大事なのはノリと勢い

──今年リリースされた「ヘイトキラー」や今回の「ギャンラブ」はいい意味で抜け感が強くて。言葉遊びも独特ですし、いよいよWONさんならではの個性的な部分が突出し始めたなと、この2曲を聴いて強く感じました。

ありがとうございます。「ヘイトキラー」は完全に今までと違うことを意識して作った曲なんですけど、自分が言いたいことをただ言うだけじゃなくて、今流行っているようなキャッチーな言葉選びとか、「ヘイトキラー」というタイトルもそうですが、自分で言葉を作っちゃうぐらいの勢いでチャレンジしてみたので、方向性が定まってきた気がしてうれしいです。「ギャンラブ」に関しては、作曲も「ヘイトキラー」から引き続き100回嘔吐さんで、本当にポップでおもちゃ箱みたいなサウンドなんです。デモをいただいたときはまず「ヘイトキラー」のアンサーソングを作ろうと思って。「ヘイトキラー」が「もうほんとっ だめだめの 自分が可愛いの」といういい加減な男の子の歌なんですけど（笑）、そこに恋する女の子のことを書こうと思ったのが「ギャンラブ」。でも、「ヘイトキラー」の歌詞に出てくるような、かなり自己愛が強い子を好きになるってなかなかないと思う（笑）。「自分の意思とか無いからサ！」とも言ってるし、そんな子に恋すること自体にけっこうなリスクがあるなと思ったので、そこからどんどん膨らませて最終的にギャンブルという言葉にたどりついて、ノリと勢いで生まれた言葉が「ギャンラブ」なんです。

──この造語、めちゃめちゃキャッチーですよね。

そういうご意見をいただけると、次もがんばれます（笑）。

──ちなみにこの曲を制作する際、100回嘔吐さんと何かやりとりはしましたか？

基本的にスタッフさんを介して連絡を取っているので、直接やりとりすることはないんですけど、「ギャンラブ」の最初のコーラスみたいなところの歌詞がどうしても思い浮かばなくて。最初「ラララー」で歌って提出したら「ここはこういう言葉を当てはめてみたらどうですか？」とアイデアをいただいて、表現力の幅を広げていただきました。

──歌い方に関してもより表現が豊かになった印象があります。例えば、「日記」の頃は若干ダーク寄りなのに対して、「ギャンラブ」はポジティブ側に振り切っていますよね。今回歌唱面で意識したことはありましたか？

もともとの声が低めでしゃがれていて、そういう声質って「日記」みたいな曲にはすごくマッチすると思うんです。それとは対照的な「ギャンラブ」を歌うことは改めて歌唱力を発揮するいい機会だと思ったので、かわいい子をイメージして普段出さないような声を出したり、楽曲に合わせて歌うことはかなり意識しました。あと、「ギャンラブ」はけっこう言葉を詰め込んだ曲なので、「ああ言えばこう言う（あーいやこーゆう）もう嫌！そういうところが…」とか後半の畳み掛け部分はちょっと苦労しましたね。ここではいろんな歌い回しに挑戦したかったんですが、歌っているうちに混乱してしまって。私はボーカルレコーディングを自宅で1人でやっていて、頭の中がこんがらがってしまったときは1日寝かせてから録音し直すようにしています。

どんな曲もWON色に染める

──自宅で制作する場合、どういうときに作業することが多いんですか？

「とにかくやる気があるときにやらないと」という意識でいるので、歌詞を書いたときのスピード感で録らないとダメだなと。やる気ががっつりあるときにやるのが一番ですね。

──重い腰を上げてというよりは、熱が高いうちに続けて作業してしまおうと。

そうです。一度座ってしまったら、次の曲まで立たないので（笑）。

──でも、今回みたいな曲は勢いでやってしまったほうがよさそうですね。

勢いで作業するのもいいもんだなと思いました。「日記」や「咲かない」を作詞したときはまだ慣れていないということもあって、めちゃくちゃ悩んで時間をかけて書くことが多かったので。

──では、今は作詞するのが楽しい？

「ヘイトキラー」や「ギャンラブ」というタイトルが思い浮かんだときもそうですけど、言葉が1つポンと出てきたら次から次へと出てくるので、けっこう楽しんでやっています。

──ここからどんな曲が生まれるのか、より楽しみになりました。

「日記」みたいに切なめで暗いトーンの曲で始まって、「Unique」や「ありきたり」のような跳ねる曲、最近出した「ヘイトキラー」や「ギャンラブ」は今風のテイストを取り入れた曲というか、今まで幅広く挑戦してきたので……次は演歌かな？

──そうきますか。

冗談です（笑）。でも、「歌うジャンルは変わってもWONちゃんらしさは消えないね」と思ってもらいたいので、どんなタイプの曲でもしっかり自分に落とし込んでから世の中に出したいです。

──WONさんの声って本当に唯一無二の武器だと思うので、どんなタイプの曲を歌っても必ずWON色に染まると思いますよ。

うれしい！ その言葉で、あと1年はがんばって生きていけそうです（笑）。

作曲にも挑戦したい、ファンの前でライブがしたい

──声のインパクトの流れでもうひとつお聞きしたいのが、先ほども話題に上がった「家庭教師のトライ」のテレビCMで、ハイジとして歌われたこと。これには本当にびっくりしました。

本人が一番びっくりしています（笑）。放送後にひさしく連絡をとってなかった友達から「これ、そうだよね？」とLINEがきて、反響の大きさを実感してますね。TwitterのフォロワーやYouTubeチャンネル登録数の増えるスピードが尋常じゃなかったり、「夏期講習の人ですか？」「ハイジですか？」というコメントが増えたりと、テレビの影響力って本当にすごいんだなと実感しました。と同時に、いろんな人に聴いてもらうことって大事なんだと実感できた、いいきっかけでもありました。

──思いがけない素敵なチャンスをいただきましたね。そういう経験を経て、今後の活動で挑戦してみたいことや実現させたいことはありますか？

知識がまったくないから本当にゼロからになると思うんですけど、作詞だけじゃなくて作曲もやっていけたら、より自分をアーティストとして見られるようになるのかなと最近思っていて。あと、「竜とそばかすの姫」という映画にすごい衝撃を受けて、それをきっかけに中村佳穂さんのことをすごく好きになったこともあり、声優兼ボーカリストとして何か作品に携われたらいいなと思うようになりました。タイアップの機会もどんどん増えていったらうれしいですし、皆さんに待ち望んでいただいているリアルライブも実現させたくて。顔を出していないので難しいところですが、いつかはやってみたいですね。

──ちなみに、これまでライブなど大勢の前で歌う機会は？

一度だけ、友達に誘われてライブハウスで歌いました。あと、路上でちょっとだけ歌ったくらいなので、緊張して声が出なかったら怖いなと思いつつ（笑）、でもいつかは大きな舞台に立てるアーティストになれたらなと思います。

──でも、ワンマンライブをやるとしたら会場に集まってくださる方がみんなWONさんの歌や声を好きなわけですから、ホーム感も強いと思いますよ。

そうですね。どれくらいの人たちが集まってくれるのかがまだわからないので、会場を埋められるくらいファンが付いたらやりたいなぐらいの気持ちでいます（笑）。

──あと、「家庭教師のトライ」のCMのように声を使ったお仕事もWONさんの個性が生きるのかなという気がします。

自分自身、声で覚えてもらえるようなアーティストになりたいですね。もちろん変わっていくことも悪くないと思うので、いずれ顔を出すことになったとしても声のインパクトのほうが勝ってほしいです。