KDDIが2020年9月に東京の銀座4丁目5番6号にオープンさせたコンセプトショップ・GINZA 456 Created by KDDI。今年7月には5G体験をユーザーに届ける取り組みの一環として、山口・KDDI維新ホールで開催されたORANGE RANGE結成20周年記念ライブ「一日千秋“楽”」のリアルタイム配信イベントが地下1階イベントスペースで行われ、抽選で選ばれたファンクラブの10名が参加した。音楽ナタリーではその配信イベントの模様をレポートする。
取材・文 / 張江浩司撮影 / Rickey-style(ライブ)、朝岡英輔(ライブ配信会場)
KDDIが「5Gや先端テクノロジーを活用しユーザーの想像を体験に変え『おもしろいほうの未来』が体感できる場所」として2020年9月に東京・銀座4丁目5番6号にオープンさせたコンセプトショップ。360°動画のインタラクティブ視聴体験アプリ「音のVR」やチームラボとコラボしたスマートフォンで蝶を捕まえるプロジェクト「捕まえて集める境界のない群蝶」の体験、自宅から参加できるお絵かき企画「Walk, Walk, Walk Home」の実施など、新しい技術に触れることができるワクワクするようなイベントが日々開催されている。
※コロナ禍による緊急事態宣言等により、時短または中止の場合があります。詳しくはHPでご確認ください。
「音のVR」は見たい映像や聴きたい音に自由自在にズームやフォーカスができる360°動画のインタラクティブ視聴体験アプリ。ハロー!プロジェクト所属ユニットやZARD、ORANGE RANGEなど、数々のアーティストによる音楽ライブが配信されてきた。これまでの収録にはステージの中央に配置した360°カメラや360°マイクが使用されてきたが、今回のリアルタイム配信では初の試みとして、通常のライブ収録に使用されるカメラやマイクが用いられた。カメラからの映像をコンピュータ上にリアルタイムで取り込み、360°動画を合成するとともにマイクからの音をミキシングによりサラウンド化することで、通常のステージ演奏のもと、「音のVR」リアルタイム配信が実現した。
「一日千秋“楽”」のタイトル通り、千秋楽にあたる山口・KDDI維新ホールで行われた公演。ひさしぶりのORANGE RANGEを生で楽しもうと多くの観客が集まった。アニバーサリーイヤーを記念したツアーではあるが、ステージ上に派手な装飾はなく、編成もギター、ベース、ドラム、3MCと至ってシンプル。
20年を経ても変わらないバンドの原点を見せつけるかのようなライブは、「MIRACLE」からスタート。現場から770km以上離れたGINZA 456では、ファンクラブの抽選で選ばれた10人がこのライブをリアルタイム配信で“体験”していた。YouTubeの配信画面がスクリーンに映され、それぞれが持つ5Gに対応したスマートフォンにインストールした「新音楽視聴体験 音のVR」アプリを用いて360°動画を表示。スクリーンでライブの全体像を観ながら、「音のVR」で思い思いの部分にフォーカスして楽しむことができる仕組みだ。
「以心電信」や「ロコローション」、「イケナイ太陽」など初期からの代表曲や、昨年制作された「気分上々」、最新リリースとなる「HEALTH」など、人気楽曲がキャリアの端々を横断するように次々と披露されていく。メンバーをアップにして一挙手一投足を見逃すまいとする人や、普段あまり観られない楽器隊の演奏の細部に注目する人など、「音のVR」の楽しみ方はさまざま。中にはYOHのベースをずっと凝視している人もおり、話を聞くと「私もベースを弾くので、ライブアレンジの運指を確認できて感動した」とのこと。また、5G回線の通信のスムーズさや、「音のVR」アプリの直感的な操作性に驚く声も聞こえた。
後半になり、「KONOHOSHI」ではRYOが自粛期間中に習得したシンセサイザーを緊張しながらも演奏。続く「花」のサビを「音のVR」で鑑賞するとボーカル3人のハーモニーそれぞれを分解して聴くことができ、普段は語られる機会の少ないORANGE RANGEのコーラスグループとしての側面に改めて気付かされる。
ライブ終盤ではHIROKIが、「コロナ禍が収まったらバンドはもっと熱いパフォーマンスを観客に届けるために100%を尽くすので、楽しみにしていてほしい」と語り、観客に「あまり今に慣れないでくださいね」と未来に向けた言葉を投げかけた。「Enjoy!」では声を出さずに振りを合わせることで会場の一体感が最高潮に。「ツール・ド・東北」のために書き下ろされた「Imagine」でライブ本編を締めくくると、10月から始まる全国ツアー「20th Anniversary ORANGE RANGE LIVE TOUR 021 ~奇想天外摩訶不思議~」の開催が発表され、山口の会場からもGINZA 456からも場所を超えた歓声が上がった。
──終演直後にありがとうございます。本日のライブはいかがでしたか?
HIROKI お客さんを入れるライブ自体がひさびさの状況で、「音のVR」やYouTubeでの配信もあって緊張感はありましたね。でも始まっちゃえば会場のボルテージもどんどん上がっていって、最後にはいつも通りにORANGE RANGEのライブができたんじゃないかなと思います。お客さんの熱量と僕らの演奏の相乗効果がありましたね。
RYO 声を出しちゃいけないとか、お客さんにもいろいろと協力してもらう部分があるんですけど、楽しんでもらえてるのがすごく伝わってきましたよ。今年の春頃はこういった制限がある中でライブをやることに不安もあったんですけど、今回のツアーで何度かライブを重ねていくうちにあまり影響はないなと思えるようになりました。
──「音のVR」でライブをリアルタイム配信するという、初の試みでした。
HIROKI ORANGE RANGEって漠然とワイワイしているイメージが強いと思うんです。でも「音のVR」だと、ギターがどんな音を鳴らしているのか、ボーカル3人がどんなコーラスワークをしているのか、そういった部分にもフォーカスして楽しんでもらえますよね。それに伴ってスキルアップが必要だなとも思いますし。いろいろな挑戦ができるので、自分たちもワクワクしてます。
RYO 特に僕ら2人は最先端に疎いんで、あんまりついていけてないんですよ(笑)。「こんなことができるよ」っていろいろ教えてもらいたいです。
──配信会場では「音のVR」を使って、ずっとベースのYOHさんをアップにして視聴している方もいらっしゃいました。通常のライブや配信では想定していない観られ方をすることにもなると思うんですが、気になりますか?
RYO それをあんまり意識してしまうと、マイナスの方向にいっちゃうと思うんですよ。「こう観られてるからこうしよう」と考えてしまうと、ライブ感が出ない気がして。観られ方ではなく、自分たちがどう表現するかということに集中したいですね。
HIROKI こういった配信で面白いことができるバンドもいると思うんですけど、僕たちがやれることはそこまで変わらないのかなと。でも、現場にいなくても臨場感を味わえるという点では素晴らしいシステムですよね。
──テレビ収録のような形で行われた前回の「音のVR」の収録では「20年間で一番緊張した」とおっしゃってましたが(参照:「ORANGE RANGE×KDDI 音のVR」特集)、今回はいかがでしたか?
RYO 全然緊張しなかったですね。お客さんが目の前にいるかいないかでは全然違います。いるとすごくいい空気になって、集中できました。声も聞けないし、マスクしてるから目元しか見えないですけど、お客さんのパワーをバッチリ感じました。ありがたいです。
HIROKI 前回の収録は失敗できないというプレッシャーがあったんですけど、今回は自然体というか、のびのび演奏できたのでいいものになったんじゃないかと思います。
──今日のライブでも披露された新曲「HEALTH」ですが、「健康」をテーマに曲を作ることができるというのも20周年を迎えたバンドならではだと思います。
RYO これまでいろいろな刺激を経験してきたんですけど、「体の調子がいい」ということに勝るものはないんですよね。調子がいいからポジティブでいられる。このことが自分にとって一番大事で、生活の中心にあるんだなと最近わかりました。しかも、それをキープするかしないかも自分次第ですし。
──MCでも運動と食事制限で15kgダイエットしたとおっしゃってましたね。
RYO 健康の話、好きなんですよ。本当なら20分くらいの尺がほしいです(笑)。
──さだまさしさん並みの長いMCになりますね(笑)。
HIROKI 楽屋でも健康の話は増えてきてますし、世の中的にも健康志向になってますよね。日常の会話をテーマに曲を作れるようになったのは、成長した部分なのかなと思います。
──自分たちなりのリアルをストレートに表現できるようになってきたんですね。
HIROKI そうですね。より日常に近い曲が作れるようになったのかなと。
──10月からのツアーも発表されました。これから徐々にライブをできる機会も増えていくと思いますが、どういったライブをやっていきたいですか?
RYO ORANGE RANGEはずっとお客さんに感謝しながら活動してきたんですけど、よりその思いが強くなると思います。ライブができることの幸せを改めて感じているので、それを演奏に乗せてお客さんに伝えていきたいです。
ツアー情報
- 20th Anniversary ORANGE RANGE LIVE TOUR 021 ~奇想天外摩訶不思議~
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- 2021年10月1日(金)大阪府 Zepp Osaka Bayside
- 2021年10月3日(日)大阪府 南海浪切ホール
- 2021年10月8日(金)愛知県 Zepp Nagoya
- 2021年10月9日(土)愛知県 アイプラザ豊橋 講堂
- 2021年10月12日(火)東京都 中野サンプラザホール
- 2021年10月14日(木)東京都 Zepp Tokyo
- 2021年10月16日(土)北海道 函館市民会館
- 2021年10月17日(日)北海道 Zepp Sapporo
- 2021年10月23日(土)福岡県 Zepp Fukuoka
- 2021年10月24日(日)福岡県 おりなす八女 ハーモニーホール
- ORANGE RANGE(オレンジレンジ)
- 沖縄出身・在住の5人組バンド。中学の卒業パーティをきっかけに結成される。2001年に現在のメンバーがそろい、地元・沖縄にある米軍のライブハウスを中心に活動を始める。2002年にミニアルバム「オレンジボール」をインディーズから発表。以後、沖縄以外でのライブも頻繁に行うようになり、2003年にシングル「キリキリマイ」でメジャーデビューを果たす。続く2ndシングル「上海ハニー」がオリコン週間ランキング5位を記録。その後も「ロコローション」「花」「ラヴ・パレード」「キズナ」など、数々のヒットを飛ばす。2010年7月に自主レーベル「SUPER ((ECHO)) LABEL」を設立し、10月にアルバム「orcd」を発表。2012年2月にはSPEEDSTAR RECORDSと提携を開始し4月にアルバム「NEO POP STANDARD」を、2015年8月にはアルバム「TEN」を発表した。2016年7月に結成15周年を記念したコラボベストアルバム「縁盤」をリリースし、初の47都道府県ツアーを開催。2018年に3年ぶりとなるアルバム「ELEVEN PIECE」を発表。2021年には結成20周年のアニバーサリーイヤーに突入し、6月に健康総合企業・タニタとのコラボレーションソング「HEALTH」を配信リリース。10月からは20周年記念全国ツアー「20th Anniversary ORANGE RANGE LIVE TOUR 021 ~奇想天外摩訶不思議~」を開催する。
※特集公開時、本文に誤りがありました。お詫びして訂正します。
2021年8月3日更新