「顔がかわいい」「歌がうまい」という視点で評価される窮屈さ

──「今のゆるめるモ！において、ねるんさんがブレーン的な存在だ」というお話を聞きまして。

田家大知　そうなんです。ねるんさんはとにかく強烈な個性を持っていまして。

──なので、グループの今後について話を聞くならこのお二人かなと思ったんですが、ねるんさん自身、ブレーンだと言われる自覚があるんですか？

ねるん　自覚は……あります。意見出しなどもしたりします。

──それは自分の中で「ゆるめるモ！はこうあってほしい」という思いがあるから？

ねるん　う～ん。今まで運営さんとメンバーがうまく並走できてないと感じることが多かったので、自分がメンバーをやりつつ、運営さんに意見したりしてます。

手前からねるん、田家大知。

──ねるんさんはもともとゆるめるモ！が好きで加入したわけですが、どういう部分が好きだったんですか？

ねるん　誤解を生んだら嫌なんですけど、キレイじゃないとこ。アイドルの線が見えない生身のヒト。もちろんかわいいとかライブが上手とかあるんですけど、それが正解じゃないのがすごくいいなって思った。解放された自由さだったり。普通が普通じゃない肯定。歌が話しているような歌。そこが好きでした。

──じゃあ、そういう「キレイじゃない」部分を守り続けたくて意見を出してるんですかね？

ねるん　そういう意見はあんまり言ってない。やっぱり自分がメンバーになったりメンバーも入れ変わって、自分が見てたゆるめるモ！ではなくなってるので。でも人が変わればグループの雰囲気も変わるのは自然だし、それが悪いことだとは思わないです。今のメンバーって、ひと目見たときに、「顔がかわいい」「歌がうまい」って多く思われると思うし、以前のメンバーさんとは戦い方のベクトルが変わってきているなと思ってて。自分的には、居心地の悪さを感じてしまう部分もあります。

──居心地をよくするために自分から意見を出してる？

ねるん　居心地がよくないのは「ゆるめるモ！は顔がかわいいね」みたいな見られ方をすることに対してです。「顔がかわいい」「歌がうまい」という視点から評価されることに、ちょっと窮屈さを覚えるというか。

──アイドルシーンの流行も移り変わっていて、例えば今だったら、K-POPからの影響を色濃く受けて「カッコよさ」を前面に出したり、KAWAII LAB.所属グループのように「かわいさ」をコンセプトにしたりするグループが増えている印象ですが、そういう流れには乗りたくない？

ねるん　いや、乗りたくないわけでもなく、今の時代に生きてる人に向けて、そういう流れに乗るのも大事なのはわかる。なんて言うんだろう……「自分が自分でいることでゆるめるモ！になる」のかなとも少しばかり思ったりする。

──ねるんさんの中で「現状を打破して、自分が思うゆるめるモ！としてブレイクしたい」という気持ちがあるんですか？

ねるん　ないです。「自分が思う」と「グループが思う」は違うのかもしれない。本当に難しい。冷静に考えたいです。カテゴリーがないぶん、抜けやすいけど入りにくいみたく。全面が売れるっていうことに「うーん、どうなんだろう？」って気持ちになる。

──だとすると、どうなりたいというイメージはほかにあるんですか？

ねるん　それがなくて。どうしたらいいのかなって思っているずっと途中。ただもちろん、現状には不満足ではあって。加入して5年半ほどになるのですが、難しい戦いになってきました。みんなも自分も有限すぎる今、がんばります。

もともと曲が持っていた力がより深まっているのを感じる

──昔のねるんさんは、ゆるめるモ！のファンで、その音楽を聴く側だったわけですよね。今、歌う側になって、曲に対する距離感は変わりましたか？

ねるん　受け手だったときと比べて、圧倒的に曲を聴かなくなりました。自分がゆるめるモ！になってからも新しく曲は増えてるけど、自分の声が入った曲を聴くことが少なくて。あとは毎日のようにライブで存分に歌い聴いている。

──ゆるめるモ！を好きすぎるがゆえの葛藤みたいなものがあるんですかね。そこに自分がいる違和感がいまだにあるというか。

ねるん　そうなのかも。

──ねるんさんもそうですけど、ここ数年に加入したメンバーは基本的に、ゆるめるモ！の曲を知っていて、それが好きで入っているわけですよね。だから曲に込められたメッセージに対する解像度の高さは、初期メンバーよりも今のほうが高いかもしれない。今のメンバーが歌うからこそ刺さる、という人もいるんじゃないかと思うんですよ。

ねるん　そう言ってくださるファンの方もいてくれています。「新しい角度から曲を捉えることができて、この曲が好きになった」と言ってくれたり。

左からねるん、田家大知。

──元メンバーのあのさんが、日本中の誰もが知るほどの人気者になったこともあって、ゆるめるモ！も今、多くの人が「あのちゃんが昔やっていた、そういうアイドルグループがいるんだ」ということは知っている状態だと思います。有名になるのはもちろん歓迎すべきことですけど、もしかしたら今のメンバーにとっては、名前の大きさゆえにやりづらくなっている部分もあるのかなと思ったんですが、どうでしょう？

ねるん　私は意思がどしっとしているほうなので、やりづらさとかはないです。今テレビとかメディアで名前を知った人が「あー、こういうグループなのか」とイメージするゆるめるモ！と、実際に今動いているゆるめるモ！には、あんまりつながりがあると思えていなくて。だから他人事というか、自分たちのこととは感じられてないです。

──今のメンバーのゆるめるモ！も知ってほしい、みたいな気持ちは？

ねるん　もちろん知ってくれたらいいと思う。今のゆるめるモ！の音楽とかメンバーを気に入ってくれるのはうれしい。でも結局あのちゃんは存在が偉大すぎているから難しいです。あのちゃんのことが好きで、あのちゃんのいたゆるめるモ！に興味を持って調べても、もういないから興味が今に続くのかな。

──根本的な部分は変わってないと思いますけどね。さっきねるんさんが言っていた「自分が好きなゆるめるモ！」は、今も守られてると思いますし。

田家　むしろよくなってる部分もいっぱいあります。さっきおっしゃったように、曲が持つメッセージの解像度が高くなったところは確かにありますし、ねるんさんの思考を通して曲の立体感が増したところもある。ねるんさんのアイデアって、本当に自分じゃ出てこない発想ばっかりで驚かされることが多いんですよ。僕はただ必死で曲を作ってきただけだけど、それをねるんさんが理解して世間に伝えてくれることで、もともと曲が持っていた力がより深まっているのを感じます。もちろん以前には以前のよさがあったんですけど。