音楽ナタリー Power Push - 朝倉さや

民謡日本一の山形娘が繰り広げる快進撃

「民謡日本一の山形娘」というインパクトのあるキャッチコピーを持つシンガーソングライター・朝倉さや。小学2年生から民謡を習い、「民謡民舞少年少女全国大会」で2度グランプリを獲得した実力の持ち主でありながら、シンガーソングライターを目指して18歳で上京した彼女は、オリジナル曲のみならず、名曲の山形弁カバーなどでも話題を集め、持ち前の明るいキャラクターでTVやラジオといったメディアでも活躍している。そんな彼女がさらなる飛躍を遂げようとニューアルバム「快進撃のミュージック」を発表した。

音楽ナタリーでは唯一無二の音楽性と存在感を持つ朝倉にインタビューを実施。民謡に打ち込んだ山形時代のエピソードや、上京後の奮闘、自身の音楽に対するスタンスなどをじっくりと語ってもらった。

取材・文 / 上野三樹 撮影 / 塚原孝顕

遊びに行かず民謡の練習

──朝倉さやさんは歌唱も活動方法も本当に唯一無二という感じですよね。山形のご出身で、小学2年生から民謡を習い始めたということですが、民謡って山形でも一般的にみんなが習っているようなものではないですよね。

朝倉さや

はい。小学校、中学校、高校を通じて民謡をやっているのは学校で私1人でした。だから「民謡をやってる」って言うと「民謡って何だべ?」みたいな感じで、民謡を知らない友達が多くて、「こんなだよ」って歌って教えたりしていました。でも家族が民謡好きなので、私も自然に歌い始めて。もっと上手になりたいなと思ったのが習い始めたきっかけです。

──民謡グランプリで日本一になられたそうですね。

「民謡民舞少年少女全国大会」っていう、地区大会から勝ち抜いた人たちが集まる大会で小学生と中学生のときの2回、優勝したことがあります。その頃は学校が終わったら遊びにも行かず、とにかく毎日練習していました。コブシとかけっこう難しいんですけど、先生に教えてもらって。今はもう習ってはいないんですけども、民謡は本当に素晴らしい日本の伝統文化だと思ってるんです。その土地ごとの生活の中で生まれたものが歌になっているし、民謡は歌い継がれていくべきものだと思うので、「伝統×最先端」をテーマにアルバムを作ったりライブをしたりして活動しています。

山形民謡の名曲・最上川舟唄をアレンジ

──山形の民謡にはどんな生活や景色が歌われているんですか?

身振り手振りを交えて山形県の形を説明する朝倉さや。

「花の山形 紅葉の天童」っていう歌詞の「花笠音頭」が有名で私も好きな曲なんですけど、特に好きなのは「最上川舟唄」という民謡ですね。山形って地図で見ると人の横顔みたいな形をしてて、県の中に最上川という大きな川があるんです。今でも船頭さんは「最上川舟唄」を歌いながら舟下りをしたりして。「最上川舟唄」って曲調が一定じゃなくて面白いんですよ。ウワーッと伸びるところがあったり、手拍子したくなるところがあったりして。名曲だと思います。

──その「最上川舟唄」をもとにさやさんの「River Boat Song」が生まれたんですね。

んだんだ!(東北弁で同意を表す言葉) 「最上川舟唄」と最先端の音楽を融合させたのが「River Boat Song」です。最初にプロデューサーのsolayaさんが「最上川舟唄」をアレンジした音源を提案してくれて。これはすごい! まさに民謡の可能性を広げられる曲だ!と思いました。

──「River Boat Song」は、民謡に対する予備知識がなくても自然に聴ける曲ですよね。

民謡の素晴らしさと最先端の音楽の素晴らしさが融合した曲です。民謡を知らない人にも民謡の面白さ、魅力を伝えられたらうれしいですね。民謡を知らない人に民謡の面白さ、魅力を伝えられたらうれしいですね。

ニューアルバム「快進撃のミュージック」 / 2016年4月27日発売 / 3000円 / Solaya Label / SLSC-0009
「快進撃のミュージック」
収録曲
  1. おかえり-manzumamake-
  2. River Boat Song
  3. 覚めないはじまり
  4. ゆらゆらゆらら
  5. シャルロットの舞踏会
  6. 春の風
  7. だもんでレボリューション
  8. 伝説生物
  9. 大切なハナシ
  10. 街の背中
  11. ブルーチーズ
  12. 頼りない羊
  13. 東京-Future Trax-
朝倉さや(アサクラサヤ)
朝倉さや

山形県出身のシンガーソングライター。家族の影響を受けて小学生の頃から民謡を習い始め「民謡民舞少年少女全国大会」で、2度にわたって優勝した経験を持つ。18歳で上京し、solayaのプロデュースのもとオリジナル曲の制作を開始した。2013年4月にデビューシングル「東京」をリリース。2014年10月には「タッチ」「女々しくて」「ロビンソン」といった楽曲を山形弁で歌ったカバーアルバム「方言革命」を発表し、大きな話題を呼ぶ。また2015年9月に発表された「River Boat Song-Future Trax-」では、「第57回日本レコード大賞」の企画賞、「第8回CDショップ大賞2016」の東北ブロック賞を獲得した。2016年4月にニューアルバム「快進撃のミュージック」をリリースする。