ナタリー PowerPush - ワタナベフラワー

甲子園球場で歌うために クマガイタツロウが考えたこと

「みんなのうた」で歌いたかった

クマガイタツロウ(Vo)

──ワタナベフラワーとしてどういった方向性の音楽をやっていきたいと思いましたか?

もともとワタナベフラワーはウルフルズの「バンザイ」とかザ・ハイロウズの「オレメカ」みたいなラブソングがやりたいなと思ってて。

──飾らない、ストレートなラブソングですね。

すごく歌詞が刺さったんですよね。不器用だけどこういうのを作りたいなと。でも同じようなことをやってたらダメだし自分たちのスタイルは持たないとと思って考えてみたとき、NHKの「みんなのうた」で歌いたいって思ったんです。

──それは大きな夢ですね。

だから初めて東京でライブしたときにNHKに行っていろんな人にチラシ配りました。そうしたら1週間くらいで電話があったんですよ!

──これは急展開!

「爆笑オンエアバトル」っていう芸人さんが出る番組からだったんですけど(笑)。それでもあきらめずに「みんなのうた、やりたいんですわ」ってコールし続けて、8年後ですわ。ようやく念願が叶って。

──それが「てんとうむし」ですか。これはどうやってできた曲なんでしょうか?

僕の曲はそんなに壮大なものじゃなくて自分から半径3メートルくらいで起こったことを言葉にしてるんです。で、僕はバツイチなんですけど、24歳で結婚して29歳で離婚して。やっぱりそのときは離婚の歌みたいな暗い曲しか作れなくて全然「みんなのうた」じゃなかった。そんで再婚して初めて子供もできたんですけど、子供がお腹にいたときに書いた曲なんです。

クマガイタツロウ(Vo)

──クマガイさんが初めて親目線で書いた曲だったんですね。

本当にその直前まで暗い曲しか書かないし、メンバーからも「どこがワクワクロックンロールバンドやねん」みたいな感じで思われてて解散の危機だったんですよ。そうしたら僕がいきなり「てんとうむーし、しーのしーのしー」とか歌いだすから、アカン、この人ついに頭おかしくなったと思ったみたいで(笑)。でも「てんとうむし」が候補として決まってからは何度もリテイクしてそれこそノイローゼになるんじゃないかってくらい追い詰められてね。

──産みの苦しみを味わって。

最後の最後で詰まったんですけど、結局「るらら まもるらら」っていうダジャレに落ち着いて。子供って言葉遊びを求めてるらしいんですよ。だからこういうのがいいってプロデューサーに言われて。そうして完成した「てんとうむし」で初の「みんなのうた」ですよ。

最終目標は甲子園球場でライブ

──「てんとうむし」が一昨年で昨年も「タン・タン・タン」が選ばれて。2年連続「みんなのうた」は快挙ですよね。

2年連続は誰もやってない記録だったんですよ。「タン・タン・タン」は井上あずみさんの娘さんのゆーゆと一緒に歌ってるんですけど、「てんとうむし」のときに「みんなのうた」の視聴者人気で僕らが2位で1位がゆーゆの「6さいのばらーど」だったんです。僕らとしては悔しかったんですけど、一緒に歌わせてもらえる機会がありまして。で、僕が考えたのがパパと娘のデュエットソングだったんです。昔「ケンカのあとは」って曲があって、僕がそれをむっちゃ好きだったんですよ。で、ゆーゆに「こういうの一緒にやりません?」って聞いたら「焼肉の曲がいい」ってなって(笑)。

クマガイタツロウ(Vo)

──「6さいのばらーど」でも焼肉のこと言ってましたね。

焼肉めっちゃ好きみたいなんですよ。で、イクちゃんが作った曲がバツグンによかったので決めました。

──夢だった「みんなのうた」で2年連続で曲が放送されたのは感慨深かったんじゃないかと。

僕は兵庫県の西宮出身なんですけど甲子園球場の近くで生まれ育ったんですよ。だからいつか甲子園でライブするのが夢で。でもそのためには信頼も必要なんです。ただ売れただけじゃどうにもならんことがいっぱいあるんですよ。で、考えたのがやっぱり「NHK紅白歌合戦」に出場することやなと。そのためにNHKに貢献するには「みんなのうた」なんじゃないか……というのに結びついて。とりあえずそこまでは目標を達成できたので、まだまだ道のりはこれからって感じですけどね。でも「みんなのうた」のために曲を作ることでバンドの方向性がようやくやりたいこととリンクし始めました。

──遠回りしましたけど、ようやくですね。

まだまだ関西だけですけど子供がむっちゃライブに来てくれるのはうれしいですよ。それに僕のトレードマークのメガネを物販で売ってるんですけど、それをみんな買ってくれてね。「クマちゃんみたいになりたい!」って言ってくれるんですよ。嘘みたいでしょ(笑)。でもそれがホンマにうれしい。

ミニアルバム「YOUNG!」2014年2月12日発売 / 1500円 / three cheers / THCH-004
収録曲
  1. 運ぶday
  2. ピッピッピッ
  3. 僕のふるさと案内
  4. 最後に笑って
  5. ダンシング男子はジョギング女子に恋をする
ワタナベフラワー
ワタナベフラワー

2001年に神戸で結成。現在はクマガイタツロウ(Vo)、ムサ(B)、イクロー(G)の3人編成で活動中。「ワクワクロックンロールバンド」と銘打たれた彼らのライブではクマガイの軽快なMCだけでなく、シャボン玉や風船を使ったエンタテインメント性の高いステージが繰り広げられ話題を集めている。2012年に「てんとうむし」がNHK「みんなのうた」に採用。翌2013年にはワタナベフラワー&ゆーゆで「タン・タン・タン」を発表し、2年連続で「みんなのうた」オンエアという快挙を達成する。2014年2月にはミニアルバム「YOUNG!」を発表する。