音楽ナタリー Power Push - Anly
離島出身18歳シンガーソングライターの第一歩
みんながつなげてくれた
──作曲はいつから?
ある日「歌手になるには、歌も作らないといけないんじゃないかな」って、自分が歌うための曲を作らなきゃと中学2年生頃に思って。その頃からまず歌詞を自分で書き始めました。小さい頃から歌手になりたいというのはあったんですけど、どうやったらなれるのかがわからなくて。それでギターがあるから作ろうって中学校3年ぐらいから曲も作り出して、そこからシンガーソングライターという道を考え始めました。
──本格的に演奏するようになったのはいつでしょうか?
那覇の高校に入って部活でマーチング部に入ってトロンボーンをやってました。でも正月ぐらいしか休みがないようなすごく忙しい部活で。部活の合間に曲はちょっとずつ書きためてたんですけど、発表する時間と場所がなくて。で、やっぱり歌が歌いたいなと思って高2のときに部活を辞めて楽器をギターに持ち替えました。で、Anlyとして初めてライブをやったのは伊江島で。それを観に来てくれた人が「いい歌だね」「いい声だね」って言ってくれて、「じゃあもっとやってみよう」と思ったんです。そのライブのときに一緒にライブをしてたバンドの方に紹介してもらった首里のライブハウスに行って、飛び入りライブをやりました。
──伊江島のバンドの方というのは?
伊江島の先輩です。その人が「Anlyが歌いたいって言ってるから、やらせてみよう」って。私が歌が好きっていうのは伊江島の人たちみんな知ってるんです。あの家の子は歌が好きだ、みたいな立ち位置だったんで(笑)。それで「ライブやりたいらしい」って、たぶん父がバンドの人に伝えてくれたんだと思います。
──那覇ではライブの機会も増えて?
はい。お店(ライブハウス)にごはんを食べに行ったら店主の方が、「あなた、音楽してるんだったら私がごはんを作るまで歌ってていいわよ」って言われて「やったあ!」って(笑)。そこで歌ってたら、いいと思ってくれたらしくて、それで(事務所の)社長に電話してくれて。そこからいろんなところに「ブルースを歌う面白い子がいる」っていうのが、店主さんとかを通じて広がって、また歌うようになってっていう感じですね。
──そのときは何を歌ったんですか?
「Boys Blues」って、前のCD(8月リリースのインディーズ盤シングル「Bye-Bye」)に入ってるオリジナル曲を歌ったんですけど。それでブルース歌うから面白いと思ってくれたみたいで。
miwaのオープニングアクト
──「Boys Blues」はライブバージョンが入ってますね。
miwaさんのライブのオープニングアクトを2014年6月にやったときの、すごくドキドキ感あふれるライブ音源です(笑)。
──全国各地の地元で活動しているアーティストからオープニングアクトを公募したというツアーですね。
はい、その沖縄代表として選ばれて。あんなにたくさんの人の前で歌うの初めてで、びっくりしました。miwaさんのファンの方も温かく見守ってくれて。いろんな経験をさせてもらったなと思います。
──そこで歌ってどう感じました?
「プロの方が立つ舞台ってこんな感じなんだ」って。あんなに人の顔があるのはすごいなと思いました(笑)。いつかは自分も、もっとたくさんの人の前で歌いたいなってライブをしながら思ってたことが、脳裏に焼き付いてます。「Boys Blues」のほかには「北斗七星」と、miwaさんの「オトシモノ」をカバーしました。
──貴重な体験でしたね。ますます具体的に自分の目標が固まっていくっていう。
そうですね。あやふやだったものが形になっていった。
楽曲から浮かび上がる景色
──それからデビューすることに?
その後はまず「『Bye-Bye』の音源を作ってみない?」と言ってくれたスタッフさんがいて、東京で作ろうかっていう感じになりました。それが去年の春ぐらいですね。初めてバンドレコーディングをして、セッションみたいな形でやったので、それも楽しかった。今まで1人で歌ってた曲をバンドでやって、音が重なっているのを初めて聴いたときの感動をすごく覚えてます。こんなふうに捉えてくれたんだって。
──Anlyさんの中で、こんな音にしたいってイメージはあったんですか。
「最初はアコギから始めたい」とかは伝えましたけど、あまり具体的に言わなくても不思議とイメージが一致してて。例えば「Bye-Bye」はパワフルなイメージでみんなやってくださって。「This Town」はバスに乗ってるときの光景を描いたので、そういう光がパッパッパッて移っていくイメージで、ぐるぐる回ってるようなサウンドにしたいと思って。でもそれを言わなくてもイメージに合わせて演奏してくれて。やっぱりプロの人はすごいなって(笑)。
──「This Town」はバスの歌なんですね。
伊江島から出てからバスに乗る機会が増えたんです。伊江島はバスに乗らなくてもどこにでも行けたので(笑)。車窓からの景色が、後ろに飛んでいくような感覚がすごく楽しいし、見たことのない光景もいっぱいあって。あと島にはない渋滞の様子とか、空を飛んでるみたいにモノレールがビューッて動くのもすごかったし。一番アッて思ったのは、道端で寝てる人の姿。自分の中ではすごい衝撃的でした。でもその光景にどんどん慣れていってしまう。私はそれを当たり前って思ってほしくないなって思って、「This Town」を作ったんですね。だからこの曲を聴くたびに、島から初めて出てきて「わーすごいな」「これは嫌だな」って思ったものが浮かんで。それを忘れないでねっていう自分へのメッセージみたいな意味合いもあります。
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- メジャーデビューシングル「太陽に笑え」 / 2015年11月25日発売 / Sony Music Records
- 初回限定盤 [CD+DVD] 1620円 / SRCL-8938~9
- 通常盤 [CD] 1258円 / SRCL-8940
CD収録曲
- 太陽に笑え
- Don't give it up! feat.Gabrielle Aplin
- Come back
- 太陽に笑え-instrumental-
- Don't give it up!-instrumental-
初回限定盤DVD収録内容
- 太陽に笑え Music Video
- Coming Soon Movie~伊江島~
Anly(アンリィ)
沖縄・伊江島出身、1997年生まれの女性シンガーソングライター。幼少期から父親が持っていたロックやブルースのCDを聴き、ギターを弾いて過ごした。中学3年生から作曲をはじめ、2014年6月にmiwaの沖縄公演のオープニングアクトを務める。2015年8月にインディーズからシングル「Bye-Bye」をリリース。11月には関西テレビ・フジテレビ系ドラマ「サイレーン 刑事×彼女×完全悪女」の主題歌となるメジャーデビューシングル「太陽に笑え」を発表する。