YENMA|気持ちもバンド名も新たに、進化したサウンドで示す決意表明

Charlesが8月にバンド名をYENMA(エンマ)に改名。10月7日に改名後初のアルバム「Piñata」をリリースした。

「Piñata」は4人にとって初の全国流通盤。Charles時代から大切にしてきた楽曲やコロナ禍の中で生まれた新曲、1月リリースの会場限定CD「西へ行こうよ e.p.」の収録曲など計8曲が収められている。サウンドプロデューサーとして松岡モトキとヒダカトオル(THE STARBEMS、GALLOW)を迎えたことで、進化を遂げたサウンドアプローチが光る作品に仕上がった。

音楽ナタリーではメンバー全員にインタビューを行い、新たなバンド名に込めた思いやアルバム制作エピソード、さらに12月10日に東京・WWWで開催される改名後初のライブ「YENMA 1st LIVE “Piñata”」への意気込みを聞いた。

取材・文 / もりひでゆき 撮影 / 曽我美芽

コロナ禍でのもどかしさと前向きな気持ち

──今年1月にリリースしたライブ会場限定CD「西へ行こうよ e.p.」(参照:Charles「西へ行こうよ e.p.」インタビュー)の反響はいかがでしたか?

池田光(Vo, G) 僕らにとって初めてちゃんとした形でリリースするCDだったので、今まで応援してくれてたお客さんが本当に喜んでくださいました。表題曲「西へ行こうよ」のMVは10万再生を超えましたし、自分たちのバンドがまた1つ、大きく広まった実感はありました。

──バンドとしての大きな手応えを感じることができたと。

YENMA

池田 はい。Charlesを再始動させてからの約1年半はいろいろ試行錯誤していた探求の期間だったと思っているんですけど、「西へ行こうよ e.p.」を出したことで、バンドとしての土台が固まり、自分たちの気持ちもしっかりまとまったような気がします。

深澤希実(Key, Cho) ただ、「西へ行こうよ e.p.」はライブ会場限定だったので、2回しか販売する機会がなかったんです。それがすごく悔しかったんですよね。

池田 そうだね。下北沢の近松でやったレコ発と高松でのライブの2本をやったあと、それ以降のライブがコロナウイルスのせいですべてキャンセルになってしまって。

渡邉麻美子(B, Cho) 本当悔しかった。ライブができないこと自体へのもどかしさもありましたしね。「生音でしっかり届けたいのに!」って。

──コロナの影響で活動がままならない状況ではありましたが、皆さんはSNSを使って近況を積極的に発信されていましたよね。水面下でしっかり動いていることが伝わってきました。

池田 そうですね。今回リリースする「Piñata」の制作中に自粛期間に突入してしまい、一旦作業がすべて中断してしまったんですよ。ただ、僕らはコロナ禍を前向きに捉えることができていて。せっかく家での時間が増えたんだから、そこで自分を見つめ直し、いろんな勉強をしようとメンバーみんなが思っていた。結果、自粛中に新曲がたくさんできたんですよね。今回収録されている「Blue Monday」も自粛中にできた曲です。

深澤 「Blue Monday」はリモートでアコースティックバージョンを作って、SNSで公開しましたしね。

──SNS絡みで言うと、6月には満を持して武尊さんもTwitterを始められて。

山本武尊(Dr, Cho) そうですね。僕だけTwitterをやっていなかったので、そろそろやらないとなと(笑)。

どこに出ても戦えるようなバンド名

──そして、8月24日にはCharlesからYENMAへ、バンド名を改名することが発表されました。光さんはそれについて「一言では語れない想いと決意がある」とSNSで発言されていましたね。

池田 改名に関しては、Charles再結成の時点ですでに決めていたことではあったんですよ。バンドというのはお客さんをどんどん巻き込んで大きくなっていかなきゃいけないのに、Charlesという看板ではちょっと弱すぎるなとずっと思っていて。ネットで検索しても引っかからなかったですから。

深澤 チャールズ皇太子とかが出てくるので。

池田光(Vo, G)

池田 そう。だから改名するべきなんじゃないかなって。メンバー全員でどんなバンド名がいいかをめちゃくちゃ話し合ったんです。

渡邉 ホワイトボードに100個くらい案を書き出してね。

山本 1回決まりかけたと思ったら、また白紙に戻ったりもして(笑)。

池田 壮絶な戦いでした(笑)。

深澤 最終的に、武尊が思いつきでポロっと言った“YENMA”に決まりました。

──YENMAにした決め手はどこにあったんでしょう?

池田 語感や響きがいいという感覚的な部分もけっこう大きいんですけど、海外展開を考えたときにローマ字のバンド名がいいと思ったんですよね。将来的にはジャパニーズポップを背負って、海外……まずは台湾から攻めたいと思っているので。“YEN”というワードが入っている遊び心もいいなと思いましたね。

深澤 YEN(日本円)から日本を想像してもらえるもんね。どこに出ても戦えるようなバンド名をみんなで考えた結果、これしかないねってなりました。

山本 そのうえで、改名を発表するタイミングに関してもかなりみんなで考えたよね。

渡邉麻美子(B, Cho)

渡邉 そうだね。やっぱり再結成からの約1年半でCharlesとしてのアイデンティティが固まってきたなと思えたので、次のステップを目指していく今のタイミングがいいんじゃないかという話になって。

深澤 うん。今回のアルバムができたときに、「あ、これはもうCharles名義じゃないね」とみんな思えたんですよ。今までやってきたCharlesの集大成でもあるし、同時に今後はこんな音楽をやってきますということをしっかり伝えられる内容にもなっている。だったら改名して、YENMAとしてこのアルバムはリリースするべきなんじゃないかなって。なのであのタイミングでの改名発表になりました。

ここからが勝負

──「Piñata」は皆さんにとって初の全国流通盤ということもあり、制作には並々ならぬ気合いが入ったのではないかなと思うのですが。

山本武尊(Dr, Cho)

山本 そうですね。制作に向けた熱い思いはいつも以上にありました。

池田 このアルバムでやっとスタートラインに立てると思っていたので、初の全国流通盤ということに対して浮き足立った気持ちになることはまったくなく。ここからが勝負だという気持ちで制作に臨みました。制作の途中でコロナ禍になったことが余計に僕らを熱くさせたところがあったのかもしれないですね。

深澤 逆境を乗り越えろ的な(笑)。

渡邉 今できることをそれぞれがしっかり考えたし、オンラインでのミーティングもたくさんしましたね。

──本作には松岡モトキさんとヒダカトオル(THE STARBEMS / GALLOW)さんがプロデューサーとして参加されています。そこにはどんな狙いがあったんでしょうか?

池田 お二人とも以前からご縁があって、Charles時代から仲良くさせていただいていて。そこで生まれた点と点が今回のタイミングで線になったというか。

山本 そもそも以前から、いろんな方々にプロデュースをお願いしたいなっていう思いもあったんですよ。

深澤希実(Key, Cho)

深澤 そうだね。アルバムの4曲目に入っている「あなたに花束を」は昔からすごく大事にしてきた曲で、いつかリアレンジしたいよねという話はしていたんです。でも、初期の頃からライブでやってきたからイメージが凝り固まっちゃっていて、自分たちではどうアレンジを変えたらいいかわからなくなっていたんですよ。

──なるほど。プロデューサーを迎えることで、凝り固まったイメージを解きほぐせるのではないかと。

深澤 そうです、そうです。この曲は松岡さんにプロデュースをお願いして、松岡さんからひと言いただくだけで、我々の想像がまた膨らむんだなと感じる瞬間が何度もあって。それはすごくいい経験になりましたね。

池田 いろんな発見がめちゃくちゃあったもんね。すごく勉強になった。

渡邉 うん。目から鱗な気付きがたくさんありました。