ナタリー PowerPush - YALLA FAMILY×Kj(Dragon Ash)

盟友同士が語り合う「音楽を続けること」

そもそもミュージシャン同士に遠慮はいらないし

──話を戻すと、そもそもKjはライブの現場でタフに立ち回れる人と絡みたいという思いがあると思うんですけど。

Kj うん、それはあるね。WEZも知り合ってすぐに一緒のステージに上がったことがあって。みんな酒に酔ってベロベロの状態だったんだけど(笑)。

──それはどこのハコで?

Kj WAREHOUSE(702)で。そのときステージではドラムをMAD(THE MAD CAPSULE MARKETS)のMOTOKATSU(MIYAGAMI)さんが叩いていて、ベースをTOKIEさんが弾いてるっていう状況で。それをフロアから観てたら俺も「我慢できない!」って感じで、勢いでステージに上がったんだよね。で、WEZも上がってきて、ステージにいきなり黒人が登場するみたいな(笑)。

──WEZさんはそこでフリースタイルをして?

Kj そうそう。MOTOKATSUさんもドラムを叩きながら「え、誰!?」みたいな感じで(笑)。それもさ、こいつがMOTOKATSUさんとTOKIEさんのレジェンド具合を知らないから勢いでステージに上がれたところもあるわけじゃん。そういうのがいいなって。そもそもミュージシャン同士に遠慮はいらないし。そういう現場感があるやつはいいなと思うよね。

WEZ(MC)

──Kjは何をしたんですか?

Kj 俺はギターも弾いたし、最終的にはMOTOKATSUさんが「疲れた」って言うからドラムを叩いて。で、そこにKenKenがベースで入ってきてみたいな。

WEZ(MC) 楽しかったっすね。もともとマイクがあればどこでもラップしようと思ってるんで。

4人で共同生活してミックステープを制作

──話は前後するんですけど、YALLA FAMILYはどのようにLAで結成されたんですか?

50caliber 全部のタイミングがうまく重なったんですよね。ある日、俺がLAのビーチの近くにあったクラブでライブをしていて。その日はWEZも別のグループでライブをしてたんですね。

DJ I.O(DJ)

DJ I.O(DJ) 自分もそのときにDJをしていて。すでに50とHakuとは知り合いだったんですけど。

50caliber そう。そのときにWEZに英語で話しかけたら、日本語で返されたんで、「マジ!?」みたいな。こいつ面白いと思って。Hakuはそこに客で来てたんですよ。

Haku the Anubiz それまではまったく日本人とはつるんでなかったんですけど。I.Oに誘われてそのイベントに遊びに行ったんです。日本人のコミュニティのイベントに行くのはそのときが初で。生意気だったんで、日本人同士でつるんで、いつまでも日本語しゃべってんじゃねえよって思ってたから。そういう自分をこの3人が変えてくれたんですよ。

50caliber でも4人全員音楽が好きで、友達に嘘をつく奴とか裏切ったりする奴が大嫌いで。そこはすごく一致していて。面と向かってバーッと言いたいことを言うし、それでわかり合ったらすぐ仲よくなれるみたいな。

Haku the Anubiz で、4人で共同生活するようになって、家にあったMTRでみんなでミックステープを作ったんです。それが最初の音源ですね。そこがスタートでした。

──音楽的にも血の部分においてもルーツはバラバラなんだけど、互いの違いを認め合ったうえで共鳴するというアイデンティティがYALLAの根幹なのかなと思っていて。それはリリックの筆致にも表れているし。

50caliber(MC)

50caliber うん、そうですね。みんな頭が柔らかいんですよね。グループで音楽をしてたらそれぞれのやりたい方向性があるじゃないですか。そのこだわりがあるうえで、みんなちょっと苦手かもと思うタイプの曲でもまず挑戦するんですよ。いろんな曲をそれぞれのやり方と感じ方で分かち合っていく。その気持ちの1つのなり方はハンパないものがあると思います。血の部分で言えば、I.Oは純粋な日本人ですけど、3人はそれぞれガーナ、韓国、中国との混血で。日本と韓国、日本と中国って外交的には問題を抱えていたりするじゃないですか。でも、俺たちにとっては最初からそういう壁なんてなかったし。

──そういうバックボーンをもっているからこそ歌える本質的なユニティがあるのかなと。

50caliber そうですね。最初から丸裸の付き合いをしてるので。みんな人間なんで傷付きたくはないじゃないですか。でも、みんなそれぞれ痛みを知ってるから。ホントの痛みを知ってる人って、人に痛みを与えないんですよね。だからこそお互いを理解し合えるんじゃないかと思うんですけど。

きちんと遊びの延長で音楽をやってる

──YALLAの考え方にはKjも首肯するでしょう?

Kj うん、そうなんだけど、50は何を言っても最終的に大きな話になるから笑っちゃうんだよね(笑)。ハート推しの人だからさ。でも、4人がそれぞれのカラーをもっていることがこのグループのすごくいいところだから。あと、きちんと遊びの延長で音楽をやってるっていう。それがいいなって。

左からHaku the Anubiz(MC)、DJ I.O(DJ)、WEZ(MC)。

Haku the Anubiz DIX AZABUで開催してるレギュラーイベント「YALLA PARTY」が俺らの音楽のテーマでもあるんです。自分たちのホームはどこかって考えたときに、クラブで酒を飲みながら、どんなコミュニティに属していようが遊びに来れて、そこで鳴っている音楽を楽しめる空間を作ることを常に目指していて。

Kj その人の人となりがそのまま音楽になるのがオリジナリティだと思うし、いちばん自然な表現だと思うんだよね。外身を着飾るような人間だったら、ギミックがいっぱいあるような音楽を作ったほうがいいと思うし、Tシャツとジーンズが自分のスタイルっていうやつは、そういう音楽をやったほうがいいと思う。YALLAも意識的なのか、無意識なのかわからないけど、人格がそのまま音楽に投影されてるから。それがすげえいいなって思う。50はやっぱりリリックでも大きなことを言うしね(笑)。それができるのは才能があって、自分に自信があって、努力してる証拠だと思うんだよね。

──最後にお互いの今後を見据えてエールの交換ができれば。

Kj まず今の率直な気持ちは、1stアルバムのリリースおめでとうってことだよね。これから何枚もアルバムを出していくと思うけど、1stって特別なものだから。俺はもう17年くらい前の話だから記憶も薄くなってるけど(笑)、1stなんて今では恥ずかしくて聴けないから。でもそれは成長した証でもあって。YALLAにもこのアルバムを恥ずかしくて聴けないくらいになってほしい。アルバム1枚や2枚じゃアイデアなんて枯渇しないし、やりたいことがどんどん出てくるだろうから。ここからそれをガンガン形にしていって、リスナーに届けて、音楽家として高みにいってほしいなって思います。俺は自分の音楽やライフスタイルでエベレストを登るから、こいつらにはチョモランマを登ってもらって、頂上で「同じ山だったね」って言い合えたらいいね。

50caliber うれしいっすね。もちろんお互いにそれぞれやることがあって、そこに向かって突き進んでいくんですけど、またいつかガッツリ一緒にやりたいですね。Kjは絶対音楽をやめない人なんで、僕らも音楽を続けてまた交われたら最高です。

左からDJ I.O(DJ)、WEZ(MC)、Haku the Anubiz(MC)、Kj、50caliber(MC)。
YALLA FAMILLY ニューアルバム「BEGINNING」 / 2014年1月15日発売 / 1480円 / Unity-ltd. / UNY-1001
YALLA FAMILLY ニューアルバム「BEGINNING」
収録曲
  1. intro
  2. Beginning (Japanese ver.)
  3. Atsumare
  4. Mottox
  5. Silent World
  6. Crazy Party feat. FINGAZZ
  7. skit ~Welcome to YALLA PARTY~
  8. Happy Birthday
  9. Slow Down feat. LUNA
  10. Place to be feat. Kj (Dragon Ash)
  11. Kadode feat. JiLL YAMAMOTO
  12. Remember
  13. outro ~JiNIOUS Jam~
  14. Beginning (English ver.)
Dragon Ash ニューアルバム「THE FACES」 / 2014年1月15日発売 / MOB SQUAD/Victor Entertainment
Dragon Ash ニューアルバム「THE FACES」
初回限定盤 [CD+DVD] / 3570円 / VIZL-621
通常盤 [CD] / 2940円 / VICL-64098
CD収録曲
  1. Introduction
  2. The Show Must Go On
  3. Trigger
  4. Run to the Sun
  5. Neverland
  6. Today's the Day
  7. Here I Am
  8. Blow Your Mind
  9. Still Goin' On feat.50Caliber,Haku the Anubiz,WEZ from YALLA FAMILY
  10. Golden Life
  11. Walk with Dreams
  12. The Live feat.KenKen
  13. Lily
  14. Curtain Call
初回限定盤DVD収録内容
  1. THE SHOW MUST GO ON(スペシャルビデオ)
  2. Lily(ミュージック・ビデオ)
  3. Here I Am(ミュージック・ビデオ)
  4. Trigger(ミュージック・ビデオ)
  5. Run to the Sun(ミュージック・ビデオ)
  6. Walk with Dreams(ミュージック・ビデオ)
YALLA FAMILY(やらふぁみりー)

YALLA FAMILY

ガーナ、韓国、中国、日本の混血児による、音楽とファッションを融合させたエンタテインメントグループ。メンバーは50caliber(MC)、Haku the Anubiz(MC)、WEZ(MC)、DJ I.O(DJ)。LAで同じ音楽性、似ている感性、異なる個性を持った4人が出会い、2007年にグループを結成。同時に共同生活を始め、トーランス、ハリウッド、ダウンタウンを中心に音楽活動を行う。2008年にはA.I.のLA凱旋公演のオープニングアクトに抜擢されたほか、FINGAZZのコンピレーションアルバム「NEXUS」のメインアーティストに起用。その後、個々の可能性を高めるためソロ活動に徹し、2011年1月には日本で活動を再開させる。DIX AZABUを本拠地とし、レギュラーイベント「YALLA PARTY」をオーガナイズしながら、日本各地でライブ活動を展開。2014年1月に1stフルアルバム「BEGINNING」をリリースした。

Dragon Ash(どらごんあっしゅ)

Dragon Ash

Kj(Vo, G)、桜井誠(Dr)、IKUZONE(B)の3人で結成されたミクスチャーロックバンド。1997年2月にミニアルバム「The day dragged on」でメジャーデビューを果たす。1999年に発表したシングル「Let yourself go, Let myself go」が大ヒットを記録し、一躍有名に。2002年にはシングル「Fantasista」がサッカーワールドカップのFIFA公式テーマソングのひとつに抜擢された。その後もオルタナティブロックやヒップホップ、ラテンなどさまざまなジャンルを取り入れたミクスチャーサウンドで独自の活動を続けるが、2012年4月にIKUZONEが急逝。以降はKj、桜井、BOTS(DJ)、HIROKI(G)、DRI-V(Dancer)、ATSUSHI(Dancer)の6人にサポートベーシストを加えた編成で活動している。2014年1月に3年ぶりのオリジナルアルバム「THE FACES」をリリース。同年5月31日にはキャリア初となる日本武道館ワンマンライブが控えている。なおKjをはじめとするメンバーは、それぞれソロやユニットとして多方面で活動中。