ぼる塾。左からきりや、あんり、田辺。

よしもと幕張イオンモール劇場10周年 [バックナンバー]

「幕張と私」ぼる塾インタビュー

チラシの折り込みやキャラバン隊、初心を思い出す場所

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本日2023年12月20日にオープン10周年を迎えた千葉・よしもと幕張イオンモール劇場。これを記念して展開してきた連載のラストは、ぼる塾のインタビューをお届けする。オープン当初のチラシの折り込み作業や、公演の呼び込みをするキャラバン隊を務めていたという彼女たちにとって幕張の舞台は、初心を思い出す場所にもなっている。

取材・/ 狩野有理 撮影 / 渡会春加

BKBがアドバイス、キャラバン隊の特権

──幕張イオンモール劇場10周年連載の最後をぼる塾のお三方に飾っていただきます。幕張劇場ができたのが2013年12月。当時は猫塾、しんぼるの別々のコンビで活動されていました。

田辺 私が1年目の頃です。

──劇場ができたときのことは覚えていますか?

田辺 チラシの折り込みのバイトに行きました。できたばっかりのときに、バックヤードで1、2時間、折り込みをやっていた記憶があります。(NSC東京校)18期のみんなで床に座りながら。

──きりやさんとあんりさんはキャラバン隊(劇場の外で公演の呼び込みをする芸人たち)をやっていたとお聞きしました。

ぼる塾

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きりや あんりが「キャラバン隊の募集があって、取っ払いだからはるちゃんも一緒にやらない?」と誘ってくれて。呼び込みと、チラシの折り込みを2人でやっていました。夕方に終わって、その日稼いだお金で近くのコストコに行き、売店でひたすら食べるっていうのが思い出です(笑)。

──3人とも折り込み経験者なんですね。

あんり バイトをしないでキャラバン隊だけやっていた時期もあります。幕張の劇場って、出演する芸人さんたちがイオンモール内でごはんを食べたりしているので、先輩方にお会いできる機会にもなっていたんですよ。本当にご挨拶するだけですけど、キャラバン隊を続けているうちにだんだん顔を覚えてもらえるようになって。遠慮気味な「あ、どうも」から、「おう!」に変化していくのがうれしかったです。ほかの劇場もキャラバン隊はあったんですけど、幕張は特にファミリー層にも人気の芸人たちがたくさん出演していて、当時の自分の力では会えないような先輩と顔見知りになれるという特権がありましたね。

──例えばどの芸人さんですか?

あんり その当時お会いできたのは、相席スタートさん、ライスさん、ハイキングウォーキングさんや、あべこうじさん、チョコレートプラネットさん。相席スタートの山添さんはよく飲み物を買ってくれました。「今日相席さんいる! 飲み物買わなくていいや!」と思ってました(笑)。

きりや あとバイク川崎バイクさん。

あんり BKBさんには、前説をやらせてもらうようになってからアドバイスもいただきました。今まで自分たちが渋谷の劇場でやってきたこととはまったく違って、ファミリー層の方々に向けた前説は新しいことの連続だったんです。そんなときに、公演の一番手のBKBさんが見ていてくださって、「もっとこうしたほうがええんちゃう?」と。幕張だったからこそ得られた経験や先輩とのつながりがあって、キャラバン隊をやっててよかったと思うことの1つです。

きりや しかも、ぼる塾になってからBKBさんに会ったときにコンビ時代のことを覚えていてくれたんです。「お前ら前説していたのに、今めちゃくちゃテレビ出てるやんけ!」と言ってくださって。「あのとき俺、ダメ出ししてたのにハズいわ~」みたいな(笑)。そんなことまで覚えてるんだと思って、めっちゃうれしかったですね。

──田辺さんは幕張劇場のキャラバン隊や前説をされたことはないんですか?

田辺 まったくやったことがなくて。折り込みにいっただけで(笑)。

あんり でも、コンビ時代に生まれた幕張でのユニットライブに田辺さんも一緒に出られているのはうれしいです。私たちがキャラバン隊をやっていた頃に当時の支配人さんが「幕張キャラバンライブ」という公演を打ってくださって、普段だったら立てない舞台でネタをやらせていただいていたんですよ。そこからユニットライブが派生して、私たちが猫塾さんと組んで、ぼる塾になってからも変わらず一緒に出させてくれた。キャラバン隊をやっている若手にすごく優しい劇場でした。

──ちなみに、当時のキャラバン隊にはほかにどなたがいらっしゃいましたか?

あんり できた当時は、私たちの1期上なんですけど(EXITの)兼近さんもやっていたと思います。あとは、神保町(よしもと漫才劇場)でがんばっているゆかいな議事録の長島とか。千葉あたりに住む芸人が多かったですね。NSCが神保町にあるので、1本で行ける本八幡とか。私たちも地元がそっちなので。

ぼる塾

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スベると歩いて帰りがち

──きりやさんとあんりさんは幕張劇場から家が近かったんですか?

あんり 実家が近いですね。

──劇場までの道中の思い出は何かありますか?

きりや 私は赤いやつ、京葉線で行っていて、乗り換えたときに見える景色が好きで。

あんり どういう景色?

きりや 空が広いなー、青いなーとか。あと、ホームが外なので寒いなーとか(笑)。「もう寒いなー、冬かあ」みたいな、季節を感じながら「キャラバン始めてもう何年目だろう」って時間の経過を感じてました。あんりと2人でジュースを買ったり、電車で行く楽しさがあります。海浜幕張駅からは劇場までバスに乗って行くんですけど、たまに歩いて行って、途中でコンビニに寄ったり。そういうのも楽しみの1つになっています。

あんり 私はキャラバン以外のバイトをしていなかったときは、100円のバス代のために歩いて行っていました。コストコではホットドッグに飲み物も付いてきて200円で、それには惜しみなく払えたんですけど(笑)。「果たしてこの選択は正解なのだろうか? ホットドッグを我慢すればいいんじゃないのか?」っていつも思いながらも劇場と駅の間を歩いていましたね。でも、だんだんお金が持てるようなって、気軽にバスを使ったり、次の出番があるからタクシーを手配していただいて別の劇場に行くスケジュールになったりして、その変化もうれしく感じます。バス代をケチるところから成長したなと。

──田辺さんは道中の思い出はありますか?

田辺 遠かったですねー。でも、私は乗車率120%くらいの電車に乗って千葉から東京の学校に行っていたので、千葉方面行きの空いている電車のゆったりとした空間が好きでした。遠いんですけど、ゆっくり電車に乗れるのがよかった。私、電車がちょっと好きで。

あんり 今思い出したんですけど、ぼる塾になってから、コーナーかなんかで思いっきりスベったんですよ。別にそのときはもうバス代も持っていた頃なんですけど、私も田辺さんもどちらも何も言わずに歩きを選んで、何も話さずに歩いたことがありました。歩道橋をはあはあ言いながら上って、海浜幕張駅までの途中のミニストップ前あたりで「いやー、スベったな」って言ったのを思い出した(笑)。

田辺 あー(笑)。

あんり 私たちはぼる塾になってから全然歩かないんですけど、あのときだけ歩いたよね?

田辺 確かに。覚えてる。

あんり 「今日は歩くんだね」とかそういう会話もなく、ようやくミニストップの前あたりで「スベったな」って吹き出したよね(笑)。お互い言いたいけど、スベりすぎて言えなくて……みたいな。どっちがスベってどっちが言い出したのかは覚えていないんですけど、ぼる塾になって唯一、歩いたと思います。

田辺 それ言ったら私はスベったら歩きがちだわ(笑)。

あんり スベったら駅に着けないんだよね。考えないといけないから。

田辺 私、自分がスベったくせにカッカしちゃうんだよね。やさしいズさんと一緒の舞台だったときに、佐伯さんが「まあまあ」って言くれているのに、「ダメだ!」ってずっと怒ってて。駅に着いたあたりのニューデイズで温かい飲み物とチョコレートを買ってもらってさ。

きりや 優しい(笑)。あそこまで時間をかけて行ったらウケたいっていう遠さではあるよね。

あんり 確かに。移動に時間かけてる分、スベりたくない劇場かもしれない。もちろん全部の劇場でスベっちゃダメなんですけど、重みがでかいです。こんなに時間かけてやって来て、スベってんだって。

きりや 幕張近辺で歩いている芸人さんを見つけたら、「あの人スベったんだ」ってお客さんが思っちゃうかもしれない(笑)。

──頭を冷やすのにちょうどいい距離なんですね。

田辺 そうなんです!

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幕張での過ごし方

──朝から夜まで幕張の出番が入ってる日はどうやって1日を過ごすんですか?

あんり 私はグランドモールの一番先の、いろんなお店が集まっているところに行って「やきとり日本一」っていう焼き鳥屋さんの唐揚げ弁当を買います。幕張に行ったら必ずというくらい食べたいお弁当です。

きりや しょっちゅう2人は食べてるよね。

田辺 あんりに教えてもらったんだよね、私。

きりや 最初はうちらが前説をやっていた頃に、ゆにばーすの原さんが「お昼ご飯食べた?」って聞いてくれて、「まだです」って言ったら私とあんりの分を買ってきてくれたんだよね。

あんり いや、そのときは中華だったんじゃないな?

きりや あれ? 唐揚げ弁当だった気がする。

あんり でもそれで知ったのかもね。

きりや そういうときにも先輩のありがたさを感じるよね。私は、一階のはじっこのほうにスーパーがあるんですけど、そこでサラダを食べるっていうのがちょっと変な決まりになってます(笑)。というのもサラダの種類がとんでもなくて、楽しいんですよ。あとはお惣菜のほうに行ってちょっとお肉系のおかずを選ぶとか、自分でお昼をカスタマイズして献立を楽しんでます。

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──わりとみなさんイオンモールの中で過ごす?

あんり あんまり外には出ないかもね。

田辺 でも1回、隣接しているコストコでピザを食べようってなったんだけど、ピザが飛んでいっちゃったことがあったよね。

あんり あはははは!(笑)。そのときはまだぼる塾を組んでいなくて、後輩の私が田辺さんのピザを持っていたんですけど、田辺さんが飲み物を買って「悪いわね~!」って戻ってきたときにちょうどピザが風で飛んでいって、必死で追いかけたんですけど間に合わなくて下に落ちてしまって(笑)。

田辺 周りの若い人たちも「あいつ、ピザ飛ばしてんじゃん」って感じで見てた(笑)。マンガとかでしか見たことないような。

あんり マンガでもないよ、ピザ飛ばす設定なんて(笑)。

きりや あるんじゃない? 四コマとかで(笑)。

あんり 先輩から預かっていたピザなので、とんでもないものを飛ばしてしまったと思いました。

田辺 あれは忘れられない。「もう1回買おう」って言ったら「もう大丈夫です」って(笑)。

あんり マジで気まずかった、あれは。

田辺 いや、私も気まずかったよ(笑)。

芸人になって初めて親に褒められたのは幕張

──幕張劇場の特徴はなんだと思いますか?

あんり 寄席公演だと、客層がファミリー層なんですよ。でも、夜の企画ライブになった途端に「どこから来たんですか?」という客層になります(笑)。すごくコアな客層というか。けっこうお客さんの顔ぶれで会場の空気が変わります。お客さんも一緒にライブに参加しているような感覚もあって、一番お客さんに空気を作ってもらっている劇場なんじゃないかと思います。

田辺 確かに、夜は攻めた企画をやっていて、ずっとワクワクさせてくれる感じがある。先輩方とコーナーとかで共演すると、そこで関係性ができることもあるから、そういう機会を幕張でいただいて、ほかの現場でも発揮できるのはいいなって思いますね。

きりや 私は、飲食可なのがいいですね(笑)。食べながら、ジュース飲みながら観ていただけるので。ネタ中に赤ちゃんが泣いたり、声が聞こえたりすると、私たちも癒されます。ファミリー層のお客さんが多い、幕張ならではの雰囲気だなと思います。

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──ネタのウケ方などもほかの劇場とは違いますか?

あんり そうですね。ネタ選びも、勝負するネタというよりお客さんが楽しめるネタにしています。ちょっとゆったりやってみていいかなってなるくらいの感覚ですね。

──印象に残っている公演や出来事はありますか?

あんり コンビのときに、初めて親を呼んだのが幕張の劇場のキャラバンライブの出番だったんです。家が近いっていうこともあって呼びやすくて。お父さんが初めて私が漫才をやっているところを見てくれたんですけど、帰ったら「こんな生き生きしている娘を初めて見た」と言ってて。私は長女なので、お父さんからしたら一番守ってきた感じだったから、意外だったんでしょうね。芸人になって初めて親に褒められたのは幕張でしたね。

きりや キャラバン隊をやっていた頃、休憩時間にあんりが隅っこのほうで寝ちゃってたんですよ。その姿が可愛いなと思って写真撮っていたんですけど、ぼる塾になって「ダウンタウンDX」(読売テレビ・日本テレビ系)に出演したときに、スタジオでその写真をダウンタウンさんにお見せすることになって。みんな大笑いしてくれて、松本さんも「コーヒー炒ってんのか!」ってツッコんでくれたりして、あのときに撮ってよかったなと思いました。昔の写真がまさかダウンタウンさんに見せられるときが来て、ツッコんでもらって笑いになっているっていうのがうれしかったです。

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──では最後に、よしもと幕張イオンモール劇場10周年への思いや、読者のみなさんへメッセージをお願いします。

あんり 自分にとっては初心を思い出す場所です。劇場に立つたびに、キャラバン隊をやっていた頃の、芸人として一番昔の自分と今の自分を比べられる場所。

きりや お買い物や映画のついででもいいので、幕張をお笑いを劇場で見るきっかけにしてもらえたらいいなと思います。前説を若手の子がやっていたりもするので、人気芸人さんだけでなく、青田買いもできちゃいます。

田辺 私はぼる塾になってから劇場に立ってはいるんですけど、やっぱりあんりとはるちゃんの下積みがあったからこそ出られたっていうところもあるので、当たり前に出られる場所ではないと噛み締めつつ、これからも呼んでいただきたいです。

あんり 出続けたいですね。

きりや うんうん

あんり 何年経っても。

プロフィール

ぼる塾(ボルジュク)

別々のコンビだった猫塾としんぼるが合体し、2019年12月に正式結成したカルテット。NSC東京校18期生の田辺智加(タナベチカ)と酒寄希望(サカヨリノゾミ)は2012年5月に猫塾を、小学校からの幼なじみでNSC東京校20期生のきりやはるかとあんりは2016年4月にしんぼるを結成した。産休中の猫塾・酒寄を除く3人で「M-1グランプリ2019」に出場し、3回戦まで進出。2020年の「女芸人No.1決定戦 THE W」でもトリオで決勝進出を果たした。2023年、育休から復帰した酒寄を含めた4人で2度目の「THE W」ファイナリストに。きりや、あんり、田辺の3人は「ラヴィット!」(TBS系)月曜にレギュラー出演中。

ぼる塾。左からきりや、あんり、田辺。

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てれびのスキマ/戸部田 誠 @u5u

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あんり「『今日は歩くんだね』とかそういう会話もなく、ようやくミニストップの前あたりで『スベったな』って吹き出したよね(笑)」

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