ナタリー PowerPush - WIRE11
開催直前!石野卓球が語る「最近のフェス事情」
日本最大級の屋内レイブパーティ「WIRE」が、いよいよ8月27日に神奈川・横浜アリーナで開催。豪華なサウンドシステム、派手なライティングや映像によって彩られた空間で、今年はDUBFIRE、WESTBAM、RADIO SLAVE、レン・ファキなど世界屈指のテクノDJたちがパフォーマンスを繰り広げ、カール・クレイグが「69」名義でのライブセットを披露する。
今回ナタリーでは「WIRE」のオーガナイザーであり、自身もDJとして出演する石野卓球にインタビューを敢行。彼が今年の夏に出演した国内外のフェスについてエピソードを訊きながら、開催を直前に控えた「WIRE11」についても話してもらった。
取材・文 / 橋本尚平 撮影 / 中西求
新潟・苗場スキー場「FUJI ROCK FESTIVAL '11」 7月29日~31日
──フジロックでは2日目の深夜4時にRED MARQUEEでDJをしたんですよね。今年も雨が大変だったようで。
でもRED MARQUEEって屋根があるからあんまり関係ないですね。むしろ逆に、雨が激しくなるとみんな雨宿りしに来るから人が増えるっていう。
──RED MARQUEEはほかの場所と比べてやりやすさなどの違いはありますか?
出番が結構深い時間帯だったから、着地させていくべきなのか、まだまだ上げるべきなのかっていうのがなかなか難しかったね。あと、やっぱりロックが好きなお客さんが多いから、アッパーなDJをすごく求められる。
──ほかのアーティストのライブも観ました?
2日目は夜中に会場に着いたからほとんど何も見れなかったけど、3日目の夜にGAN-BAN SQUAREでもう一度DJをやったので、それまでの間にいろいろ観ましたよ。
──YMOとか?
うん、初めて観た。
──えっ! 初めてだったんですか! それは意外!
YMOが流行ってた時代はまだ子供だったし、高校生の頃にはもう散開してたし。1993年に東京ドームでやった再生コンサートはチケット買ってたんだけど、寝ちゃって行けなかったんですよ。観たかったんだけど、目が覚めたら終わってたんだよね(笑)。
──フジロックでのYMOのライブはどうでしたか?
ヒット曲というか、みんなが聴きたい曲をやってて楽しかったですよ。なんせ初めて観たからね。「ああ、これがイエロー・マジック・オーケストラか……」って感じ(笑)。あとはTHE CHEMICAL BROTHERSが素晴らしかったな。
──ちなみに、フジロックならではの良いところって、どんなところですか?
放っといてくれるところ。なにもかもがぎっちりオーガナイズされるイベントにももちろん良い部分はあるんだけど、ああいうフェスだと煩わしいと感じちゃうこともあって。フジはそういうのがまったくなくて「お好きにどうぞ」みたいな感じなのがいいですね。現地集合、現地解散だし。
オランダ「Solar Weekend Festival 2011」8月5日~7日
──次に出演したのがオランダの「Solar Weekend Festival」ということですが、これはどんなフェスなんですか?
ダンスだけじゃなくていろんな人が出る、オールジャンルな野外フェスですね。ロックもヒップホップも、サルサバンドもいる感じ。俺が出たのはレン・ファキがやってる「Figure」ってレーベルのパーティで、このレーベルからリリースしてるA.Mochiとかも出てた。
──会場はどんなところですか?
やたらと広いとこだったね。こっちで言うと、2回目のフジロックをやった豊洲みたいな感じ。オランダって昔からそうなんだけど、フェスがとにかく巨大で。ドイツとか周辺の国と比べてもかなり規模がでかい。「オランダのプロモーターが『先週のフェス大失敗だった! 6万人しか集まらなかった!』って言ってた」なんて話がよく冗談で言われてるくらいで(笑)。
──それはすごいなあ(笑)。
このフェスも1日3万人弱、2日間で6万人くらい動員してるから、相当でかいよね。
──どうしてオランダではフェスの規模が大きいんでしょうね。フェスに行くことがレジャーの定番として一般層まで根付いているとか?
夏が短くて冬が長いから、天気がいいときに集中していろいろ楽しもうっていう風潮があるんじゃないかな。夏は音楽フェスに限らず、お祭りみたいのが多いしね。だから客層を見てもいろんなタイプの人がいたな。テクノのレイブとかでは普通まず見かけないような親子連れとか。
ドイツ「NATURE ONE 2011」 8月5日~7日
──そのオランダのフェスと同じ日にドイツの「NATURE ONE」っていうフェスにも出ましたよね。
「NATURE ONE」は「MAYDAY」とかと並んで昔からやってる老舗フェスで、こっちはテクノとかダンスミュージック全般。電気グルーヴも含めて今まで2回くらい出たことがあって、多分3万人くらい来てたと思う。会場は野外なんだけど、元々ミサイルの格納庫だったという変わったロケーションで。フロアごとにハードコア、ハウス、トランス、エレクトロみたいにジャンル分けされてる。1日で2つのフェスに行ったからなおさら感じたんだけど、オールジャンルのフェスとダンスミュージックオンリーのフェスでは雰囲気が全然違うよね。
──1日に2カ国のフェスに出演って、移動が大変だったのでは?
いやいや、300kmくらいしか離れてない。ドイツにはアウトバーンがあるからさ、車で2時間くらいで着くよ。向こうで600kmっていうと「近い近い。車なら5時間で行けるから」って平気で言われるくらいだからさ(笑)。
──「NATURE ONE」では2カ所のステージに出演しているので、オランダと合わせると1日に3回もDJをやったんですね。
うん。ひとつはドイツのブッキングエージェンシーとプロモーターが組んでやってる、1000人くらい入る結構でかいテント。もうひとつはオープンヤードの「Classic Terminal」ってところで、そこはテクノクラシックのセットしかかけられないの。出演者は「Play Only Classic」って書かれた契約書にサインしなくちゃいけなくて(笑)。
──それは面白そう! どんな曲をかけたんですか?
2時間あるから結構いろいろだね。日本と向こうでは微妙に違うから、東京でクラシックだと思ってた曲が向こうではそうでもないってこともあって。THE MARTIANの「STAR DANCER」をかけたらキョトンとされたり。
──テクノの場合、クラブの現場で流れて真価を発揮する部分があるので、ほかのジャンル以上にローカルヒットが生まれやすいのかもしれませんね。でも、選曲がうまく引っかかるとすごく盛り上がりそう。
そうそう。それが面白かった。俺の出番の前がACID JUNKIESのライブで、アシッドクラシックをいろいろ混ぜながらやってて良かったんだけど、俺の場合はそういう縛りがなかったから、向こうの客からしてみたら節操がないように感じたかも。
──曲をかけながら「ああ、この辺が盛り上がるんだ」みたいに反応を確かめる感じですか?
そうなんだけど、でもいきなり全然違う曲には飛べないからね。「なるべくグラデーションをかけながらいろいろ探るにはどうしようか」みたいな、普段あんま使わない部分の脳みそを使ったな。
──そうですよね(笑)。
あとさ、客の年齢層が幅広いから、そのクラシックが実際にクラブでかかってたときに遊んでた人もいれば、当時をまったく知らない若い子たちもいるし、世代によっても反応が違うの。ALTER EGOの「ROCKER」とかさ、古いっちゃ古いけどそこまでじゃないじゃん?
──7年くらい前ですよね。
だけど若い子にしてみたら大昔のクラシックなんだよね。ハタチ過ぎくらいの子にしたら学生時代に流行ってた曲だから。
──そういうイベントが日本であったら行ってみたいです。
ねえ。でも客の年齢層高そう(笑)。
<DJ>
- AGORIA(LYON)
- DANIEL STEINBERG(BERLIN)
- DJ SODEYAMA(TOKYO)
- DJ TASAKA(TOKYO)
- DUBFIRE(WASHINGTON, D.C.)
- FELIX KRÖCHER(FRANKFURT)
- FUMIYA TANAKA(BERLIN)
- LEN FAKI(BERLIN)
- MARK BROOM(LONDON)
- RADIO SLAVE(BRIGHTON)
- SHIN NISHIMURA(TOKYO)
- TAKAAKI ITOH(MIYAGI)
- TAKKYU ISHINO(TOKYO)
- WESTBAM(BERLIN)
<LIVE>
- 69 LIVE (CARL CRAIG) (DETROIT)
- BEROSHIMA(BERLIN/LONDON)
- dOP(PARIS)
- Dr. SHINGO(TOKYO)
- KEN ISHII(TOKYO)
- RAINBOW ARABIA(LOS ANGELES)
- SNUFF CREW(KÖLN/BERLIN)
<VJ>
- DEVICEGIRLS (TOKYO)
- DOMMUNE VIDEO SYNDICATE(UKAWA NAOHIRO + HEART BOMB + KRAK)(TOKYO)
<THIRD AREA LISMO STAGE>
- YAPAN a.k.a. Yosuke Hiroyama(RYUKYUDISKO)
- agraph
- metalmouse
- SUNSEAKER
石野卓球(いしのたっきゅう)
1967年生まれのDJ / リミキサー / ミュージシャン。インディーズバンド・人生を経て、1989年にテクノユニット・電気グルーヴを結成。1995年には初のソロアルバム「DOVE LOVES DUB」をリリースし、この頃から本格的にDJとしての活動も開始する。90年代後半からはヨーロッパを中心に、海外での活動も積極的に展開。ベルリンで行われるテクノ最大の野外フェス「Love Parade」では100万人を前にプレイするなど、数々の偉業を成し遂げている。また、1999年からは日本最大の屋内型レイヴパーティ「WIRE」を主催。毎回1万人以上もの集客で人気を誇る。2006年には川辺ヒロシ(TOKYO No.1 SOUL SET)と新ユニット・InKを結成。2010年に約6年ぶりのオリジナル作品であるミニアルバム「CRUISE」を発表した。