音楽ナタリー PowerPush - 米澤円
“鳥と旅するアルバム”ができるまで
ほどよく放任されてました
──そういうご家庭だと、声優になることについて反対されたりはしなかった?
全然なかったです。応援されてはいたけど、過度に干渉されたりはせず心地よい距離で見守ってくれている感じでした。「声優になりたいから専門学校に行きたいんだけど」って話したときも「あっ、そうなん? やりたいことやりー!」って言って通わせてくれたし、子供が「声優を目指すこと」に反対っていう親御さんも多いみたいなんですけど、うちの母親は応援するところは応援してくれて、それ以外はほどよく放任主義だったところがありがたかったですね。専門学校の頃から私より上手な子はたくさんいましたし、声優になってからもいきなり世に出ていけたわけでもないですし。それでも自分のペースで活動できたのは親のおかげなのかなって思ってます。
──で、そんな米澤さんの代表作「けいおん!」と「WHITE ALBUM2」は2作とも音楽を題材にしたアニメなんですよね。
そうなんですよね。「けいおん!」はお芝居のオーディションのほかに歌の審査もあって、「WHITE ALBUM2」のときもセリフを読んで、そのあと歌うっていうオーディションがあって。どっちの役も歌の活動を続けていたからこそ決まったものなのですごくうれしくて。キャラクターソングを歌うのも楽しかったですし。
──“歌える声優”になりたかった方にとって、「けいおん!」の平沢憂名義でアニソンシーン以外からも注目されるような楽曲を歌ったり、「WHITE ALBUM2」の小木曽雪菜名義でアルバムを作ったりするのは楽しいことだった、と。
はい。それが誰の名前の曲であれ、私の歌声を聴いて楽しんでくれる人がいることを思うと自然と力が入るし、その曲がCDになるかと思うとうれしかったですね。演じた役全部に対して深い愛を持っているつもりだから、いつも「ずっと演じていたいな」って思ってるんですけど、演じていられるのはその作品の放送が終わるまでじゃないですか。でもキャラソンCDがあれば、ファンの方にいつでも気軽にそのキャラクターに会ってもらえますし。
──そのメディア特性のお話って面白いですね。「けいおん!」や「WHITE ALBUM2」のファンはアニメのDVDやBlu-rayを買っているし、繰り返し観ていたりもするんだろうけど、でも音楽を聴くほうが手軽に作品に触れられますしね。
音楽なら電車の中とか、仕事の合間にでも聴いてもらうことができるし、キャラソンの場合、そうやって音楽を聴いてもらうだけでそのキャラクターのことを思いだしてもらえる感じがすごくいいんですよね。
──じゃあ“歌える声優”になりたいとはいえ、キャラクターソングを歌えればOKだった?
いや、キャラクターソングを歌わせていただく一方で、事務所に許可をもらって自分でバンドを組んでライブをしてました。そこで自分自身の音楽の表現とキャラクターソングとしての表現っていう2つの表現欲求のバランスをとっていたのかもしれないですね。
「メジャーデビューだ!」「さてどうしましょう?」
──それもそれで興味深い。一方で毎週毎週、全国ネットのテレビから自分の声が流れる超オーバーグラウンドな仕事をしていながら、もう一方でご自身で音楽活動をしていたわけですから。
確かにそうかも(笑)。でもさっきの声優のカテゴリのお話じゃないんですけど、自分でライブ活動をしている声優さんも少なくないですし、そんなに特別なことをしている感じはなくて。それにバンドもイベントの主催もすごく楽しかったですし、「いずれ自分の名前でも歌の活動をしていきたい」って意思表示するためにも大切な活動だと思っていましたし。
──そしてこのたび、米澤円名義でアルバム「さえずりの夢、彩とり鳥のセカイ」をリリースすることになった。「ソロ名義で音楽活動を」という打診があったときのお気持ちって?
単純に「わーいっ! デビューだ!」って感じではなかったです。なんかこう、「来た……!」って静かに思ってました。
──「いずれ自分の名前でも歌の活動をしていきたい」と思っていたのに?
デビューのお話をいただいた段階では、どういう活動をするのか想像できなかったので。まずは「どういうものを作っていこう?」「納得のいくもの作ろう」「いいアルバムを作ろう」ってわりと現実的になってた気がします。キャラソンみたいに「この曲を歌ってください」って、作品の背景とか、キャラクター設定とかすべてができあがった状態でお話をいただければ「わーいっ! 歌いまーす」「ありがとうございまーすっ!」って言えたはずなんですけどね(笑)。
──でもせっかく米澤円名義で歌うのに、ただ用意してもらった楽曲だけを歌うのも……。
もったいないので(笑)。だから「さてどうしましょう?」って冷静になったんだと思います。
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- 1stアルバム「さえずりの夢、彩とり鳥のセカイ」 / 2014年8月6日発売 / Victor Entertainment
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3240円 / VIZL-648 / Amazon.co.jp
- 通常盤 [CD] 2700円 / VICL-64131 / Amazon.co.jp
CD収録曲
- -再会-(instrumental)
- キミと世界エレジー
- あしたのしおり
- 忘想花
- -昨日-(instrumental)
- コロコロココロ
- 擬態スマイル
- コスモダウト
- -胸懐-(instrumental)
- 煉獄スカーレット
- LINKS
- ハートフル・ドリーマー
- -最初-(instrumental)
初回限定盤DVD収録内容
- キミと世界エレジー Music Video
- スペシャルメイキングムービー
- お茶会ムービー(with 伊東久美子, 平野妹)
米澤円(ヨネザワマドカ)
大阪府生まれの声優、ボーカリスト。2005年に声優デビューをし、2009年にはテレビアニメ「けいおん!」シリーズの平沢憂役で注目を集め、以来アニメ「Another」の赤沢泉美役、「WHITE ALBUM2」の小木曽雪菜役、「RDGレッドデータガール」の宗田真響役、「ステラ女学院高等科C3部」日向八千代役などを務める。またその一方で声優ライブイベント・Venus Voice GIGを主催するなど、音楽活動も活発に展開。「けいおん!」では平沢憂名義でキャラクターソングを発表し、2014年には「WHITE ALBUM2」の小木曽雪菜名義で、TVアニメ内のボーカル曲を集めた「WHITE ALBUM2 VOCAL COLLECTION」を発表している。そして2014年8月、米澤円名義のコンセプトアルバム「さえずりの夢、彩とり鳥のセカイ」でメジャーデビュー。