清春×WOWOW特集放送記念インタビュー|SADS復活ライブを終えた心境、黒夢復活への思い (2/2)

今では想像を絶する予算

──SADSでお気に入りのMVはどれでしょう?

SADSに関しても、ずっと丹さんが撮影してくれていて。「ロザリオと薔薇」(2001年発売の8thシングル「APPETIZING 4 SONGS EP」収録)と、活動停止前に出した「Masquerade」(2003年発売の9thシングル)は今井(俊彦)さんで、それ以外の「忘却の空」、「ストロベリー」(2000年発売の5thシングル)、「NIGHTMARE」(2000年発売の6thシングル)とかも……ほぼ丹さんだね。SADSのMVは全部いいけど、一番はどれだろうな? 「忘却の空」は画がほとんど動かなくて、丹さんのああいう斬新な発想はすごいと思う。テレビでどこの部分を切り取られても横顔が出てくるというのは、プロモーションの面でも素晴らしかった。「SANDY」(1999年発売の2ndシングル)もよかったね。あれはロンドンで撮ったんだよ。あの頃は「海外に行くのは面倒くさいな」「撮影やりたくないな」と思っていたけど、今考えたらすごい規模ですよね。

──「SANDY」は歌もそうですけど、映像も冒頭からたぎっている感じに痺れます。

今観てもすごいと思う。なんであのときに、もうちょっといい歌を歌えなかったのかな?と今は思いますね。まあ過去の自分にそういうことを思うのは誰にでもあることだろうし、映像自体は今観ても全然古くない。

──清春さんのMVは撮り方だけでなく、映像の質感にもこだわりを感じるんですよね。

そうだね。16mmとか32mmとか映画を撮るフィルムで撮影することにちょっと執着していたんだよね。「少年」もそう。ただフィルム代が高くて、ほかにもいろいろと今では想像を絶する予算だったなあ。globeのMVがめちゃくちゃ金がかかってる、みたいなニュースをテレビで観たことがあったよねえ。それほどじゃないけど、僕らのMVも驚くくらいのお金がかかってた。それだけ当時MVが大事だったし、もっと言うとテレビスポットを作る感覚が強かった。

──時代を感じる話ですね。

テレビスポットで流れる15秒や20秒のために映像を撮っていましたね。だからMVのストーリーどうこうよりも「ここがテレビで流れるから集中して撮影しよう」という時代だったんです。あとは「EVIL」とか「GOTHIC CIRCUS」(2010年発売の6thアルバム「THE 7 DEADLY SINS」収録)も素晴らしいと思いますよ。「DISCO」(2010年発売の10thシングル)もそうだし、このへんは僕が思うカッコいいロックバンドの感じが出ていて好きですね。

──続いてソロでのお気に入りのMVをお聞きしたいと思うんですが、そもそも清春さんはDVDでソロアーティストとしてデビューしたんですよね。

そうそう。ソロになって1本目の「オーロラ」(2003年発売の1st DVD)は、去年亡くなられた信藤(三雄)さんに撮ってもらったんですよ。「オーロラ」の映像は今観ても、ちょっとレトロなぼんやりした感じがいいよね。「流星」(2012年発売の20thシングル)も好きです。あと、「カーネーション」(2006年発売の10thシングル)では秋吉久美子さんに出演していただけたのがうれしかったですね。「the sun」(2012年発売の20thシングル)ではINORANくんが映像だけ参加してくれたんですよ。あ、あとは面白いので言うと「LAW'S」(2010年発売の19thシングル)では車1台を吊るして落としてぶっ壊しましたね。

──あれって合成じゃないんです!?

僕の後ろで本当に落としてるんですよ。あのMVも好きだったな。

──清春さん自身が撮影したMVもありますね。

そうですね。今ではありえないような、全曲MVだけのDVDアルバム「MELLOW」(2005年発売)を出したんですよ。その中に入っている「FAIDIA」は僕が監督を務めて、助監督を今井さんにお願いして、ベトナムで撮影しましたね。「ナザリー」と「MOMENT」(ともに2016年発売の8thアルバム「SOLOIST」収録)はロスで撮影をして。めちゃくちゃ暑かったけど楽しかったな。

──「ナザリー」のMVは、スーツ姿の清春さんが涼しい顔で荒野を歩いていましたね。

実は1カット目から暑すぎてみんなで「もうやめよう、日陰で撮ろう」と言いながら撮りました(笑)。同じく海外ロケだと、小田切(明広)くんが撮ってくれた「SURVIVE OF VISION」(2020年発売の10thアルバム「JAPANESE MENU/DISTORTION 10」収録)はメキシコのグアナファトで撮影をして。最近で言うと、バンドメンバーのYUTAROが撮った「SAINT」(2024年発売の11thアルバム「ETERNAL」収録)もめちゃくちゃ気に入ってます。異種格闘技みたいな感じで、いろんなメンバーが集まった変な映像になってるけど、そこがすごく好きですね。

※編集部注:インタビューに出てきたMVがすべて放送されるわけではありません。

4人がそろうとめちゃくちゃになる

──今回放送されるライブ映像についてもお聞きしますね。10月20日には、6月29、30日に東京・Zepp Hanedaで開催された「SAD ASIAN DEAD STAR」公演の模様が放送されます(参照:SADS 1999-2003 「SAD ASIAN DEAD STAR」 | WOWOWオンデマンドで見る)。SADS結成時からのメンバーである坂下さん、2ndアルバム「BABYLON」(2000年発売)のツアーで加入した小林勝さんが約20年ぶりにそろい、ドラムは照井仁さんが務められました。

リハーサルのときから楽しかったし、人生のいい場面になったと思いました。照井くん以外は、50代中盤だけど本当に元気でね。それぞれ演奏はうまいんだけど、4人がそろうとめちゃくちゃになるのが素晴らしかったですね(笑)。めちゃくちゃというか「うわ、やっちゃった」となることが多かったんだけど、演奏をミスってもそのままいく。そんなこと、今はなかなかなくない?

──中断して仕切り直しますよね。カメラも入っているし。

ぐちゃぐちゃになるときがけっこうあったんだよ。でも、それも楽しくてさ。ファンの人たちの「観られてよかった」という感じもすごく伝わってきた。あの公演は素直に大笑いできたり、抱き合えたりして。そんなの当時でもなかったですよ。

──ひさしぶりにやるからこそ生まれる、いい空気感ってありますよね。

しかも、メンバーみんなの“リスペクトしてくれてる感”がすごくて。「清春くんは相変わらずすごい」みたいな。それは僕のほうこそ思いますね。メンバーへのリスペクトはすごくあるわけです。離れてからずっと第一線で活躍しているのは彼らのプレイの実力だろうし。あと2人ともいい人間だったけど今はもっともっとよくてさ。終わってからも「また会えなくなるのは嫌だよね」とか言い合って。それぐらい素晴らしい日でしたよ。「途中からはみんな笑いながら演奏してましたよね。

──“あの頃のSADS”とも違う光景ですよね。

そうですね。昔は刺々しくて「とりあえずぶっ壊してやる」という気持ちだったけど、今回のライブではガーッと行こうとするお互いを見て「え、まだそんなんやるの?」という笑いが込み上げてきてさ。そういう幸せな時間でしたね。

SADS復活ライブ「SAD ASIAN DEAD STAR」の様子。

SADS復活ライブ「SAD ASIAN DEAD STAR」の様子。

──2月9日には、東京・東京ガーデンシアターで黒夢の一夜限りの復活ライブが控えています。10年ぶりとなる黒夢復活に対する心境はいかがですか?

10年前の復活は新しいアルバム(2011年発売の7thアルバム「Headache and Dub Reel Inch」と2014年発売の8thアルバム「黒と影」)を2枚出して、「もしも黒夢をやっていたら、どうなっていたんだろう」という意味合いで進化してるであろう黒夢を作ったんですけど。今回はそうじゃなくて、30周年だからこそできるだけあの頃のままの黒夢をやろうと。なので公演名も当時と同じく「CORKSCREW A GO GO! SAINT MY FAKE STAR」と名付けました。内容としては、この前のSADSの復活に近いと思いますよ。新曲もないですし、当時の曲に準じてやる感じでしょうね。人時くんとも会って「当時の感じでやりましょう」と決めました。

──12月には毎年恒例のバースデー公演が独占放送・配信されますが、こちらのライブについてはいかがでしょうか。

黒夢もSADSもそうなんだけど、ライブでプレイする曲って限られるじゃないですか。当時の再現をするとなったら、どうしてもはみ出る曲が出てきてしまう。でもそれをソロのツアーでやっている部分もある。最新アルバム「ETERNAL」の曲もやるし、現時点でのベスト的な選曲でやります。

長く続けてきた者にしか与えられない特権

──改めて、清春さんが思う特集の見どころを教えてください。

こうして取り上げていただけるというのは、長く続けてきた者にしか与えられない特権みたいなものだと思うんですよ。まずは、その“ー輪”に加えていただけてうれしいですね。今年2月9日から来年2月9日まで1年間ずっとアニバーサリーイヤーのライブをやっているわけですけど、それを1つの形としてまとめてもらえるのは、非常にわかりやすいというかね。それをWOWOWに加入するだけで観られるというのは、すごくないですか? WOWOWは何周年でしたっけ?

──2021年に30周年を迎えたそうです。

そうですよね。だから、僕と同じぐらいなんですよ。そういうつながりもよかったですね。実は、東芝EMI時代に宣伝をやってくれていた人がWOWOWにいたのよ。もう辞めちゃったけど、一時はWOWOWの偉い人になっていたの。ことあるごとに「清春くんの特集をやろうか?」みたいな話をしてくれていて。今回はその人からもらったお話じゃないんですけど、ご縁は前からあってね。今はNetflixとかU-NEXTとかいろいろな映像サービスがあるけど、WOWOWはテレビを観てる人とちょっと距離が近い感じがしますよね。何はともあれ、とにかくがんばりたいです。油断したらすぐに放送が終わっちゃいますから。ぜひ、皆さん加入して観てほしいですね。

清春

キャンペーン情報

WOWOW加入者限定。インタビュー番組収録時に撮影したチェキを清春の直筆サイン入りで4名様にプレゼント。
応募期間:2024年10月20日(日)19:00~11月30日(土)23:59

プロフィール

清春(キヨハル)

1968年生まれ、岐阜県出身。1991年にロックバンド・黒夢を結成し、ハードかつ独創的なサウンドで人気を集める。1994年にメジャーデビューを果たし、1999年に活動停止。その後自身のレーベルを立ち上げSADSを結成する。TBS系ドラマ「池袋ウエストゲートパーク」の主題歌「忘却の空」を2000年にリリースし、大ヒットを記録。同曲を収録したアルバム「BABYLON」はオリコンチャートの週間ランキングで1位を獲得した。2003年にSADSの活動を停止し、DVDシングル「オーロラ」でソロデビュー。2024年にメジャーデビュー30周年を迎え、3月に11thアルバム「ETERNAL」をリリースした。同月より全国ツアー「清春 debut 30th anniversary year TOUR 天使ノ詩 『NEVER END EXTRA』」を行い、およそ1年をかけて約60公演を実施する。