ビッケブランカ VS 岡崎体育|親友になったキツネとタヌキ、世界を踊らせる 聞き手:芦沢ムネト(パップコーン)

ビッケブランカと岡崎体育が「ビッケブランカ VS 岡崎体育」として、10月28日にコラボレーションシングル「化かしHOUR NIGHT」をリリースした。

共通の趣味であるゲームを通じて親交を深め、お互いの才能を認め合う2人が完成させたのは、キツネとタヌキをモチーフに彼らの友情を歌う、キャッチーで華やかなEDMナンバー。ミックスエンジニアにジョシュ・カンビーを迎えた、世界標準のダンストラックだ。

音楽制作で初めてタッグを組んだ2人は、どのようにしてこの楽曲を作り上げたのか。音楽ナタリーは2人のゲーム仲間でもある芦沢ムネト(パップコーン)にインタビュアーを依頼し、ビッケブランカと岡崎体育に話を聞いた。なお特集の最後には、ビッケブランカと岡崎体育が相手の楽曲の中から“好きな5曲”をセレクトしたプレイリストも掲載する。

取材 / 芦沢ムネト 文 / 三橋あずみ 撮影 / 曽我美芽

うーわ、コンセプティブや

左からビッケブランカ、芦沢ムネト(パップコーン)、岡崎体育。

──まず僕ら3人の関係を説明すると、サッカーゲーム「FIFA」シリーズをプレイする「京都サンドバックス」というチームの仲間なんです。メンバーには体育くんの同級生がいたり、ラジオのディレクターがいたりとごちゃまぜなんだけど、けっこうそうそうたるメンツで。で、初期の頃なんかはホント部活みたいな感じで真剣にやっていたから、ダメなプレーをしたときとか、怒られるんですよ(笑)。

ビッケブランカ でもチームの頭が……オーナーがこの岡崎体育なんですけど、最近反省してるんですよね? 人の出入りが激しくて、特に歳下の子たちが付いてこないから「なんでだ?」と。

岡崎体育 はい。

ビッケブランカ オーナーなりに反省して、ここ2年くらいは方針を変えてます。

岡崎体育 すでにいるメンバーで空気感ができてしまうと新しいメンバーが萎縮しちゃうから、空気を1回クラッシュするんですよ。基本的に、新しく入ってきた人の話で持ちきりにする。

──うわ、優しい……!

岡崎体育 好きな色とか聞いたりしてる。

一同 あはははは!(笑)

──そういうつながりがきっかけで仲良くさせてもらってるけど、2人が最初に出会ったのはいつのタイミングなの?

岡崎体育 4、5年くらい前に出たフェスで、出番が近かったんですよ。同じステージでね。その転換のときに「あ、どうも」ぐらいの会釈をして……。

──お互いのライブを観たりという感じでもなく?

岡崎体育 いや、観ましたよ。

ビッケブランカ 俺も観ました。

岡崎体育 第一印象はそこまでよくなかったんですよ、実は。お互いに男性のソロアーティストっていうのもあって。

──ちなみにどういう感じだったんですか?

岡崎体育 僕はネタ曲みたいなのをやっていたから「こんなん卑怯やんけ、ズルいぞ」とか思われてたんじゃないかな。

ビッケブランカ 「なんばグランド花月でやれや」って思ってましたね。

岡崎体育 で、ビッケさんは当時水兵さんみたいな恰好をしてたので、僕は「うーわ、コンセプティブや」と思って。

ビッケブランカ コンセプティブ!(笑)

──よう今回の曲にこぎつけましたね? だって「4年経つとこんなに仲良くなるんだ」っていう内容の歌詞だよ(笑)。

ビッケブランカ なったんですよ。

岡崎体育 仲良くなる人って、最初は印象よくなかったりするでしょ?

──ああ、確かに。

ビッケブランカ どうでもいい人には何も感じないじゃないですか。何かを感じるから「チェッ」って思うんですよ。当時の2人はまだ若かったんで、相手のことをいいと思っちゃう自分が悔しいみたいな感情があったんだと思う。ただ、「コンセプティブや」は普通に傷付く! ちょっと、今回のリリース見送りで……。

一同 あはははは!(笑)

ゲームがなかったらアルバム5枚くらいできてる

岡崎体育 そうやって4、5年くらい前につながって、そこからはゲームで仲良くなっていって。

──「FIFA」以外にも「フォートナイト」とかやってるよね。

岡崎体育 そう。でも、「FIFA」とか「フォートナイト」もあったんですけど、根底の部分で通じ合ったのが「UFC」っていうゲームなんですよ。

──格闘技のやつだよね? そうなんだ。

岡崎体育 プレイ人口が多いわけじゃないから、自分以外でやってる人と会ったことがなくて。だけど、僕もビッケさんも「UFC」で初勝利したときに撮れるスクリーンキャプチャをPlayStationのプロフィールのヘッダーにしてて、「うっわ、『UFC』やってるヤツおるんや!」って。

ビッケブランカ 「フォートナイト」でつながって、当時は「はじめまして、お願いします」みたいな間柄ですよ。ヘッダーを見た瞬間「マジか!」って。そういうニッチなところがヒットすると、運命を感じるというか。

──急接近したんですね。「UFC」は今もやってるんですか?

岡崎体育 やってないですね。

ビッケブランカ 「フォートナイト」で出会うと、もう「フォートナイト」やるのが一番面白いんで。

──そうなんだ(笑)。これだけゲーム好きだと、音楽活動に影響を与えるものなんですか?

岡崎体育 ありますよ。僕、ゲームがなかったらアルバム5枚くらいできてるなと思いますもん。

ビッケブランカ 単純に、できる曲の数が圧倒的に減ります!

──いやいや違う、そういう影響? 邪魔ってこと? 嘘でしょ。もっといい話してよ(笑)。

岡崎体育 もう依存症やなって思ってます!

──俺はてっきり、「ゲーム音がサウンドに影響を……」みたいなことがあるのかと。

ビッケブランカ それはないかな。歌詞には若干……例えば、敵を狙うときに使う「エイム」っていう用語を使って「Take aim」って歌詞を書いたりということはありますけど、そんな1割の影響よりも、音楽制作の時間を潰すっていうことのほうが圧倒的な影響。

──全然いい話じゃなかった。そんなことある?(笑)

岡崎体育 でも、今回のコラボの前にも僕はw-inds.の(橘)慶太さんと曲を作っていて、これもきっかけはゲームなんで。そういう意味では、ゲームがもたらした音楽的な影響はむちゃくちゃありますけどね。

ビッケブランカ 人とのつながりを生んでくれてね。

バラードは自分だけで完結する

──そうやってゲームで仲良くなって……「化かしHOUR NIGHT」、めちゃめちゃいい曲じゃないですか。歌詞とか特に、感動しちゃったもん。

ビッケブランカ お、マジっすか。

──ちょっと人見知りだけどスイッチ入るとめっちゃしゃべる、ちょっと特殊な2人の仲のよさがめちゃくちゃ出てて。ちなみに歌詞は交互に書いていったんですか?

岡崎体育 まず僕が自分のパートの平メロを書いて、それに合う平メロをビッケさんがくれはった感じですね。

──平メロって何?

岡崎体育 サビ以外の部分ですね。

──なるほど。体育くんが作った歌詞が、ビッケさんのところに行くわけだよね。

ビッケブランカ そうです。「その滑稽な髪型やプロポーションを愁いては」というくだりが2番に来る。なるほど、この歌詞をどうすればよりエモくできるだろう? じゃあ俺も自分のことを自分で説明していこう……といった感じで。

──そこらへんって、特に話し合わずに進んでいくの?

ビッケブランカ そんなには話し合わないですね。「キツネとタヌキの化かし合い、仲がいいようで悪いようで……」みたいな、そういうコンセプトをお互いしっかり心に落とし込めているから、アイデアは出てくるんですよ。

──コンセプトはちゃんと決まってたってことか。それはどうやって決めたの?

岡崎体育 そもそも、「化かしHOUR NIGHT」ができあがるまでに二転三転したんだよね。最初はバラードを作ってて、そのあとにハードコアテクノを作ったけど、どっちもボツになって。

ビッケブランカ でも面白かったよね。バラードを作るとき、AメロBメロは別々に、サビは2人のアイデアを混ぜて……みたいなやり方をしようと思ったんですけど、バラードってガッチャンコできないんですよ。それぞれが作った曲がよすぎて。自分だけで完結するんだよね。

岡崎体育 1曲の中に2曲あるみたいな感じになっちゃったんですよ。

ビッケブランカ それぞれで曲を出せるようなクオリティのものになっちゃって、でも絶対に混ぜられないってことで、ゴリゴリのハードコアテクノで行こうと。

岡崎体育 「絶対売れへん曲作ろう」と(笑)。

ビッケブランカ もともとは、2人で楽しくバーンとやっちゃおうよ!くらいのノリだったんですよ。ただ、そうやって進めて行く中で周囲の人たちも「めっちゃ面白そうじゃん、せっかくならちゃんとやろう」という流れになっていき。であれば2人の持ってるポップネスもしっかり発揮しつつ、お互いのテクノ好き、ハウス好きをベースにしたポップソングを作っていこうと方向性を決めた瞬間に、バババッとコンセプトは固まりしたね。

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俺、激エモだったよ