コミックナタリー Power Push - スエカネクミコ「放課後のカリスマ」

ナポレオンもヒトラーも同級生 前代未聞の偉人学園ドラマ

クローン戦隊、ナポレオン・レッドにフロイト・ブルー?

──主人公グループを中心におさらいしてみましたが、軽くプロフィールを見直しても、各キャラの個性が際立っています。これらのキャラはどのように誕生したのでしょうか。

学園ものによくありそうな、仲良しグループみたいな関係性を作りたいと考えたんです。中心に主人公がいて、その周りに必要な要素を足していったら、あとは自然にキャラクターが立ち上がってきたという感じですね。

──それは実際にはどのような作業だったのでしょうか。

たとえばナポレオンの場合、グループにはリーダーが必要ということで、ヒーロー戦隊のレッドに当たるキャラを作ろうと。それでリーダー体質の偉人と考えたら、知名度的にナポレオンが候補に挙がって。またレッドがいれば対極にあるブルーも必要だろうということになり、ちょうど心理学系の偉人を入れたかったから、有名なフロイトを……という具合に、人選から性格、ビジュアルまでを一気に作り上げた感じです。

──戦隊ものになぞらえる考え方で、すんなりと全キャラ決まるものですか。

一休に関しては少し話が違って「これだけキャラがいるのに、眼鏡がいない!」という問題が勃発しまして。眼鏡ありきで作られた、完璧にビジュアル先行のキャラです(笑)。

──あの、当然ながら史実では一休って眼鏡をかけていませんよね。なんで眼鏡キャラにアレンジされてるんでしょう(笑)。

インタビュー写真

キャラ設定は史実を参考にしつつ、イマジネーションを広げていくという遊びですね。歴史マニアの方が納得するような、史実に忠実なものより、誰でもわかる一般的なイメージとしての偉人像を大事にしているんです。歴史マンガにするなら、豆知識やエピソードを入れて話を膨らませる手法もあると思うんですが、それはこのマンガのやることじゃないって、担当とも話し合って。

──史実と創作の混合。その前置きを踏まえて質問しますが、ナイチンゲールが巨乳という設定はどこから。

私が巨乳好きだから(きっぱり)。

──(笑)。

白衣の天使には夢が詰まっているんです。これは私含む全人類の願望なので、異論は認めません。ナースが巨乳であることは必然なので、みなさんその運命を感じとってください……!!

ぶっちゃけ描きたいテーマとか、そういうのないんで……

──キャラクターを動かす上で、描いていて一番楽しいのってどんなときですか?

楽しんでるって意味では、本筋に関係ないサービスシーンとかですかね……。お話に重要なコマじゃないけど「うむ、これはよいおっぱいが描けた」みたいな満足感は大きいですね。本当は1話に1回ずつおっぱい出したいくらいなんですが、なかなか難しい……。でもバカみたいな遊びの要素は、ちょこちょこ入れていきたいなあ……と。

──そういうコメディっぽい描写は過去の作品「成城紅茶館の事情」を連想させますね。作風は異なるけれど、根底に流れるスエカネイズムみたいなものがあるのでしょうか。

「紅茶館」を読んでた人は、バカっぽいシーンがあると「これこれ!」って思うのかも。「放課後のカリスマ」は過去作品とあまりに毛色が違うので「あのスエカネがマジになった」みたいに驚く読者の人が少なくないようなんですが、全然そんなことはないです。……そもそも私はぶっちゃけ描きたいテーマとか、そういうのないので……。

──ええ? こんなにテーマ性の高いマンガを描いているのに。

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私はマンガ家になる前にゲーム会社で働いていたせいかも知れないんですけど、読ませたいテーマより、読んでもらうにはどうしたらいいかを優先するところがあるんです、きっと……。「放課後のカリスマ」もクローン問題の提起みたいな大それた気持ちではなく、面白いものを目指した結果、クローンというテーマが出てきたわけなので。

──先ほどおっしゃってた、サービスシーンを描くのが楽しいという話と繋がるのでしょうか。

訴えたいテーマは特にないけど、お金を払って読んでくれた人には、絶対楽しんでもらいたい! って思うんですよね。だからサービスシーンにこそ私の作家性が現れてるのかも……とか……。

──そのサービスが読者に届いたっていう手ごたえは、「放課後のカリスマ」では感じてますか?

やっぱりそこは正直、アンケートの結果とか、単行本のセールスが数字として出ると、実感湧きますね。ちょっとやらしい話ですけど!(笑)

──ちゃりんちゃりんと、お金の音を聞いて微笑む日々ですね。

ちょっと、その作者像、イメージダウンになりませんか?(笑)

IKKI COMIX「放課後のカリスマ」(4) / 2010年6月30日頃発売 / 610円(税込) / 小学館 / ISBN:978-4-09-188519-7

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あらすじ

時は西暦2×××年。ナポレオン、エリザベス一世、ナイチンゲール、一休、モーツァルト、フロイト、ヒトラーといった世界中の「偉人のクローン」のみが集うセントクレイオ学園。そこで、ひとり「非クローン」として在籍する神矢史良は、学園生活の中でクローンたちの苦悩を目の当たりにする。そんな折、学園の卒業生であるクローン・ケネディが衆目の中で暗殺された。クローンを襲う謎の勢力、その正体とは? そして、史良の行く末は……?

スエカネクミコ

スエカネクミコ

大学卒業後、株式会社カプコンに勤務。「逆転裁判」「ビューティフル ジョー」といったゲームソフトのキャラクターデザインを手がける。退社後、商業マンガ誌にて活動を開始。主な著作に「成城紅茶館の事情」「プリティ・マニア」など。