WONインタビュー|最新曲「ギャンラブ」や「家庭教師のトライ」CMで注目の女性シンガーが語るメジャーの活動

WONがメジャーデビューしてから1年半が経とうとしている。

2021年3月に配信シングル「日記」でトイズファクトリー内のレーベル・VIAよりデビューを果たしたWON。彼女はアクションRPGアプリ「ドラガリアロスト」の挿入歌「Unique」「ありきたり」や、人気ボカロP・100回嘔吐が作編曲した「咲かない」「ギャンラブ」などコンスタントに楽曲をリリースし、素顔を出さない活動ながらも、その圧倒的な歌声が人気を呼びYouTube公式チャンネルの登録者数は1万2000人を突破した。さらに「家庭教師のトライ」のテレビCMにハイジ役で歌唱出演するなど人気を集めている。

音楽ナタリーでは新世代の女性シンガーとして注目を浴びるWONに初インタビュー。音楽活動を始めたきっかけからメジャーデビュー以降の活動、さらに今後の夢について語ってもらった。

取材・文 / 西廣智一

音楽だけは続けられた

──WONさんはどういうきっかけで音楽活動を始めようと思ったんですか?

自分の家族が音楽好きで、小さい頃からカラオケに連れて行ってもらったり、車に乗ったら絶対に何か音楽が流れていたんです。私は継続する力が弱くて(笑)、部活とか習い事も1、2年で辞めちゃうタイプなんですけど、音楽だけはずっと好きでいられて。ただ、音楽を職業にしたいと実は一度も考えたことはなくて、インターネットに上げた自分の歌をいろんな人が評価してくれて、今に至るんです。

──ネットに歌をアップすることは、なぜやってみようと思ったんですか?

ニコニコ動画とかがすごく流行っていた時期に、歌い手という存在がすごく注目されたじゃないですか。それにすごく影響されて、「自分も人に歌を聴いてもらいたい」という自己満足だったり「どういう反応が返ってくるんだろう?」という興味本位で、動画をアップし始めました。

──当時の視聴者からのリアクションはいかがでした?

自分で言うのはすごく恥ずかしいんですけど……ありがたいことに、最初から「プロみたい」というお褒めのコメントをいただくことが多くて、ちょっと調子に乗ってしまいました(笑)。

──WONさんの声はとても個性的で、聴いた瞬間に引き込まれました。その片鱗が最初から光っていたのかもしれませんね。

いやあ、ありがとうございます。そう言われると、ますます調子に乗っちゃいますね(笑)。

──ちなみに、ご自宅のスピーカーやカーステレオから流れていた音楽は、どういったものでしたか?

車やキッチンではよくラジオがかかっていたかな。あとは、親がセレクトしたいきものがかりや鼠先輩に加えて(笑)、レディー・ガガとかアデルみたいな洋楽も含め、ジャンルにとらわれずいろんなタイプの曲が流れていました。私自身、特定のアーティストばかりを聴くという習慣があまりなかったんですが、YouTubeをよく観るようになってから「カゲロウデイズ」とかボーカロイドの曲をよく聴くようになって。世代的にドンピシャだったので、そこには一番影響を受けているかもしれないです。

──音楽を聴き始めた頃にはすでに、ボカロ曲が自然なものとして存在していたんですね。WONさんの楽曲を聴くと、そういうボカロ以降の音楽のみならずバンドサウンドからの影響も感じられるんです。

バンドものだとRADWIMPSやワンオク(ONE OK ROCK)が好きですね。あと、友達から薦められて突然ハマってしまったのが、きのこ帝国。佐藤千亜妃さんが書く歌詞がすごく好きで、それこそ初期に書いた「日記」や「咲かない」はすごく影響されている部分があります。

──作詞に関しても、これまで聴いてきた音楽からの影響が大きい?

うん、そうですね。最初の頃はいろんなバンド、それこそRADWIMPSもそうだし、今まで自分が聴いてきたアーティストの歌詞を改めて見て聴いて、取り組んでいました。

ファンサービス不足を反省

──活動形態についてもお聞きしたいんですが、今や顔を出さずに音楽活動をすることは驚くに値しないことで、もはやスタンダードになりつつあります。WONさんの場合、このスタイルを選んだ理由はどういったものだったんですか?

根が一般人すぎるので(笑)、インターネットが主流になった今でも顔を出すことにちょっと抵抗があることと、顔を出さないことで歌に集中してもらえると思ったのも大きかったですね。あとは、顔を出さない分イラストなどでいろんな表現ができるのかなと。自分としては、すごくやりやすい環境ですね。

──そういう選択肢があるというのは、気持ち的にもだいぶ楽ですよね。では、現在の音楽活動においてモチベーションになっているもの、原動力になっているものは?

例えば「家庭教師のトライ」のテレビCMのお話をいただいたり、お金をかけて楽曲やミュージックビデオを制作しようと動いてくださった周りのスタッフさんのサポートを受けて、「ああ、がんばろう!」って気持ちにもなりますし、YouTube配信を観てくださったり曲が出たら絶対に聴いてインスタのストーリーに載せてくださったりするようなファンの存在が、本当に自分の原動力になっていますね。自分自身は気を抜いていたらTwitterを1週間見ないというか、SNSをサボりがちでファンサービスがなっていない女なんですけども(笑)、それでもみんながリアクションしてくれるのは本当に心強いです。

──ちょっと前にもTwitterで、フォロワーさんに向けて「歌を褒めてください」とツイートしていましたよね。

あははは、お恥ずかしいです(笑)。自己肯定感が低いので、ことあるごとに仲いい友達に「ごめん、褒めて!」と迷惑がかからない程度にお願いすることがよくあります(笑)。で、それを無償でやってくれるのがファンの存在だなと、最近気付いたんです。みんながいなかったら活動を続けられていないですから、本当に感謝の気持ちだけは忘れずにがんばりたいなと思います。

感謝の気持ちだけは忘れたくない

──そこからいろんな縁があり、昨年3月に配信シングル「日記」でメジャーデビュー。早くも1年半近く経ちましたが、環境や活動スタンスに関してそれぞれ変化はありましたか?

事務所やレーベルからお話をいただいて、最初はドッキリかなと思ったくらいで。だって、りりあ。さんとかマカロニえんぴつさんが所属されているようなレーベルからお声がけいただいて、そこからパッと曲を出しちゃったので、半分他人事のように感じた部分もあります。でも、作詞をする機会も増えて、その中で「ドラガリアロスト」というゲームとタイアップさせていただいたりすることで「あ、自分はアーティストなんだ」と実感して(参照:WON初のタイアップ曲は「ドラガリ」挿入歌)、今は自覚を持ってちゃんと向き合っています。やりたいことも増えてきたので、夢見心地というよりは「もっとがんばりたいな」と意識はだいぶ変わりました。逆に今も変わらないというか変えたくないのは、周りへの感謝だけは忘れたくないなという気持ちですね。売れていくことで傲慢な態度を取ったりする方もちらほら見てきたので、天狗にならないようには気を付けたいです。

──もしかしたら今の活動形態を続けていることで、デビュー以前の生活や日常感を保つことができているんでしょうか。

ああ、確かに。自分のペースでやらせていただけることが多いので、それはあるかもしれません。

──作品を重ねていく中で、例えばご自身の作詞面で成長を感じるところ、作詞との向き合い方で変わったと思う点は何かありますか?

「日記」が生まれて初めて書いた作品だったので、最初はちょっと根暗すぎる歌詞になってしまったというか、言葉選びが難しすぎて「作詞って大変だな」と思ったんです。周りからもいろいろアドバイスをいただいて、手直しを重ねて完成させることができました。それ以降は感覚がどんどんつかめていって、「こういう言い回しよりもこっちのほうが伝わるし、聞こえがいいな」とか、自分なりにわかってきたのもあって。経験を重ねることって本当に大事なんだなと学ばせていただきました。なので、今となってはリリースペースが速かったのが成長につながったのかなと、自分では思っています。