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「THE SECOND」の余韻 vol.1 [バックナンバー]

ギャロップが語る「THE SECOND」

“戦い”への気持ち、晴れたどころの騒ぎじゃない

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6月8日(木)、東京・日本青年館ホールにて開催される「THE SECOND LIVE ~同争会~」にギャロップマシンガンズテンダラーらが出演。結成16年目以上の賞レース「THE SECOND~漫才トーナメント~」で活躍した芸人たちが再集結する。

今年初開催となった「THE SECOND」を圧巻のしゃべくり漫才で制したのは、結成20年目、大阪よしもとで活動するギャロップ。東京と大阪を行き来しながらテレビ収録やPRイベントに参加し、忙しい日々を送る2人にインタビューを実施した。大会の開催が発表される以前の活動スタイルから、大会中、そして今後のことを聞くと、見えてきたのは漫才に取り組む真摯な姿勢。2018年、ラストイヤーにして「M-1グランプリ」決勝進出を果たすも8位に終わり、それ以降“戦い”の場から離れていた彼らが「THE SECOND」というセカンドチャンスで得たものとは?

取材 / 狩野有理

※取材は5月26日に実施。

僕らのネタのところだけ10回以上見てます

──「THE SECOND」優勝から1週間が経ちました。実感は湧いてきているでしょうか。

毛利大亮 じわっとですね。

林健 分刻みのスケジュールとかではないんですけど、「次なんやったっけ?」とマネージャーに聞く回数は若干増えてます。めちゃめちゃ忙しいからというより、歳いって次の予定が覚えられないだけというのもあるんですけど(笑)。

毛利 でも、今までの稼働を考えるとかなり動けているので、うれしい悲鳴です。

──憧れの番組にも出演できた?

 自分が出演する側になっていることすら想像していなかったような番組に呼んでいただいて、ありがたい限りです。「M-1グランプリ」なら年末にあるってわかっているので、もし優勝したら年末年始のあの特番に出られるかも……と予想できるじゃないですか。「THE SECOND」は大会自体が突然登場したので、3カ月前の自分にはまったく予想できなかった状況に今なっていて、気持ちが追いついていない部分もあります。

──ちなみに、「THE SECOND」グランプリファイナルのオンエアはご覧になりましたか?

 見ていないんですよ。ほかの番組に出演したときに振り返りのVTRで流してもらうことはありますけど。

毛利 僕は、僕らのネタのところだけ10回以上見てます。寝られないときに見てます。

 それで興奮して余計寝られないんじゃないの?

毛利 あ、はい(笑)。

──余韻にひたっている?

毛利 1本目のネタのあとにも言ったんですけど、ほんまに完璧やったんですよ、僕。それを確認してます。

 何回確認してもそうやもんね。

毛利 そう。何回確認しても完璧。

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──「M-1グランプリ2018」決勝でのミスを悔しがっていた毛利さんにとっては何度も噛み締めたくなる出来だったわけですね。「M-1」への挑戦の後は戦いに身を置く機会はなかったと思いますが、その数年間は漫才とどう向き合ってきましたか?

 僕ら世代は「M-1」がまだ始まっていないときに芸人になっているんですよ。

編集部注:「M-1グランプリ」は2001年にスタート。林は1997年にNSC大阪校20期中退、2000年に同22期卒業、毛利は1999年に同21期卒業。

 「M-1」関係なく2人とも漫才が好きだったし、「M-1」があるからやる、「M-1」がないからやらない、というのが一番ないよなと話していました。通常興行で観に来てくれるお客さんがいる限りは絶対新ネタは作り続けたいという思いでコツコツやっている感じでしたね。

毛利 あとは、「上方漫才大賞」の大賞受賞というのを目標にしていました。

対戦相手は誰も調べてないし、対策とってない

──そんな中「THE SECOND」の開催が発表されて、コンビ間ではどんなお話を?

毛利 コンビではそこまでしゃべってないね。

 「……出るよなあ?」くらいの感じです。大会の全貌がまったくわからなかったので、しゃべりようがなかったと言いますか。

毛利 でも、出ない理由はないので、きっとマネージャーが勝手にエントリーしてくれているやろうと思っていました。で、マネージャーに確認したら「まだしてません」って言うから、「(エントリー)しておいてください」とは言いましたね。

──「M-1」とは異なる、6分ネタのまったく新しい賞レース。どんな準備をしましたか?

 まだあまり世に出ていないネタで、6分に合うネタを探し出してきて劇場でブラッシュアップしました。

毛利 一応僕も「このネタがいいんちゃう?」と提案もしたんですが、全部却下されたんですよ。蓋を開けてみたら、林が選んだネタで優勝できて、「しゃべくり漫才」という称号もいただいた。「もう俺からネタの提案をするのはやめておこう」と心に誓いました(笑)。

 5分出番が入ったときは「仕上げろよ」という劇場からのメッセージだと受け取って、僕らのあとの芸人さんには申し訳ないと思いつつ、6分ネタをやらせてもらいましたね。

毛利 京都のよしもと祇園花月が本当に応援してくださって。もちろん全劇場お世話になりましたけど、予選会の前にはわざわざ出番を入れてくれて、調整させてもらいました。本当に助かりました。感謝です。

 劇場の後押しというのはどこの事務所よりもあったと思うので、そういう意味でも負けられない、と思っていたら、よしもとの芸人とばっかり当たりましたけど(笑)。

──予選会ではHi-Hi、ラフ次元、グランプリファイナルではテンダラー、囲碁将棋、マシンガンズと対戦。ベスト8を決めるラフ次元との対決は1点差でしたね。

 めちゃくちゃ緊張しました。ここが一番やりにくかったです。ここで負けたら、「後輩に負ける」「決勝に行けない」の2つが待っていたので。

──テンダラーとの1戦、毛利さんいわく“関西ダービー”も白熱しました。

毛利 テンダラーさんと漫才のトーナメントで当たるなんて、一生に1回あるかないか。「テンダラーさんに勝ったら一気に漫才うまなるな」という話はしました。

 その成功体験によって、決勝に向けてどっしりできるというか、落ち着きが出るんじゃないかと。

──勝ちが決まった瞬間、毛利さんは感極まっていました。

毛利 安心とかうれしさとか、いろんな感情でした。テンダラーのお二人が僕らの漫才を褒めてくださってたのもあって、ああなっちゃいましたね。すみません。

 僕は泣く感じにはなりたくなかったので、(毛利に)「まだ2本目あるよ!」ってツッコんだんです。そうすることによって耐えました。ただ、白川さんも涙ぐんでいたじゃないですか。あとで浜本さんと「僕らだけ冷たい奴みたいになってません?」と心配になってましたね(笑)。僕ももちろん泣いてしまう気持ちはわかります。独特な瞬間でした。

──決勝で当たったマシンガンズとは普段ご一緒になる機会はほぼないと思いますが、戦略は?

 ものすごいウケるということはわかっていましたが、どんなネタで来られるかは知らなかったですね。まあ、それを言ったら全員そうなんですけど。対戦相手のことは事前に調べないほうがいいかなと思っていて。変な飲まれ方もしたくなかったですし。

毛利 誰も調べてないし、対策とってないね。

 シャンプーハットの恋さんは、ベスト32のときに「(対戦相手の)囲碁将棋見すぎてファンになってもうた」っておっしゃってました(笑)。

毛利 そういうのはめっちゃいいなあ(笑)。

「この大会、よかったよな」

──優勝直後はほかのファイナリストたちからどんな言葉をかけられましたか?

 それが、その景色をずっと覚えておきたかったんですけど、あれよあれよと優勝会見まで進んでいて、あんまり覚えていないんです。たぶん最初はアンバサダーの松本(人志)さん、MCの東野(幸治)さんに「ありがとうございました」とご挨拶したと思うんですが。

毛利 囲碁将棋が待っててくれた気がしたなあ。違ったかな。でも、覚えていないくらいパニックでしたね。

「THE SECOND~漫才トーナメント~」で優勝し、会見に登場したギャロップ。

「THE SECOND~漫才トーナメント~」で優勝し、会見に登場したギャロップ。

──打ち上げに参加されている様子をTwitterで拝見しました。

 (スピードワゴン)小沢さんが「やりましょう」とみなさんに声をかけてくださって、そこにあとから合流させていただきました。

毛利 「よかったよな」ってみんな言ってましたね。「この大会、よかったよな」って。

 僕のテーブルは後輩が多くて、「僕らもがんばります」というようなことをキラキラした目でしゃべってくれていました。それを見たら、すごくいい大会だったんだろうなと。「ギャロップが優勝して周り白けてたらどうしよう」とうっすら不安に思っていたので、ホッとしました。

──準優勝のマシンガンズのお二人とは話せましたか?

 本当はめっちゃしゃべりたかったんですけど、優勝してホクホクしてる自分がズケズケ横に行って「お疲れさまでした」とは、言えなかったんですよね……。失礼なんじゃないかと思って。ご本人は全然そんなこと思っていらっしゃらなかったんでしょうけど。

毛利 僕はたまたま滝沢さんの隣の席に座らせていただいたんですけど、滝沢さんはお酒が入りながらも「すごかったね」って何回も言ってくれました。

 それはうれしかった。めちゃくちゃうれしかった。

毛利 一緒に漫才のイベントとかできたらいいなあ。

 やりたいですね。

毛利 「この人とやりたい」という希望がちょっと通りやすくなったと思うので、ここらでいろいろ仕掛けを考えたいなと思います。

──ぜひマシンガンズとのツーマンライブを祇園花月でやってほしいです。お二人が優勝されたことで、千鳥、かまいたち、ダイアンがMCを務めることが発表されている「FNS27時間テレビ」(フジテレビ系)への出演を期待する声がSNSで盛り上がっています。かつて大阪・baseよしもとでしのぎを削っていたメンバーが揃うのでは、と。

毛利 ただただ「決まればいいなあ」ではありますけど、ちょっとまだトレーニングしないと、なあ?(笑)

 夢みたいな話です。「27時間テレビ」なんて家で見るものという感覚だったので。どんどん上に行っているみんなに僕らが一瞬で近づけるなんて思っていませんけど、もし出られるなら全力で楽しみたいですね。

毛利 劇場で一緒だったメンバーとの共演がこれから増えるだろうと思うと、それはうれしいですね。

 でも、大先輩みたいなものなんで、全員。僕なんかまだテレビ局で迷子になりそうになってる状態ですから。

“戦い”への気持ち、晴れたどころの騒ぎじゃない

──改めて、「THE SECOND」はどんな大会でしたか? また、初開催の大会にあえて改善点を挙げるなら?

毛利 (総合演出の)日置祐貴さんも謳ってはりましたけど、本当に「芸人ファースト」でした。フジテレビさん全体で、お祭りにしてくださったのもうれしかった。

 緊張しない大会でしたね。全員にとってホームみたいな空間だった。自分の経験上、直前まで緊張したときってうまくいくんですよ。本番で緊張がなくなるので。でも今回、ずっと緊張していなくて、「あれ? これあかんやつやん」と思っていたら、そのまま緊張せずに終わったんです。そういう空気の中でやらせていただいた。改善点は、そうですね……。楽屋にあるケータリングの多さ。間違えて超新塾さんの楽屋入ったんかなと思うくらい用意されてたんで(笑)。置いとかれると食べようとしてしまうので、もう少し数を減らしていただいても大丈夫です。

毛利 さっきのマシンガンズさんのお話もそうですけど、勝っても負けても相手を称えられるのがこの「THE SECOND」やったんじゃないかなと思いますね。そして、お客さんも最高。改善点は、僕は1つもないです(林のほうをチラリ)。

 (笑)。お願いがあるとすれば、「今回のまんまやってください」ということですかね。来年以降挑戦する後輩にも、この景色を見てきてもらいたい。そういう意味で、変わらなくてもいいと思います。

──自分が“第1回大会の王者”だというのは意識されますか?

毛利 めちゃめちゃしてますよ。やっぱり「初代」という響きが好きなので。初代王者は僕らしかいないですから。テンション上げるためのワードとして心に刻んでおります。

 何をするわけではないんですけど、くすぶっている後輩に「夢あるよ」っていうのは伝えたいので、自分たちの今後によってその夢をなくすわけにはいかない。スーパースターになることはないとは思いますけど、でもちゃんと「あそこで人生変わったよね」と振り返れるくらいには、芸人人生続ける限り、しっかりキープしたいと思っています。

──ある「M-1」王者の芸人さんが、「1%くらいはまた大会に出たいと思う気持ちがある」というお話をされていたのを聞いたことがあるんですが、お二人の“戦い”への気持ちは今回ですっきり晴れたでしょうか?

 それは芸人さんによってめっちゃ分かれるところですよね。好きなことをマイペースにがんばりたい人もいれば、大会と名の付くものなら出たいという人もいる。僕らはどっちなんですかねえ。

毛利 僕ら、基本バトルは苦手なほう。

 でもね、嫌いじゃないんですよね。やっぱり勝ったらうれしいし、わかりやすい目標なので。来年以降も「THE SECOND」があったら、(出場資格が「全国ネットの漫才賞レースで優勝経験がないこと」なので)出られないわけですけど、ちょっとだけさみしい気持ちはあります。もちろん99%ホッとしていますけど。

毛利 僕はもう、一丁上がり(笑)。何回も出られるものではないと思っていたので。大変やろうし、(ネタを作る)相方も。

 正直、ネタ2本で敗退していたとしても、気持ちは晴れてたと思います。ましてや3本もやって優勝までさせていただいた。もう、晴れたどころの騒ぎじゃないです。

毛利 次に狙うは「上方漫才大賞」なので、漫才道を精進ですね。優勝会見で林が言ってくれた「70歳まで新ネタ作れるような漫才師で」というのはうれしかったので、それはやりたいなと思ってます。

 ただ、脳の劣化もありますから。50歳くらいまでに作っておいて、70歳になったときに今書いたみたいな顔して出します。

毛利 「そのネタ、20年前に1回見たよー」って俺が言うかもしれない。

 「えー? なんてー?」。

毛利 あはははは(笑)。仲良くやっていきます。いい漫才を。

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写真左 / 林健(ハヤシタケシ)
1978年5月17日生まれ、大阪府出身。

写真右 / 毛利大亮(モウリダイスケ)
1982年4月11日生まれ、京都府出身。

2003年12月にコンビ結成。2008年に「第29回 ABCお笑い新人グランプリ」最優秀新人賞と「第43回 上方漫才大賞」優秀新人賞、2009年に「第39回 NHK上方漫才コンテスト」最優秀賞を受賞する。 「M-1グランプリ」ではラストイヤーにあたる2018年に初の決勝進出を果たし、翌2019年4月に初めて大阪・なんばグランド花月で単独ライブ「観に来てください」を開催した。2023年、「THE SECOND~漫才トーナメント~」初代王者に。毛利は「DJ KELLY」としての音楽活動、林は好物のチャーハンを作ったり食べたりするYouTubeチャンネル「チャーハン林」や芸人サッカーチーム「FC林」でも注目を集めている。

THE SECOND LIVE ~同争会~

「THE SECOND LIVE ~同争会~」

「THE SECOND LIVE ~同争会~」

「THE SECOND」グランプリファイナルでギャロップと戦ったマシンガンズ、テンダラー、そして囲碁将棋、シャンプーハット、かもめんたるガクテンソク、ラフ次元、ランジャタイという大会を彩った芸人たちが出演する「THE SECOND LIVE ~同争会~」が6月8日(木)に東京・日本青年館ホールで開催される。チケットはFANYチケットにて販売中。

日時:2023年6月8日(木)18:00開場 19:00開演
会場:東京・日本青年館ホール
<出演者>
テンダラー / シャンプーハット / マシンガンズ / ギャロップ / かもめんたる / 囲碁将棋 / ガクテンソク / ラフ次元 / ランジャタイ
MC:ゆにばーす川瀬

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フジヤマ@演芸作家・ネタ作家/あらかわ☆お笑い河川敷プロジェクト/かわっぷち☆ちゃんねる @saiyuushu556854

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