音楽ナタリー Power Push - 米倉利紀

21枚目で迎えた“分岐点”

“Enjoy!”が楽曲からあふれた感じに

──このアルバムは音色も音も明るく、どこかキラキラした手触りがありますね。サウンドプロダクションで特に意識したことは?

米倉利紀

音に関してはとにかく楽しく、それこそ“Enjoy!”っていう感覚が楽曲からあふれた感じにしたいなと。それだけ意識してました。例えばオープニング曲の「CHANCE」だったら、イントロから入ってくるドラムのフィル、あの暴れ具合が命(笑)。この曲は白根佳尚さんという大好きなドラマーが叩いてくれてるんですが、スタジオであの浮き立つリズムを聴いたとき「あ、今回のアルバムはここから始めよう」って即決したんですよ。

──ちょっとメロウな2曲目の「HIPSTER」も、軽やかなギターのカッティングが素敵ですね。ちょっと懐かしいディスコチューンの雰囲気もあって。

うん、まさにそのイメージですね。たしか柿崎さんにも、「1970~80年代の匂いがする、いなたいファンクやソウルでお願いします」と伝えた記憶がある(笑)。2人ともどこかゴリッとした、いわばオールドスクールな黒人音楽のサウンドが大好きなんです。でも同時に僕の中には、例えばマドンナやジョージ・マイケル、リッキー・マーティンなどのポップアイコンに惹かれる部分もあって。3曲目に入れたエレクトロ風味の「DANCE UP」なんか両方の流れが入ってる感じかもしれません。

──コーラスの積み方もユニークですね。ボーカル1本で勝負するパートと、何層にも声を積み上げたコーラスで厚みを出してるパート、エフェクトをかけ変化球的なアクセントを付けているパートなど、1曲の中でも意識的に使い分けられています。これは誰が決めてるんですか?

コーラスに関してはすべて僕が作っています。自宅のPro Toolsで声を多重録音していくやり方ですね。詞のニュアンスを一番理解しているのは、やっぱり書いた僕自身。大事なメッセージを歌ってる部分は、しっかりと聞こえるようにメインのボーカルをより際立たせるハーモニーを意識しますし。逆にリスナーをドキドキと惑わせてしまいたい箇所では、微妙にずらした声を何重にも重ねてわざとコードに対して音を当てていくコーラスを入れたりもする。要するに自分でコーラスを作ったほうが、歌詞の心情を素直に引き出せるんです。

伝えたいのは自分の思いであり言葉

──コーラスはあくまでも歌詞を伝えるための手法なんですね。米倉さんはアメリカ暮らしも長いですが、例えば向こうのR&Bシーンのトレンドを自分なりに取り入れようとか、そういうことは考えません?

米倉利紀

ほとんどないですね。もちろんリスナーとして聴くのは大好きですよ。あと、僕のことをR&Bシンガーと言ってもらえるのも、今はむしろありがたい(笑)。ただ音楽を作る人間としては、わざわざ自分をカテゴライズして、表現領域を狭めてしまうやり方には興味がないんです。偉そうな言い方だけど、届けたいのは最新R&Bじゃなく、どこまで行っても米倉利紀の音楽であり、歌なので。もちろん今回の「switch」にも、僕がリスペクトするブラックミュージックの影響はたっぷり入ってます。そこを楽しんでもらえるのはすごくうれしい。でも、本当に伝えたいのは自分の思いであり言葉。最初に言ったように、人生のスイッチ(岐路)を前向きに楽しもうよっていうメッセージなんです。

──3月から5月にかけて、全国21都市を回るツアーも始まります。どんなライブにしたいですか?

キーボード、ベース、ドラムにコーラスを加えたギターレス編成はいつも通り。そしてダンサーが2人。ただ今回のツアーではバンマスのクレハリュウイチくん(Key)を筆頭に、新しいサポートメンバーと演奏します。とにかくハッピーなライブにしたいですね。あとは、せっかく分岐点をテーマにした新作をリリースしたので、これまで僕の歌手人生で分岐点となった重要な曲たちをメドレー形式でお届けするコーナーなんかも設けようと思っています。「Yes, I do.」や「Love in the sky」なんかもそうだし、僕にとって大きな節目になった2000年のアルバム「power」から、ひさびさに「do something real」なんかもダンサー2人と一緒に歌ってみようかなって。ステージでどんな素敵なコミュニケーションが生まれて、お客さんとどういう感動をシェアできるのか。それがすごく楽しみです!

米倉利紀
ニューアルバム「switch」/ 2016年2月3日発売 / [CD] 3240円 / TKCA-74328 / 徳間ジャパンコミュニケーションズ
「switch」
収録曲
  1. CHANCE
  2. HIPSTER
  3. DANCE UP
  4. FRIENDS
  5. LOVE HEALS
  6. 三日月
  7. unconditional
  8. words
  9. 365 LIFE
  10. 交差点
toshinori YONEKURA concert tour 2016
-gotta crush on..... volume. seventeen- "switch"
2016年3月5日(土)熊本県 熊本B.9 V1
2016年3月6日(日)長崎県 DRUM Be-7
2016年3月12日(土)神奈川県 Yokohama Bay Hall
2016年3月13日(日)神奈川県 Yokohama Bay Hall
2016年3月18日(金)愛知県 ElectricLadyLand
2016年3月19日(土)石川県 金沢EIGHT HALL
2016年3月21日(月・祝)京都府 KYOTO MUSE
2016年3月25日(金)広島県 広島CLUB QUATTRO
2016年3月26日(土)兵庫県 チキンジョージ
2016年4月2日(土)香川県 高松MONSTER
2016年4月3日(日)岡山県 CRAZYMAMA KINGDOM
2016年4月9日(土)新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE
2016年4月10日(日)福島県 郡山CLUB #9
2016年4月16日(土)青森県 青森Quarter
2016年4月17日(日)宮城県 仙台MACANA
2016年4月22日(金)宮崎県 MIYAZAKI WEATHERKING
2016年4月23日(土)鹿児島県 CAPARVO HALL
2016年4月25日(月)福岡県 Zepp Fukuoka
2016年4月29日(金・祝)大阪府 なんばHatch
2016年5月13日(金)沖縄県 Output(追加公演)
2016年5月21日(土)北海道 Zepp Sapporo
2016年5月28日(土)東京都 赤坂BLITZ
2016年5月29日(日)東京都 赤坂BLITZ
米倉利紀(ヨネクラトシノリ)
米倉利紀

1992年4月にシングル「未完のアンドロイド」でデビュー。ブラックミュージックの影響を受けつつも枠にとらわれない幅広い音楽性と確かな歌唱力でファンからの支持を得るシンガーソングライター。ほかのアーティストへの楽曲提供やプロデュースも行っている。毎年春にオリジナルアルバムを引っさげての全国ツアー、夏に“sTYle72 standard”と題した洋楽カバーツアー、秋に“sTYle72 cafe”と題した邦楽カバーツアーを開催。2008年からはミュージカルや舞台にも出演して演劇界からも高く評価されている。2016年2月に21stアルバム「switch」をリリースした。