コミックナタリー PowerPush - 入江亜季「乱と灰色の世界」

主人公と歩み成長した7年を語る 完結記念ロングインタビュー

お気に入りの靴を履くと大人の姿に変身することができる少女・乱を中心に、魔法使いが人間社会の中で巻き起こす大騒動を描いた「乱と灰色の世界」。ハルタ(KADOKAWA)を前身誌Fellows!(エンターブレイン)時代から支えた人気作が7年間の連載に幕を下ろした。

コミックナタリーでは単行本最終7巻の発売を記念して、入江亜季にインタビューを実施。キャリア初の長期連載を終え、入江は現在どのような時間を過ごしているのか。最終回までの長い道のりを振り返ると同時に、これからの展望を語ってもらった。

取材・文/唐木元

 
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──まずは何より7年にわたる長期連載、終了お疲れ様でした。

ありがとうございます。長かったー!

──普通のインタビューと逆ですけど、今後の予定から伺おうかと。

ハルタの6月売りの号からしばらくは、帯裏連載を、細々と。

──ハルタに巻かれてる帯を取ると、裏になぜかマンガが刷られているという、あのコーナーですね。

ハルタVol.25よりスタートした帯裏での連載「多朗と多由良」。映画のフィルムでシーンが縦に並ぶように、長く積み重なったコマ割りが特徴的だ。

目次に名前も載らないし、バイトみたいなもんです。ほんとはマンガの描き方を忘れてしまうまでなんにも描かない、っていうのを試してみたかったんですけど。

──忘れてしまいたいんですか。

次、またぜんぜん違うマンガを描きたいので。忘れたらむしろ新しいものが描けるんじゃないかと思ってたんですけど、そこまで休ませてはもらえなかった(笑)。

──帯裏バイトが入ってるとはいえ、「群青学舎」から休みなく「乱と灰色」だったから、本格的なお休みは……11年ぶり?

そう。それでこないだ九州ひとり旅に行ったんですけど、もう生きて帰ってこれる気がしなくって。こんな、旅行とか行ったらもう私、帰ってこれないんじゃない?きっと旅先で死ぬんじゃない?って思ってたんだけど、生きて帰ってきましたね(笑)。

──どこに行かれましたか。

福岡と、有田の陶器市と、あと鹿児島。桜島とか。行きつけの飲み屋さんの店主が鹿児島出身だから、これだけはやってこいっていろいろ計画を作ってもらって。釣りもしました。カサゴ釣ったんですよ。なんか、海の釣り堀みたいなので。

──すごい。はっちゃけてますね。

それで来月は車の免許を取りに行くんですけど。マニュアルって私でも取れると思います?

次は静かなマンガがいいと思ってるんです。土とか化石とか

──教えてくれるとおりやれば誰でも取れますけど……。でもマニュアル車っていまどき乗らなくないですか? オートマより時間もお金もけっこうかかりますよ。

機械とか描くの苦手なんで、クルマのことを知るためにはマニュアルかなーって思ってたんですけど。

──あ、マンガのため。

そうですよ! 釣りだってマンガの肥やしですよ。あと乗馬ね。森(薫)さんオススメの、ちゃんと教えてくれるところが北海道にあるんだって。だからそこに行くのと、あとは魚をさばくとかかな。料理屋さんで詳しい本を借りてきたんです。前に魚さばくシーン描いたらほんと下手で、森さんにすごい「これはないよ」みたいな目で見られたから!

──(笑)。

あとね、知り合いのお母さんがやってる畑から野菜を買ってるんですけど、そこで農業体験させてもらえないかなーって。それと能の教室に。

──見るほうじゃなくて、やるほう?

連載を終え、しばらく旅行に出ていたという入江。最終巻では乱も修行のため家を出て旅へ出る。

やるほう。渋谷にあった能楽堂の初心者講座が面白かったんですよ。普通に弟子入りとかすると費用がたいへんなんですけど、三軒茶屋に能の本を出してる出版社が主催している一般向けの教室があるんで、通ってみようかと。

──旅行と釣りと、免許と乗馬と料理と菜園とお能をやるんだと。11年ぶりのお休みで、ちょっとタガが外れてるのはだいぶ伝わってきていますが(笑)。

充電期間ですから! あと海外ですね。なんかだだっ広くて静かな景色っていうか、何もないところに行きたいですね。アイスランドとか。その地の果てみたいなところでイメージを膨らませたいなあ、と。ハチャメチャな魔法を描いたんで、次は静かなマンガがいいと思ってるんです。土とか地下とか化石みたいな……。

──お、次回作の構想。やっぱり全部マンガのためになっちゃいますね。

というか、執着できる何かを見つけたいんですよね。何かに執着できるようになりたい。最終巻のあとがきに、執着に関することを書いてしまったんですけど……。

入江亜季「乱と灰色の世界(7)」2015年6月15日発売 / 778円 / KADOKAWA / Amazon.co.jp
入江亜季「乱と灰色の世界(7)」

オトナになりたかった魔法少女の成長物語、完結。
これまでのストーリーに出てきた、すべてのキャラクターが再び登場。乱と、家族と、灰町の人々を取り巻く大人気連載作品が、いよいよ完結。最新7巻は内容ぎっしり、特厚296ページ!

入江亜季(イリエアキ)

入江亜季香川県生まれ。2002年、ぱふ(雑草社)にて入江あき名義で掲載された「フクちゃん旅また旅」でデビュー。2004年、読切シリーズ「群青学舎」を連載。2006年、個人誌の作品をまとめた単行本「コダマの谷」を刊行。2008年より連載を開始した初の長編作品「乱と灰色の世界」は7年間にわたり執筆され、2015年に完結を迎えた。豊かな想像力と、魅力的なペンタッチから描かれる数々の作品は男女ともにファン多し。