やればやるほど楽しくなっていくネタ
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友人・佐々木への誕生日サプライズを企てる日村は、設楽の家を訪ねて協力を仰ぐ。今まで佐々木には、サプライズと称してさんざんひどい目に遭わされてきた。今回は“逆襲のサプライズ”で仕返しだ! 設楽の家にはサプライズにぴったりのアイテムがたまたま用意されている。なぜかはわからないがラッキー。ノリノリで準備に取り掛かる純粋な日村をとんでもない“サプライズ”が待ち受ける。
設楽 ラ・ママ(バナナマンがかつて頻繁に出演していたライブハウス)なんかでもやっていたような、やればやるほど楽しくなっていくネタでした。
日村 やってて面白かったよね。
──ベースは2人の楽しいやり取りなんですが、物語が進むにつれてゾワッとするような怖さも覚えます。客席も中盤からただの仲がいい友人の会話じゃないぞ、というのを察して空気が変わったように感じました。
日村 俺が突然ものすごい悪口を言うところもあって。ヤバい奴ですよね、あいつ。
──登場人物が全員“ヤバい奴”なんですよね。日村さんが箱の中でオムツ一丁になる場面がありましたが、実際にそこで穿き替えているんですか?
日村 そうです。
設楽 だから、日村さんは1回本当に全裸になっていて。それが楽しみっていうと変態みたいですけど(笑)、そういうこっちの空気感はお客さんにも伝わるじゃないですか。
──確かに、お二人がキャッキャしている感じは観ていて楽しいです。
設楽 このネタは、そういう2人の中で遊んでいる部分がけっこうありました。巨大な箱を持ってきて日村さんに思いっきりぶつけるところでは、日村さんの受け身のテクニックがすごい。バーン!ってぶつけても「全然大丈夫」って。肉で受け止めているらしいです。
日村 テクニックってほどのものじゃないですよ。ただ肉があるっていうだけで。
設楽 このときの日村さんは1本目のセリフ飛ばしたあいつとはまったく違う(笑)。すごい頼もしいです。「もっと思いっきり来て大丈夫だから」って。
日村 あっはっはっは(笑)。
「寝る前のテンション」の2人の“翌日”
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大好きなパティに告白したいベンジャミン。パティを店へ呼び出したはいいが、買った指輪をなかなか渡せずにいた。察しの悪さが自慢の店主ジョージが、クマ撃退に役立つ激臭アイテムと指輪の入った袋を取り違えたところから話はこじれ、さらにギャングがピストルを忍ばせた袋を持ち込みどれが指輪だかわからなくなってしまった! 果たしてベンジャミンはギャングからパティを守り、無事に思いを伝えられるのか。
設楽 1人何役も演じるネタはこれまで何度もやっているんですが、けっこう大変で。特に今回は「誰が何を持っているのか」が肝心だから、日村さんは「今、俺は誰だ」「今、俺は何を持っているんだ」ってわからなくなっていました。本番でも「今これ何持ってんの!?」って聞いちゃってた(笑)。
──いつも以上にスピード感あふれる入れ替わりでした。
設楽 そうなんですよ。でも覚えてくると楽しいよね。
日村 うん。ショートコントをいっぱいやってる感覚というか。
設楽 でもこの大変なネタを3本目に置いたっていう、今回の単独の厚みはすごいと思います。
日村 そうだねー。体力的にも疲れるネタを真ん中に持ってきてる。
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脱出ゲームに挑戦する2人。大掛かりなオリジナルの装置や音響を駆使したこのコントはまるでテーマパークのアトラクションのよう。終始テンション高めな設楽と日村のボケとノリツッコミの応酬により、なかなか謎解きは進まない。1人でどんどん行こうとする日村に、いつまでもふざけていたい設楽がストップをかけると、ファンには懐かしの“どんどん警察”も出動する。
設楽 このネタは観た人から「どうやって作ったかわかんない」とか「どういう発想なの?」ってけっこう言われましたね。テンションが高い2人のネタと、謎解きゲームのネタを合体させているから異質に見えたんだと思います。大きい装置を用意したり音を使ったりするのも今まであんまりやってこなかったし。見た目的に派手なコントになりましたけど、やり取りとしてはふざけているときの普段の自分たちに近いことをやっているんですよ。
──2006年の「kurukuru bird」に収録されている、泊まりに来た友人と大はしゃぎするコント「寝る前のテンション」(「too EXCITED to SLEEP」)を思い出しました。
設楽 そう、あいつらなんですよ。あの2人の“翌日”だと思ってもらってもいいよねっていう話をしていて。
日村 あの楽しい夜の次の日っていうね。
──それはファンにとってうれしい裏話です。
設楽 このネタで、日村さんの天才さを垣間見た瞬間があって。日村さんが「金玉のテンション!」って言って頬をギュッとつまんでいるところがあるんですけど、本当はつまむんじゃなくて丸さをアピールしてほしかったんですよ。“金玉”だから。なのに何回言ってもつまんじゃう。これが覚えられないって、天才なんだなと思いましたね。
日村 毎回も注意された。なぜか忘れちゃうんです。
設楽 金玉だから丸にしたいって言っているのに。日村さんって「こうだからこう」っていう理屈が通用しないんですよ。
──ほかのユニークな動きは日村さんから出てきたものですか?
設楽 「ここの動きどうしようか?」って聞いて日村さんに作ってもらった部分もあるし、「ここはこうして」ってお願いしたところもあります。
すごくパワフルなライブになった
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ひーとん(日村)とおーちゃん(設楽)によるフォークデュオ・赤えんぴつのコント。路上ライブ中、ひーとんは1人で子供の頃の思い出を語り始め、おーちゃんに乱暴を働いてしまったことで自分でも知らなかった一面に気づく。互いの体をトントンし、仲直りしたところでライブを続行。歌は女性目線でドSな彼氏のことを綴った「スカーレット」。
設楽 赤えんぴつの2人がしゃべっていることは毎回ライブのテーマを凝縮したような内容になっています。今回は曲をオークラ主導で作ってもらったら、すっごい歌いづらかった(笑)。
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日村の妹の結婚式。設楽は披露宴を抜け出して締め切りが過ぎた小説を執筆していた。そこへスピーチの文面を見てほしいと日村がやってくる。両親を早くに亡くし、親同然で育ててきた妹の結婚。日村は「あることが忘れられない」と泣く妹の姿を見たといい、「この結婚、ぶっつぶす!」と宣言する。設楽は「自分の幸せは自分で見つけるべき」となだめるが、やると決めた日村はイノシシのように一直線で……。
──ラストのネタはオークラさん作なんですよね。
設楽 はい。これに関しては第1稿のストーリーのままでした。大人な感じのストーリーで、かつ立体的な物語になるようにっていうのは話しました。
──ほろ苦い、愛と友情のお話でした。
日村 オークラが泣かせるようなセリフを書くんですよ。
設楽 日村さん、やりながら泣いちゃって。全部の回で泣いてた?
日村 たぶん泣いてると思う。
設楽 朝、8時くらいに家で練習しながら大号泣しちゃってたらしいです(笑)。
日村 あるセリフのところでグッときちゃうんですよ。けっこうガチで泣いてました、家で。
──演技で泣こうとしているのではなく、セリフ自体に感動して?
日村 そうです。俺、泣くときうるさいんですよ。涙がツー……とかじゃなく、嗚咽が出るくらいの。
設楽 あっはっはっは(笑)。
日村 練習を始めて最初の頃は、途中でセリフが言えないくらい泣いてました。
──全コントを振り返っていただきましたが、改めて「S」はどんな作品になったと感じますか?
設楽 「S」っていうタイトルが決意表明というか、気合いが入るものでしたし、今できるものを全部やったなっていう満足感はあります。これまで培ってきたものを継続しつつ、新しいことにも挑戦できたかな。
日村 いっぱいやってんなって感じがしますよね。すごくパワフルなライブだと思います。
──動きもあるコントも多く、バイタリティあふれていました。
設楽 下ネタも多かったですしね(笑)。