コミックナタリー PowerPush - 種村有菜「猫と私の金曜日」

マーガレットで新境地!りぼん卒業後を語る

1996年にりぼん(集英社)で鮮烈なデビューを果たしてから、「神風怪盗ジャンヌ」「満月をさがして」などヒット作を世に送り出してきた種村有菜が、「桜姫華伝」完結を機にりぼんを卒業。現在、マーガレット(集英社)にて王道ラブコメ「猫と私の金曜日」を、メロディ(白泉社)にてアラサー女子が主人公の「31☆アイドリーム」を連載している。

コミックナタリーでは「猫と私の金曜日」、通称「猫金」1巻の発売を記念し、種村へインタビューを敢行。作品の見どころから、りぼんを離れてフリーになってからの活動や心境を語ってもらった。また種村が自ら全曲の作詞と歌唱を手がけ話題を呼んだテーマソングCD「Princess Tiara」の試聴コーナーもお届けする。

取材・文/坂本恵 撮影/岸野恵加

 
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マーガレットで王道ラブコメを描くという憧れ

──種村先生はファンタジーのイメージが強いですが、「猫と私の金曜日」はめずらしくラブコメですね。

種村有菜

やっぱりマーガレットの読者に受け入れられるには、王道のほうがいいんじゃないかと思いまして。ただでさえ私、りぼんで長年育ってきたので、絵柄も低年齢向けだし、描き方もちょっとコミカルすぎたり、幼い子向きだと思うんです。そこでさらにファンタジー要素を入れてしまうと、幼さに拍車がかかるんじゃないかと思ったんですね。あと、やっぱりりぼんで描けなかった話に挑戦したいというのもありましたし、何よりマーガレットで王道ラブコメを描くということに憧れもあったので。

──ここにカバーの見本がありますが、背表紙にちゃんと王冠マークが付いてますね。

そうなんです! 私、りぼんだけではなく、実はマーガレット育ちでもあるので、憧れの王冠マークです。

──それは感慨もひとしおですね。ラブコメを執筆するのは「紳士同盟クロス」以来になるんでしょうか?

そうですね。でも「紳士同盟」も設定はちょっとファンタジーっぽい感じだったので、本当の非ファンタジーはこれが初めて、くらいの勢いで私は描いています。

──初めての非ファンタジーは、描き始めてみていかがですか?

愛ちゃん、猫太くん、芹沢先輩の3人。

楽です(笑)。いや、楽っていうのは、作画の面でですが。やっぱりアクションがない、細かい衣装がないというのは、作画的にとっても楽なんです。ただその分、お話的には逃げ場がないんですよね。ファンタジーやバトルものって、困ったら戦ったり、脇役の深い話を描いたら大丈夫という面があるんですけど、非ファンタジーだと、恋愛しか描けないので逃げ場がないんです。なのでお話作りはより大変になりましたね。キャラクターの気持ちだけで話を進めないといけないので。

──今回は脇キャラはあまり出さず、愛ちゃん、猫太くん、芹沢先輩の3人だけで物語を回していくんでしょうか。

はい。私、すぐ脇役に色を出しちゃうタイプなんですけど、今回はできるだけほかのキャラは薄くして、主人公とヒーロー2人に集中するようにしてます。

少女マンガ家はみんなホストですよ!

──相手役の男の子、猫太くんは小学生ですが、この設定はどこから着想を得たんでしょうか?

だいぶ前から構想はあったんです。小学生男子なのに、大人顔負けのたらしのイケメンだったら面白いなと思っていて。「神風怪盗ジャンヌ」で女ったらしの男の子をヒーローに描いたんですが、それ以来、女ったらしの男の子をちょっと避けてきたところがあったんです。もう描き切った感があったので。「ジャンヌ」以降、真面目なヒーローを何人か描いてみたんですが、やっぱり私はたらしが好きだと再認識しまして。たらしを描くのが好き、というか……私がたらしだ、と。私が読者をたらしこみたい、と(笑)。

──もうキャラが乗り移って描いてらっしゃるんですね。

そうなんです。だから「猫金」でいちばん憑依しているのは猫太くんですね。なんとかして愛ちゃんをたらしこめないかなと思ってます。とにかく猫太くんが愛ちゃんを口説いてるのを描くのが楽しい!

──種村先生、ホストの才能あるんじゃないですか(笑)。

少女マンガ家はみんなホストですよ! 読者という女の子をたらしこんでるんですから。ヒーローの言葉を借りて、読者を口説いてるようなものなんです。

──猫太くんは恥ずかしいキザなセリフもバンバン言っちゃいますね。

やっぱり高校生男子だと恥ずかしくて言えないようなことも、猫太くんはまっすぐ言えるので。たぶん先輩だったら、恥ずかしくて言わせられないんですよね。あと猫太くんがかっこいいこと言うと、読者さんの反応がいいんです。だからクドいと言われようが、1話につき1回は、何か決めゼリフを言わせたいなと思ってます。猫太くんを余裕たっぷりに描いた7話目で人気が取れたので、「そっか、読者が求めてるのはこれなんだ」と思ったんです。やっぱり小学生らしからぬ猫太くんを見るのが、読者さんは楽しいんだなっていうのがわかりました。

──このあたりから、服装も小学生っぽくなくなってきますね。黒コートで、襟も立っちゃってます。

猫太くんは徐々に大人っぽい服装に。

そうです、あえて大人っぽくしてますね。それまではちょっと小学生らしさの片鱗とか出すようにしてたんですけど、もう子供らしさとかいらないんだなと思って。余裕ぶりを前に出して、あんまりうろたえないようにしてます。

──そもそも種村先生にとって、小学生男子が登場するマンガのルーツってなんでしょう?

そうですね、例えば私が小さい頃の花とゆめ(白泉社)作品は、やたら小学生男子が多かったんです。羅川真里茂さんの「赤ちゃんと僕」とか、山田南平さんの「オトナになる方法」とか。小学生キャラがその頃流行ってて。小学生男子への憧れはたぶんそこからきてますね。私の中で隔週雑誌でショタはあり、という感覚が植え付けられたというか(笑)。

──ははは(笑)。

でも、そことは一線を画した私だけの小学生男子をやっぱり描きたかったんです。その頃の小学生男子ものは硬派系だったので、じゃあ私は軟派に走ろうと。

「あー楽しかった!」くらいの読み味にしたい

──では猫太くんのライバル、先輩のキャラ作りについても聞かせてください。

最初はすごく悪い人にしようかと思っていたんですが、「猫金」自体、あまり波風のあるマンガにしたくはなかったので、結局普通のいい人になりました。「猫金」は平和路線なんです。話をできるだけ重くならないように、常に軽くしようというのが理想としてあるんですね。だから先輩は愛ちゃんを深刻に悩ませるようなキャラにはしないでおこうと。

──「猫金」は軽いノリで楽しめるようなマンガにしたい、ということでしょうか。

そうです。軽ーく読んで、「あー楽しかった!」くらいの読み味にしたいんです。最近までりぼんで連載していた「桜姫華伝」もそうですけど、いままで私が描いてきたマンガって重すぎたので……。もうしばらくは、重いのはいいかな、と。でも先輩は、本当はあまり出したくないんですよね。もっと存在を薄くしたいくらい。

大人っぽく、いい人な先輩。

──それはどうしてでしょう?

やっぱり猫太くんがヒーローキャラだから。先輩もちゃんと登場する一瞬一瞬は光るようにしてあげたいなと気を配ってはいるんですけど……。でもアシスタントさんには先輩がいちばん人気なんですよ。

──私も先輩は好きですよ。

マジですか! やっぱり大人っぽいからですかねー。まあ、いい彼氏だとは思いますよ。でも猫太くんが前に出てる話のほうが反響が大きいんですよね。

種村有菜「猫と私の金曜日(1)」 / 2013年6月25日発売 / 420円 / 集英社 マーガレットコミックス
種村有菜「猫と私の金曜日(1)」

愛にとって金曜日は特別な日。図書室で、大好きな芹沢先輩に会える日。そして猫太くん(いとこの小5)の家庭教師の日。大好きな先輩に告白しようとしたら、猫太くんに邪魔をされ……さらに本気で告白された!? 小学生男子、高1のオトメ女子、高2の先輩のマジ恋三角関係がはじまる!

種村有菜(たねむらありな)

種村有菜

1996年、りぼんオリジナル6月号(集英社)に掲載された「2番目の恋のかたち」でデビュー。1997年にはりぼんにて「イ・オ・ン」を初連載し、その後「神風怪盗ジャンヌ」が大ヒットを記録する。同作や「満月をさがして」はTVアニメ化もされた。詩的かつ印象的なセリフまわしや、こだわりのある美しい絵は、日本のみならず海外でも人気が高い。2011年にりぼんとの専属契約を終了し、フリーに。マーガレット(集英社)では2011年に「風男塾物語」を短期集中連載し、2013年2月より「猫と私の金曜日」をスタートさせた。