「キングオブコント2016」王者のライスをはじめ、コントに定評のあるサルゴリラ、しずる、そして作家、演出家の中村元樹というNSC東京校9期生の同期7人によるユニット・メトロンズがこの春、本格始動する。
SIX GUNSとして2018年まで毎月ライブを行っていた3組は、構成を担当していた中村も加えてメトロンズへと改名。シソンヌライブを手がける牛山晃一氏を制作に迎え、単なるコントライブでもなく、演劇でもない、ジャンルレスな公演に乗り出した。芸歴15年を超える彼らが今、変化を求めて挑戦するわけとは? 7人全員インタビューで、その覚悟に迫る。
※2020年4月3日追記:本公演は新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止になりました。
取材・文 / 狩野有理 撮影 / 多田悟
“生まれたてのひよこ”から“危険な奴ら”へ
──まずSIX GUNSが結成されるまでのお話から聞かせてください。この3組が集まった経緯は?
田所仁 東京の若手って、ヨシモト∞ホールを卒業するとネタを試す機会がなかなかないんですよ。そこで、サルゴリラとライスでライブを催そうという話になり、仲のいいしずるが「俺らもいい?」って入ってきた。
赤羽健壱 僕らがジューシーズを解散してコンビになった頃なので、2016年のことですね。
田所 せっかくこの3組が集まったんだから、ただ各々のネタをやるだけじゃもったいない。じゃあユニットコントをやってみようということになって、単発のライブっぽい名前として「サルゴリラとライスとしずるのライブ ~ひよこの回~」とつけたんです。
児玉智洋 1回目なので、“生まれたて”的な意味で「ひよこの回」(笑)。
田所 そのタイトルで一度ライブをやったんですけど、続けていくならもう少しちゃんとユニット名を考えよう、と。池田が「俺たちは6丁の銃だ」と言ってSIX GUNSと命名しました。
池田一真 危険な奴らが集まった、みたいな。
村上純 「ひよこの回」からだいぶ世界観が……(笑)。SIX GUNSとしては東京・神保町花月で毎月ライブを開催していました。
──その頃から中村さんも一緒にやっていたんですか?
中村元樹 はい。「ひよこの回」から作家として携わっていました。
村上 オープニングVTRも作ってくれてたよね。
赤羽 そうだ! VTR作りはすごい成長した。
村上 最初は怖かったもん。いきなりアンパンマンが出てきたりして。
中村 当時はアンパンマンを横にスライドさせるしかできなかったんです(笑)。
──中村さんの映像編集技術も成長したわけですね(笑)。そして2018年12月を最後にSIX GUNSの活動は一時ストップします。
関町知弘 神保町花月がお芝居の公演に特化するということで、ネタライブができなくなってしまったんです。なかなかちょうどいい箱が見つからず、年末でキリもよかったので一旦休止することにしました。
「これが最後」児玉の覚悟
──約半年間の話し合いを経て、昨年8月の公演「KASAMATSU」で再び舞台に立ちました。これにはどんなきっかけがあったのでしょうか。
児玉 SIX GUNSが始まった当初はそれぞれのネタとユニットコントという構成だったんですが、だんだんユニットコントだけをやるようになっていきました。それがすごく面白くて、もっと大きくできたらいいねと話していたのですが、その反面、観客動員数は落ちていって……。その状況を打開できずにいるうちに活動が一旦終わっちゃたんです。そこで、以前「U-1グランプリ」(福田雄一とジョビジョバのマギーによるコントユニット)の公演でご一緒した制作の牛山(晃一)さんに僕からご連絡して、「SIX GUNSをどうにかしたいんです!」と相談しました。
村上 ただ、今までは芸人6人で全部決めてやってきたから、制作という客観的なポジションの方を入れてどうなるかが不安で。
関町 けっこう何回も話し合ったよね。このままセルフプロデュースでやるか、外の方に入ってもらうか。
池田 牛山さんのことは前から聞いていて、すごい方っていうのは理解していたんです。シソンヌが全国を回ったり、1カ月公演を成功させたりしている影の立役者だと。でも反対に、とてつもなく怖い人なんじゃないかとも思っていました。どんな怖い手を使ってシソンヌを本気にさせたんだろうって(笑)。このメンバーは本当に仲がいいので、正直、楽しければいいっていう思いもあった。牛山さんが入ることでこの関係性が崩れるのが嫌だったんです。
村上 要は、この6人の居心地のよさにあぐらをかいていたんですよね。牛山さんにお願いしたら、もうすべてが動き出してしまうじゃないですか。その一歩を踏み出すまで、みんながみんなの顔色を伺っていました。
赤羽 でも児玉はお願いしたいってずっと言ってた。「牛山さんは怖くないから!」って(笑)。
池田 いざ牛山さんにお会いしたら、すごく話を聞いてくれて、「めちゃめちゃいい人じゃない?」ってすぐに印象が変わりました。そもそも勝手に想像を膨らませて恐怖を抱いていただけなんですけど(笑)。「本気でこの人とやってみたい」という意見でみんなが一致して、元樹さんに脚本を書き始めてもらいました。
──再始動のきっかけを作ったのは児玉さんだったんですね。動かなきゃと児玉さんを駆り立てたものはなんだったんでしょうか?
池田 それは聞きたいな。
村上 ちゃんと聞いたことないね。
児玉 (消え入りそうな声で)本当に面白いんですよ……。
赤羽 何なに?(笑)
村上 声ちっちゃいよ。
児玉 僕たちのユニットコントって、本当に面白いんです! でもこのままやっていても恐らく活動は普通に終わってしまう。じゃあ最後のチャンスで、今までのユニットコントとは違うことをしてみようと。まだ夢の話ですけど、これで大きくなって全国回ったりできたら、最高じゃないですか。
田所 うん、すごい伝わってくる。これは僕の予想ですけど、次の公演埋まらなかったら児玉は芸人やめると思います。
赤羽 「最後」って言ってたしね。そんな覚悟があったんだ。
児玉 やめないよ! やめませんけど、最後に……。あ、いや、最後っていうか……。
村上 やっぱり「最後」だ。
田所 これはやめるな。
児玉 やめない!
池田 いや、わかるわかる。本気で大きくしたいっていう思いはみんな同じだから!
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笑いを取りに行かない
2020年4月3日更新