音楽ナタリー Power Push - 朝倉さや

音楽で今一度日本を洗濯し候

朝倉さやが12月21日にニューアルバム「日本漬け」をリリースした。

今作は「世界に誇れる日本の音楽を届けたい」というコンセプトのもとに制作されたカバー集。「上を向いて歩こう」や「やさしさに包まれたなら」といった日本のポップスの名曲や、アニメソング「残酷な天使のテーゼ」、自ら三味線を弾いて唄った山形民謡の「新庄節」など、幅広いジャンルのカバーが収録された。民謡日本一に2度輝いた実力と、山形弁による名曲カバーなどで大きな話題を集めてきた彼女ならではの作品に仕上がっている。最近では持ち前の明るいキャラクターでテレビやラジオなどへの出演でも多忙な中、既発曲でも曲によってはレコーディングを1からやり直すなど、シンガーとしての自分にストイックに向き合いながら作ったという「日本漬け」に込めた思いを聞いた。

取材・文 / 上野三樹 撮影 / 塚原孝顕

すべて音楽につながっている

──前作「快進撃のミュージック」からわずか8カ月でのアルバムリリースとなりました。精力的に音楽活動をしている一方で、テレビやラジオなどへの出演といった仕事もかなり多かったと伺っていますが、音楽活動とメディアへの出演といった仕事をご自身の中でどう切り替えていますか?

朝倉さや

本当にありがたいことに、静岡のテレビ番組ではレポーターとしてレギュラー出演させていただいていたり、いろいろやらせていただいていた1年でした。ただ仕事によって自分の中で切り替えるということはなくて、全部が私の音楽や歌につながってると思うんです。だからすべての仕事を全力でやらせていただいています。

──今作「日本漬け」は“日本の名曲を歌う”というコンセプトのカバー集ですが、こういう作品をリリースしたいという構想は以前からあったんですか?

そうですね。例えば5年、10年経っても「これが日本の音楽だ」って言えるような、そんな日本の名曲を歌ったアルバムを作りたいという気持ちは以前からありました。

──民謡もポップソングもアニメソングも、さやさんならではのテイストが出たカバーになりましたね。

「残酷な天使のテーゼ」もコブシをガンガン効かせて歌わせていただきました(笑)。盆踊りふうのトラックにアレンジしてもらって、そこに私が民謡のお囃子のような気持ちで「よいしょ!」なんて合いの手も入れたりしています。そうすることで、より日本らしさが出せた気がします。

何度も歌い直した「新庄節」

──曲によって民謡のコブシや山形弁の入れ方の割合は違いますね。

曲そのもののよさを邪魔してしまわないように曲によって歌い方を調整しています。例えば大江千里さんの「Rain」を歌わせていただいていますが、この曲はストレートに歌うようにしました。コブシはカッコいいけど、たくさん入れるとくどくなるときもあるので、どうすれば聴いてくれる人が心地よいかを一番に考えながら歌っています。でも山形民謡の「新庄節」はガチの民謡としてコブシを効かせまくっています! アルバムには現代音楽と融合させた「新庄節-Future Trax-」と、オーソドックスな「新庄節」の2パターンを収録していますので聴き比べてもらいたいですね。

──「新庄節」のミュージックビデオでは、さやさんが三味線を弾いているレコーディング風景が新鮮でした。

あの三味線は私が小学生のときからずっと使っているものなんですけど、普通のものより短い“短竿ちゃん”です。三味線を演奏しているところをお見せする機会はあまりないですし、歌入れをしているときも見られていることを意識していないのでレコーディングの様子がMVになるのって恥ずかしいんですけどね。「新庄節」はコブシの入れ方とかが本当に難しくて、曲の中の温度感みたいなものがどんどん変わるので、何度も歌い直しました。民謡を知らない方はこの曲を聴いて「これが民謡なんだ!」と思うわけですから、少しでもいい歌を収録したいなという思いでした。

朝倉さや

──さやさんの歌声から民謡に込められている思いを感じられました。

民謡は日本の素晴らしい伝統文化で、昔の人の気持ちが歌になって伝えられていると思うので、聴いてそう感じてもらえるのは一番うれしいことです。民謡は難しいですけど、日本の文化がここに詰まっていると思うので「がんばって行くべ!」と思って、これからも民謡を追求していきたいですね。

ニューアルバム「日本漬け」 / 2016年12月21日発売 / 3000円 / Solaya Label / SLSC-0010
「日本漬け」
収録曲
  1. 木蘭の涙 ft.中孝介
  2. 新庄節-Future Trax-
  3. やさしさに包まれたなら
  4. Rain
  5. 涙そうそう
  6. いつも何度でも
  7. もう恋なんてしない
  8. 残酷な天使のテーゼ
  9. クリスマスイブ
  10. 上を向いて歩こう
  11. 新庄節

<ボーナストラック>

  1. ゆらゆらゆらら Jazz & Bossa ver.
  2. 東京 Live ver. @静岡市民文化会館

2017年 朝倉さや ホールコンサートツアー(仮)

  • 2017年7月1日(土)東京都 よみうり大手町ホール
  • 2017年7月17日(月・祝)山形県 山形市民会館
  • 2017年8月11日(金・祝)宮城県 電力ホール
  • 2017年8月12日(土)山形県 響ホール
  • 2017年9月18日(月・祝)静岡県 静岡市民文化会館
朝倉さや(アサクラサヤ)
朝倉さや

山形県出身のシンガーソングライター。家族の影響を受けて小学生の頃から民謡を習い始め「民謡民舞少年少女全国大会」で、2度優勝した経験を持つ。18歳で上京し、Solayaのプロデュースのもとオリジナル曲の制作を開始した。2013年4月にデビューシングル「東京」をリリース。2014年10月には「タッチ」「女々しくて」「ロビンソン」といった楽曲を山形弁で歌ったカバーアルバム「方言革命」を発表し、大きな話題を呼ぶ。また2015年9月に発表された「River Boat Song-Future Trax-」では、「第57回日本レコード大賞」の企画賞、「第8回CDショップ大賞2016」の東北ブロック賞を獲得。2016年4月にニューアルバム「快進撃のミュージック」を、12月にはカバーアルバム「日本漬け」をリリースした。