HDDを好きになりました
──現在はオールSSD環境で運用されていると聞きましたが、HDDはまったく所有されていない?
今は一切HDDは使ってないです。PC本体にも2TBの内蔵SSDを積んでるし、外付けも含めて全部がSSD。HDDって、もういらないんじゃないですか?
──(笑)。実は僕自身も、今回の取材まではビッケさんと同じように「HDDがSSDより優れている部分なんて、価格面以外に1つもないのでは?」と思っていたんですよ。
そうですよね。
──ただWestern Digitalさんに聞いたお話だと、どうやらSSDは長期保存にあまり向かないそうなんです。読み書きせずに数年間放置するとデータが消えてしまう可能性もあるんだとか。
えー! そうなんだ!? じゃあ、SSDはHDDに取って代わるものとして出てきたわけじゃないんだ? 別物として考えたほうがいいんだ?
──もちろん普通に使う分にはあまり関係ない話なんですけど、例えば日常的には使わないデータのバックアップ用途などにはHDDのほうが向いているんだと思います。
なるほどねえ……。SSDは、タイムカプセルとしては使えないってことだ。数年後に掘り出したら、何も記録されていない謎のSSDだけが出てくることになる?
──その可能性があるということですね(笑)。あとはもちろん容量の問題があって、映像分野などでは一度に何十TBものデータを扱うことがあるらしいんですが、そのサイズのSSDはまだ一般的には存在しないという。
そうか、HDDにはそれだけ圧倒的な容量の大きさがあるんだ。スピードとフットワークはSSDだけど、後ろでドーンと構えていてくれるのがHDDみたいな。
──容量あたりのコストも、HDDのほうがかなり安く抑えられますし。
へえー、いろいろ面白い。正直、HDDなんてもう過去の遺物と捉えてましたけど(笑)、今の話を聞いてちょっとだけHDDを好きになりました。特にこのMy Bookなんかは倒れなさそうだし、18TBモデルとかもあるんですよね? すべてをここに収めることができるんだと思うと……なんか、自分の心臓のような存在になっていきそう。SSDが手足で、HDDが心臓みたいな。
──合体ロボみたいですね(笑)。現状は、過去のセッションデータなどもすべてSSDで保管しているんですか?
そうですね。作りかけの曲がいっぱいあるんで、新しい曲を作るときにそれらを「ああ、そういやこんなの作ったな」と聴き直すことで新たなアイデアが生まれたり、そのまま新しい曲のBメロとかに採用したりすることもあります。
──完パケしたデータに関しては?
それもSSDにめっちゃ整理して残してます。完パケに関してはセッションじゃなくて、オーディオに書き出したステムデータとして保管してるんですけど。
──そうなるとMIDIデータよりもだいぶファイルサイズは大きくなるでしょうし、頻繁に出し入れしないのであればHDDに納めておきたいところですね。
確かに……。時代は進んでいるようで、戻ってくるんですね。今日は自分の中で、HDDの価値が上がった日になりました。
これは本当にパスポートになる
──ビッケさんはもともとSanDiskのポータブルSSDをご愛用とのことですが、そもそもなぜSanDiskを選んだんですか?
知り合いのエンジニアがみんな「一番安全だから」ってSanDiskを使っていたんで。業界の評判が高いっていうのが一番の理由です。他メーカーの製品を使ったことがないんで比較はできないんですけど、信頼感はありますよね。信頼と実績のSanDisk。
──今回お試しいただいたWD My Passport SSDについては、どんな印象を持ちました?
まず、転送速度が速くて驚きました。今使っているSanDisk ExtremeポータブルSSDだって十分速くて、スピードに不満なんて感じたことなかったのに、体感でわかるくらい違ったんで。
──現在ビッケさんがお使いのものは、一世代前のものだそうなので、それと比較すると、カタログスペックで約2倍の転送速度に相当するようです(※SanDisk Extreme ポータブルSSDの現行モデルは、My Passport SSDと同じ転送速度)。
2倍!? そりゃ速いわけだ(笑)。あとは、見た目もいいですね。ラウンド感があって……この「WD」ロゴってアルミですよね? お金かかってるなあ。それと表面がウェーブのデザインになってるんですけど、これがグリップにもなって持ちやすい。イケてるなあと。
──モノとしての質感が本当にいいですよね。
あと、「My Passport」っていう名前がいいですね。さっきも話したように、僕はSSDにソフト音源やエフェクターなどのプラグインをたくさん入れて使うんですけど、そういうものの中には、ただインストールしただけでは使えないものもあるんです。ライセンスという概念があって、「私はこのソフトウェアの所有者ですよ」ということを証明しないと動かなかったりするっていう。だいたい皆さんパソコンを1台しか使わないんで、普通はパソコン本体をライセンス証明として使うんですけど、それが僕みたいに、いろんなところのいろんなパソコンで同じプラグインを使う必要がある人間の場合は、こういうポータブルSSDとかにライセンスを登録するんですよ。「そのSSDが挿さっているパソコンでなら動く」という使い方ができる。そういう意味で、これは本当にパスポートになるんですよ。これさえ持っていれば、どこにいてもどんなパソコンを使っても自分の買ったソフトウェアを立ち上げることができる。「これ持ってるから、そこ通してよ」ができるっていう。
──おそらく一般ユーザーは写真データや仕事の書類などを持ち運ぶケースが多いでしょうから、ライセンスを持ち運ぶビッケさんのような人にこそ「パスポート」の名前が意味を持つ感じはしますね。ビッケさんのために名付けられたんじゃないかというくらい。
あははは(笑)。
──読者に向けたオススメポイントとしては、どんなものが考えられますか?
まず携帯性がすごく高いところと、見た目に「ガジェットです!」という感じがないところがいいですね。しゃれてるから女性でも持ちやすいだろうし、ちょっとしたデータの受け渡しにはすごく便利ですよ。
──大きなデータを受け渡したいときとか。
そうそう、高解像度の動画とかね。こういう記憶デバイスって、誰しも1個はいいものを持っておいたほうがいいと思うんですよ。「これ消したくないな」というデータって、みんな1つや2つはあるじゃないですか。例えば僕だったら、楽しかったサッカーの試合の録画とかは取っておきたい。それこそお子さんがいる方なら、我が子の映っている動画に消していいものなんて1つもないだろうし。
──確かに、それがPCの中にしか存在しないのは不安ですよね。クラウドに保存している方も多いでしょうけど……。
クラウドだって容量は無制限じゃないだろうし、ネットにつながらないとアクセスもできないですよね。もし運営元が破綻したらデータそのものがなくなっちゃう……って、そんなことはそうそうないだろうけど(笑)。その点、手元にデータ倉庫が1つあれば安心だし、お子さんが大人になったときに「ここにあんたの全部が入っている」って渡すのとかもロマンがあっていいじゃないですか。死ぬ間際とかに。
──あははは(笑)。
あとは、「これを活用している」という優越感も味わえますよね。「私はSSDを活用しているんだ。そっち側の人間なんだ」という。
──(笑)。確かに、世の中はSSDを使っている人と使っていない人の2種類に分かれますもんね。
そうそう。「私は使っている側なんだ」と。
──マウント取りに行こうよと。
誰に対してかわからないですけどね(笑)。
My Passportがなければ俺じゃない
──今回、紹介させていただいたWD My Passport SSDも、WD My Book(デスクトップHDD)も、いわば、データをバックアップする役割を担う製品ですが、「BACK UP」という言葉は「応援する」とか「支える」という意味も持っています。最後に、今回の特集テーマ「BACK UP」にちなんで、アーティスト活動を“バックアップ”しているものを伺いたいと思います。現在、ビッケさんの活動を支えている一番大きなものはなんでしょう?
今は、海外への意欲かな。日本という場所で長く音楽をやってきて、いろんなことを経験して、アリーナ会場でいい景色も見られた。そこで根本に立ち返ってみると、小学生のときから「海外で仕事したい」「島国を出て海外の人たちとまともにやり合ってみたい」という感覚があって、今それが再燃してきてるんですよ。胸を借りに行くんじゃなくて、本当の意味で勝負がしたい。日本という島で培ったノウハウとか磨いてきたセンスが、大きな大陸でどれだけ通用するかというのをトライしたら面白いだろうなと。そんなボヤッとした思いが夢としてあって、その意欲が活動を支えています。……そこで威力を発揮するのが、このMy Passportですよ。
──そこをつなげてくださるんですね(笑)。
そこがやっぱりこの製品の肝だと思うんで。「単にSSDを家に置いておくんじゃなく、いろんなところで活用してくれ、それに耐え得るスペックで作ったからさ」っていうWestern Digitalさんの心意気がネーミングに詰まっているなと。僕はやっぱりこの名前、好きですね。
──海外への思いが再燃したことには、何かきっかけがあったんですか?
ロサンゼルスのミュージシャンとコラボレーションしたり、向こうのエンジニアにミックスを頼んだり、海外とのやりとりが増えたことが1つ。あとはアジアツアーのファイナルを中国・上海でやったことがあるんですけど、やっぱり知らない土地での活動って血が湧くというか、ゾクゾクするんですよ。もう一度チャレンジャーに戻れる感覚があって。
──日本での活動はある程度「こんなもんだな」が見えてきた部分がある?
まあ、ある程度“わかった”感覚はあるかな。ホームグラウンドと呼べる場所になりつつある。自分にとってはチャレンジする場ではなく、もはや楽しめるところになってきている感じですね。まだここ以外に全然知らない世界があるんだったら、安心できるこの場所だけに留まっているのは性に合わないなという。
──音楽業界に入ってきた当初は、そのチャレンジ精神を十分に楽しめていた?
そうですね。田舎から出てきて、未知の世界で1個1個ステップアップしてきたというのがあるので。僕はたぶん同じ場所を深く掘るよりも、いい意味でどんどん目移りしていきたいタイプなんですよ。そういう人間にとって力になるのは、やっぱりMy Passport。
──すべてそこに集約される(笑)。
これさえあれば「俺はパスポートを持っているんだ」という安心感も得られるし、パスポートっていうのは信用の証明ですから。未知の世界へ飛び込むときに、こういうものが1つあると心強いですよ。
──レジェンドギタリストが「このギターがなければ俺じゃない」と言うような感じで、「My Passportがなければ俺じゃない」くらいの感覚になれそうですか?
完全にその通りです。
──あははは。
でもこれはわりと冗談抜きで、ライセンスを入れたデバイスって「こいつがすべて」という感覚に実際なるんですよ。My Passportは堅牢な作りになっているからデータが飛ぶようなこともそうそうないだろうし、本当にこれからはずっとこいつと一緒にいるんだろうなという予感がしています。
──よき相棒として?
そんな感じがしますね。
プロフィール
ビッケブランカ
愛知県出身のシンガーソングライター。2018年発表の「まっしろ」がドラマ挿入歌として話題を呼び、翌2019年には「Spotify」のテレビCMに「Ca Va?」が使用された。海外においてもアニメ「ブラッククローバー」のオープニング曲がロングヒットを続けている。2022年3月にメジャーデビュー5周年記念ベストアルバム「BEST ALBUM SUPERVILLAIN」をリリースし、4月にはフランス映画「シャイニー・シュリンプス!」の新作「La Revanche des Crevettes Pailletées(原題)」の全世界共通エンディング曲である「Changes」を配信リリース。8月からは自身最大規模の全国ツアー「THE TOUR 『Vicke Blanka』」を開催する。全国ツアーに向け、8月24日には夏の恋を描いたポップで瞬間的なラブソング「This Kiss」をはじめとする4曲を収めたEP「United」をリリースする。また、楽曲提供、ラジオDJ、広告モデル、eSportsストリーマーなどさまざまな分野に活躍の場を広げている。