ナタリー PowerPush - 柳原可奈子
珠玉の「○○な女」が勢揃い 初単独ライブの裏側を語る
太田プロの伝統芸モノマネにも挑戦
──今回のDVD、モノマネもたくさん入っていますね。
ああいうのも太田プロの伝統芸ですから(笑)。やっぱり入れておかないと。いままでやったことのないことやってみようと思って、いろいろ挙げたんですよ。フリップ芸とか、熱湯風呂とか。「柳原可奈子のイメージとしてやらなそうなこと」っていうのを何個か挙げてたうちの1個がモノマネなんです。
──宮崎あおいさんのモノマネとか怒られないですか?(笑)
知らない! やっちゃったけど、いいかと思って。
──国生さゆりさんとか。
ああ、もう~(笑)。ファンの方が心配してくれてましたからね。「これDVDに入るの? いいの?」みたいな。でも愛のあるモノマネなんで。本当に好きな芸能人をギュッと集めてやってみました。
──モノマネで一番の自信作は?
北斗晶さん。「似そうだな」ってずっと思ってたんで、できて良かったです。
──いろいろなトーンの声を出せるところがすごいなと思いました。
今回は声に助けられた部分はありますね。本編のネタでも、モノマネでも。
──ナレーションのお仕事をされているのが活きましたか?
そうですね、ナレーションは今一番力を入れたいなって思っていて。
──ナレーションの面白さってどんなところですか?
声だけで喜怒哀楽を伝えようと思えば伝えられるっていうところですね。作られたVTRに対して、音楽以上に色を乗せられることに気づいたんです。明るくすることも暗くすることもできるし、その中でいろんな自分が出せるし、お笑い以外で一番自分が生き生きできる部分だなってすごく思います。
──ナレーションのスキルはどのように磨いているんですか?
今一緒にお仕事をやらせてもらっている伊武雅刀さんがめっちゃくちゃすごくて、いつも勉強させてもらってます。突然アドリブが入ったりするんですけど、「3秒余ったらアドリブ入れていいんだ!」とか、見ていて勉強になります。あんなに渋い役者さんなのに、声だけ聞いているとひょうきんなおじさんにしか思えなかったり。私は全部のネタにおいて、「え、あれ柳原可奈子だったの?」って言われるくらい全然違う人になるのがすごい好きで、ナレーションも自分ではない誰かになれるのが魅力なんです。伊武さんを見ていると、全然違う人になってるんですよね。
──1人コントの一番難しいところはどんなところですか?
誰かを演じるとき、相手の声が聞こえないわけじゃないですか。でも、相手の声を復唱するのって粋じゃないんですよね。「~とおっしゃいました?」って口にしてしまうのって、すごく嫌いなので。それってすごくやりがちな手法なんですけど、いかにそれをやらずに受け答えだけで見せられるかということを意識してます。たとえば、ケータイを持って「○○さんに代わります」って言ってケータイを渡すマイムをしたときに、実際は誰も受け取ってくれないわけじゃないですか。でも、あたかもそこに人がいるかのように見せないとならないっていう。それがピンの煩わしさっていうか。すごく試行錯誤している部分ですね。
──とくに「今は会いたくない女」や「ブログ女」は、第三者が目に見えるような構成と演技が際立っていました。
私にとって一番の褒め言葉は「何人もいるように見えました」って言ってもらえることなんです。人のコントとか観てても、子供と話してるのに目線が上のままだったりすると、すごく気になっちゃって。目線を落とさないと子供がいるように見えないなとか。
ネタ作りのために社会科見学させてもらいたい
──奥が深い世界だとは思いますが、1人コントはどのように研究されているんですか?
イッセー尾形さんとか、劇団ひとりさんとかを観るようにしています。みなさんやっぱりマイムがすごく勉強になるというか。そこにいるように見える人っていうのは何かが違うんだろうなと思って。たとえば会話のときは相手が喋っている分の間は取るとか。私、焦っちゃうんですよね。DVD見ても「焦ってんなー!」って部分がすごくあったりして。意識して間を取ろう取ろうとは思うんだけど、覚えているものを忘れないうちに出さなきゃいけない! みたいなほうが勝っちゃって(笑)。
──今のところの課題や、ネタ作りの上での悩みはありますか?
もっと幅広い役をやってみたいです。美容師さんや化粧品の販売員さんのネタをやってますけど、たとえば働く女性だけのシリーズで1本単独ライブやってみたいなー、とか。でも、自分の人生経験がすごく活きている部分があって、年相応の人生しか進んできてないので、なんならちょっとお休みしてどっか働きに行きたいくらい。もっともっと吸収しないと筆も進まないですね。ギャルとかだったらなんとなく通過してきた部分があるからできますけど(笑)。OLのネタとか本当はもっとやりたいんで、1日ちょっと社会科見学させてもらいたいなと。1日研修で働かせてもらいたいなっていうくらい、今は人生経験がほしいっていう感じですね。
──よくマンガ家の先生とか、作品に取り掛かる前に取材に行ったりしますもんね。
小説家の方もそうですよね。よく観に来てます、太田プロライブに。あと一般公募するマンガ家さんとかもいるんですよね。その仕事をしている人じゃないとわからないことってあるから。みんなに「いるいる」「あるある」って言ってもらうには、そこの詰めは甘くしたくないので、働きに出られたらいいなって(笑)。
──今現在取り組んでいることは?
私、一般的にたくさんの人が観ているものを知らないんですよ。映画とかマンガとか。結構好みが偏ってたりしているのか、この間も「『タイタニック』観てない」って言ったら「あんな名作を観てないの!?」ってびっくりされて。変なところのリサーチ力ばっかりついちゃって、意外と王道を観ていないんですよ。だから王道を、映画は「タイタニック」から、マンガは「ONE PIECE」から読もうと思ってます(笑)。
──これから王道ですか(笑)。
みなさん本当に情報力がすごくて、先輩の芸人さんとお仕事をすると毎回自分の知識力の乏しさに悲しくなっちゃうんですよ。だってすごいんだもん! さんまさんとか関根勤さんとか、「ONE PIECE」で例えたり、AKBに例えたり、少女時代に例えたり、ありとあらゆる知識をお持ちなんですよ。その知識力はお笑いの才能云々の前に大事なのかなと思って。
──どこで活きるかわからないですもんね。
わかんない。「例えツッコミ」じゃないけど、何かに活かされる部分がきっとあるんだろうなとは思ってます。
──では最後に、今回のDVDについて、どんな人に見てもらいたいですか?
本当にネタ番組がない中、新旧のネタを織り交ぜて作ったDVDです。なんとなくタレントとしての活動しか知らない人にこそ観てもらいたいというか。「芸人・柳原可奈子」の今が詰まってるので、芸人として「コントとかもできるんだ!」って思ってもらえたらなって思います。ちょっと見方が変わるんじゃないかなってくらい自信作です!
柳原可奈子(やなぎはらかなこ)
1986年2月3日、東京都生まれ。2005年デビュー。「笑っていいとも!」「ペケ×ポン」(ともにフジテレビ系)などにレギュラー出演中。太田プロダクション所属。