佐久間宣行プロデューサー
インタビュー
取材・文 / 狩野有理 インタビュー撮影 / 辺見真也
面白そうな仕事以外もうやりたくない
──テレビ東京で夕方生放送の帯番組が始まると聞いて驚きました。さらに秋元康さんとのタッグという大きなトピックもあるこの番組。佐久間さん自身も驚いたのではないかと思います。
夕方のベルト番組をやってみたいっていうのは前々から秋元さんとテレビ東京が雑談程度で話していたことだそうなんですが、秋元さんもまさか本当にテレ東が夕方の枠を押さえてくるとは思っていなかったんじゃないでしょうか。「え?」みたいな感じだったような気がします(笑)。僕は実際やるかどうかわからない段階で秋元さんと1回お会いして、昨年末から今年1月の頭くらいにテレ東が本当に夕方枠を用意するつもりがあるということがわかり、本格的に「どうしましょうか?」という話をすることになりました。その中で秋元さんが「学校のクラスを作る」というコンセプトを出したんです。正直なところ、「この人は何を言ってるんだろう?」って思いましたね(笑)。
──秋元康さんとのタッグということにプレッシャーは感じなかったですか?
サラリーマンとしては失格なんですけど、面白そうな仕事以外もうやりたくないというのが本音です。偉くもなりたくないですしね。でも秋元さんと帯で夕方の番組を作るっていうのは、あとで思い返したときに人生としては面白いなと思った。忙しくなるのは本当は嫌なんですよ? だって映画とか芝居とかゲームとかに時間を使いたいじゃないですか(笑)。好きなだけ番組を作ってきたので40代はダラダラ生きようと思ってたんですけど、こんな番組が舞い込んできてしまって。
──「面白そう」という思いが勝ったわけですね。「秋元康の夕方生放送」というと「夕やけニャンニャン」(フジテレビ系)を連想する人もいると思います。意識されましたか?
実はまったくしていなくて。僕、「夕やけニャンニャン」ちゃんと観たことがないんです。
──そうなんですね。世代ではありますよね?
剣道をずっとやっていたので。
──その時間テレビの前にいられなかったんですね。
はい。僕の感覚としては、秋元さんがプロデューサーを僕に任せたのは、言うことを聞かなそうだからだろうなと思っていて。
──「言うことを聞かなそう」というのは?
帯で生放送を担当できるなんてことはもう今後ないので、僕は好きな芸人、好きなスタッフを入れて、毎日楽しく生放送のバラエティをやるだけっていう感じなんです。秋元さんはそこに期待してくれたのかなと。僕自身は、秋元さんのコンセプトの中で自分が面白いと思う生放送を作るから、そこで面白い素人の子が出てきたらそれは秋元さんがなんとかしてよって思っていますけど(笑)。
──じゃあ完成したクラスをどうしていこうっていうのは……。
僕は関係ないって思ってます(笑)。もしかしたら愛着が湧いてきて何かやるかもしれないですけどね。でも僕は単純に、こんな生放送のバラエティがあったら面白いだろうなってことだけをやりたい。
毎日が楽しくなる理想のMC陣
──ではMCに芸人をキャスティングするのはマストだったわけですね。
はい。基本的には毎日スタジオになんて行きたくないから、スタジオに行きたくなる人と仕事したいじゃないですか(笑)。
──毎日が楽しくなるような芸人さんを揃えられましたか?
理想通りにできたと思っています。もちろんほかにも入ってほしい芸人さんはいるけど、月曜から金曜までなのでもう枠がないですから……。
──各MCにはどんなことを期待していますか?
まず金曜には日村さんがいいなと思っていました。クラスに入る子が決まる、番組の肝となる重要な曜日なので。日村さんはダメな人にも優しいし、かつパフォーマーとして生放送だろうがなんだろうが自分で笑いを作りにいったら日本一の人なので、絶対に面白くしてくれるという信頼があります。
──木曜は隔週でおぎやはぎとバカリズムさんです。
10代の素人の子たちに甘々なだけではつまらないので、ちょっとひどいことも言える人がいたほうがいいと思っているんです。そういう意味でこの2組は大人の厳しさを教える役割になるんじゃないかな。生意気な奴には「うるせえ」って言ってもらいたい(笑)。2組はどうやっても隔週しか合わなかったんですが、結果的にはそれが裏表でカチッとはまったのでよかったです。水曜の三四郎は“同列”というイメージ。10代にイジられたり、「うるさいよ」って本気で言われるような人にしたいと思ってお願いしました。
──10代の子たちと同じレベルということですか(笑)。
そうですね。10代にナメられそうなのが三四郎。
──確かに「小宮」「相田」と呼び捨てにされそうです。
あとは、三四郎がコンビとしてどう変わっていくか見たいなとも思っています。
──火曜はバイきんぐ小峠さんと千鳥が隔週で登場します。
火曜はツッコミが強い人にしようと決めていました。月曜に自己紹介が終わったところで、火曜は素人の子たちがそのあとに何をやっても大丈夫な状況にしたかったから、イジるのがうまい芸人に入ってもらおうと。最初はバイきんぐもコンビで出てもらおうと思っていたんですが、西村がときどき海外に行っちゃうので。
──長期のロケによく行かれますからね。
だから無理なんです(笑)。西村には悪いんですけど。
──たまにゲストとして出演してほしいです。月曜はメイプル超合金。このメンバーの中では一番意外でした。
そうですよね。メイプルとはまだがっつり仕事をしたことがないんですけど、ずっと一緒にやってみたいと思っていました。カズレーザーって本当は言っちゃいけないことも言っちゃうタイプの人間だと思っていて、そういう部分と生放送の掛け合わせが面白そうだなと。
──確かにインテリな面があるからか、上品なイメージが強いです。
もうちょっとパンクな部分があると思うので、それがこの番組でうまく出てくれたらいいですね。
──安藤さんにはどんな役割を?
毎回困ってほしいなと思っています。
──困る? 10代の扱い方にですか?
10代もですけど、カズレーザーにめちゃくちゃやってほしいから、安藤さんには毎回30分、怒っててほしい(笑)。
ゴリゴリのバラエティチームで作る
──“教育実習生”として出演する通しレギュラーを若手芸人100組からオーディション中です(インタビューは3月13日に実施)。この“教育実習生”というのはどんなポジションになるのでしょうか。
曜日MCとの間をつなぐ、10代の子たちのお兄さん的ポジションのつもりです。でも受かった芸人のキャラ次第かなと思ってます。
──こういう若手芸人のオーディションを実施するときに、佐久間さんはどんなところを見ていらっしゃるんですか?
それは番組によって全然違うんですよね。「ゴッドタン」の場合はネタから飛び出してくるその人の“人(にん)”が面白そうなところを見ていく。それと、MCの劇団ひとり、おぎやはぎとスイングするかどうかを考えます。
──「ゴッドタン」では谷桃子さん、三四郎さん、小池美由さんなど、さまざまなスターを発掘しています。「この人は売れそう」という予見はいつもあるんですか?
僕はその先を考えて起用したことはあまりないです。企画に合っているか、その人を好きになれるかっていう2点でしか選んでいないから、未来のことは考えていません。ただその代わり、僕の趣味として原石みたいな人を選ぶことが多いかもしれないですね。そのときそのときに「おもしれえな」と思う人に声をかけています。
──なるほど。では今回の場合は?
「3年C組」の場合は、単純に毎日見ていたいと思えるかどうか。「ゴッドタン」に1回出るっていうことだったら単なるイジられキャラでも大丈夫だと思うんですけど、毎日はキツい。今回は多面体の魅力がある人だといいですね。
──「3年C組」の視聴者層は、深夜帯の「ゴッドタン」「NEO決戦バラエティ キングちゃん」などとは異なると思います。番組の作り方をこれまでと変えなければいけないという意識はありますか?
それはないです。自分が面白いと思うものがまずあって、その中で「10代にもここを面白がってほしいな」と思うもので作るか、10代が面白いと思っているものの中で自分も面白いと感じて乗っかりたいと思うもので作るか、どちらかのやり方をしていくんだと思います。
──これまで通り、佐久間さん自身が面白いと思うものをやっていく。
根っこの部分ではそうですね。
──では「ゴッドタン」や「キングちゃん」ファンも平日の夕方を毎日楽しみにしてていいんですよね?
はい。この番組に入っているの、ほぼ「キングちゃん」のスタッフですからね(笑)。またオークラさんや、「水曜日のダウンタウン」(TBS系)に入っている大井洋一さん、矢野了平さん、「陸海空 地球征服するなんて」(テレビ朝日系)のなかじまはじめさんといった作家陣もいます。
──心強い布陣ですね。
ゴリゴリのバラエティチームで作ります。毎日観ていれば、そのご褒美というか、奇跡のような笑いが起こる瞬間を目の当たりにできると思います。だからちょっとずつでも目を離さずに観ていただいて、いつか続けて観てきたことを自慢してもらえるような番組にしていきたいですね。
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ほんと、どうなるんですかね?
- 担任
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- 月:メイプル超合金
- 火(隔週):バイきんぐ小峠 / 千鳥
- 水:三四郎
- 木(隔週):おぎやはぎ / バカリズム
- 金:バナナマン日村
- 副担任
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- 中井りか(NGT48)
- 教育実習生
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- ノブナガ
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- 佐久間宣行(サクマノブユキ)
- テレビ東京のプロデューサー。1975年11月23日生まれ、福島県出身。記念受験したフジテレビの採用試験で手応えを感じテレビ業界を志望。1999年、テレビ東京に入社する。著書に「できないことはやりません~テレ東的開き直り仕事術~」(講談社)がある。
2018年5月30日更新