yaiko(矢井田瞳)|デビュー20周年に向けた新たな一歩、名曲セルフカバーを含む新作完成

正解のない音楽、パイ生地を丁寧に積み重ねるように

──そして本作には新曲「いつまでも続くブルー」も収録されています。このさわやかな仕上がりが、今の矢井田さんの風通しのいい心情を如実に物語っているような気がします。

この曲は今年の5月頭くらいに作ったから、リリースまであっという間という感じ(笑)。リアレンジする3曲の方向性がなんとなく見えてからの制作だったので、ここでは思い切りさわやか方面に振り切ってしまおうと。とは言え、若作りしたさわやかさにはしたくなかったから、歌詞は等身大で書きました。いろいろなことを乗り越え、もう一度立ち上がってがんばろうと思っている自分と同年代の人にこそ響いてほしいなという気持ちを込めて。

yaiko(矢井田瞳)

──そこには来年20周年を迎えるアーティストとしての今のリアルな思いも含まれているように感じましたが、どうですか?

そこまでビジネス脳は働いてなかったかな(笑)。でも20周年に向けた思いは常に頭の中のどこかしらに存在はしているので、それが自然とにじみ出たところはあったと思います。

──「あの日描いた夢の中に あの日描いた夢はなくて 知れば知るほどわからないね」という出だしのフレーズあたりは、デビュー当時の自分と今の自分を重ね合わせて書かれたような印象もありますよね。

うんうん。確かにそうですね。デビューしたての頃はね、「このアルバムが出たら何かを手に入れることができるのかな?」と毎回思ってたんだけど、毎回何もないんですよ(笑)。それはご褒美とかって話ではないし、達成感とか手応えみたいなものはめちゃめちゃ手にしてはいたんです。でも自分の中のゴールが見えないというか。そこで、「ああ、なるほど。これが一生続いていくんだな」って愕然とするんだけど、19年やってきた今、ようやくそれを受け入れる覚悟ができた感じがあって。だから1行目に書いたんでしょうね(笑)。

──中盤には「これはレースじゃないし そもそもゴールなんて無い」と書かれていますしね。

はい(笑)。もはやゴールを探すのではなく、誰と一緒に、今何ができるのかということが大事になってきている感覚が強いんです。

──なるほど。過去を振り返るのでもなく、はるか未来を眺めるのでもなく、今この瞬間を大切に生きることが矢井田さんにとって重要なことなんですね。

以前、CHABO(仲井戸麗市)さんがおっしゃってましたけど、正解のない音楽をやってる僕らにできることはパイ生地を丁寧に1枚1枚積み重ねていくことだけなんだって。で、気付けばおいしいパイが焼き上がってるんだと。私も今はホントにそう思います。

──19年分の生地が積み重なった矢井田さんのパイも相当おいしく仕上がっていそうですけどね。

そうだったらいいなあ(笑)。これからも積み重ねます。

20周年に向けてワクワクがたくさん

──今夏は本作を引っ提げて、“yaiko×takataka”名義のアコースティック編成でさまざまなイベントやフェスに出演されるようですね。

そうなんですよ。先日の「高槻魂!!2019」でこのスタイルでのライブを初披露したんですけど、もうドッキドキでした(笑)。でも、今回のミニアルバムの曲たちは野外でやるとすごく気持ちいいものばかりだし、ライブでは私もアコギのボディを叩いて演奏する部分があったりもするので、ぜひ皆さんに今の私たちの姿を楽しんでいただけたらいいなって思ってます。takatakaのお二人とは制作やライブをする中で、「今度はこういうことやってみたいよね」みたいな話をすることも多くて。なのでGAKUさんも含めて、またいろいろ形にしていけたらいいなとも思ってますね。20周年に向けてワクワクすることをどんどんお届けするので、たくさんの方とつながれることを楽しみにしています!

──そういえば、本作は古巣の青空レコードからのリリースになるんですよね。

そうなんです! 19年前にインディーズデビューしたレーベルからまたCDを出せることが純粋にうれしいです。そういう部分で初心を思い出すところもありますし。

──「いつまでも続くブルー」というタイトルが“青空”につながっている印象もありますし。いろいろリンクしますね。

確かに! 今気付きました。今後はそれを言っていくことにします(笑)。

yaiko(矢井田瞳)

イベント情報

yaiko×takataka インストアイベント
  • 2019年8月13日(火)
    大阪府 タワーレコード梅田NU茶屋町店
  • 2019年8月14日(水)
    東京都 タワーレコード渋谷店
  • 2019年8月31日(土)
    大阪府 もりのみやキューズモール