コミックナタリー PowerPush - 宮城理子「ミカド☆ボーイ」

執事の次は昭和スパイ!「メイちゃんの執事」作者、あこがれの神山健治監督と異色対談

「メイちゃんの執事」で知られる宮城理子の新作は、昭和初期を舞台に少年スパイの活躍を描く「ミカド☆ボーイ」。少女マンガ誌・マーガレット(集英社)連載作にして、ヒロインを登場させず、恋愛要素を排除するという新境地に挑んでいる。

コミックナタリーでは1巻発売を記念し、宮城へ創作の過程を聞くインタビューを敢行。また宮城が「会いたい人No.1」と切望した「攻殻機動隊 S.A.C」「009 RE:CYBORG」の神山健治監督を直撃し、対談を行った。

取材・撮影/唐木元 文/坂本恵

宮城理子インタビュー

陸軍中野学校をモデルに少年スパイを描こう

──「ミカド☆ボーイ」は昭和初期が舞台ですが、そのあたりの時代を選んだ経緯からお伺いできますか。

宮城理子

最初、編集長に「歴史ものを描いてみませんか」と提案をいただいたんです。「国も時代も任せるから」と。それでいろいろ考えてみたんですけど、どれもしっくりこなくて。エリザベス1世が実は双子だったら……とか、「三銃士」をモチーフにして、おてんば女王様とイケメン3人が一緒に戦うとか、いろいろ考えてはみたんですけどしっくりこない。それならと、いっそ自分がよく知らない、歴史の授業で印象に残ってないあたりを調べはじめたんです。近代史を習うのってほら、3学期じゃないですか(笑)。

──歴史の授業で、駆け足になるところですよね。

そうそう。当時はつまんないなって思ってたんですけど、調べはじめたら面白くって。昔住んでいた近所に登戸研究所という軍の施設があったんです。それを思い出して。毒ガス作ったり、偽札作ったりしてたみたいで、このあたりをネタに使ったら面白いんじゃないかな、と。そこから登戸研究所を作った人が陸軍中野学校というスパイの学校を設立したというのも数珠つなぎに知って、「これだ!」と思ったんです。「ミカド☆ボーイ」ではこの中野学校をモデルに少年スパイを描こう、と。

帝国少年諜報部「ミカドボーイ」としてスパイ活動をすることになった主人公ヒデ。

──編集長が思い描いていた歴史ものとは、たぶん違ってきたんじゃないでしょうか。

そうなんです。少女マンガらしい、きらびやかな宮殿なんて出てこないし、近代なんて全く華のない……(笑)。でも中野学校は調べれば調べるほど面白くて。中野学校の生徒には、軍人ではなくて普通の大学を卒業した人を採ったらしいんです。あんまりビシっとした軍人だと、スパイだってバレちゃうからでしょうね。あえて溶け込める、普通の感覚を持った人が選ばれたんですって。あと生徒にはイケメン枠もあったらしいですよ。

──イケメン枠(笑)。

やっぱり男でも女でも、イケメンには心を許しやすいですからね。ハニートラップはスパイの基本です。

マーガレットなのに恋愛要素を排除

──「ミカド☆ボーイ」の銀も、得意技はハニートラップですしね。しかしこのマンガ、少女マンガなのにヒロインらしいヒロインが全く出てこないです。

銀の得意技はハニートラップ。

メインキャラクターは男ばっかりです。編集長にも「BLですか?」なんて言われちゃったんですけど、そうじゃなくて、結局大学までたどり着けるのは男子しかいなかった時代なので、必然的に男キャラばかりになるんです。

──女の子は女学校ですからね。

しかも、今回は恋愛要素を排除しようと思ってるんです。マーガレットなのにって思われるかもしれませんが……。恋愛で物語を引っ張るんじゃなくて、もっと違う部分で引っ張れたらなあ、と。

──少女誌で恋愛排除とは、思い切った挑戦ですね。

まさに挑戦です。正直な話、銀を女の子にしてもよかったんですけど、そうすると恋愛の物語が7割8割を占めてきてしまうので……。占めないとむしろ、読者が納得しないですしね。

──逆に不自然になるんですね。

そうなんです。なので、銀を男の子にして、恋愛感情が発生しない状況にしてしまえばいいんだ、と。そうすれば恋愛以外の情報や事件をたくさん入れ込める。……まあ正直、年頃の女の子にとっちゃあ、興味のないことばかり描く予定ですね(笑)。

ヒデは「メイちゃんの執事」理人のおじいちゃん

──でも恋愛だけじゃなくて、こういうのが好きな女の子って、一定数はいると思いますよ。マジョリティではないかもしれないですが。

そう願ってます。あとはマジョリティの女の子たちにどう読んでいただくか、ですね。やっぱりマンガはエンタメなので、こういった題材を女の子に読んでもらうには多少仕掛けを作らないと、と思ってはいます。

──例えばどんな仕掛けでしょうか。

「メイちゃんの執事」の理人(手前)は、ヒデの祖父という設定。

ひとつは登場人物を「メイちゃんの執事」のキャラクターとつながるようにしてみました。例えば主人公の柴田英人(ヒデ)は、実は「メイちゃん」に出てくる理人たちのおじいちゃんなんです。「メイちゃん」からのファンの方には気付いて喜んでもらえたらいいし、もちろんこの「ミカド☆ボーイ」だけで完結している作品なので「メイちゃん」を読んだことがない人でも理解できるようにはしています。

──では、ヒデはゆくゆくはスパイではなくて執事になるんですか?

なります。どこかでイギリスに修行に行かせなきゃですね。例えば神田が「紅茶買ってきて」ってヒデと銀に頼んで、ちょっとそこまでおつかいのつもりが船に乗せられて渡英する、とかどうですかね(笑)。

宮城理子「ミカド☆ボーイ(1)」 / 2013年7月25日 / 420円 / 集英社 / マーガレットコミックス
宮城理子「ミカド☆ボーイ(1)」
あらすじ

昭和12年4月。世界大戦前夜の東京の片隅で、ひとりの少年がこの国の運命を左右するかもしれない大事件に巻き込まれようとしていた!! 本編の主人公・柴田英人(ヒデト)は名門中学に入学を決めた秀才。前途洋洋な人生のハズが、入学式当日に謎の少女の誘いにより、「神田商会」という怪しい会社に迷い込んでしまう。そこで、タダならぬ雰囲気をまとう神田という男に帝国少年諜報部「ミカド ボーイ」にスカウトされるのだが……。少年スパイがオトナの世界の闇を暴く冒険活劇漫画!!

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柴田英人(CV:朴ロ美)※ロは王へんに路
銀(CV:小松未可子)
神田吾郎(CV:立木文彦)
桃子(CV:林真里花)

マーガレット

2013年で創刊50周年を迎える少女マンガ誌。毎月5日、20日発売。

宮城理子(みやぎりこ)
宮城理子

「しあわせな冬の日のために」で新人賞を受賞以来、 「花になれっ!」「ラブ▼モンスター」(▼はハートマーク)などを執筆し、マーガレット(集英社)で活躍中。2006年から 連載が始まった「メイちゃんの執事」は 水嶋ヒロ・榮倉奈々主演でドラマ化され話題に。同作は宝塚歌劇で舞台化もされた。2013年からは、マーガレットにて「ミカド☆ボーイ」を連載している。