ロックやHIPHOP、ハードコアなどを主軸としたラウドな楽曲を歌う4人組アイドルグループ・我儘ラキアが12月23日にミニアルバム「WAGAMAMARAKIA」をリリースする。
彼女たちの新作「WAGAMAMARAKIA」は、Nob(MY FIRST STORY)、Kuboty、HIDEとAG(NOISEMAKER)、YD(Crystal Lake)という豪華作家陣を迎え制作された。この作品の発売を受け、音楽ナタリーは我儘ラキアとNobの対談を企画。アイドルとバンドという異なる形態でラウドな音楽を体現する2組に、今回の楽曲提供への思いや、それぞれの音楽に対する姿勢について語ってもらった。
取材・文 / 阿刀“DA”大志 撮影 / 後藤壮太郎
ラウドな音楽との出会い
──ラキアのみなさんは、普段からラウドな音楽は聴くんですか?
星熊南巫 メンバーによって好みはけっこう違うんですけど、わりと聴くと思います。
MIRI 特に私と熊(星熊)は聴いています。
──星熊さんはBring Me the Horizonが大好きなんですよね。
星熊 大好きです。洋楽に触れるようになったタイミングで「KNOTFEST JAPAN 2014」があって、そこに出演するブリングミーのことを友達から「絶対好きやと思う!」と教えてもらったんですよ。ブリングミーが「Sempiternal」というアルバムを出した頃だったんですけど、正直、ライブを観てもそこまでグッと来なくて。でも、ジョーダン・フィッシュが加入してから音が変わって、アルバム「That’s the Spirit」を聴いたり、ロイヤル・アルバート・ホールでのライブ映像を観たりしているうちにドハマリしました。
──「KNOTFEST」はどうだったんですか?
星熊 「KNOTFEST」は私にとって初めてのメタル体験で、Five Finger Death Punchとか、びっくりしすぎてずっと口を開けながら観ていたら顎関節症になりました。
Nob(MY FIRST STORY) あはははは!(笑)
星熊 それまで牛の角カップで乾杯してる人なんて見たことがなかったので。でも、感動しました。Slipknotはショーとして完成度が高いし、表現が素晴らしすぎる。病みつきになるというか、怖いけど観たくなるという感覚。そこから、あれよあれよとメタルの道に引き込まれていきました。
──MIRIさんは?
MIRI その頃はまだ熊とは出会ってなかったんですけど、私も同じ年の「KNOTFEST」に行ってたんですよ。熊と仲良くなったきっかけもブリングミーで、熊が遠征の移動中のプレイリストをInstagramに載せていて、それを見たら趣味がドンピシャだったんです。同世代の女の子でこんな音楽を聴いてる人は私にとって初めてだったのでDMを送ってみたら、「マジ!? 話が合うね!」と返信が来て。でも、私は熊とは好みがちょっと違っていて、私はHi-STANDARDとかELLEGARDENをめちゃくちゃ好きな叔母の影響で、そういう音楽ばかり聴いていたんです。そのあと音楽業界に入ってラップをやることになったんですけど、ラップなんて一切聴いてこなかったし、どうやってラップを好きになろうか考えた結果、レイジ(Rage Against the Machine)とかLinkin Parkみたいなミクスチャーから聴いていくことでなんとか好きになりました。
──それと並行して、MY FIRST STORYとかNOISEMAKERのライブにも行ってたんですよね?
MIRI 行ってました。私は日本のバンドをよく聴いていて、熊は洋楽をたくさん聴いている。わかりやすく言うとそんな感じです。
──なるほど。じゃあ、海羽さんと怜奈さんはそんな2人からロックの情報を入手するという感じですか?
川﨑怜奈 そうなんです。私はロックを全然聴いてこなかったので、星熊から「これ観て! カッコいいから!」と教えてもらったり、海外アーティストのライブに連れて行ってもらったり。
星熊 Fall Out Boyを一緒に観に行きました(笑)。
川﨑 そう、めっちゃカッコよかったです! そうやってメンバーから影響を受けてます。
──海羽さんは雰囲気からしてロックとは無縁で、独自の道を歩んでそうなイメージを勝手に持っていましたけど。
星熊 これが意外とロックも聴くんですよ。
海羽凜 我儘ラキアを始める前、学生の頃に弟からMY FIRST STORYさんを教えてもらって「Black Rail」という曲のミュージックビデオを観たときの衝撃がすごくて……こんなこと言っていいのかわからないですけど……。
Nob いや、それはいいんじゃない?(笑)
一同 (笑)。
──むしろ、声を大にして言っていきましょうよ(笑)。
海羽 その曲を聴いて、「こんなにカッコいいバンドさんがいるんだ!」と思って、それからバンドというものをカッコいいと思うようになりました。
Nob そうなの?
星熊 いつも楽屋で大きい声でめっちゃ歌ってますよ。
MIRI 今回こうやって曲を書いてもらう前から、ライブ前とか集中するときにマイファスさんのライブ映像を観てるよね。
Nob えー! ありがとうございます。
──逆に、Nobさんはアイドルの音楽は聴くんですか?
Nob めっちゃ好きッスよ。
ラキア ええー!
Nob すごいポップなやつとか聴いてます。最近だと#ババババンビを友達から教えてもらって。たぶん、マイファスのメンバーの中で一番いろいろ音楽を聴いてると思います。
憧れの人からの楽曲提供
──今回の楽曲提供の話は、ラキア側からするととんでもない出来事だったんじゃないでしょうか。
ラキア とんでもないです!
星熊 びっくりしました、心から。
──どういう流れで話を聞いたんですか?
MIRI ラキアって大事な話をいつも車の中でするんですけど、今回はわりとさらっと言われました。だから、「ああ、なるほど……え、ちょっと待ってください!」みたいな(笑)。その話を聞く前、今年2月にチケットを自力で当てて、熊と2人で「BLARE FEST. 2020」を観に行ったんですよ。そのときにNOISEMAKERさんのライブを観て、私はAGさんのラップがすごく好きなので、「いつか絶対に楽曲提供してもらおうね!」と話してたんです。だから楽曲提供してもらえるという話を聞いた日の夜は、熊と2人で2、3時間ぐらい電話で話してました。「これからどうやっていくか」とか。
──「どうやっていくか」とは?
MIRI 楽曲を提供してくださる各バンドの皆さんにはたくさんのファンがついてるし、その人たちから「なんでこんなアイドルに楽曲提供したの?」と思われないようにどうするか。私たちも、自分の好きなバンドの方がアイドルに曲を提供して、その人たちの歌がめちゃくちゃ下手だったら、そのアイドルに対して「もったいないことしないでよ!」という気持ちになると思うんです。だから、どうやって納得してもらうかということを話し合ってました。
星熊 我儘ラキアのファンの中には、今回楽曲を提供してくださったバンドのファンの人たちもいるだろうけど、その中にもそれとこれとは別だと思ってる人はきっといると思うんです。いただいた曲を普通に歌っても「お前らはこっちのシーンに来るな」と思う人もいるだろうから、「そういう人たちに認めてもらうには声と歌しかない。全力でやるしかない」と腹をくくりました。
──そこまでのことを思っていたとは。
Nob 今、初めて聞きましたけど……すごいッスね!(笑) 言い方は悪いですけど、アイドルって全然真剣にやってない人たちとガチでやってる人たちがいて、それは見たらすぐにわかるんですよ。でも、今回の話をもらったときに彼女たちのライブ映像を観てみたらMCでフリースタイルをしていて、「めっちゃかっけえじゃん、これ」と思って。話をくれた人にすぐに「やるわ」って返事をしたし、曲ができるのもけっこう早かったですね。今の話を聞いて、やってよかったなと改めて思いました。
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爆発的なリード曲の誕生