WENDY特集|世田谷発、青春真っ只中の4人が鳴らす生々しいロック

東京・世田谷在住のSkye McKenzie(Vo, G)、Paul(G)、Johnny Vincent(B)、Sena(Dr)の4人からなるバンド・WENDYのメジャーデビューアルバム「Don't waste my YOUTH」が8月23日にリリースされた。

コロナ禍真っ只中の2020年10月、世田谷区の青少年センターで出会った10代のメンバーで結成されたWENDY。アルバムタイトルの「Don't waste my YOUTH」は「俺たちの青春を無駄にするな」という意味で、一発録りされた楽曲など、生々しさが際立つロックナンバー全10曲で構成されている。昨年グラミー賞を受賞したマーク・ウィットモアのプロデュースにより、WENDYのエネルギッシュな一面がうかがえる1枚に仕上がった。

音楽ナタリーでは「Don't waste my YOUTH」の発売に際してWENDYにインタビュー。4人にメジャーデビューへの思いやアルバムの制作エピソードを聞いた。

取材・文 / 高橋ちえ撮影 / 三上信

Måneskinに負けたくない

──まずは、メジャーデビューを控えた今の思いを聞かせてください。

Skye McKenzie(Vo, G) シンプルに楽しみです。デビューしてからどうなるのかなと。

Paul(G) 自分たちがひと皮剥けるような感覚があります。俺らもバンドを本職としてやっていくわけだし、憧れのミュージシャンの方々と同じ土俵に立つことになるので、それに恥じないような音楽をやっていきたいです。

Johnny Vincent(B) 結成から3年弱ぐらいやってきて、いよいよ自分たちを世間に知ってもらうときがきたなという感じです。メジャー1stアルバムが出るのはそういうことだと思ってますし、気を引き締めていきたいです。

Sena(Dr) ついにメジャーデビューというところまできたので、プロとしてドラムもバンドもがんばっていきたいですね。ね、みんな!

──Paulさんがおっしゃった憧れのミュージシャンとは、どんな方々でしょうか?

Paul 憧れのミュージシャンというのとは別ですが、Måneskinです。Måneskinを追い越したいです!

Skye バンドを始めた当時からよくMåneskinと比べられることがあって。ビッグになったMåneskinを見ていて憧れはあるけど、負けたくないなとも思ってます。

Paul あと俺はBTSにもマジで負けたくないと思っていて。世界進出を目指して活動していて、歳は近いのにもう実際にそれを達成しているところがすごいなと。今の音楽市場の中でも注目度が抜きん出ていると思うし、シンプルに楽曲もいい。だからこそ絶対に負けたくないです。あとはロックのムーブメントを自分たちの手で作っていきたい。そのムーブメントの先頭に立つバンドとしてWENDYが活躍できればと思ってます。

Paul(G)

Paul(G)

Johnny 今のロックシーンだと、The 1975もめっちゃ人気ありますよね。MåneskinやThe 1975が今のロックシーンの先頭にいると感じているので、彼らとちゃんとロックで戦いたい。そしてなおかつ、2組とは違う新しい音を叩き付けたいと思ってます。

──初めて4人でスタジオに入ったときにセッションしたのがブライアン・アダムス「Summer Of '69」だったと聞いたんですが、今もそういった往年のロックを聴くことは多いですか?

Paul はい。レコーディングやライブの前とか、気合いを入れるときに聴いてます。俺はLed Zeppelinはマストで、あとはフレディ・キング。その時々でハマってる曲も聴きます。

Johnny 俺は気合いを入れるときにはLed Zeppelin、The Velvet Undergroundを聴きますね。あとは映画音楽とかも。

Sena 僕はRed Hot Chili Peppersです。ライブ前は絶対にチャド(・スミス)のドラムを聴きます。でもこの前の来日公演は行けなかったんですよー!

Skye 俺は最近、ライブ前はずっとプリンスを聴いてますね。楽屋で映像を観ながら1人で踊ることもあります(笑)。ショーン・メンデスとかポップアーティストも聴くし、Mötley CrüeやGuns N' Rosesなどのハードロックバンドも聴きます。

Skye McKenzie(Vo, G)

Skye McKenzie(Vo, G)

──全員、挙げるのは洋楽アーティストばかりですね。

Skye でも最近は邦楽も聴くようになりました。女王蜂とか、今の邦楽も面白いですね。あと日本人のラッパーも勉強がてら聴いてます。Senaはときどきback numberを熱唱してるし。

Sena 僕はもともと、邦楽をこの3人よりは聴いてまして。

Johnny 俺も邦楽聴いてるよ、Senaに負けないぐらい!

バンドが青春で、ただ音楽が楽しくてやってる

──では、1stアルバム「Don't waste my YOUTH」について伺います。まずはアルバムが完成した今の率直な感想を聞かせてください。

Skye やっと完成したという思いはあるけど、そこまで苦労せずにスッと作れたという感覚もあって。だからまだリリースするという実感が湧かないというか、夢みたいな不思議な感じです。最初からコンセプトがあったわけではなくて、完成した曲を並べてみたら「青春」というコンセプトが見えてきました。

Sena そうだね。とりあえず曲を作ろう、レコーディングしよう、というところから始まって。

Sena(Dr)

Sena(Dr)

Skye アルバムを作るということよりも、最初はマーク(・ウィットモア)にプロデュースしてもらおうぜ、みたいな思いが強かったよね。

Paul マークと一緒にやらせてもらえたのは人生のビッグイベントでした。楽しくて刺激的な毎日だったからか、アルバムの制作期間はとにかくあっという間に過ぎていきましたね。レコーディングが終わったときは寂しかったけど、逆に今は、次の曲を作るためのモチベーションになってます。

Johnny マークを含めた5人で行った制作やレコーディングの空気感がすごく好きでした。1曲1曲、流れるように録りましたね。レコーディングはピリピリしているときもあったけど、和やかな場面もあって、その結果できあがったアルバムは僕らの思いが詰まった、僕ららしい作品になったと思います。

──アルバムを通して聴くと、今のJohnnyさんの言葉に加えて、生々しさのようなものを感じました。

Johnny 自分たちとしても生々しさを出せたなと思います。

Skye 人間にしかできないというか、ロボットやAIには作れないサウンドだよね。ミスってるところもそれがトータルでよければ残して味になってるし、今のWENDYのすべてが詰まっているアルバムだなと。売れる売れないを考えたら、こういう生々しいロックを今の世の中にブチ込むのはリスキーかもしれない。でもやっぱり、このアルバムを通して「これが今のWENDYだよ」と紹介できるのがうれしいです。

──皆さんの世代だとネットを駆使したり、テクノロジーを使って緻密に音を作り上げている人も多いかと思いますが、あくまでも生の音をバンドで鳴らすことにこだわるのはなぜでしょうか?

Paul ただ音楽が楽しくてやってるので、緻密さみたいなものをあまり気にしていなくて。WENDYを始めたときからバンドが青春で、1stアルバムはそんな俺らが積み上げてきたものの集大成なんじゃないかと思ってます。メンバーみんなで一丸となって作れました。

Johnny 和気あいあいと、でも真剣にね。演奏してないときはSenaが台車に乗って動き回ってたな(笑)。

Johnny Vincent(B)

Johnny Vincent(B)

Skye 休憩のときね。Senaを乗せた台車を押して、スタジオを出てホール内とかも走らせて。

──放課後の風景のようで、言うならばそれも青春ですね。ではアルバムのタイトル「Don't waste my YOUTH」に込めた思いを聞かせてください。

Skye 直訳したら「俺たちの青春を無駄にするな」という意味です。WENDYはいわゆる青春時代と言われる10代のときに結成したんですが、結成した2020年はコロナ禍の真っ只中でした。コロナのせいで青春を奪われてしまったと感じている人もいると思うし、俺もその1人。でも俺らは音楽に出会って、コロナ禍の中でもたくさん曲を作ることができた。例えば「SCREAM」や「Can't stop being BAD」みたいな、世の中への反骨精神にあふれた曲も生まれたし。そんな中で俺たちも少しずつ年齢を重ねて、20歳になったメンバーも出てきた中で思うのは俺たちにとっては今が青春なんだっていうこと。結局、青春というのは10代だろうが20代だろうがそれ以上の年齢だろうが得られる体験だし、青春を無駄にしない=自分の時間を大切にする、ということだと思っています。明日何が起こるかわからないし、俺らの曲を聴いてくれる人にも、1日1日を大切にしてほしいですね。

Paul 青春に年齢は関係ないもんね。何歳からでも新しいことを始められるし、何歳だから俺たちの音楽を聴いていい、ダメだとかもないし。俺たちのアルバムを聴いて、その人なりの青春を感じてほしいなと思います。

──そんな青春が詰まったアルバムのジャケットは、皆さんの思い出の場所がモチーフになっているそうですね。

Skye 俺たちが地元でヤンチャしてたときに集まっていた希望ヶ丘公園にトンネルがあるんですよ。今はきれいになってるんですけど、昔はトンネルの壁に落書きが書かれていたんです。ジャケットにはJohnnyがアルバムの収録曲をイメージして描いたイラストを、希望ヶ丘公園のトンネルの落書きのようにデザインして。このトンネルを抜けて、俺たちは外に出ていくということを表現しました。

「Don't waste my YOUTH」初回限定盤ジャケット

「Don't waste my YOUTH」初回限定盤ジャケット

Johnny ジャケット、いい感じですよね。10曲分をイメージしたイラストを描くの、がんばりました。

──希望ヶ丘公園のトンネルがいつかWENDYの聖地になるかもしれませんね。

Skye なるといいですよね。

Johnny このジャケットが再現されるかもね(笑)。