映画ナタリー Power Push - 「世界から猫が消えたなら」
主演 佐藤健×原作者 川村元気 原作者から見た“俳優・佐藤健”の魅力
佐藤健の主演最新作「世界から猫が消えたなら」が、5月14日に公開される。川村元気による初の小説を映画化した本作は、自分と同じ姿の“悪魔”と、「この世界から大切なものを1つ消すことと引き換えに1日の命をもらえる」という契約を結んだ余命わずかな郵便配達員“僕”の決断を描くファンタジー。佐藤は穏やかで優柔不断な“僕”と意地悪で皮肉屋な“悪魔”の1人2役に挑み、主人公の元恋人である“彼女”に宮﨑あおいが扮している。
映画ナタリーでは、佐藤と原作者・川村の対談を実施。「告白」「モテキ」「バケモノの子」「バクマン。」などを手がけ、普段は映画プロデューサーとして活躍する川村から見た“俳優・佐藤健”の魅力や、劇中に出演した愛くるしい猫たちとのエピソード、そして本作に込めた2人の思いを語ってもらった。なおナタリーストアでは、映画の公開を記念し、原作小説「世界から猫が消えたなら」と猫のキャラクター「ごろごろにゃんすけ」のコラボグッズも展開中。さらに音楽ナタリーでは、主題歌を担当した新人アーティスト・HARUHIのインタビューを掲載する。
取材・文 / 浅見みなほ 撮影 / 高岡弘
一番信頼できる俳優が佐藤健だった(川村)
──お二人は、佐藤さんが主演、川村さんがプロデューサーを務めた「バクマン。」からの連続タッグになりますね。今回は原作者として参加された川村さんは、映画化にあたり佐藤さんの出演を熱望されたそうですが。
川村元気 そうです。「バクマン。」を撮影してる頃だったかな、健くんはすごく客観的な人間だなと思ったんです。俳優という職業はわりと動物的な勘でやっている人が多いと思うんです。その中でも、彼は画面全体を見ながら演技をしている感じがあって。それが今回の主人公に似ている気がしたんです。世界を客観的に見ている感じが。こういう話、直接はしないですけどね。
佐藤健 そうですね。こういう対談のときには言っていただけますけど(笑)。
川村 あとは、もちろんはじめは佐藤健っていう個性に惹かれて映画やドラマを観始めるんだけど、いい意味でだんだん透明になっていくっていうか。今回の映画も、最初は当然「佐藤健が“悪魔”を演じてるな」っていう感じがするんだけど、だんだんそれがスーッと溶けていって、観てる人が自分自身の人生を重ねて映画に混ざっていける感じがしたんですよね。そういうことができるという意味で、一番信頼できる俳優が佐藤健くんと宮﨑あおいさんだったので。
佐藤 すごくうれしいです。ありがとうございます。
──佐藤さんは、原作小説を読んでいたんですよね?
佐藤 はい。でも「映画化するなら主演は絶対に僕ではないな」と思っていました。それはすごく単純な理由で、年齢が違ったからですね。主人公の“僕”は30歳の設定なのですが、小説を読んだ当時の僕は23歳か24歳くらいだったので。だから映画化されるなら、僕よりも一世代上の俳優さんが演じるんじゃないかなと思っていました。
──原作も映画も登場人物の呼び名は“僕”や“彼女”で、名前が登場しませんよね。
川村 さっきも「観ている人が自分自身の人生を重ねる」という話をしたんですが、原作で名前が付いていないのも、読んでいる人の人生と物語が混ざればいいなと思っていたからなんです。
佐藤 僕も名前がないっていうのはすごく意味のあることだと考えていました。元気さんも言った通りで、例えば主人公たちにタカシくんとユミちゃんっていう名前があったとするじゃないですか。でもタカシくんとユミちゃんのラブストーリーを観て感動してもらうのではなくて、あくまでも“僕”と“彼女”の物語を通して、観ている人自身の人生を思い起こしてほしい、そういう映画になったらいいなと思っていて。色で言うと透明だったり、角がありすぎないほうがいいのかな、というイメージで“僕”のキャラクターを作っていきました。
4匹の子猫に命名しました(佐藤)
──本作は家族の物語でもあるということで、佐藤さんは撮影に臨む前にご実家でお母さんや飼い猫と一緒に過ごしたと伺いました。
佐藤 はい。でも具体的に何かを考えるために行ったとか、自分を見つけるために行ったわけではなくて、ただ実家に帰っただけなんです(笑)。心境の変化はあったのかもしれないけど、自分ではわからないですね。とにかく家族に思いを巡らせている時間がそのまま役作りになりました。
──ご実家ではずっと猫を飼われているそうですね。
佐藤 そうです! 僕が生まれた頃から飼っています。
──川村さんは、それを知っていて佐藤さんの出演を希望したんですか?
川村 やっぱり猫が好きな人じゃないと、とは思っていました。そうでないと、猫を抱いたときの感じで当然バレるので。“母さん”役の原田美枝子さんも猫大好き。永井聡監督も猫大好き。“父さん”役の奥田瑛二さんもだよね?
佐藤 はい。みんな猫大好き(笑)。
──猫と一緒の撮影も、今回はスムーズに進んだと伺いました。
佐藤 そうなんですよ。というか、キャベツ役のパンプくんっていう猫が、異常なくらい天才だったんです。僕も撮影は本当に大変だと想像していたのですが、すごくスムーズに行くことが多くて、肩透かしを食らったように感じたくらいです。
──パンプくん以外の出演した子猫たちに、佐藤さんが名前を付けられたと聞いたんですが、本当でしょうか?
佐藤 本当です! キャベツ役の猫も1匹じゃないし、子猫ちゃんも影武者みたいに4匹いたんです。そのときの体調によって違う子を出すんです。
川村 子猫たちは、本当にかわいかったよね! でも、原作もそうだけど、全部野菜だったよね、名前。
佐藤 2匹にはキャベツとレタスっていう名前をそのまま付けて、あとの子にはセロリとニラちゃんと命名しました。
川村 ははは! ニラ、いいセンスしてる(笑)。
佐藤 そう、ニラちゃんがいいんですよ。その子だけちょっといじられる可能性がありますけど……(笑)。
次のページ » どっちも佐藤健なのに、2人の会話として普通に観られる(川村)
- 映画「世界から猫が消えたなら」2016年5月14日全国ロードショー
30歳の郵便配達員“僕”は、愛猫・キャベツと暮らしている。ある日、ひどい頭痛で病院に行った“僕”は、脳腫瘍のため余命わずかであると宣告されてしまう。ショックで呆然とする彼の前に現れたのは、自分とまったく同じ姿形をした“悪魔”。その“悪魔”と「世界から1つ大切なものを消せば、1日の命をもらえる」という契約を結んだ“僕”は、まず電話を消すことに。しかしそれは、1本の間違い電話から出会った元恋人・“彼女”との思い出もすべて消えてしまうことを意味していた。その後も映画や時計を消し去った“悪魔”は、次に「この世界から猫を消しましょう」と言い出し……。
スタッフ
監督:永井聡
原作:川村元気「世界から猫が消えたなら」
音楽:小林武史
主題歌:HARUHI「ひずみ」
キャスト
僕 / 悪魔:佐藤健
彼女:宮﨑あおい
父さん:奥田瑛二
母さん:原田美枝子
ツタヤ:濱田岳
トムさん:奥野瑛太
ミカ:石井杏奈
- 映画「世界から猫が消えたなら」公式サイト
- 映画「世界から猫が消えたなら」 (@sekaneko_movie) | Twitter
- 映画「世界から猫が消えたなら」 (@sekaneko_movie) | Instagram
- 「世界から猫が消えたなら」作品情報
©2016 映画「世界から猫が消えたなら」製作委員会
佐藤健(サトウタケル)
1989年3月21日、埼玉県生まれ。2007年、特撮ドラマ「仮面ライダー電王」で初主演を飾り、その後「ブラッディ・マンディ」「Q10」「ビター・ブラッド」などのテレビドラマや、「リアル~完全なる首長竜の日~」「カノジョは嘘を愛しすぎてる」などの映画に出演。緋村剣心を演じた「るろうに剣心」シリーズの3作目「るろうに剣心 伝説の最期編」で第9回アジア・フィルム・アワード主演男優賞に選出される。2015年には「バクマン。」やドラマ「天皇の料理番」で主演を務め、東京ドラマアワード主演男優賞、橋田賞を受賞。2016年公開待機作に、朝井リョウ原作の「何者」がある。
川村元気(カワムラゲンキ)
1979年生まれ、神奈川県出身。映画プロデューサーとして「電車男」「告白」「悪人」「モテキ」「おおかみこどもの雨と雪」「寄生獣」「バケモノの子」「バクマン。」などを製作。2010年、米The Hollywood Reporter誌の「Next Generation Asia」に選出され、2011年には優れた映画製作者に贈られる「藤本賞」を史上最年少で受賞。2012年に発表した初の小説「世界から猫が消えたなら」は本屋大賞へノミネートされ、120万部突破のベストセラーとなる。「ティニー ふうせんいぬのものがたり」や、ロバート・コンドウと堤大介によるアニメ映画化が決定した「ムーム」といった絵本も手がけている。著書に「仕事。」や小説第2作「億男」があり、2016年4月には「理系に学ぶ。」「超企画会議」が発売された。
2016年5月10日更新