画「BUMP OF CHICKEN "WILLPOLIS 2014" 劇場版」が全国の劇場で公開され、2015年2月にはDVD / Blu-ray化された。4月には映画「寄生獣 完結編」の主題歌「コロニー」とテレビアニメ「血界戦線」の主題歌「Hello,world!」を収録した両A面シングルをリリースする。