澤野弘之×ソニー完全ワイヤレスイヤホン WF-1000XM5|「もっと音楽を好きになれる、追求したくなる」

「進撃の巨人」「機動戦士ガンダムUC」シリーズの劇伴作家として知られ、自らが始動させたボーカルプロジェクトSawanoHiroyuki[nZk]では優里、アイナ・ジ・エンド、岡野昭仁(ポルノグラフィティ)などそうそうたる面々とのコラボレーションを展開している澤野弘之。彼の作り出す音楽はダイナミックさと繊細さを兼ね備え、聴く者を唯一無二の世界へと誘ってくれる。

音楽ナタリーではそんな澤野に、新たに発売されるソニーの完全ワイヤレスイヤホン「WF-1000XM5」を体験してもらう企画を展開。「プロが選んだ、ソニーのハイスペックサウンドで、ワンランク上の自分へ」をコンセプトにした本製品の魅力とともに、「プロ」の作曲家としてのスタンスを語ってもらった。

取材・文 / ナカニシキュウ撮影 / 森好弘

「WF-1000XM5」

ソニー「WF-1000XM5」

世界最高のノイズキャンセリング(※1)を搭載した完全ワイヤレスイヤホン。LDACコーデックに対応しており、ハイレゾ音質(※2)も高音質に再生できるだけでなく、あらゆる圧縮音源がイヤホン側でハイレゾ級(※3)にアップスケーリングされる。ソニー史上最高クラスの通話品質(※4)を誇り、音や人の声が気になる環境下でも正確かつクリアに集音するため快適な通話が可能。装着性と機能性を兼ね備えつつ、極限まで小型化したボディも特徴で、マルチポイント接続にも対応しているので仕事の現場でもプライベートでも活躍できる。

※1 左右独立型ワイヤレスノイズキャンセリングヘッドホン市場において。2023年4月10日時点。ソニー調べ。電子情報技術産業協会(JEITA)基準に則る。
※2 ハイレゾワイヤレス。ハイレゾコンテンツをLDACコーデックで最大転送速度990kbpsで伝送する場合。「Headphones Connect」アプリから操作が必要です。
※3 DSEE Extreme ON時にCDやMP3などの圧縮音源をSBC / AAC / LDACのコーデックでBluetooth再生する際、最大96kHz / 24bitまで拡張(再生機器の仕様によっては圧縮音源をLDACで伝送する場合でもDSEE Extremeが無効になる場合があります)。
※4 ソニー完全ワイヤレス史上最高通話品質。2023年7月25日時点。ソニー調べ。

音楽スタジオに馴染みのあるソニー製品

──澤野さんはこれまでに何かソニー製品を使っていましたか?

テレビとかHDDレコーダーとかは、ソニーのものをずっと使ってますね。オーディオ系だと、それこそ音楽スタジオには必ず「MDR-CD900ST」(※ソニーとソニー・ミュージックスタジオが共同開発した完全プロフェッショナル仕様のモニターヘッドホン)が置かれているじゃないですか。それにはすごく馴染みがありますし……あとは以前、高級ヘッドホン「MDR-Z1R」に関連したインタビューを受けたことがあって。そのときに使用した「MDR-Z1R」で音楽を聴くこともあります。

澤野弘之

──ソニーというブランドにはどういうイメージをお持ちでしょうか。

安心できる感じはありますよね。例えば何か機材が必要になったとき、もちろん基本的には音を確認してから買うんですけど、いろんな事情でネットとかで注文するとなったときは、確認しなくても安心なソニー製品を選んだりとか。

──音に関してはどんなイメージがあります?

スタジオ用ヘッドホンはフラットな音を鳴らしてくれるものとして多くのミュージシャンに信頼されているイメージだし、「MDR-Z1R」に関しては、もちろん音の鮮明さや定位のわかりやすさもありつつ、テンションが上がる心地よい音がするというか。低音の聞こえ方も含めて、単純にリスニング用途で楽しく聴けるヘッドホンだなという印象があります。

──仕事にもプライベートにも安心して使えると。

そういうイメージはありますね。

──普段はどんな環境で音楽を聴いていますか?

制作のときはスタジオでスピーカーから音を出して聴きますけど、最近は自宅で制作をしたり音源チェックをしたりする機会も多いので、そういうときはヘッドホンを使います。仕事と関係ないところで、プライベートで聴く場合はイヤホンですね。寝る前に1、2時間くらい音楽を聴くことがわりとあるので。

澤野弘之
「WF-1000XM5」
「WF-1000XM5」

大事なのは音楽を聴いて気持ちが高揚するかどうか

──では、ここからは「WF-1000XM5」の音を実際に聴いていただきます。事前に澤野さんのほうから試聴曲としてNAQT VANEの「CHRONIC」とSennaRinの「最果て」、デュア・リパの「Levitating」を選んでいただきましたが、この選曲の理由は?

「CHRONIC」と「最果て」に関しては自分で作ったものでもあるし、最近の作品なので単純に聴いている回数が多いから、自分的に一番わかりやすいかなと思いまして。「Levitating」も最近好きでよく聴いている曲です。

──ざっくり言うと3曲とも打ち込みベースのEDM系で、サウンドの傾向としては近いですよね。澤野さんは幅広いジャンルの音楽を作られる方でもありますし、せっかくだからもうちょっと違う系統の音もぜひ聴いていただきたいなと個人的には思っているんですが……。

ああ、なるほど。それならハンス・ジマーの手がけた、映画「ダークナイト」のサントラを聴かせていただいてもいいですか? オーケストラ系だと、僕はこの中の「Imagine The Fire」って曲をリファレンスとしてよく聴くんですよ。

──ああ、いいですね。ぜひお試しください。

(しばし試聴して)……やっぱり、すごくナチュラルに鳴らしてくれる感じですね。スタジオ用のモニターヘッドホンとはまた別の意味でですけど、低音とかが脚色されているわけでもなく、個々の楽器がバランスよく鳴っている。でも低音が物足りないかっていうとそんなことはなくて、クリアに聞こえる印象です。パーカッション類のロー感とかアタック感も気持ちいいですし、シンセなどの音像の立体感もちゃんと感じられて……うん、いいなと思いました。

澤野弘之

──ソニーが注力しているのは「音楽を“正しい音”で聞かせる」ということらしいんですね。音楽クリエイターの意図に可能な限り忠実に、味付けすることなくリスナーに届けたいと。その点について、制作者の立場としてはどんなふうに感じました?

僕らが作った音をなるべくダイレクトに届けたいという意志は感じました。ただ、正直そのへんはイヤホンなどを買う人の楽しみでもあると僕は思ってるんですよ。すごく脚色された音のする製品を使うのも面白いし、これみたいにナチュラルに聞こえるものを選んでもいいし。だって僕自身も、学生の頃なんかはめちゃくちゃにベースを上げて聴いたりもしていましたから(笑)。

──そこはユーザーに委ねるべきだと。作り手としてはけっこう珍しいスタンスですね。

僕らの作るものって、究極的にはミックスを終えた段階が一番「この状態で聴いてもらいたい」という完成形なんですよ。それがCDなどの製品になる前に、マスタリングという工程を経るんですね。音圧を整えたり、聴き味を派手に仕上げたりする作業なんですが、言ってしまえばそこで1回音が変わっているわけです。だから再生機やイヤホンなどで味付けを加える工程は、いわば“第2、第3のマスタリング”とも言える。その意味で言うと、この「WF-1000XM5」はそれを極力しないようにしているように感じましたね。

澤野弘之

──つまり、どういう音でどう聴くかはユーザーの自由だけれど、作り手の意図にできるだけ近い音で聴きたいタイプのユーザーには本製品は適していると。

そう思います。結局、大事なのは音楽を聴いて気持ちが高揚するかどうかなので、聴く人それぞれが高揚できる音で聴いてもらえるんだったら、それが一番いいのかなと思ってます。ただ、自分としてはなるべく作り手の意図に沿う形で聴きたいと思ってます。少なくとも、わざわざ脚色された音で聴こうとは思わないです。たぶん、忠実かどうかというよりも、音の広がり方や心地よく聴ける音色が感じられるかどうかを重視している気がしますね。この「WF-1000XM5」は、それが十分感じられました。