コミックナタリー Power Push - 月刊コミックジーン

愛すべき中二雑誌が誕生! 遠藤海成と編集長が「女子が読む少年誌」語る

主人公がすべて男なのは、少年誌だから

「まりあ†ほりっくSpin-off」では竜胆たち男キャラが活躍。

──「まりあ†ほりっく」スピンオフのほうはどういった内容ですか?

遠藤 基本的には御星の森学園という男子校サイドのお話です。竜胆や静珠、鼎神父あたりが出てくる予定です。こちらはいつもどおり、面白おかしく、ゆるーくやっていこうかと。

土方 創刊号の付録にも鼎神父と竜胆だけが登場するドラマCDが付きます。

──では、女子率は低めで。

遠藤 そうですね。低めです。「黒犬」もほぼ男キャラばっかりですね。「黒犬」に関しては、男キャラが主人公っていうのも、私の作品では初めてです。

土方 実はジーンの作品は、基本的には主人公は男です。当然ヒロインも出てきますけど。

──へえ! それは女の子ウケを狙ってのことなんでしょうか。

土方 いえ、少年誌だからです。

遠藤 少年誌か少女誌かの一番大きな違いって、主人公が男か女かですよね。読者が感情移入する部分がどこにあるか。

インタビュー写真

土方 例えば少女誌の場合、基本的に女の子が主人公で、主人公が誰を好きになっていくか、どういう感情の変化があるかっていうところを読者が楽しむわけです。一方少年誌は、主人公の少年たちがどうやってがんばっていくかっていう過程を見る。読者が少年であればそれを自分に置き換えるわけですが、少女が読む場合は、同様に主人公の少年に自分を投影する場合もあるでしょうし、「もし自分が少女でなかったら主人公たちの仲間になって一緒に戦っているかもしれない」って想像して楽しむ場合もある。あるいはファン目線で、校庭でがんばっている男子を応援する場合も。

──なるほど。では、同じ主人公が男ばかりの作品でも、男ハーレムみたいなバリエーションはジーンのコンセプトからは外れるわけですね。

土方 そうです。それをやると乙女ゲームになってしまう。そうすると少年誌ではなくなってしまいますよね。最初はやっぱりそういう意見もあったんですよ。乙女ゲー的なものも市場としては大きいし、そういう面白い作品を描く作家さんもいらっしゃるし。でも、中二病の人がそれを求めるのかっていう議論を結構交わして。結局そういう企画は全部ボツにしました。

インタビュー写真

遠藤 私、腐女子脳がないので、そういうのがイマイチよくわからないんです。男の子が熱く盛り上がってても、「ああ、友情ね」としか思わないんです。BL妄想みたいなのがさっぱりない。もしその扉を開けてしまったら、私の中二牧場はもっと盛り上がるかもしれないんですけど(笑)。

土方 遠藤先生は幼少期にりぼんやなかよしのような少女誌ではなくて、ジャンプなどの少年誌を読んで育ったらしくて。そういったジャンプ最盛期のときに幼少期を過ごしてそのマンガ軸で育った人が、今度は発信者になる。そういう人が描いたマンガを好きになる女の子っていうのは、やはり普通の少女誌が好きっていうのとは違うんだろうなと。それが「女子が読む少年誌」の根幹にある考え方でしょうか。

遠藤 うちは叔父がサンデーやマガジン、ジャンプ、月刊ジャンプなんかをひと月分くらいまとめていつも持ってきてくれてたんですね。それを全部読んで育ったので。

──では、遠藤先生はこの雑誌のコンセプトにもかかわっているんですね。

土方 僕の中では遠藤先生ありきでしたね。

月刊コミックジーン2011年7月号 / 2011年6月15日発売 / 定価:490円(税込) / メディアファクトリー

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創刊号ラインナップ

遠藤海成「黒犬O'clock」/遠藤海成「まりあ†ほりっくSpin-off」/霜月かいり「BRAVE10 S ブレイブ・テン・スパイラル」/漫画:渦八 原作:tennenouji「ラッキードッグ1」/原作:新海誠 漫画:ひだかあさひ「星を追う子ども アガルタの少年」/漣一弥「吟遊戯曲Black Bard」/しわすだ 原案:ジュール・ヴェルヌ「十五少年漂流記」/青春「残念、ここは世界の裏側です」/喜久屋めがね「ファイナル・カウントダウン学園」/藤山海里「虚構の王」/葛屋カツキ「てんか!」/姫川明「竜は黄昏の夢をみる」/狩野アユミ「独裁グリムワール」/田中ストライク「SERVAMP-サーヴァンプ-」/橋本届「カムサリ」/藍屋球「アンティマギア」/ゆづか正成「海賊伯」/みなづき忍「トイレの花太郎」/いときち「オレん家のフロ事情」

遠藤海成(えんどうみなり)

遠藤海成

1996年、エニックス21世紀漫画大賞で奨励賞を受賞、デビューを果たす。現在、月刊コミックアライブにて「まりあ†ほりっく」、月刊コミックジーン(ともにメディアファクトリー)にて「まりあ†ほりっくspin-off」「黒犬O'clock」、月刊コミックZERO-SUM(一迅社)で「破天荒遊戯」を連載中。