ナタリー PowerPush - アンジェラ・アキ
音楽人生を捧げる「LIFE」 デビュー5周年は新たな旅立ちの一歩
「『正しい』と『間違い』の間に真実がある」
──通して聴くとやはり最後の2曲(「母なる大地」「LIFE」)は特に印象的で。アンジェラさんの王道であるピアノと歌、そこに新しい挑戦をみせるサウンドが入ってきてすごくドラマチックでした。まず「母なる大地」なんですが、これ、歌い出しまでに1分40秒もありますよね。
あはは! これじゃラジオでかけてもらえないですよね!(笑) でも最後の2曲をピックアップしてくれたのはすごくうれしいですね。やっぱりそこに込めた思いは格別なので。「母なる大地」ってふるさとの歌なんですけど、これは、もう一度デビュー曲の「Home」と同じテーマで作ってみたんです。でも今回はただふるさとを思うだけではなくて、同じふるさとから旅立っていくっていう決意を込めました。だから歌詞に「旅立ち」っていう言葉はどうしても入れたくて。
──なぜ今、「Home」と同じテーマで曲を作ろうと思ったんですか?
やっぱり今年は5周年の節目であり旅立ちの1年目と思ってるので。「Home」を歌ったときはデビューすることが夢だった。けど5年経った今、グラミー賞を獲りたいとか、カーネギー・ホールで弾き語りをやりたいとか、まだ叶ってない夢や新しい夢がいっぱいあるんです。その夢に向けてのスタートの1枚として、デビューアルバムみたいな気持ちで作りたいと思って。
──サウンドは、ホッピー神山さん監修のオーケストラに亀田誠治さんによるバンドアレンジが交わり、雄大でシンフォニックな世界が広がっています。ここまで壮大なアレンジは今までになかったと思いますが。
例えると美空ひばりさんの「川の流れのように」みたいな、大きな歌にしたかったんです。ホッピー神山さんはこの曲を聴いて「琴だ」と提案してくれて、意見交換しつつ“私の中の和と洋を混ぜ合わせて、羽を伸ばして旅立っていこう”という思いを音でも表現することにしました。自分でも一番気に入ってる曲だし、このアルバムのキーになる曲だと思います。
──そしてこの後、等身大の人生を歌った「LIFE」でアルバムが締めくくられます。サビの最後にある「『出会い』と『別れ』までの間が真実がある」「『正しい』と『間違い』の間に真実はある」という言葉が強い印象を残しますが、アンジェラさんの考える「真実」とは何かズバリ教えてください。
何が正しくて何が間違いなのかは、その時々の心境とシチュエーションによって変わりますよね。人によって違う解釈があるし、答えはひとつじゃない。でも私が言いたかったのは、それでいいんだってこと。たとえ嘘でも理不尽でも、そのときの自分の気持ちが「真実」なんです。「真実はあるから」という言葉でアルバムを終えてるんだけど、真実は自分自身の中、聴いているあなたの中にあるんですよってことを伝えたかった。真実を信じて受け入れることが私の考える“LIFE”で、アルバムで言いたかったことはその1行かな。
曲も自分も素直になった5年間
──デビューからの5年間で、アンジェラさん自身や曲にはどんな変化がありましたか?
曲も自分もだんだん素直になってると思います。最初のアルバムを作ったときは、このアルバムがどれだけ売れるのかも、どういう人たちが聴いてくれるのかも全くわからなくて不安だったので、パーソナルな曲を歌うということに若干の抵抗があったんです。でも1stアルバムを出してからライブに来てくださるお客さんの数がだんだん増えていって、1人1人の顔が見えてくると、こういう人たちにだったら自分の胸の内を明かしても恥ずかしくないって思えて。赤裸々になればなるほどつながっていく絆みたいなものがあるのかなって。それはアルバムを出すたび、ライブをやるたびに感じますね。
──では、今振り返るとこれまでのアルバム3作についてはどんなふうに捉えています?
「Home」は、10年の下積み時代を総括した1枚だったから、私の中ではベスト盤って呼んでるんですよ。それまでに作った500曲の中から選んだ13曲だったんですね。だからこれだけちょっと別枠というか、0枚目っていう感じ。
──2枚目の「TODAY」はどうですか。
1stアルバムでリセットした後、次に作った「TODAY」は空っぽの中から生み出したメジャーでのスタートの1枚。これは本当に新鮮な、「TODAY」っていう言葉でしか表せないものだったんです。“亀田誠治”というプロデューサーとの出会いも大きかったし、亀田さんにプロデューサーとしてのノウハウも教えてもらって、すごくいい影響をもらいました。
──なるほど。そして先ほど、考え抜いてパーソナルなアルバムになったと話していただいた「ANSWER」。
「TODAY」を半分自分でプロデュースして、3枚目でついに完全セルフプロデュース、全曲セルフアレンジまでたどり着きました。“答え”を探して自分というものをとことん考えましたね。そして今回はまた他の人と曲を制作するっていうオープンマインドで作って。そんな変化があるので、5周年といっても到達点ではなく節目でしかないんですよ、私にとっては。ベスト盤で総括するにはまだ早すぎるし、5年前に1回総括してるしね(笑)。5年の間にプロデューサー、作詞家、作曲家、アレンジャー、歌い手として成長できたのは、本当にいろんな人のおかげだなぁと思います。
CD収録曲
- 愛の季節
- 輝く人
- Every Woman's Song
- サイン
- Remember Me
- Unbreakable
- What Are The Roses For?
- 愛と絆創膏
- Mad Scientist
- The Truth Is Like A Lie
- Bop Bop Bop (Colors of Your Soul)
- 母なる大地
- LIFE
初回盤DVD収録内容
- HOME
- 心の戦士
- Kiss Me Good-Bye
- This Love
- サクラ色
- 孤独のカケラ
- たしかに
- Again
- 手紙 ~拝啓 十五の君へ~
- 愛の季節
- 輝く人
アンジェラ・アキ
1977年徳島県出身、ピアノ弾き語りスタイルが特徴の女性シンガーソングライター。日本人とイタリア系アメリカ人とのハーフで、黒縁メガネにTシャツ&ジーンズといった気取らない格好がトレードマーク。中学卒業時からアメリカに移住し、大学時代から本格的に音楽活動を開始した。2005年9月にシングル「HOME」でメジャーデビュー。2006年6月にリリースした1stアルバム「Home」は60万枚を超えるロングセラーを記録し、老若男女問わず幅広い人気を獲得する。また、同年12月日本武道館にて史上初となるピアノ弾き語りライブを行い、以降年末の武道館弾き語りライブが恒例化する。2008年には全国学校音楽コンクールの課題曲として「手紙 ~拝啓 十五の君へ~」を提供し、このシングルはゴールドディスクに認定。2009年リリースの3rdアルバム「ANSWER」もチャート1位を記録し、老若男女問わず幅広い人気を獲得している。